二次元裏@ふたば

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901783 B25/12/30(火)22:04:50No.1387868245そうだねx4 23:20頃消えます
人口の大地、コロニーではお天気も人口的に作り出されるものであった。
 その日の『天気計画』は雨、よりにもよってこの大切な日に雨なんか降らせないでよ!ってつくづく思う。
 12月24日は雨だった、聖夜は曇天で小糠雨が振っていたのを思い出す。冬の雨は寒く、とてもつらい。
 夜更け過ぎに雪に変わる事がない雨がイズマコロニーの聖夜を包んだ。
 今日は、そんなクリスマスのお話。
125/12/30(火)22:05:11No.1387868389+
宇宙世紀0085年12月29日。天気は晴れ。薄く雲がかかる程度。
「お正月はね、爆竹を鳴らすの―――意味はよくわからない。めでたいから、鳴らすんだと思う」
 ニャアンは語る。知らなかった。同じコロニーに住んでいるのに文化の違いが発生している事に。
『爆竹』と割れたスマホに打ち込む。フリック式ではなくローマ字入力だ。
 どうみても昔話に出てきそうな火薬が出てきた。やべぇじゃん。
「爆竹って花火?通報されないの?」流石に聞く。
 コロニーで火薬を使うとかヤバいじゃん。
「音がすごい花火だと思っていいよ。通報はされない。軍警もお正月くらい見逃してくれる」
 ニャアンは語ってくれる。ふとした用事の帰り道。ふらっと立ち寄った、屋上の神社。
「イズマコロニーは1月1日を祝うんでしょ?それとは違うの、春節だから2月を祝うんだよ」
「なんで2月なの?」
「陰暦のお正月が2月だからだよマチュ」
225/12/30(火)22:05:25No.1387868494+
あった。ニャアンが接している文化や振る舞いでブッティズムに精通したインドシナの血を引いているのは確かである。
 『ネノクニ』だの『イズマ』だの、よく知らないけど日本由来の名前の中で暮らしているわたしとは大違いであった。
「じゃあ?お正月神社いかないの?」
「いくことないかな…普段ですら表通りを大きな顔して歩けないから人混みの神社なんて無理だよマチュ」
 眼の前にいる自分と同年齢の少女。ニャアンは難民であった。ゲットー(窟)以外での生活は、警察から禁じられていた。
 その事を失念する自分が恥ずかしかった。
「ごめん…ニャアン」素直に謝る。
「いいんだよ、マチュはシュウちゃんと初詣、いってきて」
 イズマコロニーは日系人が多く住まうコロニーであった。直径16kmのシリンダー型コロニーの中にはいたる所にジャパニズムを帯びた祠もあるし。神主さんがいるような大きい神社も、一個だけ存在した。詣でる時はみんなそこへ通うのだ。初詣やら学業成就、安産祈願。
 エレカーのお祓いだってやってくれるんだよ?1台100ハイト(一万五千円程度)なり。
325/12/30(火)22:05:35No.1387868567+
地球から国境がなくなり、人類が混雑に交配するようになっても。文化というのは生き残るらしい。わたしも日本人の血を引いているのだろう。
 三人で一緒に、行きたいな!初詣。着物はめんどくさいからパス!貸衣裳と着付けの値段を聞いてビックリしてしまった…お値段はナイショ
「ハラヘリムシも一応お尋ねものだから…無理だろうね」
「まぁいいよ初詣は、そういうの気にしない」
 ニャアンは語る。
「神様なんていない。自分だけが絶対なんだよマチュ。運頼みじゃクラバに勝てない、でしょ?」
 ニャアンはリアリストだなぁ…って思った。彼女の人生がそうさせてしまったんだろう、とも思った。
「たしかに…シュウジに頼ってるのは完全に運頼みだけど…」
「マチュの才能あってこそだよ…そんな事はどうでもいいよ」
 ニャアンが切り出す。
425/12/30(火)22:05:47No.1387868636+
「どうだった?クリスマス」

 ニャアンの漠然とした問い。そこには深い意味があった。

「サイコーだったよ!ありがとうねニャアン!」

 ニャアンに感謝を述べた。そうするほかに無いからである。今から数日前、12月24日。ブッティズムでも神道でもないキリストの教えから始まった聖なる夜。
―――今日はそんなクリスマスのおはなし。随分と枕言葉が長くなってしまった。
525/12/30(火)22:06:01No.1387868731+
 宇宙世紀0085年12月24日。全人類が愛を再確認するクリスマスイブが訪れる。
 家族の愛、親子の愛、友人への愛。そして神から授かった愛―――。
 様々な愛について語るにふさわしい一夜が訪れる。それの前哨戦をニャアンとそしてシュウジと愉しんだ。
 
 わたしにとってのシュウジやニャアン。それは隣人とも言うし、友人とも呼べる。

 友情の再確認がそこに行われていた。
625/12/30(火)22:06:13No.1387868815+
ハラヘリムシの為に買ってきたKFCのバケツチキンを4バーレル。女の子二人で持つには多すぎる量である。そして、ニャアンが焼いてくれたケーキ。が隠れ家を彩る。
 シュウジの家にはケーキを焼く上等なオーブンなんてない、かわりに炊飯器があった
「炊飯器で、ケーキ作れるよ?」ニャアンはポツリこぼす。
「マジで!?」食い気味に聞く
「ホットケーキミックスと卵と牛乳あればスポンジできるよ…ニセモノのスポンジだけど…あとは生クリームとフルーツ、缶詰でもいいけどイチゴなんかあったら雰囲気でるね」
「よっしゃ買ってくるわ!」
 シュウジの隠れ家からスーパーまでかなりの距離があるが、ニャアンの自転車を漕ぎまくって1時間後、品々を購(もと)めて帰宅。
 よく見るとタイヤはすり減って溝はほぼないし、防犯シールの刻印はコインで削られている。ニャアンの生活がすこし垣間見える。
 ニャアンいわく「運び屋の仕事はじめる時にもらった」らしい
 どの学校にも属さない、どこかコスプレめいた制服のミニスカート。尻を晒し、自転車を漕ぐニャアン。どこか危なげである。羞恥心より彼女にとっては仕事が第一なんだろうなと思う。
725/12/30(火)22:06:25No.1387868893+
ケーキ作り開始!ステキな夜になりそうだ。
 材料を混ぜて炊飯器で「炊く」のボタンを雄。するっていうとスポンジが出来上がるのだ、一回の炊飯でナマっぽい感じだったら再度炊飯。過剰に火が入る事はないから焦げる事はないらしい。
「クリームはマチュがやって、私ちょっと苦手なんだ」
 ニャアンは譲ってくれるかのようにデコレーション係を私に任命した!
 ありがとうニャアン!僥倖に預かりまして。アマテユズリハ!ケーキに生クリームとイチゴを装飾いたします!
―――生クリームでケーキを装飾。出来は、まぁまぁ形になっている、「合格」という事にしておこう。
 ケーキの存在は大きい。ハラヘリムシがひたすら圧力鍋で調理した揚げ鶏を食う宴になるはずだったクリスマスパーティに、一つ華が咲いた。
825/12/30(火)22:06:54No.1387869085+
 当人であるハラヘリムシ、シュウジはその様子をニコニコしながら見守っていた。
「もうこのまま食べちゃいたい」とスポンジに手を出すハラヘリムシにビンタをかます姿もあった。
「素材の味を楽しみたいんだよ」と話すがただ腹が減ってさっさと食べたいだけなんだよ。
 この男には情緒という物は存在しないのだろうか?
 パーティ開始。クリスマスツリーもないし、サンタさんらしい様子もない殺風景な隠れ家で宴が始まるのだ。
 殺風景な訳ではない。シュウジのキラキラしたグラフティ(ラクガキ)で埋め尽くされた世界で過ごすのだから。
 常人には目が痛いであろうその極彩色の世界、わたしとニャアンは慣れました。だってキラキラが広がっているんだもん!こんなのもう逆に頭がクラクラきちゃうよ!
 宴の内容は?と聞かれると。シュウジがひたすら揚げた鳥を貪り食う姿を鑑賞する場面であった。
 コンチが旧世紀に流行ったクリスマスソングをかけてくれる。雰囲気でるじゃん!
 わたしはチキン(揚げ鶏の意)を3ピース食べた。ニャアンは2ピースと付け合せのポテト食べていた。
 残りは全部シュウジの腹の中だ。
925/12/30(火)22:07:08No.1387869185+
 食後、ケーキの時間だけはちょっと違った。
「ケーキも全部シュウちゃんにあげようか?」
 とニャアン。
「それもいいかもね」と続いた。
 シュウジがおいしそうにご飯を食べている様子を観察するだけでわたしたち少女二人は満足していた。庇護欲が満ちていた。
 獣のようにケーキを素手で貪り食うシュウジの姿が見たいか…って言われたら正直見たかった。
 けど神聖なこの時間にはそぐわないなとも思った。
「普通に切って食べよう」とニャアンに提案
「そうだね」とニャアン、簡易なキッチンでケーキを切る。
 ここで疑問が発生。ケーキの三等分ってどうすればいいの?ニャアンは困惑した
 円周の三分の一ってまず使わないからね。マジでニャアンは困っていた。ワケワカになりそうになっていた。
1025/12/30(火)22:07:34No.1387869380+
 わたしも困った…この日の為に数学をもっと勉強しておけばよかったの後悔する。サインコサインタンジェントと格闘しているのに円周の三分の一で格闘するハメに…というか割り切れないじゃん!
 だけど、正解はすぐに導き出された。
 均一に等分する必要はなかった、シュウジにケーキの半分を、残りの半分をマチュとニャアンで分けることにした。この世の中平等がすべてじゃない事を知った。
「こんなに食べてもいいのかい?」とシュウジは驚いていたが、心の声から
「全部食べたい」という言葉が漏れ出していた。
「おかわりないからね、これで我慢しろハラヘリムシ」
 シュウジはバクバク食べていた。口にクリームいっぱいつけちゃって。まぁバクバク食べていた。
 まるでチビッコを見守る気分でいた、母親になったらこんな風景が見れるのかな…現実にいるのは童とはとても呼べない17歳の男の子なのだが。
 わたしとニャアンはおしとやかにケーキを食べた。
 クリスマスパーティという状況は終了。17年しか生きていない人生。友達とクリスマスを祝ったのはこれが初めてかもしれない。
1125/12/30(火)22:07:54No.1387869517+
 クリスマスといえばお家でおかあさんとおとうさんと過ごすのが常なのだろうが、クリスマスはイズマコロニーでは平日だった。多忙なおとうさんおかあさんは家にいなかった。
 だから、ずっとお家で過ごしていたし。なんてことない一日として過ごしていた。
 淋しくなんかなかった。それだけ。多くを語ればきっと自分を誤魔化すことになるからやめておく。
 今年も一人で過ごすはずだった。
「アマテ、いつもごめんね」
 というおかあさんの電話口からの言葉。電話口からは慌ただしい職場の様子が環境音として見受けられる。
 それは台詞なんかではなく、本心である事も知っていた。しかし、もうサンタさんにプレゼントをねだるような年ではないのでかまわなかった。
 けど今年は違う、『誰か』とクリスマスを過ごすのだ。
「じゃあ、またねマチュ、またねシュウちゃん」
 ニャアンは「桃土竜ソース」と描かれた折りたたみ傘を広げる。懸賞で当てたらしい。 
 お気に入りの傘だった。
1225/12/30(火)22:08:07No.1387869606+
「今日は帰るよ。わたしかえる…メリークリスマス」
 ニャアンが小さく手を振る、コンチが小さな手を振り返している。
 ニャアンが帰ってしまった。シュウジとわたし、二人だけの空間がそこには広がった。ハロとコンチという電子生物に関しては触れない。
「マチュは帰らないの?」シュウジが一瞥
「家に帰っても、誰もいないし」返す言葉がさみしい。
「誰もいなくても、マチュの家だよ。家があるって事はとてもステキな事なんだよ、帰る所があっての人類だからね」
 シュウジはいつもの調子で語る。しかし、わたしとシュウジ手は繋がれていた。尋常でなはない感情が二人を支配しているのは、誰の目から見ても明らかだった。
 ギュっと。掌を握り返す。
「今日はシュウジと一緒に過ごしたい。それくらい許されていいと思う」
 マチュは言葉の通り誰かに赦しを乞うのであった、神様になんかじゃない。もっと大きくて、そして二人を見守ってくれるような。そうガンダムさんに願っていたのだろう
 シュウジの赤い瞳がわたしの眼下を支配する。吸い込まれそうになる黒と赤が狂おしくすきだ。
1325/12/30(火)22:08:19No.1387869708+
「いいよ、今夜は一緒に過ごそう。ボクはマチュと一緒にいたいよ」

神聖な告白であった。聖夜にふさわしい御言葉であった。

「うれしい♪シュウジ!今夜は寝かせないから!」
「寝ないとサンタさんこないんだよ?」シュウジは
「サンタさんなんかいらない!シュウジがいればそれで十分!」
 本音であった。
 神様、マジいるんですか神様?いるのであればこの盲の羊飼いたるマチュの願いを聞いて下さい。
 この世に何も足すこともなければ引く事もしないでほしいです。シュウジとわたし、二人だけがずっと一緒にいられるステキな世界をお造りになってくださるのであれば、それで十分です。これは多きな望みでしょうか?ごーまん?という奴なのでしょうか?
 業(カルマ)という言葉が佛の言葉にありますが。業が深いわたしを願いをどうか見守り続けてください。
 神聖な夜とシュウジに、そう願うしかなかった。
「神様なんかいなくても、ボクとマチュはずっといっしょだよ」
 シュウジがわたしの掌を強く握り返す。
1425/12/30(火)22:08:32No.1387869796+
「すき、シュウジすき」
「ボクもだよマチュ」
 唇と唇が重なる。軽い粘膜交換。粘膜の交換と喜び。それは人類が「愛」を知った意味そのものである。
 そしてキラキラの海を泳ぐ。「キラキラ」まだわたしとシュウジにしか許されていない愛の海を、双つの星が泳ぐのだ。
ニャアンに告白した通りだった。「サイコー」の一言だった。 
レイニークリスマス。外の雨音がシュウジの隠れ家からも聞こえる。雨音は雰囲気を壊すけどこういうクリスマスがあってもいいと思う。
 きっと忘れない。人生最良の雨の夜がそこには存在した。
 人口の大地と人口の天気。曇天の向こう側、宇宙(そら)には青と赤の星が宇宙を泳いでいる。
そうに違いない。
1525/12/30(火)22:10:06No.1387870383そうだねx1
シュウマチュのおまとめです。
今年一年はシュウマチュに脳をやられた一年でした
楽しいアニメだったよガンダムありがとう
https://15.gigafile.nu/0104-d3f270bd1004e65409996021b549cdea5
1625/12/30(火)22:15:08No.1387872422+
あいつ
1725/12/30(火)22:20:31No.1387874682+
閃光弾が来た!?
1825/12/30(火)22:23:00No.1387875733+
ケーキの切れない非行ニャアンたち
1925/12/30(火)22:25:14No.1387876674+
シュウマチュいい...
2025/12/30(火)22:34:01No.1387880081+
閃光弾ありがとう


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