[音声ファイルを再生します] ―録音を開始します 年12月31日。これに意味などあるのだろうか。意味があることを祈りたい。どこかに残ることを… (鋼鉄の扉が爆破される音) ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ちくしょう…!!居るんだろ父さん!あんたの馬鹿げた計画を止めに来たぞ!! 来たか。さて出迎えるとするかな やあ、黒白。久しぶりだね。元気そうで嬉しいよ 雑談しに来たわけじゃないんだよ父さん。あの時、何人イーターに食われたと思ってる…! 説明させてくれ黒白。聞いた上で判断して欲しい、頼むよ それで時間稼ごうって腹か?知ってるんだよ後ろのカルネアモンが今も浸食を続けてるのはよぉ… 信じられないけど、できるんだろ?上位存在を浸食しきれば、あの街みたいなことがこの世界全てに そうだけど…。約束するよ、話す間は浸食は止める。お前の父さんを信じてくれ ……。沈黙は肯定とみなそう。さてどこから話したものか… ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 詳しい理論は省こう、そこまでの時間はないしな。結論から言えばこの世界はコンピュータだ そんな顔をするな、言い方を変えるべきか。この世界はコンピュータと同じ論理で形作られている …そこで議論するのは時間の無駄だから飲み込むよ。ライデンモン、ソーラーモンに戻れ。それが前提としてそれで何がどうなるって言うんだ お前はマンデラ効果と言うのを知っているか?…そうだなお前は直したはずの誤字がなぜか元のままだった事は無いか? そのうちいくつかは直したつもりになってたと言うわけではない。直していない世界線に移動したんだ 世界線の移動はそれこそ誤字を直したか直さないかレベルなら自然現象として普通に起きるんだ。過去改変などされれば大幅に移動するだろうがね 世界線の話くらいなら俺も知ってるよ。それとさっきの話になんの繋がりがあるんだ(鉄の溶ける音) 必要な話だからしかたないだろう。世界線と並行世界の違いはわかるか? 似たような物じゃないか?いや、そこが重要なんだ。コンピュータ風に説明しよう 世界線はパソコン内ゲームの各ルート。フラグのオンオフでルート変更できるが複数ルートを同時に動かせない 並行世界は別のパソコン。同じゲームをやっていても別のパソコンだからそれぞれで動かせる ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― さて、黒白。話は変わるがお前はおかしいと思ったことはないか?この世界のデジヴァイスの種類の多さに 何を言ってるんだ?最初っからそういうもんだろ? そう、その通り。誰も疑問にすら思わないんだ。世界の調整機能というべきか、そう思わないように無意識に操作されている だがな、本来技術というものは取捨選択なんだ。電気機関が伸びれば蒸気機関は廃れる。その逆もまた同じくな にも関わらず、全てのデジヴァイスの技術ツリーが同レベルで進んでいる。枯れていないんだ。 …え?いや確かにそうだ。なんで何も疑問に、いやこれが操作?ずっと…? それに関しては黒幕などはいない…はずだ。研究の結果それが世界の恒常性システムだとしか判断出来なかった まあそこはいい、それよりもそれが何を意味するかだ。なぜこんな異常な技術体系になっているのか? 答えはシンプルだ。この世界は、それぞれ別の技術が発展した世界が詰め込まれている さながら、拡張MODを入れ続けて膨れ上がったゲームのように。人も、技術も、それ以外も本来の世界一つより遙かに ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― その結果何が起きるかわかるか?世界線のインフレだ さっき世界線はルートのような物だと言ったな?では人が増えたらどうなる。その分可能性…ルートが指数関数的にインフレする 本来なら世界の可能性は人の生と死のバランスで急激なインフレは起きないようになっている しかし、今現在自然な流れでの死による可能性の消滅程度ではもはやインフレは抑えられないんだ インフレが起きたらどうなるってんだ。世界線が増えたところで現実には1ラインしか存在できないんだろ? だがデータは増える。ゲームでもルートがあればあるほどデータは重くなっていくだろう? そして遠からず一つの世界(コンピュータ)が担えるデータの限界を迎える。それで世界が壊れるわけじゃないんだけどな 壊れないならいいじゃないか。なんでそれがイーターに人やデジモン食わせる事になんだよ 世界が壊れないのは何故だと思う?そうならないよう、セーフティが存在するからさ 世界が壊れる…この場合データが重くなりすぎて処理できず固まると言い換えよう 固まりそうになった時にどう対処する?分かるだろう、リセットだ。この世界は既にもう何度もリセットが実行されている ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― お前が攫われなければ、DWを研究しイグドラシルやホメオスタシス、彼らが実施したDWのリセットの痕跡があること。それがリアルワールドにも存在する事に気がつけなかっただろう 実際に何回行われたかはわからない。100を超えている事もあり得る。その時からだ、この世界の異常性を認識できたのは 調整機構の閾値を超えたのだろう。疑問を疑問として理解できるようになったからこそ、俺がやらねばならなかった プロジェクト:カルネアデス… ああ、そうだ。許せるか?我々はなんどもリセットのたびに素粒子になり殺されている。それだけならまだしも、それを覚えていることさえできなかった 未来なき永遠の檻にそれと気づかないまま閉じ込められ続けてきた。何も知らないままだからいい?そんなワケがあるか! だからリセットが起きない程度までデータをイータの中に納める。殺すわけじゃない。イーターの中で世界に影響を与えぬ存在として生きてもらうだけだ そうすればイーターの中に入った人たちは可能性を世界に広げはしない。世界の5分の1をイーターという1に収める。それがプロジェクト:カルネアデスだ リセットしてる奴を倒すって道はなかったのか? リセット自体はただのシステムだ。世界というコンピュータの持ち主がデータを入れるだけ入れて放置したか、なんらかの実験のためにあえて放置しているのか 少なくとも、こちらが干渉できる領域には居ない。イーターですらコンピュータの中の存在だ。ゲームのキャラがプレイヤーに攻撃はできないだろう? ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― だとしても!イーターって牢獄に人間やデジモンを閉じ込めてる時点で同じ穴の狢だろうがよ! 彼らにはイーターの中で生きれるようにしている。EDENだったか、あのシステムを流用し生活を送れるようにな 世界へ可能性を与えない以外はなんら変わらず生きて死ねるよ。食われる人も平等にランダムで選別している 生きれる?平等?そんなの欺瞞だろ、父さん 欺瞞じゃない、俺は本気で 黙れよ!気づいてんだよあの時イーターが俺を避けたの!母さんや有無もタゲから外してんだろ?自分の家族を例外にしてなにが平等だ イーターの中で生きれるなんて思って無いからそうしたんだろ?そんな子供だましで説得できると思ったのかよ。バカにするなよ父さん …ああ、そうだな。すまない黒白。お前ももう…いくつだったか 自分の子供の年齢忘れるなよ…20歳になったよ。いい加減…父さんにとってはずっと子供ではあるだろうけどガキ扱いは止めてくれ ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― (爆発音) …!?馬鹿な、カルネアモンの外部補助量子CPUが爆は、ソーラーモンだと!?黒白お前…! 父さんが話してる間、こっちが何もしないとは言ってないからね。こっちも必死なんだ、手段は選ばないよ しかしどこから…地下?いやソーラーモンに床の鉄材を溶かすほどの熱量はないはずだ。何をした…? ソーラーモンの電脳核を暴走させた。パートナーに進化のための力を送る応用でな。クソ熱いのバレないようにするの大変だったよ カルネアモン、戦闘許可する。息子とパートナーを倒すぞ。ただし殺さないように 難しい指示だねぇアオイ。まあいいよ、痛い目を見せる分には計画に支障は無いしね。覚悟しなよ? ソーラーモン、既に大分負荷かけてるけどもうひと付き合いして貰うぞ。文句は後で聞く (ソーラーモンワープ進化ー!ライデンモン!)クロシロー、当機に感情はないから気遣いは無用だ。高級オイルを要求する ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― (激しい戦闘音) もう終わりだろ!さっさと降参しろよ父さん 何を言ってる黒白?お前を倒し、CPUを直し、浸食を再開する。理屈通りだ (さらに激しい戦闘音)(デジモンがデジタマに還る音)(肉に金属が刺さる音) グッ…はぁ…はぁ…ここまでか…。黒白、お前の勝ちだ 俺は…ただ君たちに未来に生きてほしかった…どんな犠牲を払っても その犠牲で生かされるこっちの身にもなれよ!そんなもの背負いたくねえだろ普通さあ! (ノイズと不協和音) ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ぐっ…なんだこれ… ああ、始まってしまったか。リセットが近くなると起きる世界線のゆらぎだな 黒白、お前は誰とここに来た?仲間は?恋人は?名前が言えるか? 当たり前だろ!…え?仲間も、恋人も思い出せる出せるのに…なんで複数思い浮かぶんだ? 仮説だが当たっていたようだ。全てをリセットするためにその直前に全ての可能性が解放され波打つ…らしい。それが今発生しているゆらぎだろう 頭がおかしくなりそうだ…どうやれば止められるんだこれ 出来るならとっくに俺がそうしている。もう諦めろ、黒白。出血ももう限界だろう。せめて最後は休みなさい うるせぇバーカ!そんなんで諦めるなら俺はここにも居ねえよ。最後まで足掻いてやる ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 黒白…そうだな。お前は昔からそう言う子だったな ああくそ目が霞んできた…何かないか…何か次に繋がる物が…! クロシロー、傷口は焼いておくぞ 助かる、ソーラーモン。~~~~~~~~~~~!!!! (周囲を漁る音) ん?なんだこれ ―録音を停止しました [音声ファイルの再生を終了しました] ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「弱すぎて話になんないな」 "俺"を踏みつけながら"俺たち"は記憶を反芻していた これも正しい記憶ではないのだろう。『俺』や〈俺〉の記憶が継ぎ接ぎされたそれっぽい流れの記憶 だがそれでもいい。違うルートを通ってリセットに至った"俺たち"だが、これだけは共通していた このふざけたリセットをどうにかしたい。父さんとは別の方法で しかし"俺たち"は所詮死人の寄せ集めでしかない。業腹だが最終的には"俺"に託すほか無い 「誰なんだよ…俺の体返せや…!」 同族嫌悪だろうな。"俺"が荒々しい口調で悪態をついている こいつには最低限俺たちの領域にさっさと到達してもらわなければ困る だから"俺たち"は"俺"にこのままで済ませないため、一番効く言葉を言う 「他人を助けるだの言い訳にした結果がこれだろ?ああ、じゃあお前以外が悪いんだな。お前も、可哀想に」 「――――――――!!」 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――