二次元裏@ふたば

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143688 B26/06/21(日)01:10:54No.1441909911+ 03:39頃消えます
「おはようございます、トレーナーさん」
「ああ、おはようブーケ」
いつも通りに朝の挨拶をして、私はトレーナー室のソファーに腰掛けました。けれど、いつもならそれに続いて私の前に座ってミーティングを始めるはずのトレーナーさんは、私の顔を見て可笑しそうに微笑んだままです。
「耳に蝶が止まってるよ」
何か粗相をしてしまったのかと思っていた私に、トレーナーさんが投げかけた言葉は思いもよらないものでした。急いで部屋の隅の鏡を見ると、確かに白い蝶が一羽、私の左耳に止まっています。
「本当…きっと、花壇にいた子ですね。ここに来る前に、少しお花の世話をしていましたから」
126/06/21(日)01:11:35No.1441910133+
犬や猫と違って、蝶はいつまでも一つところに留まっていることはありません。ですが、私が連れてきた子は耳から飛び立ったあとも、ひらひらと私の周りを舞い踊ってはリボンの上に重なるように羽根を休めていたりするのです。
「綺麗…でも、ここにいたらごはんもありませんし」
自分の服にもお花のラッピングにも、リボンは欠かせないものだと思っています。ですから、それが命を吹き込まれて花々の間を舞っているような蝶の姿をできることならずっと見ていたいのですが、残念ながら私は本物の花と違って、蝶のお腹を満たしてあげることはできません。
「ごめんなさい、また会いましょうね」
ですから、差し出した指先に止まった時を見計らって窓の外へ手を出して、部屋から出してあげようとしました。けれど、蝶は初夏の空気の中を少し羽ばたいては、また私の指へと戻ってきてしまいます。
「…あ…!だめ…!」
心苦しいですが、次は指を弾くように無理やり飛び立たせてみます。それでも蝶は花びらのようにひらひらと、私のそばに来るのです。
226/06/21(日)01:11:48No.1441910188+
これ以上無理に追い払うと蝶が弱ってしまうような気がして、三度目の手には力が入りません。結局、何をやってもそばを離れない蝶を耳飾りの代わりにして、私はトレーナーさんとミーティングをすることになったのです。
「ごめんなさい、トレーナーさん。逃がしてあげたいのに、何度やっても戻ってきてしまって…」
ぺたりと畳んだ耳に止まって居心地良さそうに羽根を伸ばす蝶を見ると、トレーナーさんはにこりと笑いました。
「はははっ。懐かれちゃったね。
本物の花だと思われてたりして」
「…もう」
口では拗ねてみせましたが、トレーナーさんがからかうように笑うこんな時間が、私は好きです。
私がこのひとを笑顔にしてあげられているのだと、疑いようもなく感じられるから。
326/06/21(日)01:14:06No.1441910855+
ミーティングが終わった後も、蝶はひらひらと部屋の中を飛び回っては、結局私の耳に戻ってきて羽根を休めることを繰り返しています。そのころにはもう、少し早歩きすれば振り切れてしまいそうなその頼りない飛び方が愛おしくなってしまっていたのでした。
「いいんじゃないか?窓だけ開けて、あとは好きにさせてあげれば」
私の絆されかけた情を汲み取ったかのように、トレーナーさんはくすくすと笑っています。
このひとは本当に、私の願いを叶えるときに負い目を感じさせないようにするのが上手なのです。気を遣わなくてもいいように気を遣われていることが申し訳なくて、時には遠慮をやめてほしいとお願いしたこともありましたが、私とトレーナーさんが気遣いの押し相撲をすると、大抵はトレーナーさんの大人の余裕に負けてしまいます。
426/06/21(日)01:15:52No.1441911292+
自分ではない誰かへの優しさだけで彩られたあなたの顔に、喜びという花を咲かせたい。
そう思い続けて幾つもの季節をあなたの隣で過ごすうち、同じ花だけで満たされた花畑のようなあなたの表情の中に、私は少しだけ違う色を見つけました。
「きっとブーケのそばにいたいんだよ。
…俺もその気持ち、わかるから」
桃色の優しい花々の中に、恥じらうように一輪だけ咲く、瑞々しい赤い花を。
526/06/21(日)01:16:09No.1441911371+
花たちが美しく咲く姿を見ていると、私の心は喜びで満たされていきます。トレーナーさんがその優しさに見合う幸せを手に入れたときの気持ちも、きっとそれと同じだと思っていました。
だから、少し変です。
「…本当、ですか」
花をいくら見つめても、頬が熱ることなんてなかったのに。
あなたの頬に赤い花が咲くと、私の顔も太陽を浴びたように、熱を帯びてゆくのです。
「…うん。
花と一緒にいるときのブーケは、すごく綺麗だから。ずっとここにいられたらいいなって、偶に思うんだ」

あなたに相応しい花束を届けたくて、私はここに来ました。
でも、私より大きな花も、美しい花もたくさんあるのだということを、私はよく知っています。だから、あなたを幸せにできるのが私ではない誰かだったとしても、それは仕方ないことなのでしょう。
「手を、出していただけますか」
──ああ、でも。
もしあなたがまだ、幸せの在処に気づいていないのなら。
その幸せをあげるのは、私でいたい。
626/06/21(日)01:16:23No.1441911462+
私の髪から解けたリボンは、あなたを一羽の蝶に変えるでしょう。
蝶なら何の気兼ねもせずに、いくらでも花のそばにいていいのですから。
「どうか、そばにいてください。ちょうちょさん。
…お花はいつだって、待っていますから」

だから、会いに来てください。
あなたのためなら、誰よりも美しく咲いてみせますから。
726/06/21(日)01:17:27No.1441911748+
おわり
ブーケちゃんのお花の美しさに誰よりも早く気づける蝶でいたいだけの人生だった
826/06/21(日)01:17:40No.1441911793+
実装前に書いたやつを供養しときます
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926/06/21(日)01:19:10No.1441912122+
🦋…
🦋👍️
1026/06/21(日)01:19:12No.1441912130そうだねx3
なそ
にん
1126/06/21(日)01:19:28No.1441912214+
えっちだね
1226/06/21(日)01:21:42No.1441912684+
ウマ娘の蝶々って冬のG1でも勝利を祝いに来たり
悪い運命を運んできたりといろいろだよね
1326/06/21(日)01:22:36No.1441912894+
開きかけの蕾みたいな恋もいいものだ
1426/06/21(日)01:27:38No.1441914086+
供養するな全部ちゃんとスレ立てて見せてやれ!
1526/06/21(日)01:29:15No.1441914437+
ブーケちゃんは自分より自分の育てた花が褒められる方が喜びそう
トレーナーさんはその数少ない例外だといい
1626/06/21(日)01:34:17No.1441915465+
>🦋…
>🦋👍️
キブリチョウ…
1726/06/21(日)01:35:54No.1441915762+
これは良いものを見た…ありがとう
1826/06/21(日)01:41:04No.1441916772+
トレーナー室に活けるためのお花を選ぶ表情があまりにも恋する乙女のそれすぎて19世代の間でざわつかれていてほそい
1926/06/21(日)01:50:06No.1441918564+
リボンを巻く時につい左手の薬指を意識してしまうブーケちゃん
2026/06/21(日)02:00:30No.1441920540+
>ウマ娘の蝶々って冬のG1でも勝利を祝いに来たり
>悪い運命を運んできたりといろいろだよね
いっぱい来ると後者のイメージ
2126/06/21(日)02:01:50No.1441920848+
ちょうちょ連れてトレーナー室に行くブーケちゃんかわいすぎて狂う
2226/06/21(日)02:06:14No.1441921907+
今の時期の恋の花といえば撫子あたりだろうか
2326/06/21(日)02:18:18No.1441924615+
自分のブーケトスを自分で作ることになるブーケちゃん
2426/06/21(日)02:37:57No.1441927989+
投げるまでもなく自分でトレーナーのところに行っちゃいそうなブーケだな…
2526/06/21(日)02:47:52No.1441929332+
デルフィニウムの季節でもある
>青のデルフィニウムの花言葉は「あなたを幸せにします」
2626/06/21(日)03:07:09No.1441931441+
ブーケちゃんの花嫁衣装を発狂しながら作る例のデザイナー


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