彼女の生活はいつも規則正しい。 竜でありながら人に仕える、ドラゴンメイドを生業と定義し、主人と屋敷を守り続けてきた。そこには常に定めたルールを厳守する生真面目さがあった。 時間通りに起床し、メイド達を統括し、時に彼女達の失敗をフォローして、激務を済ませて時間内に床につく。次の朝も完璧な仕事をこなせるように。 だから、決まってこの時間のメイド長の私室は夜闇に閉ざされている。のだが、 「んっ…んぅ…はぁ…」 漏れ聞こえるのは、ドラゴンメイド・ハスキーの声。 日中は大人の女性らしい低い声色が特徴的なそれが、上ずったとも吐息ともつかない微かな響きを重ねている。 メイドの私室といえど、屋敷の格に沿うベッドがぎしりと鳴り、就寝中も滅多に崩れることのないシーツが細かな波を立てて折り曲げられている。 波の中心に寝そべるハスキーは、薄いベビードールのみを纏い、汗みずくの柔肌を外気に晒していた。 片方の手指が開け溢れた乳房を鷲掴みにして、長身に見合う長い脚を大きく広げ、もう片手がその中心で蠢く。 屋敷で最も厳格で完璧なメイドの、誰も足を踏み入れない部屋での自慰行為であった。 きっかけは主人の気紛れであった。メイドの1人のチェイムを別の男に差し出す…寝取らせ、という性嗜好。 元々ご主人様の旺盛な性欲は理解していたし、奉仕の中に性的なものも含まれる自分たちが彼のハーレムという自覚もあった。 しかしメイドを好き放題にできる環境に飽き、より強い刺激を求めたとしても、この趣向は如何なものか。 悪い予感はすぐに現実になった。その寝取らせた相手というのが、女と見れば見境なく犯し尽くすケダモノだったのだから。 主人は状況の深刻さに気づいていない、しかしチェイムだけでなくパルラも、そしてティルルも…明らかに毒牙にかけられ、心が離れていっているのが見てとれた…チェイムが寝取られるのを監視する悪趣味な画面に見えた、あの、怪物としか思えないほどの巨根に。 常に屋敷を監督する立場にあるハスキーは、滅多に私用で外出することは少ない。普段メイドの仕事に埋め尽くされている彼女のプライベートを侵害したくないのだろう、自然と他のメイド達からも詮索されることは無くなっていた。 それで良かった、と安堵を漏らす。足を運んだ先は魔法豊かな街の隅の路地に、隠れるように構えた店だった。ともすれば屋敷にも似た年季ある構えに、魔法の光が小気味良く飾られている。 扱う商品は質の良い魔道具と…性処理用具だ。 「……」 いつものメイド服のイメージから離して身元を特定されないように、しかし過度に目立たないように気を配った服装で、帽子の下の眼鏡が商品を物色する。 正直、叡智で知られる魔法使い族がこれほど性に奔放だったことにハスキーは驚きを隠せなかった。魔術を用いた日用品や多様な霊薬と並んで、さも当然のように淫猥な服装や玩具が陳列されている。彼女達に恥というものが無いのだろうか。 だが、優れた叡智の賜物だけあって性能は折り紙付き…それを彼女は体験済みであり、ここに来店することは既に二度や三度ではなかった。 「ご注文お決まりでしょうか?お客様?」 「ぅひっ!?」 それで顔を覚えられてしまうのは予想外で、素っ頓狂な悲鳴をあげてしまったが。 「今日はまた随分と迷われてるご様子ですからぁ…こちらからオススメのご紹介でも、と」 くすくすと笑う姿は鮮やかな水色の髪を揺らし、ハスキーとそう変わらない妙齢ながらもどこか妖しい色香を含みながら眼を細めた。初見の店員…いや、口ぶりからして普段表に出ていなかった店の主のようだった。 「あ、い、いえ私は…」 「メイドの仕事ともなれば欲求も溜まるというもの、僅かな時間にしっかり発散できないとお辛いでしょう?」 「えっ!?」 「だって、そんな立派な尻尾をしたドラゴン族で、あなたほど礼儀の良いお方はそういないですもの…」 童女のような悪戯っぽい笑みを前にぼっと顔面を熱くする。ロングスカートの下からでもわかるほど逞しい尻尾が仇になり、顔を知られるどころか身元まで割れてしまっていた。 「いえいえ、勿論お客様のプライバシーを侵しはしませんよぉ?ただ…最高の体験を提供するためのアンケート、が必要と思って…」 その声に寒気を感じるより早く、まとわりつく指の感触に今度こそ大きな悲鳴を出しそうになった。店主の細く冷たい指先が、服の上からハスキーの体を這うように撫ではじめた。 「ドラゴンは雌雄共に強さに惹かれるもの…お客様ほどの竜であれば雄など引く手数多ではないかしら?加えて今まさに"食べ頃"ともなれば…」 「…っやめてください…!私は…!」 「一人に想い焦がれるのは素敵だけれど…お相手はどう思ってるのかしらね?こんな上物を放置するだなんて、余裕が有り余っているの?それとも…」 唇を噛んで声を抑える、胸の根本や腰に触れる指先に力が籠り、ビリビリとした刺激が背中を走った。それが公共の場で漏らすべきでない感覚であることに気づき、慌てて全身に力を込める。 「さて、と。これまで購入されたようなオモチャじゃちょっと満足はできないでしょうね。何より、そんな不安に満ちた生き方不幸せだわ」 「一時の享楽でも…何もかも吹き飛ぶような思い切った逸品なら、きっとお楽しみいただけるわ。それが…」 荒く息を溢すハスキーを他所に、店主の女が指を店の一角に向ける。そこにあったモノの信じ難さに、眼鏡の奥の瞳を思わず見開いた。 柱、黒い柱。否、ヒトの腕よりも尚太い直径、下腹部から胴を貫かんばかりの長さで天井を突く…黒々と輝く男性器の張り型であった。 そして今、ハスキーの自室にそれがあった。暗がりの中でも黒光りが暴力的なシルエットを浮き立たせている。 ゴツゴツとした血管が浮き出た表面に、肉壁を抉る凶器のような高いカリ首。形は人間のそれを模っている…少なくとも巨獣の陰茎ではない。 が、明らかにスケール感が狂っている。いっそ男性器でなく男性の腕の間違いであってほしいほどに。こんなモノ挿入できるはずがない。無理に押し込めば膣が裂け骨盤が砕けかねない。 最も信じられないのが…この男性器にモデルがいる、という店主の説明だった。曰く店主自身が体験した忘れられない剛直を極力再現したのだと。 あり得ない、魔法使い族特有のジョークで下品な商品を買わされてしまっただけ、そう否定することは無限にできるはずだった。だけど、 「んちゅ…ぇれろ…ちゅ…」 指での自慰に火照った身体を寄せて、腕のような太い男根を抱き寄せながら、熱い舌を樹脂の表面に這わせる。熱に浮かされるように何度も、何度も異形の性器に肉厚の唇がキスの雨を降らせる。 その姿は長年叶わなかった恋人との逢瀬にも似ていた。 ハスキーと他のメイドとの年齢はさほど大きく開いていない。未成年と言ってよいラドリーは例外として、精々他のメイドより一回り大人といった程度だろう。 最も昔から現在の主人に使えると共に、彼を慕うパートナーでもあった。嘗ては愛を囁き合いながら、メイドと主人の恋という背徳感を愉しみもした。その想いは今も尚変わってなどいない。 だが、新たなメイドが雇われるほどに、ハスキーが主人の夜伽を担う回数は次第に少なくなっていった。無論、メイドを束ねる立場として多忙になったのが主な理由であるが、 曖昧な言葉に隠されても、男の下半身というのは正直だ。代わりに夜伽が増えていったのは、チェイムやパルラ、ティルルといったうら若いメイド達。 そして彼女達の態度がそっけないと見るやナサリーに、過度な夜伽への誘いを控えるという契約のあったラティスにまで言い寄って、挙句の果てにラドリーには無知に付け込んで性的な接触を繰り返している。 そんな精力旺盛で、見境のない主人が滅多に自分を相手に選ばなくなった理由を、ハスキー自身が良く理解していた。 大きくはあるが柔らかく揉み解されて、張りを失い重力に負けつつある乳房。その先端の突起はでっぷりと膨らみ、鮮やかなサーモンピンクから茶褐色へと色が濃くなり始めている。 ウエストは不断の努力で絞り切っているが、長い脚にはそれ以上に太腿から尻にかけてボリュームのある肉が纏わりついて、全体的に太ましいシルエットを形作る。 そして体質上濃く茂った恥毛の下にある彼女の秘所は肉厚の陰唇に覆われ、花弁の色は処女の赤みを失いつつあった。 それら全て、他のメイドにはない熟した女…孕み頃の雌の色香に満ちていたとしても、肝心の主人は若く瑞々しい雌ばかりに夢中であった。 メイドの長たる立場、その厳格さの奥底に秘めた焦燥、他の雌への嫉妬、雄を求める欲望…何もハスキーにとって耐え難む醜悪で淺ましい感情であったが、抑えきれないフラストレーションが、夜な夜なの一人遊びに手を染めさせた。一度入ったヒビから器が割れ壊れるように。 魔女に誘われ、竜は悪魔の玩具の虜になっていった。 「お゛っう゛おぉ…お゛っほ゛ぉ…」 今や取り繕う上っ面もない。唇を窄めて半ば白目を剥いた表情が、美しい顔立ちを台無しにしていることも厭わずに、肺の底から獣のような唸り声を漏らす。 魔法の力で固定されたディルドの上に大股を開いて跨り、深く生い茂る秘裂にぐっと亀頭を押し込んでいく。入るはずないと感じていたにも関わらず、付属のローションと実寸より僅かに先端を細くした匠の設計が挿入を容易なものとしていた。 だが、いくら入りが良くても長さを誤魔化す手段はない。 「うぉ゛っ!?お゛っあぁあ゛!深…ァ゛!」 辛うじてヒトの言葉を出そうとして、潰れたような音しか絞り出せない。ごりゅ、と今まで感じたことのない音と共に、張り型の先端が臓器の奥深くを抉る苦痛に身悶えしそうになる。 しゃがんだ姿勢のまま、滝のように噴き出した汗が部屋の匂いを占める。さながら拷問の様な光景であったが、ハスキーの竜としての頑強さは辛うじて意識を手放すことを避けた。 ゆっくりと、今度は剛直を引き抜こうとして脚に力を込める。 「〜〜〜〜〜っ!!!」 ぞりぞりぞりと張り出した首が膣の壁を擦り、その刺激が頭蓋にまで響いた。開かれた眼の端から涙が吹きこぼれ、噛み締めきれなかった涎を垂らして天井を仰ぐ。脚に力が入らず、むしろディルドは深く膣奥まで押し込まれる格好となった。 「っはっ゛、ぁお゛っ!おご…ほ…!」 痺れた脳が理性を溶かしていく。 締まりのない顔で視線を虚に揺らしながら、腰をへこへこと前後させて、膣内で暴れる性器に蹂躙される刺激に酔いしれていく。 浮かぶ汗からは雄を誘うフェロモンの香りが立ち込めて、ぼってりとしていた乳首も陰核もびんと張り詰めると、熟れた女の姿は雄に媚びながら精を甘え乞う準備が整い切っていた。 両の手で硬い乳首を抓り、挿入されたまま深く腰を下げてクリトリスをシーツに擦り付ける。激しさを増す自慰にベッドは大地震の様に軋んで、しわくちゃのシーツは様々な体液に塗れて使い物にならなくなっていた。 そして、十分に整ったという感覚を合図に、ばちゅんと一際大きな音が響いた。 「む゛ぉお゛ぉ゛おっ!!!お゛ぉお゛ん!!」 一匹の雌の叫び声が部屋を揺らす。年齢を重ねるほどに太くなった下半身。雌牛のように、いや壁のように分厚くみっしりとした密度の尻はあまりに大きく、主人の男性器では後ろから膣に届かせることが不可能なほどであった。 それを高く上げて、打ち下ろす。その度に激しい水音が響き、膣の奥底を突かれた衝撃がハスキーの脳をシェイクした。 一突きごとに壊れた蛇口のように潮を噴きながら、尻肉をぶるぶると波震わせる。舌もしまえないほど溶け崩れた表情を晒し、心が焼き切れそうなほどの快楽と多幸感がハスキーの腹の奥を埋め尽くしていった。 「いき、イク、イグ!!いく゛い゛っ゛おあ゛ぁあ゛!!!お゛ぉぉ゛…」 ベッドを割りそうなほど強く尻を叩きつけて、剛直が膣をぶち抜くと、激しく全身を震わせながらこれまでにない深い絶頂に襲われた。最早抗う術もなく、意識まで途切れたハスキーがうつ伏せに倒れると、その勢いでぢゅぽんとディルドが抜けて高く尻を上げる格好だけが残された。 「ほ…ほへ…ぇ…ほぉ…」 白目を剥き、舌をシーツに垂らした彼女の意識は回復せず、弛緩した体がぶるりと震えると、生暖かく濃い黄色の液体がぴゅ、ぴゅっと溢れ出した。 平時の彼女であれば絶望に等しい失禁も、今は止めるものはない。それは自分の所有を主張するマーキングのように臭いが強く、ディルドに降りかかって湯気と共にむわと部屋中に臭気を漂わせた。 …だが、その男根は逃げることはないが、そこにあるだけの偽物にすぎない。抑えきれない情欲をぶつけられるだけの代替物は、女の存在を必要としないし、快楽以外の、精を与えることもない。 くたくたに犯され抜いたはずの胎が疼く。まだ足りない、本物が欲しくてたまらないと。この奥に精を届けて…雌としての本懐に、子を孕ませてくれる強い雄を。 彼女はまだ得ることができない。