二次元裏@ふたば

画像ファイル名:1784379727654.png-(189283 B)
189283 B26/07/18(土)22:02:07No.1450288829+ 23:31頃消えます
このお話は蒲松齢「聊斎志異」より、「聶小倩」「蓮香」を原本として、ウマ娘世界に翻案したものです。
「聶小倩」は中国ではよく知られた昔話で、A Chinese Ghost Story として映画化もされています。
なにぶん古い話で、一部不適切な表現も含まれていますが、執筆当時のオリジナリティを尊重しそのまま掲載しています。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
126/07/18(土)22:02:28No.1450288950+
トレーナーは山梨県の甲府の生まれであって、名は◯◯、字(あざな)は✕✕といって、県内ではよく知られた好青年であった。
温厚篤実な性質で、人を疑うことを知らず、竹のようにすくすくと育ち、ついにはトレーナー試験に合格するまでに成長した。
この男、ひとつ欠点があるとすればそれは大のレースきちがい(原文ママ)であることで、身体能力に優れたウマ娘を見かけると、我先にと自ら指導を買って出るおせっかいであった。
そんなおりのことである。トレーナー寮が廃寮になるということで急遽引っ越しをせざるを得ない状況に陥った。
トレーナーは懐に余裕がなかったので、奥多摩の山あいにある安い廃寺を仲介してもらって、そこに住むことにした。
226/07/18(土)22:02:49No.1450289064+
「やめたほうがいいですよ! トレーナーさん!」
担当ウマ娘であるキタサンブラックは廃寺の内見にまでついてきて、再三再考を勧めてきた。
「ここは事故物件ですよ! 何かの幽霊の祟りがあるかも……」
トレーナーは元来楽天的に生まれついているのでこんな忠告は何ともなかった。
「俺は孤独のレース狂だよ。どうして鬼や幽霊を恐れることがあるかね。むしろ山中での無聊を慰めてもらうよ」
そうして住み始めた廃寺であったが、ガスも電気も通っていて、Wifiの感度もよく不自由のない暮らしをすることができた。
ある夜のことである。ぽくぽくと人のいない本堂から音がするので、何だろうと思い見に行くと、一人の髪の長い女の子が退屈そうに木魚を叩いていた。
326/07/18(土)22:03:14No.1450289195+
「何をしているの?」
「え、あっ! あなたには私が見えるのですか?」
見ると、たいそうな美少女である。鹿毛の長髪は腰に届くほど長く、前髪にはダイヤモンド型の流星があしらわれている。
年のころはキタサンブラックと同じくらいだろうか。あちらは快活だがこちらは少し落ち着きがあり、いいところのお嬢様といった印象がある。
「当たりです。私はもともとサトノ家の令嬢なのです」
サトノ家、と聞いて背筋が寒くなった。サトノ家といえば裏社会に目を付けられ、一家まるごと行方不明になったと噂のいわく付きの家系である。
「すると、追手を逃れてこんな山の中まで隠れてきたというわけか」
「残念ながら、それは違います。ほら、私の手を見てください」
426/07/18(土)22:03:47No.1450289372+
サトノダイヤモンドと名乗った少女の手を見ると、うっすらと後ろの壁が透けて見えた。
「私は悪漢にさらわれました。早々に利用価値もなくなり、気がつけば、この寺の敷地に骨を埋められていたのです」
つまり幽霊――。にわかには信じがたい話ではあるものの証拠も見せられている。
「自分に手をかけた奴らを恨んで現世にとどまっているのか」
「別に特段興味はないんです。ただ退屈なので成仏しないんです。トレーナーさん、よければ私の話し相手になってはくれませんか?」
恐ろしいという気持ちもないではなかったが、なにぶん美少女であったし、トモの張り方に特徴があってよく走るウマ娘のように見えたので放っておくことができなかった。
二人は夜な夜な本堂で会うようになり、親しくなってからはトレーナーの部屋に来るようになった。
526/07/18(土)22:04:16No.1450289535+
「と、トレーナーさん!? どうしたんですか! その顔は!」
キタサンブラックとの契約は依然続いていて、連勝街道をひた走っていたが、いろいろと心配されることが多くなってきた。
どうやらトレーナーの顔がげっそりとやせ細っているらしい。
「ちゃんと食べてるんですか? 頬がこけて……あたしが料理を作りに行きます!」
サトノダイヤモンドと鉢合わせてしまうと話がややこしくなりそうなので断った。
しかし、お祭り少女の性というかこれと決めたら曲げない性分らしく、スーパーの袋を持って廃寺まで押しかけてきた。
「他の女の子の匂いがする……吐いてください! 浮気ですか!」
困っていたところにサトノダイヤモンドがやってきてにこにこと笑顔を振りまいた。
「まあ、あなたがよくお話に出てくるキタちゃんですね。仲良くしましょう」
626/07/18(土)22:04:46No.1450289713+
二人はトレーナーをおいて本堂に入ってなにやら言い合いをしていた。
始めの方はキタサンブラックが感情的な声を出していたものの、徐々に落ち着いたトーンになり、しばらくすると楽しそうな笑い声も漏れてきた。
「ダイヤちゃんのことを誤解していました。でも、トレーナーさんの生気がなくなっているようで、それだけが心配です」
キタサンブラックは帰っていった。とはいえトレーナーにはいい解決策が浮かばない。
日々衰弱していく体を前になすすべもなく、ついには布団に寝たきりになってしまった。
サトノダイヤモンドは看病してくれるけれども、陰と陽とで相反する存在であるので、どうしても現世の人間は悪い影響を受けてしまう。
サトノダイヤモンドは決意を固めて、廃寺を離れて高尾山の山頂の薬王院まで参拝に出ていった。
726/07/18(土)22:05:16No.1450289891そうだねx1
参拝を終えた後、満月が見える展望台で両手を合わせ一心に念じた。
こんばんは。
あなた……そう、「あなた」です。今、私と目が合いましたね。
このような話をどう思われますか? このままバッドエンドなどということが許されると思いますか?
私にはもはやサトノ家の後ろ盾はありません。巨大な資本力も、世論を味方にする政治力もないのです。無力な一幽霊に過ぎません。
しかし、サトノダイヤモンドはそれでは砕けません。
サトノダイヤモンドという存在が持つ、絶大な運命修正力――いいえ、「運命強制力」は、今も揺るぎなく私の心に宿っています。
画面の前のみなさん、どうかお力をお貸しください。
その画面に手を差し出して、ほんの少しだけ元気を分け与えてくれればよいのです。
こんなのルール違反だと思いますか? ですが、「無理無法を押し通すのが私」なのです。
私は仮に私たちのお話が悲劇だと言われても。
必ず、その結末を覆してみせます。
826/07/18(土)22:05:44No.1450290063+
鳥たちのさえずりと共に朝の清浄な空気が流れ込んできた。
トレーナーは昨日までの不調がまるで嘘だったかのように、溌溂として食卓に下りてきた。
「体中から力が溢れる……ダイヤ、いったい何を……」
サトノダイヤモンドは多くを語らなかった。ただ卓の上に小さな骨壺を置いた。
「こちら、寺に埋葬されていた私の骨壺です。どうぞ中をお改めください」
蓋を開けて中を覗くが、綺麗さっぱり清掃されていて、一つも骨が入っていない。
「薬王院の願掛けに加えて、トレーナーさんが毎晩精を注いでくれたおかげで、こうしてまた現世に縁を持つことができました」
見ると、サトノダイヤモンドは肌艶が良く、健康そうな血色が浮かび上がっている。
幽霊があの世に生者を導くのではなく、逆にあの世から幽霊を連れ戻してしまった。
何がどうなったのかわからないトレーナーは目をしばたたかせている。
926/07/18(土)22:06:16No.1450290281そうだねx3
それから二人は夫婦となり仲睦まじく暮らした。
「ねえ、トレーナーさん。キタちゃんも妻に迎えましょうよ」
二人目の妻を設けることについてトレーナーはいくつかの反論をした。
サトノダイヤモンドの回答は非常に単純で明快だった。
「ここは昔話世界ですよ。一部に不適切な表現が含まれていたって、誰も疑問に思うことはありませんよ。俗世の常識など、私たち三人の愛の前には無力です」
トレーナーはそこに来て初めて、このウマ娘の愛情の深さを知ったのだった。
それからのことは、あまり多く記されていない。ただ奥多摩の廃寺が一挙に栄えて、豪華な一軒家になり、大家族が暮らしていたことだけが、後の記録に残っている。
1026/07/18(土)22:09:00No.1450291273そうだねx2
>このお話は蒲松齢「聊斎志異」より、「聶小倩」「蓮香」を原本として、ウマ娘世界に翻案したものです。
これはまたえらく高尚そうな
>「薬王院の願掛けに加えて、トレーナーさんが毎晩精を注いでくれたおかげで、こうしてまた現世に縁を持つことができました」
風向きが変わってきたな?
1126/07/18(土)22:11:20No.1450292096そうだねx1
>蓋を開けて中を覗くが、綺麗さっぱり清掃されていて、一つも骨が入っていない。
>「薬王院の願掛けに加えて、トレーナーさんが毎晩精を注いでくれたおかげで、こうしてまた現世に縁を持つことができました」
>見ると、サトノダイヤモンドは肌艶が良く、健康そうな血色が浮かび上がっている。
これってつまりせっkゲフンゲフン
1226/07/18(土)22:17:04No.1450294191+
裏社会てキタちゃんの実家じゃ
1326/07/18(土)23:21:22No.1450315748+
山梨だの高尾山だの知ってる地名で知らない物語が展開してるじゃんね…
1426/07/18(土)23:25:14No.1450316812+
>トレーナー寮が廃寮になるということで急遽引っ越しをせざるを得ない状況に陥った。
なんかたまに寮が解体される怪文書見るけど大きな陰謀が働いてるようにしか思えない
1526/07/18(土)23:25:46No.1450316986+
>そうして住み始めた廃寺であったが、ガスも電気も通っていて、Wifiの感度もよく不自由のない暮らしをすることができた。
いや陰謀だわこれ…


1784379727654.png