二次元裏@ふたば

画像ファイル名:1777390064482.jpg-(29540 B)
29540 B26/04/29(水)00:27:44No.1424811321そうだねx3 03:09頃消えます
耳、首、腕、指。一つ一つ、身体からテーブルの上へ並べていく。
毎度のことながら、撮影の時は外すのだから身に着けてこなければよいのに。
黙ってその様子を見つめていたら、不意に視線がぶつかった。
澄ました顔の海鈴は気まずさを表すこと無く、じっと私を見つめ返す。

「なにか?」
「…相変わらず、沢山着けてますわね」
「シルバーのことですか」

テーブルの上、きらびやかに輝くシルバーアクセサリー。
単なる鎖のようなものからドクロを模したものや抽象的なものまで、様々な形。
こうして並べられるとシルバーであること以外、統一感はあまり無いように感じられる。

「興味津々ですね」
「別にそういうわけでは…」
126/04/29(水)00:27:56No.1424811379+
海鈴に指摘されるほど、じっと見てしまっていたなんてきまりが悪い。
ただまとまりが無いなと眺めていただけなのに。
海鈴はふむ、と頷いた。

「私も最初は慣れなくて、恥ずかしさを覚えたものです」

懐かしむように海鈴は微笑んだ。そんな時期もありましたね、と言うように。
一つ取って、指先で弄ぶ。指輪は角度を変える度、室内の明かりに照らされてキラキラと意味もなく煌めく。
それを眺める海鈴の横顔から、ただ本当にシルバーが好きなのだということが伝わってきた。
着けることも外すことも厭わないほどに。

「初めて買ったのは指輪でした。ベーシストは爪を着飾れないので」
「それで指輪を?」
「ええ。ふとした瞬間に手元で輝くのがとても嬉しかったのを覚えています」
226/04/29(水)00:28:33No.1424811568+
思い浮かんだのは、指に嵌めた指輪をじっと見つめる今と変わらぬ仏頂面…澄ました顔。
彼女なりに着飾ることを楽しんできた過去。そこから自分なりに好きなものを見つけ、集め、きっと今の彼女がある。

──私は海鈴のこと、全然知らないですわね。

運命を預かっているのに。
預かっているからこそ、私は知る必要があるのか判断を決めかねている。
これは契約で、絆などという温かくて幻想的な関係ではないから。
普通のバンドのような馴れ合いは必要ないと、置き去りにしてきたから。
青々と煌めいていたよすがは、自ずから手を放してしまったから。
弱さはすべてこの身から外してきた。隠して、覆った。
全ては、最後に残ったこの箱庭を守るために。

「着けてみますか?」
326/04/29(水)00:28:52No.1424811648+
私が押し黙っていたのをどう受け取ったのか、海鈴はそっと私の右手を手に取った。
彼女が弄んでいた指輪を、有無を言わさずそのまま私の指にするりと通す。
それは少しだけ緩くて、指の付け根まで滑り落ちるようにして嵌った。

「おや、豊川さんは指が細いですね」

装飾のない指輪は、天井の照明にあたってひときわ煌めいた。
さっきまで海鈴が身につけていたものだからだろう、冷たくはなかった。少しだけ温かさを感じる。
シンプルながら幅広で少し厳ついデザイン。まじまじと見るほどに私には不釣り合いで、奇妙とすら思えた。
中指に嵌ったそれは、この指の頼りなさを見せつけてくるようで…

「私には主張が強すぎますわ」
「お似合いですよ」
「海鈴、おべっかは使い所をよく考えなさい」
「……嘘じゃないです」
426/04/29(水)00:29:18No.1424811765+
わずかにむすっとした顔の海鈴は私の手を、指輪をした右手を指さした。

「豊川さんは指輪を嵌めた指によって意味があるのはご存知ですか」
「いいえ──ああ、左手薬指のような?」
「そうです。隣の小指なら出会いや願い…チャンスを引き寄せるため。逆に右手の小指は自身の魅力が増すように、といった具合です」
「そう……では、ここは?」

海鈴がどうしてこの場所を選んだのか気になった。
ただなんとなく選んだにしては、中指というのは妙だとは思っていたけれど。
緩さがどうにも落ち着かなくて、私はそっと指輪を外した。途端に、外したあとの指の涼しさと軽さが気になってもどかしい。

「右手の中指には二つほどあります。意思や行動力を強めるため。もうひとつの意味は豊川さんには必要ないかも知れませんが」
「海鈴、そこまで言うなら勿体ぶらないで」

海鈴はにやりと笑った。まるでいたずらを披露するかのような、無邪気な笑み。先程の意趣返しなのか、それともただのじゃれ合いなのか、私には分からなかった。
526/04/29(水)00:29:42No.1424811883そうだねx1
「邪気払い、です。神には必要ないかと」
「…確かに。私には必要ありませんわね」

外した指輪を海鈴に手渡す。やはりこれは、私には似合わない。
邪気などと、その程度のものに惑わされるようでは、今立っていることすら敵わないだろうから。

「ですが。もし入り用ならその時は仰ってください。とびきりの捧げ物を用意しますので」
「期待していますわよ。そんな時がくれば、ですけど」
「信用してください。必ず応えてみせます」

交差する視線。そこには一匙の和やかさなど無い。
今も後も、これでいい。求めているのは、求められているのは、普通のバンドなどではないのだから。
指先を通り抜けていった温かさなど、私には要らない。
626/04/29(水)00:46:03No.1424816546そうだねx3
これは信用できる怪文書ですね
726/04/29(水)00:46:46No.1424816743そうだねx4
>耳、首、腕、指。一つ一つ、身体からテーブルの上へ並べていく。
この部分だけ読んで猟奇物かと思った
826/04/29(水)01:23:45No.1424826808+
>この部分だけ読んで猟奇物かと思った
最盛期には白昼夢のようなオチ無しのマジ怪文書まであったからなぁ…
ちょっと思い出しちゃったよ
926/04/29(水)01:33:52No.1424828683+
そんなのあったんだ…
1026/04/29(水)02:43:35No.1424836949そうだねx1
うみさきありがてえ
1126/04/29(水)02:49:55No.1424837391+
海鈴のシルバーちょっと気になりますね…うおっゴツすぎ…あー気が向いたら挑戦してみますわね〜
1226/04/29(水)02:56:46No.1424837927+
この細いゴッドフィンガーにはスマホを奪われないパワーがある


1777390064482.jpg