遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん、遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ。 ふふっ…どうしたんあなたさん?…え?"今日のジュダさんはとても嬉しそうに飲んでる"?そう?いつもと変わらへん表情だと思うけど?……全然違う?今日の笑みは本当に嬉しそうな笑い顔…。 …ふふ、お上手やわあ…。ほな、何か原因があなたさんはわかる? ホワイトデー。うん、正解。そりゃそうやわぁ。今日の日付を見れば誰でもわかるわなあ。 …本命チョコ?いんや、残念なことに不正解。でも、惚れた腫れたよりももっと価値のあるチョコやこれは。 …聞きたい。うーん…よしっ、今日は機嫌がええさかい、特別に話したるわ。マスター!おちょこ一つ追加お願いします! この菓子、クリストはんから貰ったんよ。………ちゃうちゃう、本命チョコってそう勘ぐるのはあかんやろ!それにクリストはんはイザベラはんとホワイトデーのお返しで甘々な空気になっとるはずや。ほんでウチはそれを想像しながら肴にしてお酒を…ってこの話はもうええやろ、話し戻すで。 この菓子クリストはんがくれたもんなんやけどな?ほら、紙袋のここに花が手書きで描かれてるやろ?これ、クリストはんが自分で書いてくれはったんや。ほんま器用な方やわぁ。……ん?これ純粋に褒めてるんやで?皮肉とか嫌味と捉えられたら敵わんわあ。 …とにかく、この花なんやと思う?これはな…ネコヤナギや! にゃんにゃんって…クスッほんま面白い人やわぁ。ネコヤナギには「努力が報われる」という意味が込められてるんや。恐らくクリストはんもこの意味を知っとったんやろなあ。 …ウチがイザベラはんたちのPTに加わったのは三番目や。たまたま二人が戦闘中の場にウチが出会わして、二人に加勢したんやけど、なんちゅうか、絵になるってのはあの二人のことを言うんやろなあ…。惚れ惚れするような連携やったのを覚えとる。 イザベラはんの戦い方は予想つくやろ?そう、魔法攻撃や。まるで四方が見えてるかのように魔物に的確に、それも各魔物の弱点と思われる要素の属性の魔法を当てて屠っていくイザベラはんはそら凄かったわぁ。漆黒の勇者イザベラ、と異名もつくのもわかるわ。 そしてそれを支えるクリストはんがな?イザベラはんの前に陣取って大楯を構えながら支援魔法や防御魔法をその状況に応じて的確に発動して、あれは鳥肌たったわ。考えてみい。イザベラはんは武器を持たへんさかい接近戦に持ち込まれるとちいと厄介なことになる。当然魔族たちもそれ考えるわけやから四方から囲んでイザベラはんを叩こうとする。でもできない。なぜならクリストはんがいるから。 クリストはんの大盾と防御魔法で脅威を大幅に削減されたことで、イザベラはんは護りを気にせんと攻撃に専念できる。その間もクリストはんは結界、魔法壁、支援魔法とどんどん自身とイザベラはんを強化するもんやから、その行き着く先はなんやと思う? …要塞や。クリストが城壁。イザベラはんが大砲。世間にお強い人はぎょうさんいはるけど、もし、タッグトーナメントが開催されたら最強はあの二人や。断言してええ。 …話が逸れたなぁ。ふふっすいまへん。ええっと…おお、そうや。 イザベラはんは、見た目でだいぶ損してはったお人やけどな、あん人の目はほんまに綺麗で、うち、一目で魅入られたんよ。気づいたら、ウチ、自分を売り込んどった。そしたらな、クリストはんがイザベラはんの半歩後ろに立ってな、大楯と槍は仕舞ってたけど、あれさりげない風やけどもしウチが変な気出したら直ぐにイザベラはんの前に立って肉盾になる覚悟がありありやったで。それがまた、物語になりそうなお姫様と騎士様って感じでなあ!ウチ、またまた目を奪われてもうたわけや!(クリストはんには不審がられとったけど…) …はあ。”イザベラはんがお姫様なイメージがない”と……ふーん。……随分と面白い目をしてはるんやなあ、あんたは、君もイザベラはんに誤解してる一人みたいやな。 あん人はな。とっても可愛い人やで。誤解されやすいし、不器用なお人やけど。でもあの人の目は何時も優しい。弱者や無力な、虐げられ、真っ先に被害を受ける者たちの常に味方や。例え無償でも、助けた人たちに誤解されても、その土地の人たちに受け入れらえなくても、あの人は助けることを諦めない。そんなお方や。 ……きっと、とても、とてもウチには言えんような辛い思い仰山しながら今日まで活動してきたんやろなあ、じゃないとあの慈しみと悲しみの混ざったような目はできへん。あれは、地獄を味わってきた人でないとできひん目や。あの目を思い出すとウチはきゅっと胸が詰まりそうになる。 同行をウチが願い出た時、当初クリストはんは逡巡する様子を見せた。多分、ウチを信用していいのか判断しかねたんやろうな。でも、イザベラはんは違った。 『クリスト、ジュダは信じられる人だよ。きっと』 …有難かったわあ…。この大陸に着いて初めてや。自分の言動を信じて貰えたの。『よろしく』、と笑うてウチに手を差し伸べる時のイザベラはんの顔、今でも鮮明に覚えとる。その時、他の誰にどない理解されずともこの人に信じてもらえるねやったら何も怖くなんてあらへん。うちにとっての勇者はこのお方や。心底そう思ったんよ。 ヴリッグズはんもそうやった。戸惑うウチとクリストはんに『ヴリッグズは信用できるよ』って真っ先に迎え入れた。ほんま凄いお人やわ。 ……”クリストはんはが人格があまり優れた人ではないように見える”………。ぷっ、ふふっ!あははっ……あんまり面白いこと言うもんでつい吹き出してしまいましたわあ。ほんま面白くて面白くて… つい鞘から刀を抜いてしまいそうや。 ん?どうしたんそんなに顔青くして。まあウチの話を聞いといてや。 そうやなあ…そら初対面で信用を勝ち取れたらそら言うことなしや。でもな…、信用をコツコツと積み上げ、仲間として心から認めてもらえる喜びもまた格別や!特に、ウチのように誤解されやすい人間にとっては。嬉しかったなあ。仲間として加わって、共に戦って、人助けしてく中で日に日にクリストはんの様子からウチへの信頼が増しているのが感じられて、ついつい可愛くなって、イザベラはん絡みで揶揄っちゃってそしたら顔赤うするのんがまたかいらしおして! ……前のPTに所属してた時は終ぞ味わえなかった感覚やったなあ。クリストはんはいるだけで周りに安心感を与える。そんなみんなのおかんのようなお人や。それに、真面目で、誠実で、とてもええ殿方で。……うちにもああいうナイトがおったらあの結末は変えられたんやろうなあ…。 ああ!しんみりさせてもうたな!すいまへん。クリストはんの功績は戦闘だけやあらへん。家事炊事も主婦顔負けだし、何より、うちらのPTが宿から宿泊拒否されることがなくなった。ほら、イザベラはんもヴリッグズはんもウチも、何かと勘違いされやすい雰囲気やから、立ち寄った集落や町への挨拶回りや宿のチェックインはクリストはんの役目。もしクリストはんがいなかったら、たぶんうちら三人そろって野宿のスペシャリストになってたわあ。フフッ。 『僕を信用できるのに僕の大切な仲間を信じられない理由を教えてもらいましょうか!』 中々ウチたちへの悪印象を解こうとせえへん人へ、クリストはんが放ったあの啖呵には痺れたわあ、ほんま、ええお人やクリストはんは。 え?”二人の人柄はわかったけどジュダさんのチョコの件はどうなった”って……あああ!そうやったわすいまへん! あん二人、どう見ても両片思いやろ?"え、そう?"って……はぁぁぁ…ここにも鈍感さんが一人おったっちゅうわけか…。 まあええ、兎に角、あの二人、特にイザベラはんの方は明らかに好き好きオーラがクリストはんに出まくっとった。人間の色事に弱いヴリッグズはんが『イザベラの姉さんは旦那に求愛行動してんですかい?』とド直球で聞きに来るぐらいには。 この歌知っとる? 玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば  忍ぶることの よわりもぞする まんまこれや。わからんへん?そっ。 ウチもそれはもうやきしたもんや。せやかてイザベラはんったら、『私とクリストは大切な仲間というだけの関係だから』って言い張って…でも、クリストはんを見るときのあん人の目見たらただの仲間では収まらへん感情を抱いていることは一目瞭然やった。クリストはんに回復魔法をかけて貰ってる時の朱色に染まった顔、クリストはんに女子が近づいた時とかわかりやすう狼狽えるし、以前チカイナ・ディスタンスちゅう子がクリストはんに急接近したときなんてイザベラはんの体から若干魔力が漏れ出しててあんときは焦ったわ! …そんなに好きなのに、イザベラはんは中々自分の好意を認めようとしいひんかった。まるで自分はクリストはんに恋する資格はないちゅうように。……そないなあほなことあるか。イザベラはんが世間のためにどんだけ頑張ってきた思っとるんや!もしイザベラはんが恋したあかんなら、そんなん世界間違うとるんや!その思いで何度も何度も説き伏せた。イザベラはんが化粧について相談してきたときは嬉しかったなあ…。 次はクリストはんの方やけど、まー、これがまた難関の要塞でな。クリストはんの自己評価の低さはいったいどこからくるんや…。まあサーヴァインはんやイザベルはんら周りの人の様子見ると薄々察せられるけど……。ん?ふふっ今のはこっちの話や…。 クリストはんの難儀な所は聖都出身の聖騎士って面やった。とにかく色事への抵抗感強おしてな。聖騎士たるものが惚れた腫れたにうつつを…て中々自分の想いを認めるのに時間がかかったんや。……おかしい思わへんか?男女が好き合うなんて生き物の最も原始的な欲求やろ?なんでそれ戒めなあかんのや。ウチはそう言ってやったんや!クリストはんに! 『僕はイザベラ様の隣に立つ資格はない』って…それを決めるのはイザベラはんや!それとウチ!え?ウチは関係ない?アホ!ウチはイザベラはんのお姉ちゃん分やから関係あんの!ほんまにぶきっちょで、生真面目で、損な性格で、可愛いお人やわぁ…。 そこからウチの出番や!まあ色々二人の背中押したり励ましたりして。とうとうバレンタインでイザベラはんがチョコを渡せたんや!そん時の幸せそうな二人の空気、今思い出しても顔がにやけてしまうわ~。で、これがクリストはんからのウチへの感謝の気持ちってことや!ほんま律儀なお人やわぁ…。 ん?ああもうこんな時間!?すいまへんこないな長話になってしまって! あ、それと。このお話他人に話したらあかんよ。もし漏らしたら…ふふふ、わかっとるね? ん?そんな青い顔せんでええよ。ただ"よーくお話させてもらう"だけやから…ふふっ。 **************************************** 「フフ…」  ジュダは酔いで赤く染めた頬に手を当てながら軽い足取りで酒場から宿に帰っていく。夕方時の風がアルコールで火照った体に妙に心地いい。手にあるお返しのクッキーを見ると、自然とジュダの顔に笑みが浮かんでくる。 「僕が今こうしていられるのもジュダさんのお陰です」  正面から目を見据えて述べるクリストの礼に、ジュダの方が恐縮したものを覚える。 「うちなんか全然大したことしてへんよ」 「そんなことありません!あの時の言葉がどれだけ僕の心に響いたか…」  かつてクリストはPTを離脱しようとしたことがあった。己への過剰な賞賛、対照的に矮小化されるPTの仲間たちの功績。いくらクリストが訴えても奥ゆかしく控えめな人柄とまた評判が高まるばかり。ついには本物の勇者であるイザベラを差し置いて勇者と呼ばれる始末。  思い詰めたクリストは謝罪と、自分の罪をしたためた長文の書置きを残してPTを離脱しようとした。 『どうしようジュダ…ヴリッグズ…』  イザベラの狼狽え方はそれは酷いものだった。書置きを見て青ざめたイザベラはそのままズルズルとしゃがみ込み、頭を抱えて蹲った。ジュダも、ヴリッグズもこんなイザベラの姿はを見たのは初めてだった。それほどまでにイザベラの中でクリストの存在が大きなものとして育っていた。 『───大丈夫やイザベラはん?』 『ジュダァ…』  ジュダは自身の動揺を抑え、笑みを作ってなるべく平常な声色でイザベラに語り掛ける。彼女の声に縋るかのようにイザベラが涙に濡れた顔を上げる。その姿は数多くの人を救ってきた勇者ではなく──ただの、打ちひしがれる一人の女性の姿だった。  ジュダはイザベラをそっと抱きしめる。嗚咽を漏らすイザベラの背を優しく叩きながらイザベラの心を安心させるべくジュダは語り掛ける。 『クリストはんはなんか不満があって抜けたわけやあらへん。己許せへんくなって抜けただけや。よーく話したらまた戻ってきてくれるはずや』 『そうですぜイザベラの姐さん!』  ヴリッグズもジュダの言葉に賛同する。 『俺たちは四人で一つのPT!旦那が抜けるなんて耐えられねえぜ!』  ゴブリンゆえの真っ正直な言葉。だがその言葉にイザベラも、ジュダも深く頷く。ジュダがイザベラから離れるとイザベラは目をこすり立ち上がった。その時には彼女は平時の姿に戻っていた。 『うん、私はクリストを絶対に連れ戻したい。……二人は協力してくれる?』 『『勿論!』』 『クリストを探してるんだってな』  手分けしてクリストの捜索に当たっているジュダの所に魔術師マーリンがひょこッと現れた。ジュダが訝し気に眉を顰めるも、気にせずマーリンは勝手に喋りだす。 『ここから山道に、そうだな…、お前の足なら30分ほど駆けた所に寂れた教会がある。騙されたと思って行ってみな』  喋り終えると背を向けるマーリンに慌ててジュダが呼び止める。 『マーリンはんどないしてウチに協力を──』 『別にてめえのためにやってんじゃねえよ』  背を向けたままマーリンが応える。 『ただ、夢遊病者のようなアイツの面を思い返すだけで反吐が出そうになってな、そんなアイツの思惑なんざぶっ壊してやりたくなっただけだ』  それだけ語ると、マーリンは透明化してジュダの前から姿を消した。 『見つけたでクリストはん』 『ジュダ、さん…』  教会の中にクリストはいた。寂れた祭壇の前に膝をつき、一心不乱に祈りを捧げる彼の姿がジュダには痛ましいものに思えた。 ゆっくりと聖堂を歩くジュダの足音が、無人の教会に響き渡る。観念したのかクリストは無言で立ち上がると、ジュダの方に振り向く。その憔悴しきった顔にジュダの顔が歪んだ。  クリストの整った金髪はぼさぼさの状態のままになっており、心労からか頬は痩せこけ、顔は蒼白となっている。なにより澱んだような彼の目をジュダは初めて見た。 『帰るで、皆心配しとる』 『僕は、帰れない』  緩慢な動きで首を横に振るクリストの側に歩み寄ると、彼の腕を掴む。びくっと体を震わせるクリストの頬に、ジュダはそっともう片方の手を当てた。 『こんなに一人で自分を追い込んで…』 『こんなの、イザベラ様たちの苦労に比べれば』  礼拝堂の椅子にクリストを座らせると、ジュダも隣に腰を降ろす。 『書置き見たで、ウチらといるのがそないに辛かった?』 『貴方たちが悪いのではありません!』 『ただ、耐えられなくなってしまったのです。イザベラ様への、ジュダさんやヴリッグズへの誤解や偏見、誤解をいくら正そうとしても如何ともしがたい無力感。そして──』  クリストは顔を手で抑える。 『その偏見の最大の受益者が自分であることに!……三人の功績をかすめ取り名を挙げ勇者とまで呼ばれる己はなんだ!…まるで、詐欺師だ!』 『…だから、去ろうとしたんやな』 『それだけじゃない、僕は最初、ジュダさん、貴女を信用しきれなかった。見た目の印象に引きずられ、貴女の内面…優しさ、正義感に気づくことができなかった…。イザベラ様と違って。……ヴリッグズの時もそうだ。ゴブリンということに囚われて第一印象を誤った…。僕は…貴女たちの隣にいる資格はない…!』  まるで懺悔のようなクリストの独白が終わると、長い、長い沈黙が場を支配した。はあ、とジュダはため息を吐く。今まで非の打ち所がない騎士だと思っていた彼の、まるで別な一面にジュダは内心驚いていた。  なんとも不器用で、繊細で、生真面目で── (優しすぎるお人やなあ)  というか、彼は気づく余裕などなかったろうが、優しさとか正義感とか随分照れるようなことを言ってくれたもんだ。こんな時なのについジュダの頬がにやけてしまいそうになる。  今までの仲間にジュダの内心を知ろうとしたものは一人もいなかった。あくまで彼女の風貌のみで判断し、内面を理解せず、しようともせず、疑いの目を持ったまま彼女を遠ざけ、忠言に耳を貸さず、死に、或いは彼女を糾弾した。  この人を逃がしてはならない。イザベラのため、ヴリッグズのため、そして自分のために、ジュダは改めて決意を固める。 『あんな?今までイザベラはんやヴリッグズはんが一度でもクリストはんに自分の扱いに不満を言うたことがあった?』  戸惑いながらクリストは首を横に振る。だが、それは彼女たちが優しく自分の立場を慮ったからではないか?そんなクリストの内心を見透かしたようにジュダは言葉を重ねる。 『ないやろ?それはクリストはんがウチらの自慢やったからや』 『ええ!?』  目を見開いて驚くクリストに内心ジュダは苦笑いする。どんだけ自己評価が低いのだこの人は。 『クリストはんがいてくれたお陰で、ウチらは暖かい宿に泊まることができた。新しい集落に着けばお偉いさん周りを率先してくれたお陰でトラブルをグンと減らすことができた。武器屋や道具屋への買い物も、クリストはんがいてくれへんかったら難儀したやろなあ』 『当然のことを、したまでですが』 『ウチらの中ではクリストはんにしかできへんことやこれは』  ジュダは立ち上がるとクリストの前に回りしゃがみ込み、クリストと視線を合わせた。 『クリストはんがおらんでもウチ等は旅を続ける。誤解されても、怖がられて宿を借りれず、野宿になっても、きっと』 「そんなウチ等をどう思う」と目で問いかけると、クリストは強く頭を横に振った。 『想像するだけではらわたが千切れそうです』 『あんがとな。それに…』  ジュダが手を伸ばしクリストの背負っている大楯に触れる。そして息を深く吸うと大声で叫んだ。 『イザベラはんの盾はこの世にクリストはんただ一人や!たとえ世界が違うと言ってもウチは他の盾なんて認めへんで!!』 『有難うございますジュダさん。……イザベラ様の所に案内してもらえますか?』 『ふふ、手間賃は今回特別にサービスさせてもらいます』  ジュダはベンチに腰を降ろすと、紙袋をしげしげと眺める。何やら逡巡したような素振りを見せるが、意を決すると紙袋を開ける。中に手作りと思われるクッキーが入っていた。 「ほんま器用なお人やなあ……ん?」  一枚食べようと手を伸ばしかけた所で中に一枚のメモが入っていることにジュダが気づく、取り出して月の光を頼りに読み上げる彼女の頬がみるみるうちに火照っていった。 "私、聖盾のクリストは、二度と己の心の弱さに負けないよう強きパラディンに至れるよう努力を重ねることを             漆黒の勇者イザベラを護る忠実な盾で在り続けることを            神速のジュダと石剣のヴリッグズを護り抜く堅き盾で在り続けることを、神の神の聖名にかけてここに誓います"  ジュダはメモを胸にぎゅっと押し当てる。鏡を見なくてもジュダにはわかっていた。今、己はすごい頬が緩んでしまっていることを。 「クリストはん、ほんまかっこええわあ…」  大切にメモをポケットに仕舞うと、改めてジュダはクッキーを一枚手に取り、口に運ぶ。 「美味し!」  じっくり時間をかけてクッキーを一枚食べ終えると、紙袋の口を閉め、ジュダは立ち上がる。そして足取り軽く彼女の大切な仲間のいる宿へ駆けていった、