二次元裏@ふたば

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205542 B26/06/06(土)22:00:34No.1437358267そうだねx1 23:08頃消えます
「私は参加しません」
「じゃグラスはそれでいいデース。セイちゃんはやりますよね?」
「面白そうだね。でもうまくいきますかな」
「キングのプライドを刺激すればワンチャンスあると思うんデース」
「えっと……私は……」
「おっと、スペちゃんは無理しなくていいデース」
「私の時と態度が違いすぎませんか」
こつこつという足音が廊下から近づいてくる。
「この高飛車な足音は……キング!」
「総員、配置につけーー! 戦デェェス!」
126/06/06(土)22:00:57No.1437358458+
「あら、みなさん集まっていたのね。ちょうどいいわ」
丸テーブルを囲んで座っているところにキングヘイローが割り込んだ。
「ちょっと聞いてもらえる? ひどいのよ、あのへっぽこったら」
視線だけでエルコンドルパサーはセイウンスカイに合図する。
「この間、祝勝会で美味しいものを食べようということになったのよ。そしたらどこに連れて行かれたと思う?」
「ファミレスとかかな?」
「スペさん。あのへっぽこを舐めているわね。その程度じゃきかないんだから」
は〜、やれやれといった風に首を振るその動作は呆れ半分嬉しさ半分に見える。
「辺鄙な町中華だったのよ。店主がカウンターでテレビをぼんやり眺めているようなね。嫌な予感しかしなかったわ」
226/06/06(土)22:01:19No.1437358658+
「それで、料理がまずかったんデスか?」
「今から話すわ。まずテーブルがべとべとしてるのよ。床はコンクリート打ちっぱなしでひび割れてるし、衛生観念がきちんとしていないのよ。そんなところで祝勝会なんてあり得ると思う?」
キングヘイローの話はいつも長くなりがちなので誰かが止める必要がある。
「ま〜、いろいろあるけどさ。結局料理のうまさの問題じゃない?」
「……おいしかったわよ」
露骨に声が小さくなった。
「おいしかったわよ。すごかった。中国宮廷料理を修行してきたシェフだったんですって。北京ダックやらフカヒレやら次から次へと運ばれてきて目を丸くしたわ」
326/06/06(土)22:01:44No.1437358856+
「素敵ですね。トレーナーさんなりの歓待だったんでしょうね」
「でも、でもよ! さすがに時と場所というものがあるわよ。料理はいいわ、でも格ってものがあるでしょう!」
ふんすと鼻息を荒くしていたが、実際怒っていないことは誰の目にも明らかだ。
だからこそ、エルコンドルパサーとセイウンスカイは共闘することを決めた。
「いや〜、本当にひどいね。キングのトレーナーさん、デリカシーってものがないよ」
「えっ?」
「しっかり決めきれないからヘタレなんデェェス! 朴念仁よりひどい愚鈍デェェス!」
「えっ? えっ?」
グラスワンダーはその成り行きを眉をひそめて見守っていた。
友人二人の悪ノリをお茶を飲んで黙認しながら。
426/06/06(土)22:02:12No.1437359118+
「こないだも言ってたよね。老人の道案内してたら自分も迷っちゃったとか」
「キングと一緒に歩いているところを聞かれて『彼女じゃないです』とか口走ったみたいデスね」
エルコンドルパサーとセイウンスカイは目を合わせて含み笑いした。
「素直に、カスだね」
「人語に落ちる屑デェェス!」
「ちょ、ちょっと待ちなさい! あなたたち、さっきから何を言っているの!?」
「何って、やだな〜キングのトレーナーさんの悪口だよ」
「なんであのへっぽこの悪口を言っているのよ!!」
「なんでって、キングが言っているからに決まっているじゃないデスか。キングだっていつも言ってますよね、悪口」
526/06/06(土)22:02:39No.1437359332+
ぐぬう、とキングヘイローが押し黙る番だった。このような展開は全くの想定外だ。
「わ、私はいいのよ。私には担当トレーナーの愚痴を言う権利があるんだからっ!」
「へ〜〜一応聞いてみるけど、そりゃなんで? トレーナーさんはキングの所有物じゃないよね?」
「たとえ所有物だとしても、悪口が正当化されることは無いデェス。自分のペットを悪しざまに言うなんて聞いたことがないデェェス!」
「う、わ、私の愚痴は愛のある愚痴だから、そんじょそこらの愚痴とは違うのよ! 一緒にしないで!」
キングヘイローが愚痴風のろけを披露していることを知らぬものはいない。だからこそ誰もが微笑ましく話を聞いていられるのだ。
しかしそこに生じる隙をエルコンドルパサーとセイウンスカイは見逃さなかった。
626/06/06(土)22:03:04No.1437359535+
「愛のある愚痴、か。でもトレーナーさんはそれを聞いてどう思うかな?」
「どれほど言い繕っても言葉に棘があることに変わりないデェス。ちくちくとダメージが蓄積して疲弊していくんデスよ」
「私だったらいつか我慢の限界が来ちゃうな〜、トレーニングサボるだけじゃすまないかも」
「キングのトレーナー、陰で泣いてるかもしれないデスね」
「そんな……そんなはずは……」
キングヘイローは助けを求めるように他二人を見た。
グラスワンダーは口を真一文字にして目を閉じていた。スペシャルウィークは同情しているが声に出せない。
「まっ、いっか〜。私のトレーナーさんの話じゃないしね。にゃはは」
「そうデース! エルたちはストレートに愛を伝えるんデェス!」
726/06/06(土)22:03:28No.1437359708+
「私が……間違っていたというの……?」
「差し出がましいようですが、私からもひと言だけ」
グラスワンダーは重い口を開いた。
「言葉は言葉として伝わります。好意とはまた別に、意味そのままに直截的に取られてしまうこともあるでしょう」
衝突を示すかのように手を打ち合わせて、指と指を組み合わせた。
「なればこそ私たちは、その誤解を極力少なくするように適宜軌道修正をする必要があるのかもしれません。取り返しのつかない傷をつけてしまう前に」
「キングちゃん! キングちゃんの想いきっと気づいていると思うし、私たちも知ってるよ。だからそのまま伝えてあげたらいいんじゃないかな……?」
「スペさん……」
「それはそれとして」
グラスワンダーは隣のエルコンドルパサーの尻尾をぎゅっとつかんで引っ張った。
826/06/06(土)22:03:50No.1437359865+
「ぎゃわああああ! 痛い! グラス痛いデェェェス!!」
「エル、あなたはやりすぎです」
「なんでエルだけ! セイちゃんも! セイちゃんも乗ってきてたデェェス!」
「いや〜怖いね。くわばらくわばら」
一同笑いに包まれてその場は和気藹々とお流れになった。
キングヘイローはやや影のある顔で何かを考え込んでいるようだった。
926/06/06(土)22:04:12No.1437360054+
満月が夜空を鮮やかに照らしていた。東京タワーはその隣に見える。
橙色にライトアップされた絵画のような景色を眺めながら、トレーナーはひとりごちた。
「俺、浮いていないかな……」
パーティー会場に着いたはいいものの、目につくのは業界のお偉方ばかりでどうにも居心地が悪い。
ネクタイを直す。キングヘイローはなぜこんな公の場に自分を呼んできたのだろうか。
「しゃんとしなさいな。さ、行くわよ」
ドレス姿のキングヘイローに見とれている暇もなく、手を引かれて招待客への挨拶をすることになった。
大手アパレルブランドCEO兼化粧品会社アドバイザー。
衆議院議員。独立行政法人日本ウマ娘振興センター会長。
紅白出場歌手。ハリウッド俳優。都市銀行頭取。広告会社博電堂部長……。
1026/06/06(土)22:04:35No.1437360248+
「紹介します。この人が私のトレーナーです」
「はい。誠実でひたむきな信頼のおけるパートナーです」
「誰よりも人を思いやることのできる、私の大切な運命の人です」
どうしてしまったというのだろう。今夜のキングヘイローは一度も「へっぽこ」と口にしない。
しないどころかこちらが面映ゆくなるほどに持ち上げてくる。運命だなんて……。
「よろしくおねがいします! 若輩者ですが、これからもキングを支え続けます!」
トレーナーは胸中に熱くなるものを感じて張り切って名刺交換に挑んだ。
一連の流れが終わり人ごみも落ち着いてきたころ、キングヘイローに外に出るよう促された。
パーティー会場から漏れ出るざわめきが心地よく耳に響いてきた。
「あなた、素敵だったわ」
1126/06/06(土)22:05:05No.1437360486+
物言わぬ満月だけが二人の会話を聞いている。
「今夜だけは、今夜だけはあなたに権利をあげようと思ったの」
「何の……?」
「私の嘘偽りのない本音を受け止めることのできる権利を」
キングヘイローはトレーナーの腕時計を見た。チープな革ベルトに素っ気ない文字盤を乗せただけのどこにでもあるエントリーモデル。
一流の隣に立つ存在が身につけるものとしては全くふさわしくない。
だがキングヘイローはこの時ばかりは、この男の「至らなさ」を好ましく思った。
「好きよ」
腕時計が好きだと言ったつもりであった。深い意味は込めていないつもりだった。
「言葉は言葉として伝わります」
グラスワンダーの台詞が思い出される。
しかしもう私は誤解されることを恐れない。
1226/06/06(土)22:05:36No.1437360732そうだねx3
「カス! ゴミ! うすらトンカチ!」
「筋肉バカ! むっつりスケベ! ウドの大木!」
「朴念仁! 優男! クソボケ!」
自身の担当トレーナーを別の人から貶められるというプレイは一世を風靡した。
不思議なことに、普段からトレーナーに文句を言っているものや、そっけないポーズを取るものほど、他人からの悪口に対して敏感であった。
「違う! トレーナーを評価していいのは私だけ! みんなはダメ! 私だけ!」
「何でダメなんですか? あなただけのものじゃないですよね?」
「う……う〜〜〜〜〜。うう〜〜〜〜〜!!」
窮鼠身もだえる。キングヘイローは駆け込み寺となり、ウマ娘たちの相談役となった。
1326/06/06(土)22:06:06No.1437360992+
お前らセイウンハーデスって買う?
1426/06/06(土)22:09:02No.1437362258+
冷静になれば仮にも指導者を貴様呼びって酷いよな…
1526/06/06(土)22:31:55No.1437371902+
いいよね愚痴風ノロケ
そこからちゃんと真意を伝えてえらい
1626/06/06(土)22:40:09No.1437375712+
キングちゃんへっぽこ可愛い


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