【聖都の男は基本的にクソボケだ】 聖都の男は基本的にクソボケだ。 かつてカンラークでこんな風に囁かれてたことがあった。 「ばかばかしい」 クリストは憤懣やる方ない様子で、イザベラに不満をぶち撒ける。 「戒律と教義に生き、清貧に生きることをクソボケとは何事ですか!そう思いませんかイザベラ様」 テーブルの向い側に座ってクリストの愚痴を聞くイザベラは何とも言えない苦笑いを浮かべているが、残念ながらクリストはそれに気づかない。 「そういえば…あの子…」 とある人物の姿が脳裏に浮かび、クリストの動きが一瞬止まる。 「ギルさんにいつもくっついてるアズライールさん、あの子たぶんギルさんに片思いですかね…」 「気づいてたの?」 ポツリと漏らしたイザベラの台詞に、意を強くしたクリストは大きく頷いた。 「ええ!あの子の様子を見れば直ぐに気付きましたよ!でもギルさんってばあの子の好意に全く気付いてないんですよね」 つまりギルが気づかないハナコの彼への好意の目に気づけた自分はクソボケではない、そう確信し満足げに頷くクリストの姿に小さくため息を吐くイザベラであった。 ****************** 聖都の男は基本的にクソボケだ。 かつてカンラークでこんな風に囁かれてたことがあった。 「酷い話だ…」 ギルは憤懣やる方ない様子で、ハナコにぽつりと不満を漏らした。 「俺たちは戒律を護り女色を遠ざけ清貧に生きてただけだ…。そのような批判は悪質な曲解に他ならない。思わないかアズライール…」 テーブルの向い側に座ってギルの愚痴を聞くハナコは苦虫を噛み潰した顔を浮かべているが、残念ながらギルは彼女の表情に込められた真意には気づかない。 「いや、1人該当したな…」 とある人物の姿が脳裏に浮かび、ギルは声を上げた。 「クリストだ、あいつのイザベラ殿の好意への鈍感さは異常だな」 「あ、気づいてたの?」 「当然だ」 驚いた様子のハナコの台詞に、大きく頷いたギルは後輩への不満をぶちまける。 「ああ…、あいつに向ける彼女の目を見れば一目瞭然だ。そんなことも奴は気づかないから、聖都の男はクソボケだと言われるんだ…」 「イザベルともよく話し合っておかなければな」そう言ってため息をつくギルの姿に、ハナコは「確かに聖都の男はクソボケね」と無表情で呟いた。