二次元裏@ふたば

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28440 B26/07/20(月)18:17:49No.1450894524そうだねx6 19:52頃消えます
「だからこうさあ、凶悪な感じでさ。薔薇だろ、髑髏だろ、んで牙とか爪とか」
「ダッッサ! いやダッッッサ!! ありえないんだけど!?」
「あァ!?」
 薔花はペンを置いて立ち上がり、横からのぞき込んできたチョナを睨めつける。「アタシのデザインに文句あんのか」
126/07/20(月)18:18:02No.1450894593+
「文句しかねーわ!」チョナも負けずに睨み返す。「薔薇に髑髏に牙!? 中二病の全部盛りお子様ランチかっての! しかもちゃっかり自分のイメージをメインに持ってくるとかズーズーしい」
「そ、そんなんじゃねーよ! あれだ、薔薇っつったらあるだろあの、キレーで刺々しいイメージだろ! そういうのがアタシらに合うだろーが!」
「通るかそんな言い訳! しかもそれがちゃんと描けてりゃまだいいけど、何これ!? ウニに芋虫がくっついてんの?」
「こンの……じゃあ、お前のはどうなんだよ!」
 チョナの持っていたメモ用紙をひったくり、一瞥した薔花は青筋を浮かべて床に叩きつけた。
「まんま蛇じゃねーか! 自分丸出しじゃねーか!! どの口でアタシに文句つけてんだ!!」
「チッ」
「うるさいぞお前達。だまって手を動かせ」
「そういうワンちゃんはどうなのさ」
「まだ下書きだが、こんな感じだ。我々の部隊名を考えれば、猟犬のモチーフは当然入れるべきだろう。あとは三人のイメージカラーなどをうまく入れ込みたいところだが」
 ワーグがすっと出した紙をしげしげと眺めた二人が同時に言った。
「……チワワ?」
「狼だッ!!」
226/07/20(月)18:18:18No.1450894672+
 ヨーロッパ解放作戦において、エンプレシスハウンドは通常の編制から外れた、無敵の龍直属の遊撃部隊として働いた。
 ワーグの加入によりチームとして統率され、機能性が格段に増したのに加え、少人数ゆえの身軽さ、全員が破壊工作のエキスパートかつ極めて高い個人戦闘力を持つという部隊特性、ワーグが龍と共通の遺伝子設計を持つことによる感覚的な相性の良さなどすべてがうまい方向に噛み合い、彼女たちは陽動に、救援に、後方攪乱にと赫々たる戦果を挙げた。
「このまま常設部隊として艦隊に勤務する気はないか」龍が真顔で勧誘したが、
「ジョーダン」
「カイロちゃんの近くにいられないのはイヤ」
「恥ずかしながら泳げないのでな。海上勤務はごめんこうむる」
 あっさり断られたという一幕があったほどである。
 さておき、開戦からまだ間もないある日、ブリーフィングを終えた龍が戦術マップに目を落として何気なく言った。
「エンプレシスハウンドは部隊章を作らないのか?」
 作戦室の中央に据えてあるホログラフィック戦術マップでは、展開中の部隊の位置がアイコンでリアルタイム表示される。そのアイコンには各部隊の部隊章が使われている。
326/07/20(月)18:18:33No.1450894765+
 ブラックリバーの各兵科にはそれぞれ公式のエンブレムがある。それをそのまま使っている部隊もあれば、大隊や小隊単位で独自の部隊章を作っているところもある。三安やPECSのチームも、軍編制に加わる場合にはそれぞれのブランドロゴを部隊章として用いる慣例になっている。
 そんなさまざまなアイコンが散らばる地図の中に、ひとつだけ無個性なゴチック体の「H」という文字が混じっている。ハウンドのHだ。
 存在自体が秘匿された暗殺部隊であるエンプレシスハウンドに、部隊章などというものは当然ない。当座の間に合わせとして選んだイニシャルは他と並べるといかにも味気ないが、
「必要を感じない」ワーグが即答した。
「いらねえよ、そんなもん」薔花が眉を寄せて舌を出した。
「……」チョナは無言でただ肩をすくめた。
 にべもない返答に、龍が苦笑いをする。「そう悪いものでもないぞ。部隊章があると連帯感が強まる」
「ハッ」薔花が鼻で笑った。「強まるも何も、そんなもんハナからあると思う?」
「まわりからもチームとして認知されやすくなる」
「それこそ無用のことだ。我々はもとより暗殺部隊。知名度も評価も求めない」
「そうかな?」
426/07/20(月)18:18:55No.1450894873+
 龍は羽織っていた軍服のコートを脱いで広げて見せた。白いコートの胸には、ホライゾンを一番上にしてブラックリバー八兵科のエンブレムが綺麗に刺繍された胸章がぶら下がっている。彼女がブラックリバー全軍の指揮権を預かっていることの証だ。
「それが何か?」
「主の礼服にも胸章がついている。ブラックリバーだけでなく、オルカにいる全部隊、全ブランドのエンブレムやロゴマークを並べたものがな。現状、そこにエンプレシスハウンドだけ欠けていることになるが……」
「…………」
「…………」
「…………」
 結局、その日はそのまま解散となり、その後作戦が終わるまで、部隊章の話が出ることも二度となかった。
 しかし、デルタを倒しヨーロッパの情勢にも落ち着きが見えてきた春先のあるおだやかな日。閉店後のカフェ・ホライゾンで、ワーグが何も言わずテーブルに分厚いメモ用紙の束を置いた。
 チョナがポケットから何本かのペンを出した。
 薔花はだまって椅子に座り、ペンをとった。
526/07/20(月)18:19:28No.1450895046+
 かくして部隊章デザイン大会が始まったわけだが、最初に判明したのは薔花には絵心が一切ないという残酷な事実だった。チョナは多少マシだが似たり寄ったり。ワーグは三人の中では一番描けるが、何を描いても女児のイラストのような丸っこい絵になってしまうという宿痾を抱えていた。
 かくして大会は行き詰まった。

「ちょっと角度を変えて考えてみよう」
 深夜にさしかかり、口喧嘩に疲れ果てたワーグが額の汗をぬぐって言った。
「既存のものを参考にするのはどうだ。お前達、他の部隊のエンブレムで好きなデザインとかあるか?」
「気にしたことないけど……ああでも、アンガー・オブ・ホードのマークはちょっといい。あとアーマードメイデン」
「どこまでもトゲと髑髏かよ……私はコンパニオンとかヴァルハラとか、キレイめのが好きかな。ワーグは?」
「私もあまり考えたことがなかったが、エンブレムと言われてすぐ浮かぶのはスチールライン、ドゥームブリンガー、ホライゾン……だいたい無機質なタイプかもしれんな」
626/07/20(月)18:19:44No.1450895124+
「全然合わねえじゃん」薔花が頭を掻く。「そもそも、秘匿部隊なんてアタシらだけじゃないだろ。080機関とか、あのマークどっから来たわけ?」
「よくは知らんが……UOU学園の校章と似ているから、あれを元にして作ったんじゃないか。あるいは、元から内部連絡用の符牒でもあったのかもしれん。あの、ストライカーズというのはどうだ? オルカで独自に編成した部隊だと聞いたが」
「話したことないからわかんないな〜。でもストライカーズってラビアタがトップなんでしょ? あの人ならデザインでもなんでもできそうじゃない?」
「確かに……だからといって、我々がラビアタにデザインを依頼するわけにもいかん」
「…………」
 明かりを落とした薄暗い店内に沈黙が落ちる。乱雑に重ねられたメモ用紙の山が、シーリングファンのゆるやかな風でカサ、と動いた。
「……あんまり気は進まないけど」チョナが毛先をいじりながら口を開いた。「本職に頼んでみる?」
726/07/20(月)18:20:01No.1450895204+
 翌日の昼下がり。
「なるほど、それで私のところへいらしたんですね」
 アッシュブロンドの髪を揺らして、メリーは微笑んだ。片手にはペンを、片手にはおにぎりを持ったまま。
「食事中に申し訳なかった。お願いできるだろうか?」
「もちろんですよ! ビスマルクではロゴデザインもいっぱい手がけましたし」おにぎりを横にかたづけて、スケッチブックを取り出すメリー。「エンプレシスハウンドさん、あまりご一緒したことはないですがお噂は聞いてます。秘密部隊だったんですよね」
「秘密というか……まあ、そうだな」
「汚れ仕事だよ。暗殺とか、サボタージュとかな」
「ふむふむ」
 おどかすような薔花の言葉にも動じず、メリーはスケッチブックの端にメモをとっていく。「わりとダークな面あり、と。そういう過去もチームの個性ですから、デザインの上では活かしていきたいですよね」
「お、おお」薔花がちょっと鼻白んで、隣のチョナへ顔を寄せる。
(おい、なんなのこいつ。フワついたナリしてるくせしてビビらないんだけど)
(プロフィール見てないの?)チョナも囁きかえす。(滅亡前の実験機だよ。結構エグい経歴持ちの)
(マジか)
826/07/20(月)18:20:19No.1450895300+
「後ろでゴニョゴニョ喋るなお前たち。騒々しい奴らで申し訳ない」
「いえいえ、構いませんよー。何かリクエストや、これは入れたいって要素はありますか?」
「あー……ドクロとか、棘とか、イカツいやつ」
「猟犬のモチーフを」
「特になーし」
「なるほど、なるほど」
 レモンイエローの大きな瞳を見開いて、メリーは三人の顔を順番にじっと見て、最後にチョナに目を据える。「ふん、ふん」
「なに?」
「いえいえ。そうですね、それじゃあ……こんな感じはどうでしょう?」
 メリーはさらさらと軽やかにペンを走らせ、くるりとスケッチブックを返した。
「おおっ……!?」三人から一斉に感嘆の声が上がる。
 部分的に骨がむき出しになったような、剽悍でまがまがしい猟犬の頭部。大きな棘のついた首輪をつけ、周囲には爆発か稲妻のような意匠が配されて、全方位に尖った印象を持たせつつ、全体としては長方形に近い綺麗なシルエットに収まっている。
「こんな一発で……」
「いいじゃん、いいじゃん!」
「うむ……しかし、ここの空白、少し気になるな?」
926/07/20(月)18:20:38No.1450895401+
 ワーグがスケッチの上部中央、猟犬の耳の間にあたる箇所を指さした。確かにそこには何も描かれておらず、ととのった輪郭にそこだけ隙間ができている。
「あ、そう言われるとそうですね。何かで埋めた方がいいかも。どんなのがいいかな」
「むう……」
「ツノとか生やさない?」
「……あ、じゃあさ。ちょっとペン借りていい?」
 チョナが手を伸ばして、空白部分に何か描き込んだ。
「こういうのどうかな」
「……王冠?」
 描き足されたのは三叉の角を生やした、小さな王冠型の飾りだった。見ようによっては角のようにも、稲妻の一部のようにも見える。
「私ら女帝の猟犬でしょ? 女帝ならさ、冠があったっていいじゃん」
「なるほど。いいな……なるほど!」ワーグが目を輝かせてうなずいた。
「ま、いいか」薔花も肩をすくめる。
「素敵ですね、これ。全体がぐっと締まりましたよ」メリーも朗らかに笑った。「これで決定稿にしていいですか? じゃあ、明日中に仕上げておきますね。部隊章としてそのまま登録できるデータ形式のやつと、あとサイズ違いのバリエーションをいくつかお届けします」
1026/07/20(月)18:20:55No.1450895495+
「いやあ、プロに頼むと違うものだな」
「ホントそれな」
「よかったね〜」
 エンプレシスハウンドの面々が上機嫌で帰っていったあと、メリーは食べかけのおにぎりを片付け、大判デザインタブレットへ向き直る。さて、と袖をまくったところで、うしろから温かいお茶がそっと差し出された。
「いい仕事をしたわね、メリー」
「やだ、見てたの?」メリーは顔を赤くして振り返る。
「声がしたものだから」マキナはおだやかに笑った。「あの空白、わざと作ったんでしょう?」
「見え透いてたかなあ」
 メリーは他者の脳波を検知し、欲望をイメージとして感じとる能力を持っている。三人をよく観察した時、一人だけ「不満と後悔」のイメージを抱いていたのがチョナだった。部隊章がいらないのかと思ったが、さらに目をこらすとそうでないことはすぐにわかった。
 彼女は本当は人に頼んだりせず、自分たちだけで部隊章を作りたかったのだ。
1126/07/20(月)18:21:10No.1450895569+
 一番無関心を装っていたが、どうやら彼女は態度に出さないだけで「オルカのエンプレシスハウンド」という所属に相当強い愛着を持っているらしい。
「エンブレムとかロゴマークってアイデンティティに関わるものだからさ、何かちょっとでも『自分たちで作った』って思える方がいいと思ったの。実際、王冠っていうのは悪くないアイデアだったし」
「大丈夫。皆さん喜んでいたと思うわ。特に、チョナさんが」
 メリーは嬉しそうに笑って、それから猛然とタブレットに向かいペンをふるい始めた。何しろ司令官がらみ以外の画題のオーダーは久しぶりだ。筆も弾もうというものである。
1226/07/20(月)18:22:15No.1450895892+
 さらに数日の後。
 いくつかのコミッションを片付けたメリーが気晴らしに散歩中、カフェ・ホライゾンの前を通りかかると、お茶を飲んでいる司令官にエンプレシスハウンドの面々がひっついているのが見えた。
 何を話しているのかよく聞き取れないが、礼服を着て見せてくれとせがんでいるらしい。三人のメイド服の襟に、自分がデザインしたエンブレムのピンバッジがそれぞれ留められているのを見て、メリーは笑顔になった。どうやらマキナの言ったとおり、いい仕事ができた気がする。
 鼻歌を歌いながらそのままカフェを通り過ぎ、過度を曲がって路地に入った。しぜんと足が速まる。この先の川沿いの通りに、アウローラのパティスリーの支店があったはずだ。
 いい仕事をした時は、自分にごほうびをあげるべきだ。

End
1326/07/20(月)18:23:28No.1450896268そうだねx1
久々にスレに出会えたありがたい…
1426/07/20(月)18:26:25No.1450897201そうだねx2
まとめ
fu7003207.txt

総力戦POPUPストアでピンズいっぱい買ってきた記念
実際にはハウンドのエンブレムって薔花が出た時点で登場したから
ほぼ薔花のイメージだけでデザインされてる気がしますね
1526/07/20(月)18:30:34No.1450898485+
総力戦のアクスタやたら高くない?
多分種類多すぎて受注生産かつ型を作成してないから全部実質オーダーメイドみたいな感じだからなんだろうけどさ…
1626/07/20(月)18:33:50No.1450899408+
ハウンドも猟犬要素カケラもないの増えたしね…
1726/07/20(月)18:40:53No.1450901660+
バイオロイドって自分のアイデンティティが造られたプリセットだけどン百年もすれば自分だけのモンになるんかねえ
1826/07/20(月)18:54:57No.1450905993+
>バイオロイドって自分のアイデンティティが造られたプリセットだけどン百年もすれば自分だけのモンになるんかねえ
>値段も設計もあらかじめ決まった出来合いの命だとしても、今この瞬間見る風景は自分だけのものだ。
1926/07/20(月)19:25:53No.1450917088+
>総力戦のアクスタやたら高くない?
>多分種類多すぎて受注生産かつ型を作成してないから全部実質オーダーメイドみたいな感じだからなんだろうけどさ…
値段はまあ受注生産だからなで納得できるけど
ラビアタの一番基本のすがた(太い方)がないのは何故なのかいまだにわからない


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