その日はストロベリーの国に行く途中で、襲い掛かってきたモンスターを倒して回っていたところだった。 グオオーと突然、隠れていたモンスターが襲い掛かってきたのだ。 「うわあ!」 「ヨシタカ君!」 ヨシタカの命が危ない! その時、物陰から人が出て来て、モンスターを倒した! 「まだまだだな、ヨシタカ」 「師匠!」 「師匠?」 ストロベリーとアストレッドが疑問符を浮かべる。 「拙者の名はブライ。浪人でござんす。どうぞお見知りおきを」 「僕の師匠なんだよ!」 「剣を少々教えただけですが」 と、ブライが謙遜する。 「ふうん」 「ヨシタカ、お前こんなところで何してんだ。故郷の母ちゃんが心配してたぞ」 「ふん、お母さんはボクの事何とも思っちゃいないやい!」 「お前なあ、この先は魔物の国だぞ。人間の国を魔物が乗っ取ってるんだ」 「知ってるよ!それを取り戻しに行くんだ!」 「馬鹿野郎!お前みたいなガキが生き残れるような所じゃねえ!俺と一緒に故郷に帰ろう」 「だって僕、抜け忍だもん。里を抜けた人は殺されるって大人が言ってた」 「俺が口利きしてやる。だから帰ろう」 アストレッド選択  帰らせる →残させる 「ヨシタカ君は私たちの仲間です。帰らせないでください」 「そうか。ではせめて拙者が付いていこう」 ブライが仲間に加わった! その後もモンスターが襲い掛かってきたが、ブライは強かった。 「この辺で野宿しましょう」 と、ブライが提案する。 「はーい」 「ねえ、抜け忍って何?」 アストレッドがヨシタカに聞く。ヨシタカがブライに言っていたのを聞いてたのだ。 「僕、退魔忍の里の抜け忍なんだ。僕の国じゃ退魔忍はサムライになれないから、別の国で仕官しようと思って。今も刺客が僕の事探し回ってると思う」 「そう言う事は早く行ってよ。・・・仲間じゃない」 「ごめんね」 「飯の支度が出来ましたぞ」 「わーい」 「山菜ときのこの味噌雑炊と川魚の串焼きでござる。極東の調味料なので口に合うかはわかりませんが」 「なんか・・・泥みたいな色ですね」 ストロベリーが言う。 「食べてみなよストロベリーお姉ちゃん」 「ストロベリーちゃんのお口には躾が必要なようだね」 「す、すみません」 ストロベリーが縮こまる。 「はは、極東の調味料しか手盛ちがありませんで、すみません」 「いやあ、いつもの塩味のスープと干し肉とパンの食事よりはよっぽどいいです」 「むっ・・・お姉ちゃん達、食べちゃダメだ!」 一口食べたヨシタカが二人を止める。 「ふん・・・アストレッド用に多めに仕込んだのが仇になったか」 「なんで私の事を・・・?」 「竜墜のアストレッドと言えば有名だからなあ。旦那方、出番ですぜ」 妙に露出の多い人間たちが出てきた。ヨシタカはその中に見知った顔を見た。 「エレナ!」 「久しぶりだね、ヨシタカ君」 金髪の少女が笑顔で手を振る。 「悪いなヨシタカ。退魔忍の里にお前の居場所をチクって援軍を出してもらった。俺は今、カースブレイドの旦那に雇われててな。お前ら、あの旦那と一悶着あったそうだな?殺すって息巻いてたぞ。何、殺したことにして故郷に連れ戻してやる。アストレッドは狙ってる奴隷商人が居てな、高く買ってくれるそうだ。王族の姉ちゃんは・・・魔貴族が苗床にしたいって言っててなあ。何、食われるよりはマシだろ」 「ひっ」 ストロベリーが小さな悲鳴をあげる。 「ストロベリーお姉ちゃんは僕のお姫様だ!絶対に守る!」 ヨシタカが啖呵を切る。 「いい人だと思ったのに・・・残念だよ」 アストレッドが大剣を亜空間から引き出す。 「こ、こんな時は・・・えーっと」 ストロべリーはとりあえず攻撃用の召喚獣を出す。 戦いが始まる。 「グラビティ!」 相手は忍者たちという事で、アストレッドはまず動きを封じようと重力魔法を放った。 しかし、何人かの退魔忍たちは範囲外に散らばる。 「メテオストライク!」 メテオストライクで一網打尽にする。 グラビティとメテオストライク。両方とも大魔法である。 「竜墜のアストレッド、これほどとは・・・」 「ちっ!!」 まずはコイツを止めよう、とブライがアストレッドに襲い掛かった。 散らばった退魔忍は気配を消したが、ヨシタカと召喚獣は捉えていた。 その中の一つがヨシタカに襲い掛かってくる。 「エレナ!」 「ヨシタカ君、久しぶりだね!」 ヨシタカとエレナは激しい剣戟を繰り広げた。 「会えて嬉しい・・・」 エレナは戦いながら恍惚とした表情を浮かべていた。本気で戦っていない。 「なんで君が・・・」 「一緒に帰ろう?私ね、回復魔法を覚えたんだよ。里への報告のために足を切り落とすけど、後で直してあげるからね。何とかして、私の家のペットくらいになるように掛け合ってあげる。ヨシタカ君のお父さんもあのおじさんが居場所を知らせるまでは追うのは後回しにするように言ってたし、あのおじさんも情報の代わりに命だけは助けてくれるように頼んでくれてたんだよ。ヨシタカ君は里の皆に愛されてるんだよ」 「今の僕は・・・二人の仲間で、ストロベリーお姉ちゃんの侍だ」 「ヨシタカ君」 エレナの笑顔が消える。 「そんなにあの女がいいの・・・?」 エレナの、溢れ出した憎悪が顔に出た。 「旦那方!狙い目はあのお姫様だ!」 ブライにそう言われて、退魔忍達はストロベリーの方に向かった。 「ストロベリーちゃん!」 「豪滅刃!」 「キャアア!」 アストレッドが気を向けた隙に、ブライの攻撃が決まる。 「お前ら冒険者はよお、戦いながら仲間の方を見るよなあ。麗しき友情だが、戦場で目の前の敵から目を離しちゃいけねえなあ」 ヨシタカが向かおうとするが、エレナに羽交い絞めにされる。 「くっ!」 「ヨシタカ君が私に勝てるわけ無いでしょ?」 そう言うエレナの口を、ヨシタカの口が塞いだ。 「・・・!?」 ストロベリーとアストレッドに仕込まれた舌技で、エレナの力が抜ける。その隙にヨシタカはストロベリーの元に行った。 「・・・煉獄剣!」 ヨシタカが剣を一閃すると、広範囲を飛ぶ斬撃と共に魔法の炎が焼き尽くした。 「ぐああああ!」 「あいつ、いつの間にそんな技を!」 燃え盛る炎に巻き込まれながら、ブライが言う。 「くっ・・・我らはここで退かせてもらう!」 「ちっ・・・次は容赦しねえ!殺しにくるぜ!」 退魔忍もブライも撤退して行く。 エレナは唇をなぞってぼーっとしていた。 「何をしているエレナ!」 他の退魔忍に急かされる。 「私、諦めないから」 エレナはヨシタカに向かって言い放つ。 その顔には恍惚とした笑顔を浮かべていた。 そうして、エレナも去っていく。 「ふう・・・」 MPが枯れたヨシタカが座り込む。 「痛い!熱い!ヨシタカ君、私まで巻き込んだ!」 「今治療しますから」 ストロベリーが攻撃用の召喚獣から回復用の召喚獣に切り替える。 「ごめんね。僕のせいで」 「いや、退魔忍はともかく、あの男は私たち全員を狙ってるよ。対策を立てなきゃ」 3人はこれから何度もやってくるであろうブライに、気を引き締めたのだった。