二次元裏@ふたば

画像ファイル名:1772719471776.png-(646543 B)
646543 B26/03/05(木)23:04:31No.1408039202そうだねx2 00:52頃消えます
 ノックの音で目を覚ましたのか、目を覚ました時に丁度ノックの音がしたのか。その辺りは曖昧だが、とにかく私はいささか不本意な形で目を覚ました。
「失礼します……あっと、今大丈夫ですか」
「ああ」
 ガチャリと情けない音を立ててドアが開くと、情けない顔をした男が情けない声で情けない謝罪を口にしながら頭を下げた。
「すみません……っ、大変お待たせしてます」
 まだ満足に開かない目を壁に流して時計を見ると、聞いていた撮影の開始時刻はもう30分も過ぎていた。
 ――今日はネガティヴハッピィのアヤセではなく、モデルの伊東絢世としてのピンの仕事だ。仕事。労働。この私が。頭の中で反芻するたびに毎度新鮮な驚きに包まれる。いつまで経っても慣れる気がしない。
126/03/05(木)23:04:54No.1408039316+
 実際働いている気がしない。メイクも衣装も人任せで私は突っ立っているだけで、カメラマンが指示を飛ばしてきても全て無視して突っ立っている。それでも良いという仕事だけ受けろと伝えたら、それでも良いという仕事が結構なペースで持ち込まれてくるらしい。
 全く愚かしいことだ。こういう異常なことを言ってみせると、それを特別な拘り、カリスマと勘違いした輩が勝手に私のバリューを高めてくれる。私はただ何もしたくないだけなのに、だ。勿論、誰にでも出来ることではない。この私の持つ本物の美貌があったればこそ通用するプロデュース方針ではあるのだが。
「前の撮影がだいぶ押しているようで……あと30分か、悪くすると一時間はかかるかもと」
「別に良い。寝て待つ」
 ここはいつもの事務所じゃない。撮影所の控室だ。だが、問題はない。
 慣れない場所でも、机と椅子があれば突っ伏して寝るのは容易い。
「あの……ジュハさんは?」
「ア、ハイ? ワタシ?」
 ところで今日はピンの仕事ではあったが、研修生のユン ジュハも付いて来ていた。
226/03/05(木)23:05:22No.1408039459+
「勉強のために、アヤセさんの仕事ぶりを見学させてきてくれ、と……小泉さんからお預かりさせていただいてるのに、ずっと待ち時間で。申し訳ありません」
「ア、イヤ、大丈夫。全然」
 特有のイントネーションであっけらかんと応じるジュハ。慣れないうちは気を遣って言っているのか、本当に何も気にしていないのか、判別を付けるのは難しいだろう。
「アヤセさんは、その……独特、な仕事のスタイルなので参考になるかはわかりませんが」
 独特、とは私の怠惰のオブラートとしては凡庸な表現だ。
「ジュハさんならもちろん、モデルの仕事もバッチリだとは思うんですが。得意な歌やダンスを活かすなら、セナさんの仕事のほうが見学のしがいもあるかな、とはこちらも言ったんですがタイミングが……」
「フッ」
「フフッ」
「えっ。なんで今、鼻で笑われたんですか?」
「エ、笑てナイ」
「凡愚」
「は?」
 小泉がジュハの歌やダンスが雰囲気だけだと見抜いて私をあてがったのか、何も気付いていないがただタイミングという幸運だけで私とマッチしたのかは知らないが、いずれにせよこの結果を引き当てたのは流石小泉というべきだろう。
326/03/05(木)23:05:46No.1408039575+
 こっちのマネージャーは全然駄目だ。何も見抜けていない。
「ん、んんっ。えっと……まぁ、せっかく時間も空いてしまったので。ここはお互いの交流を深める機会と思って頂ければ。
 待っている間、なにかお話はされましたか?」
「何も」
「何もっ?」
 何故か動揺するウチの凡愚。
「アイサツはシタ」
「ああ、挨拶はしたな」
「挨拶……だけ、ですか?」
「あとはずっと寝てた」
「ハイ、アヤセさんはズット寝てタ」
「ええぇ……」
 当然という顔をした我々二人に対して、どうして無関係なお前が頭を抱える。
426/03/05(木)23:06:08No.1408039681+
「アヤセさんっ、ちょっと……」
「なんだよ」
 立ってこっちに来い、とやっても私が動かないことは流石にコイツも分かっているようで、自分からノコノコやってきて私の前に膝をつく。そのまま頭を垂れれば愛嬌もあるのだが、生意気にも小声で何やら諫言してきた。
「アヤセさん……ジュハさんの気持ちにもなってくださいよ。先輩と二人きりの部屋に押し込まれて、相手がずっと寝てたら気まずいじゃないですか」
「そんなタマじゃないだろコイツは」
「韓国から海を渡って一人異国の地で頑張ってるんですよ。優しくしないと……」
「ハァァァァァァァ…………」
 思わず、おもいっきり大きなため息が漏れてしまった。
「いいか、お前は何も分かっていない」
 コイツの小声に付き合う必要はない。隣のジュハにも聞こえるように、ハッキリと声をそこそこ大にして教え諭してやる。
526/03/05(木)23:06:29No.1408039784+
「そもそも。他人と居る時にその場の誰かと会話をしていないと間が持たない……そういった甘えた感覚が我々にはない。何故なら私たちは自分自身に自信を持ち、既に確固とした自我を確立しているからだ」
「自我。」
「隣に誰が居ようと、またソイツにどう思われようと関係ない。私は私。素晴らしい私。その自信に満ち溢れていればこそ、会話……いや、会話という文化的な行為の振りをした拙い腹の探り合いをして相手の好みを手前勝手に解釈し、その相手に好まれようと道化て振る舞ってみせるような惰弱な生存戦略を取る必要など全く無い。私たちはただありのままの自分を見せつけてやればそれでいい。私の美しさはそれだけでエグい程伝わる。いや、むしろ何も言わずに黙っている時こそより純粋に、鮮烈に、私の美貌の光は周囲の人間を射抜くだろう」
「喋るのが面倒な言い訳をこんなに喋る人居るんだ」
626/03/05(木)23:06:58No.1408039935+
「お前も日々のつまらない社会生活の中で培った常識という名の偏見に凝り固まって、個々別々の状況で正しい判断が出来なくなっているだけに過ぎない。さぁ、蒙の啓けたその目で見てみろ。私たちの輝かんばかりの佇まいから全力で情報を受け取ってみろ。この自信に満ちた顔つきだけで何よりも雄弁に伝わるだろう。私のこの何者にも揺るがされることのない大木の如き強固な精神性も、コイツの圧倒的な歌唱力、ダンスパフォーマンス能力の高さもだ」
「――っ」
 ぴくんっ、とジュハの頬が軽く引き攣ったのは、どうやら私の目にしか映らなかったらしい。
「……ええ、それは、まぁ。アヤセさんが何を言っても折れてくださらないことは重々承知してますし。ジュハさんの見た目にも、もう、持ち前の高いパフォーマンス能力がオーラになって滲み出ていることも認めます。
 それは、わかりますけど、これはそういう話では――」
「ぷふっ」
「Pffft!」
「今吹き出す所ありました?」
「吹き出してナイ」
「凡愚オーラ」
「さっきから何なんですかそれ」
726/03/05(木)23:07:18No.1408040036+
「アー……アノ。ワタシ、ホントに気にしてナイ」
 私の言葉の洪水に呑まれて納得三割、疲労七割といった表情になったマネージャーに、ジュハが改めて、自分の真意を伝えるように言葉を挟んだ。
 言いそびれたが、ジュハのことを「厳しい環境に身を置いている、助けてあげるべき存在」のように扱っていることも気に食わなかった。
 無理に連れてこられたとか、やむにやまれぬ事情で海を渡ったというのならまだしも。十二分の意思の疎通が取れるほど現地の言葉をしっかりと学んで、異国の地でアイドルのオーディションを受けるような人間だ。やったこともない歌とダンスのエリートだと思い込まれている状況でのうのうと日々を過ごすようなヤツなのだ。
 どう考えても、この場で一番タフなのはこの女だ。守ってやる必要など、少しもない。
「アー……アヤセさんと居るとワタシ、喋らなくてイイ。言いたいコトモ、ナンカ、カッテに全部言ってクレル」
「ん?」
「んん?」
「アヤセさんが全部やってクレテ、ワタシ楽デキて、助カル」
「な……っ」
「……」
「?」
826/03/05(木)23:07:41No.1408040158そうだねx1
 なんだ?
 コイツは何を言っている?
 今コイツは、要は「自分の代わりにアヤセが働くから楽できる」と言ったのか?
 この私が……使われる側に立った、だと……?

 小首を傾げるジュハの真っ直ぐな瞳を二人で呆然と見つめながら、マネージャーは言った。
「アヤセさん……」
「なんだ」
「自分が間違ってました」
926/03/05(木)23:21:13No.1408043953+
いいじゃない…
1026/03/05(木)23:23:53No.1408044653+
ネガハピ怪文書が現れ始めている…!
1126/03/05(木)23:24:38No.1408044852+
クソ…寝ようと思ったのに怪文書が流れてきた…
1226/03/05(木)23:27:40No.1408045691+
アヤジュハ並んでるとめちゃくちゃ絵になりそうだ…
1326/03/05(木)23:32:38No.1408047066+
寝る準備してたのに良いもの読ませやがって
1426/03/05(木)23:33:26No.1408047284+
高身長女女レズ
いいね👍️
1526/03/05(木)23:33:49No.1408047416+
怪文書に必ずジュハちゃん絡んでるの
イイネ
1626/03/05(木)23:37:58No.1408048635+
韓国から来た人VS歌わないし踊らないアイドル
1726/03/05(木)23:39:40No.1408049144+
韓国から来た人の方が変な思想ない分アジテーションとかしないから喋りですらアヤセにさせて楽できるのは確かに…
1826/03/05(木)23:47:27No.1408051298+
思えば小泉さんも韓国から来た人を歌もダンスもできる人だと勘違いしてるのか
1926/03/06(金)00:01:52No.1408055567+
笑った
2026/03/06(金)00:10:53No.1408058101+
やっと終わった
2126/03/06(金)00:41:23No.1408065761+
アヤジュハ仲良しもっと流行れ


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