二次元裏@ふたば

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28440 B26/07/05(日)19:59:26No.1446503306そうだねx3 21:08頃消えます
 がっちりと組み合った二組の手はもう一分近く、小刻みにふるえるだけで前にも後ろにも動かない。
 手の甲に浮き上がる血管、二倍もの太さに膨れ上がった二の腕、岩石のように硬く張り詰めた肩。
 声はない。両者とも歯の間から、細くするどい息をしぼり出すだけだ。
126/07/05(日)20:00:00No.1446503509+
「…………ッ」
 やがて一方が背中の筋肉を大きくうねらせ、半歩だけ押し込んだ。残る力をふりしぼって最後の勝負に出たのだ。
「……ッ!!」
 だが、相手にはそれに応じるだけの力がまだ残っていた。踏み込みを受け止め、さらに押し返す。
 それこそが誘いだった。
 絶妙のタイミングで力が抜け、バランスを崩した上体がすくい上げられる。世界がぐるりと回転し、気がついたときにはフリッガはマットに押しつけられ、右腕をレモネードガンマにねじり上げられていた。
「く……」
 フリッガの上腕の筋肉に力がこもる。が、肩は完璧な形に極まっており、関節をこわす覚悟なしに脱出は不可能だ。一瞬の躊躇のあとフリッガは力を抜き、床を叩いてギブアップの意志を示した。
「プフーーーーぅ……!」
 するりと離れたガンマが、大きく熱い息を吐く。深呼吸して息を整え、汗で貼りついた髪をはらってから何かに気づいて笑った。たくましい二の腕の筋肉が両腕とも、ピクピクと断続的に細かくふるえ続けている。
226/07/05(日)20:00:16No.1446503612+
「はは、痺れてやがる。全力のレスリングなんざいつ以来だろうな。楽しかったぜ」
「鍛え直してまいります……いずれぜひ再戦を」
 苦い笑顔で差し出されたフリッガの手を、ガンマはかるく握り返した。

 アラスカでのホワイトストーカーとの戦いから数日。
 医療班が首をひねるほどの速さで回復したレモネードガンマは、リハビリと称してオルカ号内のジムへ毎日のように顔を出し、腕っ節の強そうな者を捕まえてはスパーリングをふっかけている。
「お疲れ様でーす! いやーガンマ隊長最強! ガンマ隊長無敵! ガンマ隊長シビれる!」
 マーリンがニコニコ顔で水とタオルを持ってくる。ガンマは汗をぬぐって水のボトルを一口、うまそうにあおった。
「ガーディアンシリーズのフリッガか。チビからスペックだけは聞いてたが、あれほどとはな」
「ヤバいでしょー。フォールンの脚を引きちぎって棍棒代わりに振り回すんですよあいつ。もう怪獣ですよ怪獣」
「あー、聞いた。お前イギリスでボコボコにやられたそうだな」
326/07/05(日)20:00:38No.1446503746+
「やられてませんけど? あれは私ちゃんがボディを取り戻す前の話ですからノーカンですけど?」わざとらしく目をそらしてから、マーリンは笑う。「どうですかオルカ。楽しいでしょ」
「ふん。まあ悪くはねえ、って程度だ」
 マーリンの期待に反して、ガンマは小さく肩をすくめただけだった。「どいつもこいつもお行儀がよすぎる。先週まで敵同士だったんだ、もう少し喧嘩をふっかけてくる奴がいるかと思ったが」
「うわー武闘派。まあそこはアーサーの人徳といいますか、彼が認めたんだから仲間だってみんな受け入れてるんですよ」
「アーサーアーサー、アーサーね。じゃあさしずめ私はペリノア王か」
「いい方に回りますねえ。でも、スパー相手には不自由しないでしょ? 北米じゃそうもいかなかったんじゃないですか」
「それはまあな」ガンマは顔をしかめて頷く。「こんなのがゴロゴロしてるんなら、連合戦争でも無精してないでもっと前線に出ておきゃあよかったぜ」
「いやいや、さにあらず。連合戦争の時じゃあこうはいきませんよ」
「なんだ、モデルチェンジでもしたのか?」
「そうじゃなくて、オルカにいる子は大抵スペックより強いんですよ」
426/07/05(日)20:00:56No.1446503876+
「ほおん?」ガンマが空になったボトルを握りつぶし、片方の眉を上げた。

「私ちゃんもオルカで参謀やって長いですからね。ある時思ったわけですよ、『うわっ…オルカの隊員、強すぎ…?』ってね」
 カフェに移動して、マーリンはいそいそと情報パネルを取り出す。
「転職屋のCMかよ」
「それでまず戦史研究から始めたわけです。青い数字は今年の頭の、鉄の塔作戦の記録。赤いのが滅亡戦争の時のエルベ川防衛戦の記録。ね、全然違うでしょ? 命令伝達時間、命令変更回数、射撃精度、全部オルカの方がずっとハイレベルです。これを元に補正クレフェルド交換比係数を出したのがこちら。兵科ごとに違いはありますけど、一番差の小さいAAキャノニアでもオルカは旧時代の1.4倍、一番大きいスチールラインではなんと2.7倍も開いてます」
「ふむ?」
 今ひとつピンときていない様子のガンマに構わず、マーリンは矢継ぎ早に画面を切り替えて滔々としゃべり続ける。
526/07/05(日)20:01:18No.1446504026+
「補正クレフェルド係数ってのはバイオロイドの死傷が物損扱いでクッソ安いんで、これをオルカ基準で人命と同等まで引き上げると倍率ドン、さらに倍、いやもっと。しかもこっちは戦死者ゼロですから長期戦になるほど人員補充の差が効いてきます。私ちゃんの見立てじゃ、オルカのスチールライン一個連隊いれば旧時代の平均的なスチールライン一個師団に勝てますね」
「あー……」
「要因についてはもちろんアーサーの指揮と、あと練度と士気が段違いなのが一番効いてますが、個人能力も間違いなく上がってるんですよね。兵士個人の戦闘力ってのはもともと数値化しにくい情報で、実際オルカでも身体測定なんかではそこまで違ってるわけじゃないんですが、逆に係数比から逆算してそういうのを詰めていけないかなって今ちょっと研究を」
「わかった、よくわかった。お前が数字をいじくるのが好きなのはな」とうとうガンマが手を上げてマーリンを遮った。
「私はそういうのには興味ねえよ。どんな数字を持ってようと、17インチ砲を食らえば吹っ飛ぶ。私の言ってる強さってのはそういうことじゃねえ」
626/07/05(日)20:01:52No.1446504255+
「でもほら、例えばこのスチールラインで見ればですよ」
「あんな雑魚の群れが何倍になったって何も変わらねえよ」
「それは聞き捨てならんな」
 突然背後からかけられた声に、レモネードガンマはゆっくりと振り返った。
 隣のテーブルで、湯気の立つコーヒーカップを口元から下ろした不屈のマリーが、まっすぐこちらを見ていた。
「……不屈のマリー4号機か」ガンマが目を細める。「雑魚の元締めがなんか用か?」
「私個人はともかく、スチールラインへの暴言は容認しがたい。訂正してもらいたい」
「訂正するようなことを言ったか?」ガンマが口元をゆがめた。「スチールラインてのは、チェスでいやあポーンだろ」
「ポーンはチェスの魂、という格言があるのを知らないようだな」
 マリーが椅子を立って、ガンマのテーブルへゆっくりと歩を進める。ガンマは少しも動じない。
「チェスの試合ならそうかもな? だが、本物の戦争は違う。ルークやナイトをどれだけ揃えてポーンなんぞの代わりに並べられるか、戦争ってのはそこから始まるんだ」
「実にポセイドンらしい思考だな」
「だろう?」ガンマも立ち上がった。
726/07/05(日)20:02:08No.1446504366+
 息のかかるほどの近さで二人の軍人が向かい合う。背丈はマリーの方がわずかに高いが、筋肉の厚みによる存在感はガンマの方が上だ。
「品性を欠く、という意味だ」
「おやおや。ポセイドンへの暴言は容認しがたい、とか言うべきかな?」
「容認できなければどうする?」
「ジムへ行こうぜ」ガンマは愉快そうに親指をぐいと立てた。「もうひと汗かきたかったところだ」
826/07/05(日)20:02:50No.1446504666そうだねx2
長いので続き
fu6938052.txt

だいぶ間が空いてしまいましたがまた怪文書投下させてください
926/07/05(日)20:05:00No.1446505596+
ラスオリ怪文書ありがたい…
1026/07/05(日)20:06:48No.1446506315そうだねx3
これまでのまとめ
fu6938053.txt
以前書いたのですが韓国司令官へのリクエスト案件を書いててこちらには投下できませんでした
ガンマが仲間になって何も悶着ないわけないと思うんですよね
1126/07/05(日)20:18:36No.1446511474+
マーリンはそういうことする
1226/07/05(日)20:27:33No.1446515830+
久々にスレに出会えたありがたい…
1326/07/05(日)20:48:13No.1446525370+
バイオロイドの骨格って金属なんでしょ?
折れるんじゃなくてヒン曲がって永久変形になるんじゃない?
1426/07/05(日)20:55:30No.1446528310+
>バイオロイドの骨格って金属なんでしょ?
>折れるんじゃなくてヒン曲がって永久変形になるんじゃない?
流石に金属なのはラビアタくらいじゃない?


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