布団に絡まる湿度が不愉快で、目を覚ます。 種族柄なのか自身がそういう体質なのか。同族と過ごした経験のない自分には判別の出来ぬことだがすぐ蒸れる身体は不便この上ない。 もう一つ不便なのが、悪夢に魘されて起きたのかどうかよく分からないという点だ。未だに脳裏から剥がれてくれない情景がある。べっとりと嫌な汗を掻いて目を覚ましても──それが体質なのか悪夢のせいなのか、両方なのか、分からない。 分からないなら、起きた時に身体を拭けば同じことでもある。けれど最近、事情が変わった。半ば無理矢理、仲間を作った。 仲間──セレスは警戒心が高い。別々のテント、寝てる最中でも、不審な音を聞き逃しはしまい。魘されていれば、きっと気付かれる。彼女に余計な心配を掛けたくはないというのが、正直な所だ。 いつも、朝は早い。それは汗を苦にして起きて身体を拭いているとすっかり目を覚ましてしまうからだ。 寝ぼけ眼を擦りながら火を熾して、食材を眺める。状態が良くなくなっているものを選定して、スープの具材に。 料理をするのは好きだ。嫌な記憶、忘れ去りたい時間から隔絶された想い出を想起させてくれる。何時だって、喜ぶ人の笑顔を思い浮かべて。大好きな人を、笑顔にするために。 ぐつぐつと沸騰するお鍋を見つめる。気分が落ち着く。今朝の、不愉快な感情も飛んでいく。 ふわ、と欠伸が一つ。朝が早くなってしまう分、いつも少しずつ寝不足だ。欠伸と共に出た涙を拭うのと、テントのある方からガサゴソと音がしたのは殆ど同時だった。 振り返る前に、息を吸った。大好きな人には、いつも。とびきりの笑顔を見せていたい。 「おはよう、セレス」