「イヤーッ!」「ンアーッ!」「イヤーッ!」「ンアーッ!」 草木も眠るウシミツアワー、ネオサイタマの路地裏にてカラテシャウトが響き渡る。『凧はイカ』『シューズ・ナベ』『オイランレース、チェリー・ブロッサム・フラワー杯』といった猥褻な看板の文字を照らすネオンライトさえ届かない薄暗いこの場で二人の女ニンジャがイクサを繰り広げていた。 片方の女ニンジャ…リットリオは素早い身のこなしで反撃の隙も与えぬまま得意の蹴りを浴びせ続ける。 「…イヒーヒヒヒ…どうしました?随分と息切れしてるようですね?それにだいぶお疲れのようですがダイジョブですか?私としては貴女の体を必要以上に傷つけたくないんで大人しく母体になってくれませんか?」 だが、相手の女ニンジャはカラテを直撃していたにも関わらずその表情は余裕に満ちており、気味の悪い笑い声を出す。それもただのニンジャではない。両手両足には無数の植物めいた触手を生やして、壁や地面に張り巡らせ、まるで生きてるかのように全てが蠢いていた。コワイ! 「今日は散々な一日ですこぶる機嫌が悪いんだよ…これ以上邪魔するなら惨たらしくブッ殺してやんぞコラァ!」 威圧的な態度を取るも、リットリオは息は切れつつある。先ほどの攻撃にもカラテが十分に込められていたかといえばそうではなかった。 何故このような状況になったか、一言で言えばリットリオの不運と言わざる終えなかった。 月が割れ早や数年、アマクダリからヌケニンを果たしたリットリオは新たなハヤイ・シャーパー結成の為に金を稼ぐべく傭兵稼業を始めていた。その日はいつもより依頼を多く引き受け、更にニンジャ絡みのインシデントが多発。 今日この日だけでもリットリオは既に三人ものニンジャを爆発四散させていた。休む間もなく一日中動き続けたリットリオは既に疲弊し、お気に入りのスカジャンは連戦によりもはや着れる状態ではない故に捨てたことで、今はシャツ一枚と美しい太腿を大胆に見せる短いホットパンツのみの状態であった。 ビズを終えたころには深夜前となり、ホテルに泊まる金も勿体ないのでアジトへと帰宅していた。しかし、不幸にも野良ニンジャに襲われてるモータルを目撃してしまい、リットリオは深い溜息を吐きながらも割って入りモータルを逃がす。 そして、バイオ触手を操る女ニンジャ…フォッシュとイクサを繰り広げ、気づけば裏路地へと場所は移動し今に至る。 「威勢がいいですねぇ…良い、とても良いですよ、私としても母体は元気でカラテに溢れる個体がいいですからねぇ!イヒーヒヒヒ!」 「ファック!好き放題言いやがって…!」 触手をうねらせ、汗によりシャツが張り付いてくっきりと形となっている豊満な胸や、汗が流れ落ちる鍛えられた太ももに下劣な視線を向けるフォッシュに対し、リットリオは憎悪と殺意の視線で送り返す。 フォッシュはヨロシサンに所属していた研究員だったが、研究材料の現地調達と称し複数人の女子高生を誘拐、そのうち何人かをファック&サヨナラさせた罪状が発覚し退職処分を食らう。 しかし、それでもバイオ生物に対する探究心は残っており、彼女は独自のラボを作り自らを実験台として研究を重ね続けた際にニンジャソウルが突然憑依。バイオタコの触手と植物の遺伝子により誕生した新種の触手型バイオサイバネを身に着け、備え付けた繁殖能力が機能するか確かめる為にモータルを襲ってたところをリットリオに邪魔された形である。 フォッシュ自身のカラテは大したことはなく、万全のリットリオであれば難なく倒せる相手であるが、今のリットリオは疲弊困憊。カラテはおろかスリケンさえ満足に投げれないほどの状態だ。 (クソッ…あぁは言ったがただでさえスシも食えてねェのに真正面から戦って勝てるとは思えねェ…どうする?ここは引くべきか?) 今のリットリオは背後と両端にはビルの壁がそびえ立ち、抜け出すには触手で行く手を遮っているフォッシュの背後を通り抜けるしかない。本来であれば絶望的な状況、まさにフォーサイド・ソング。だが、リットリオであればもう一つの選択肢がある。 リットリオのパルクールなら素早くビルをよじ登ることが可能だ。さっき襲われたモータルは逃がした以上、無理してまでイクサをする理由はない。むしろ、カラテを繰り出せる体力が残ってるうちに逃げるべきだ。 「…テメェはいずれ…いや、絶対にブッ殺す。それまでせいぜいガタガタ震えながら日陰に引きこもってろ!」 そう言うとリットリオはふとましい太ももに力を入れ、ニンジャ跳躍力で垂直ジャンプ!フォッシュの触手は地面周りしか張り巡ってない故に、真上に触手らしきものは一切ない! 「シマッタ!?」フォッシュは慌てて触手を伸ばし捕まえようとするが。「イヤーッ!」足を掴む直前に、リットリオの蹴りが炸裂し触手は弾き飛ばされ失敗!それどころか足場として利用され更に追加で垂直ジャンプ! 「バカナーッ!?」「バーーカッ!そんな単純な妨害が通じるかよ!オタッシャデー!」 リットリオは中指を立てながら舌を出し挑発しながら、素早く壁のわずかなでっぱりを掴み取ってはよじ登りこのまま屋上に到達… 「……とでも思ってましたか?イヤーッ!」「何!?…ア?」 リットリオは一瞬驚き下を覗き込むが、触手は一本も近づいて来てない。リットリオは訝しんだ。なら先ほどのカラテシャウトと発言は何だったのか?ただのヤバレカバレ?だがリットリオのニンジャ第六感は危険信号を鳴らす…その時だった。 「…ん?」 壁を掴んでいた右手に冷たく、だが気味の悪い感触が走る。虫か何かと思い叩き潰そうと視線を向けた。 「えっ」 それは、フォッシュの触手だった。触手が右手を絡めとって離れないよう掴み、先端部分は撫でまわすように手のひらをくねくねと触れ続ける。 (いったいどこから、何時からここに、いや、ここで動きを封じられるのはマズイッ!) 「イ…」「イヤーッ!」「ンアーッ!?」 チョップで触手を切断しようとした左手を、別の触手が掴み取りインターラプトを行う! その瞬間、リットリオは触手の出現個所に気づくことができた。これらの触手は下から高速で這い上がってきたものではない、リットリオがよじ登っていた壁から生えてきたのだ!そう、フォッシュはただ地面に突っ立てたわけではない。植物の遺伝子からなる生命力と、タコの柔軟な性質が壁の隙間という隙間にも触手を張り巡らせることを可能とし、既にリットリオが逃げ出そうとしてた時にはどの場所でも即座に触手を出せる状態にあった!つまり、この場は既にフォッシュのフーリン・カザンとなっているのだ! 「クソッ!」リットリオは残された両足で壁を蹴り破り掴んでいる触手の根本を断ち切ろうとするが。「させませんよォ!イヤーッ!」「ンアーッ!」その行動を予測していたフォッシュにより足も触手で拘束!それも両足を同時にだ! 「体力が少ないとはいえこれ以上暴れられたら困りますからねぇ…抵抗した罰です!少し、痛い目に合ってもらいますよ!」フォッシュは壁の隙間という隙間からいくつもの触手を出現させリットリオの四肢を拘束!三重、四重と掴み取る触手の数は増えていく! 「離せ!このクソ植物もどきがッ!」自慢の丸太めいた足を動かそうとするがビクともしない事実に段々と絶望感を感じてしまう。それを誤魔化す為に怒りの声を絞りだす…が。 「イヒーヒヒヒ!無力!無力!無力なんですよォ!貴女は知らないでしょうけどこのバイオ触手は一本につきニンジャの腕一本と同等のカラテを発揮する!それを何本も貴方の鍛えられた腕とその汗だくでぶっとい脚一本に何本も巻いているんですよ!つまるりあなたは四本程度のカラテに対し私は百倍以上のカラテを持つ!バイオ生物学に基づいた確証なのですよォー!」 狂ったように満面の笑みを浮かべながら、フォッシュは両足を拘束した触手を動かす。 「あ、脚が勝手に!?」「どうせならスムーズに事を済ませたいですからねぇ、軽く足回りの関節をほぐさせてもらいますよォ」邪悪な笑みを浮かべながらフォッシュは触手に力を籠める。「関節…!?ヤメ…」「イヤーッ!」「ンアーッ!?」リットリオの言葉に一切耳を傾けず、フォッシュはリットリオの両足を左右に引き裂かれ180度開帳! 「ンンンアアアアアーッ!!」いくら運動神経が良いといっても準備運動もせず180度も開帳させられてはニンジャと言えど激痛が走り、リットリオは雄たけびのように悲鳴を上げる。そして、この激しい挙動により履き古していたホットパンツの耐久力が限界を迎え、ビリッ!という音を出し、あられもない姿をさらけ出される。 「ッ!?み、見るなァ!」「ヘェヘェヘェー…まさか緑色のレースを着用しているなんて…性格に見合わずカワイイですねェー!」「ブッ殺すッ!!ブッ殺してやるゥ!!」手足が動かせないため胴体をジタバタと揺らすことしかできない。 「アー…イイ―…私よりカラテがあるのにブザマな姿を晒してるのがイイー…ウッ!」気味の悪い笑みを浮かべてたフォッシュは一瞬体を痙攣させ、下半身から白いドロッとした液体を垂れ流す。「早く…早く楽しみたい!故に一瞬で終わらせましょうッ!」明らかに焦点の合ってない目をリットリオに向けながら、フォッシュは宣告を下した。 「ヒッ…」異常な挙動を前にリットリオはついに怒りより恐怖が上回る。その無防備な状態をフォッシュは見逃さない。「イヤーッ!」「ンアーッ!」触手はリットリオを空中でうつ伏せ状態のポーズを取らせ、両腕両足を背中の方へと折り曲げるように移動させ… 「イイィィヤアアアーッ!」「ンアーッ!?」リットリオの脚は強引に大股を開かされ、ユミめいて体を反らされる!「ンアーッ!」何度も何度も執拗に身体を反らされ、四肢全体に凄まじいダメージが入る。これぞ情け容赦ないヒサツ・ワザの一つ、ロメロ・スペシャルだ! 「さぁ私に…敗北する姿を見せなさいッ!イヤーッ!」「アバーッ!」リットリオの四肢は両手が両足を触れてしまうほどに完全に折れ曲がってしまった。「アバッ…アバッ…」リットリオは白目を向き涙を流しながら泡を吹き、露わになってる下着越しで失禁してしまった。 空中に固定されているのでリットリオの失禁は小規模ながらも雨のように降り注ぎ、その位置にいたフォッシュの体を濡らしていく。だが、フォッシュは避けようともせず、むしろ口を大きく開きながら真上を見上げた。 「アァーッ!イイ!スゴイ・イイ!爆発四散させちゃったんじゃないかと心配したけど余計な心配だった!君は最高だリットリオ=サン!母体に相応しい!まさに天女だッ!この降り注ぐ聖水の味は一生忘れないよ!君の敗北の味…なんて最高なんだァーッ!!ズルッ!ズルズルーッ!」 ――――――――― 「……この植物は」 リットリオが失踪して早や二日。薄暗い裏路地にてミコーめいた格好をし、背中には巨大なカタナを背負っている女ニンジャが、地面に落ちている枯れた植物を拾い上げた。 「最後にリットリオ=サンを見たという情報はここしかない、となれば調査の手がかりになりそうですね」 ミコーめいた女ニンジャは豊満な胸ポケットに植物をしまい込むと天を見上げた。 「…ブッダに祈るのはまだ早い。私がしっかりしないと、リットリオ=サンを助け出さないと…!」 彼女は…グラーフツェッペリンは確かな思いを胸にし、裏路地を後にした… ◆続く◆ ◆フォッシュ◆ タコと植物の遺伝子を持つ特殊なバイオ触手を操る恐るべき女ニンジャ。両腕両足に生やしており、実際の数は20本であるが、地面に植え付けるだけで脅威の繁殖と成長を遂げ、一瞬にして100本以上の触手を生成させる。本体と切り離された触手は急激に力を失い枯れてしまう。 元ヨロシサンに所属していたのもあり才能は確かだが、異常なまでに性欲が強く定期的にファック&サヨナラをしないと衝動を抑えきれない。 よりファックを楽しむ為に両性具のバイオサイバネを施した。