マメイジー・ミチには派手な功績がない。 世界を股にかけて大冒険したわけでもないし、大海原を超えて数多の伝説を打ち立てたわけでもないし、 未踏の最難関ダンジョンを攻略したわけでもないし、新たなダンジョンを掘り当てたわけでもないし、 未知の言語を解読し続けたわけでもないし、人類の食糧事情を大幅に改善する品種を発見したわけでもないし、 古代文明の謎を解き、アーティファクトや情報を持ち帰ったわけでも事件を解決したわけでもないし、 神の国へ冒険に行ったわけでもないし、巨悪を討ち取って町をひとつ救ったわけでもないし、 恐怖の象徴して民からすら恐れられながらもその力を人のためにのみ使い続けたわけでもない。 ただただ毎日地道に依頼をこなし。毎日ギルド職員や出会う人に挨拶をして。ギルドのトイレなどの掃除を欠かさず。 ギルドからの招集にはギルドで受注した依頼の遂行中以外の全てを優先して必ず応じ、 依頼中やダンジョンの攻略中にイレギュラーがあれば自分達だけで解決しようとせず、状況を撮影し、 時には土や植物などのサンプルも採取し、どのような状況でどのようなイレギュラーが起きたかを簡潔に記し、 依頼を達成した場合も調書は律儀にきちんと書いて、ギルドに報告して待機した。 そして効率が悪い依頼や割に合わない依頼も率先して受け、 栄養補給の魔法、睡眠効率60倍の魔法、ストレス緩和の魔法、簡易トイレの魔法を開発することで時間を捻出し、 より多くの依頼を受注し、解決した。ただそれだけである。 ただそれだけの地道な活動により彼女はギルドからの最高の信用を獲得し、S級になった。 ゆえに彼女は知っている。派手な結果を出さなくても毎日地道にコツコツ頑張れば誰でもS級になれると。 冒険者の日々の頑張りを、ギルドはきちんと見てくれていると。 「だから大丈夫。あなたの頑張りは無駄になんかなりません。日々の頑張りはあなたの血肉になりますし、 世界を少しずつでも確実に良くします。それを積み重ねればいつかきっとS級冒険者にも届きますよ」 なれるかな、自分もネーサ・マオさんみたいなS級冒険者に…。新米冒険者はマメイジーの言葉に希望を抱くのだった。 目の前の彼女もまたS級冒険者であることにはついぞ気付かなかったけれど。 そのオーラのなさもまたマメイジーの魅力なのかもしれない。