[サブ] 黒耀 真澄 : 「もう若くはないんだけどなァ」
[サブ] 黒耀 真澄 : ついボヤきが口から漏れる。若くはないのは事実だったが、若かった頃と比べて衰えたかといえばそれも否だった。なんせ超人になってしまっている。
[サブ] 黒耀 真澄 : 塀の外からK市市立中学校の校舎を見上げる。昼間と違い夜間の学校はさながら要塞のように夜闇の中でそびえ立っていた。
[サブ] 黒耀 真澄 : 周囲を確認する。蛇の道は蛇とはよくいったもので、どうやったら夜の暗がりにまぎれて人の目につかないよう振る舞えるかというのは心当たりがあった。
[サブ] 黒耀 真澄 : 思考をトレースする必要があるというのは警察と犯罪者は似たような思考を共有しがちというわけだね。
[サブ] 黒耀 真澄 : 軽く助走をつけて塀を飛び越えて学校の敷地内へ飛び込む。監視カメラの位置は昼間に確認しておいたし、何ならいくつかはこっそりと動作に制限をかけておいた。
[サブ] 黒耀 真澄 : 後から証拠を消すといってもねぇ。無駄な手間を省くに越したことはないよ。ま、動作を弄った方は後でもとに戻しておかなきゃいけないけど。
[サブ] 黒耀 真澄 : 「さてと。どんなエフェクトで悪さを働いているかはもう当たりをつけられた。のこのこと出てきてくれりゃいいけど。……今頃稲倉くんたちは屋上かな」
[サブ] 黒耀 真澄 : 既にメッセージは受け取っていた。稲倉くんの歓迎会を兼ねて『赤い月』の鑑賞会をするんだと。中学生は怖い物知らずだね。
[サブ] 黒耀 真澄 : その中には玖珂ゆかりの名前もある。大事にならなきゃいいが。
[サブ] 黒耀 真澄 : 「報告によりゃ、きっかり20時に………という話だったな。もう……間もなくか」
[サブ] 黒耀 真澄 : 丈夫さだけが取り柄の安物の腕時計を確かめる。これは少し急いだほうがいいかもしれない。監視カメラや人の目に映らないよう慎重に周囲を確かめながら小走りに駆け出した。
[サブ] 黒耀 真澄 : 許可を取っているのかまでは知らないが、下校時刻を大幅に過ぎたこんな時間に集まっている悪ガキ共の目に入らないように注意しながら。校舎に侵入し、階段を登り始めたのだった。
[サブ] 黒耀 真澄 : 若くないんだよ、ホント。45は若くはないんだ。