二次元裏@ふたば

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710996 B25/10/30(木)20:54:10No.1367861069そうだねx6 22:10頃消えます
「あれ? 楽奈ちゃんバンドは?」
「んー」

楽奈ちゃんは答えなかった。
その代わりに座ったまま、ぐでっと力なくカウンターに突っ伏した。
どうやら、あのバンドはもういいらしい。
またギターを弾くようになった楽奈ちゃんは、RiNGに来てくれるバンドに混ざっては抜けてを繰り返していた。
するりと滑り込むように何回か一緒に弾くと、すぐに見切りをつけるようにするりと抜けてしまう。
そんな自由気ままな彼女も、今日は少し元気がないように思えた。
いつも通りのんびりとしている様で、どこかしゅんとしている様にも見える。

「オープンマイクで弾いていく?」
「んー」
「抹茶アイス食べる?」
「食べる」
125/10/30(木)20:54:28No.1367861200+
カウンターから顔を上げた楽奈ちゃんの目がキラリと輝いて、私はホッとした。
どうやらお腹が空いていたらしい。
楽奈ちゃんの前にアイスを置いてあげると、勢いよくパクパクと食べ始める。

「うまい」
「こら。美味しい、でしょ?」
「?」

言葉遣いを指摘されたなんて欠片も思ってない純粋な瞳で見返された。
オーナー、本当に楽奈ちゃんに甘いなあ……
しょうがないなって笑って、あとは一人にしておこうと私は洗った食器を拭いて片付けていく。
きっと、アイスを食べたらまたどこかへ行っちゃんだろう。
猫の毛をたくさん服につけて戻ってきたら、ブラシで取ってあげなきゃ。
やがて、カランと空の器にスプーンを落とした音が聞こえた。
225/10/30(木)20:54:40No.1367861287+
「…つまんねー」

楽奈ちゃんが、ぽつりと呟いた。
またカウンターにぐでっと突っ伏して、席を立つ様子がない。
流石に、連日食べているからだろうか。

「アイス飽きちゃった?」
「? 抹茶は、うまい」
「あらら、違うか〜」

アイスはちゃんと美味しく食べてくれていた。
けど、いつもより元気がないのは間違っていなかった。
さっき零した「つまらない」は、それととても関係しているんだろう。
325/10/30(木)20:55:22No.1367861563+
「りりちゃん」
「なあに?」
「おもしれーバンド、ぜんぜんない」
「…そっか」

楽奈ちゃん、今日はちょっとだけ疲れちゃったんだな。
なんとかしてあげたい気持ちはある。
でもそれは駄目なこと。
音楽は…バンドは、好きな人が好きに集まって、そのとき全力でやりきれば良い。
そこにお節介を焼くのは間違いなんだ。
オーナーのそんな背中を見てきて、だから私もそう在りたいと思う。

「楽奈ちゃん、ちょっと待っててね。帰っちゃ駄目だよ」

でも、小さな頃から見てきた彼女が思い悩む姿を見て見ぬふりなんて出来なくて。
425/10/30(木)20:55:47No.1367861719+
だから私は、私なりに彼女の背中を押してあげたかった。
私は厨房に引っ込んで、試作中のそれをぱぱっと作る。
難しい工程はあんまりない。
大事なのは見た目のバランス。華やかさ。そして、抹茶アイスと抹茶クリーム。

「──おまたせ〜!」
「!」

変わらず突っ伏していた楽奈ちゃんが飛び起きるみたいに身を起こした。
見開かれて真ん丸になった瞳が、眼の前のそれに釘付けになっている。

「試作中の抹茶パフェだよ〜」

カウンターにカップを置くと、楽奈ちゃんはさっきの抹茶アイスよりも速く飛びついた。
スプーンを忙しなく動かして、ぱくぱくと夢中になって食べていく。
525/10/30(木)20:56:15No.1367861890+
うまい、うまい、とうわ言のように零しながら。
最終チェックが無事通って、私は小さく笑った。
よかった、これでメニューに載せられる。
あっという間に食べ終わった楽奈ちゃんは、けぷ、と小さく息を吐いた。

「…うまかった。もう一個」
「だ〜め! お腹壊しちゃうよ」
「んー」

クリームでベタベタになった口元を拭いてあげてる間も、楽奈ちゃんはキラキラした目で私を見つめてくる。
ぐらつく心を抑えつつ、私は首を横に振った。

「明日またおいで。ちゃんと用意しておくから」
「……」
625/10/30(木)20:56:41No.1367862060+
長い沈黙の末、楽奈ちゃんはカウンターの椅子からぴょんと降りた。
そのまま屈んで、足元のカートに載せていたギターを取り出してストラップに肩を通す。
ギターを構えて、にやりと笑う。
いつもの、わんぱくで自由気ままな楽奈ちゃんがそこに居た。

「ギター、弾く」
「いいよ! 準備するね」

楽奈ちゃんが待ちくたびれないよう、オープンマイクへ向かい手早くセッティングしていく。
ステージに上ってギターを構える彼女の背中。

──同じくらい面白くて一生懸命で、そんな素敵な子たちと楽奈ちゃんが早く巡り合いますように。

その小さな背中へ祈りながら、私はシールドのプラグを手渡した。
725/10/30(木)20:56:59No.1367862170+
🐱🎸
「ほら、約束の抹茶パフェ!」

ドン、といささか乱暴に、立希ちゃんが楽奈ちゃんの席にパフェを置いた。
今日も楽奈ちゃんはありがとうも言わず、目を細めてパフェを食べ始める。
とってもいい笑顔だけど、そのパフェは立希ちゃんのおごり。
せっかく立希ちゃんが働いて得たバイト代も、結構な割合を楽奈ちゃんに食べられてしまっている。
そのことを立希ちゃんが楽奈ちゃんにとやかく言うところは、少なくとも私は見ていない。
だから私は、立希ちゃんにすすっと近寄って一つの提案を持ちかけた。
これは手助けではなく、私なりのエールというものだ…なんて内心言い訳しながら。

「立希ちゃん、楽奈ちゃんのパフェ代は立て替えてもいいんだよ? 今までそうだったし」

幸いにして、楽奈ちゃんはただの一円も払ったことがないから問題はない。
立希ちゃんは私の提案に驚いて、それから悩むような素振りを見せる。
825/10/30(木)20:57:16No.1367862286+
「あー……いや…いいです」

けれど結局、首を横に振った。
その提案に惹かれてもいるんだろう、眉間にシワを浮かべながら。

「本当にいいの?」
「……あいつは、楽奈はウチのメンバーなんで。だから、私が払います」

思っても見なかった立希ちゃんの答えに、私は自然と口元がほころんだ。
自分のことのように嬉しかった。
ちょっとだけ泣いちゃいそうなくらいに。

「…ふふっ、そっか!」
「? なんで凛々子さんが嬉しそうなんですか?」
925/10/30(木)20:57:32No.1367862398+
なんでもないよ、とは言いたくなくて、私は楽奈ちゃんへ笑いかけた。
探し求めていた場所へ、ようやく巡り会えた彼女へ。

「よかったね、楽奈ちゃん」
「ふふん」

楽奈ちゃんの笑顔はとっても満足そうだった。
1025/10/30(木)20:58:25No.1367862788そうだねx5
感涙しました🐼💦
1125/10/30(木)21:00:49No.1367863717そうだねx2
海鈴ほんとに読んだの?
1225/10/30(木)21:03:51No.1367864924+
りりらなはケンコウニイイ!
1325/10/30(木)21:08:11No.1367866753+
劇場版BD発売前にりりらなが温まってきたな…
1425/10/30(木)21:08:44No.1367866931+
楽奈ちゃんはヒモの才能に溢れている
1525/10/30(木)21:22:04No.1367872450+
ライブ
ギター
まっちゃ
ゆべし
りりちゃん
1625/10/30(木)21:57:35No.1367885829+
凛々子さんはもっと目立ってくれていい
1725/10/30(木)22:00:02No.1367886711+
目立たないからこその良さもあるから…


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