二次元裏@ふたば

画像ファイル名:1760804366369.png-(133747 B)
133747 B25/10/19(日)01:19:26No.1364180460+ 03:33頃消えます
ドアがゆっくり開く音が、夜の静けさに響く。顔を上げると、さっきまで眠っていたはずの同居人が立っていた。
「ごめんな。起こしちゃったか」
彼女──ミスターシービーが寝息を立てているのを確認して、なるべく静かにベッドを抜け出してきたつもりだった。だが、やはり隣で寝ていた者がいなくなるというのは、鋭敏なウマ娘の感覚を刺激せずにはいられないのだろう。
「いいよ。アタシもちょっと眠れなくてさ」
そんなときでも彼女は、椅子を片手にいつも通りに笑っている。起こして申し訳ないと思うと同時に、こんなときでも変わらない彼女の陽気さが疲れた身体に染み渡った。
125/10/19(日)01:20:03No.1364180608+
「仕事?」
「ああ。どうしても急ぎでな」
急な仕事の連絡というのは誰しも気分のよいものではないが、それが好きなひとと過ごす休日の昼下がりともなれば、不愉快さが顔に出るのを抑えるのに随分苦労した。
しかし、仕事は仕事である。こなさなければ最終的に不利益を被るのが担当のシービーである以上、投げ出すという選択肢は存在しない。そう腹をくくると、同時に妙な意地が湧いてきた。彼女と語らう時間をできるだけ損ねずに、この仕事を片付けてしまおうというこだわりが生まれたのだ。
もうすぐ日付も変わろうかという夜更けにのそのそ寝床を抜け出して仕事にとりかかっていたのは、概ねそんな理由である。夜が明けぬ内に片付けて、何事も起こらなかったように彼女の隣に戻って朝を迎えるというのが理想だったのだが、彼女が起きてしまった時点でそれは叶わない。
225/10/19(日)01:21:19No.1364180888+
「明日のきみのほうが、うまくやってくれるかもしれないよ。
ああ、でも──」
「明日の俺はもう先約済だろ」
とはいえ、明日に回すというのはもっと考えられないことだった。明日は彼女とちょっとした旅行をするつもりで、どこに行こうかと語らいながら彼女を寝かしつけたのだから。
「大丈夫だよ。絶対今日中に終わらせるから。
シービーこそ寝てていいんだぞ」
「ふふふっ。別に無理して起きてるわけじゃないよ。
ここにいたいから起きてきたんだ」
微笑みを崩さずにそう話す彼女は、椅子を隣に置いてすっかり座り込んでしまった。かと思えばいきなり頭を差し込んで、画面を遮ってみたりする。
325/10/19(日)01:21:40No.1364180952+
「邪魔しにきたの。ふふっ」
「悪い子は撫でてやらないぞ」
楽しそうにしているのはいつも通りなのだが、普段の彼女はこちらがデスクワークをしていてもほとんど興味を示すことはなく、ふらりと抜け出して散歩に行っているということも珍しくない。トレーニングのスケジュールといった彼女と話し合って決めることならともかく、今回のような事務仕事は彼女が関わる余地がないのだから、こちらもそれが当然だと思っていた。
それだけに、わざわざ起き出して自分に関わりのない仕事を律儀に見守っているというのは、彼女にしては違和感のある振る舞いだった。
425/10/19(日)01:22:31No.1364181136+
左手の中にすっぽりと納まって、大人しく撫でられている彼女は、対して構ってやれないこちらに飽きた様子もない。
「本当にどうしたんだ?
手伝ってもらえることもあんまりないし、退屈だろ」
「うん。きみの仕事を見たいわけじゃないよ」
あっけらかんと言い分を認められて、ますますわからなくなる。楽しいことにどこまでも正直な彼女が、退屈な行為に時間を割くことはないのはよくわかっていた。
「じゃあ、なんでわざわざ」
「…きみのそばにいたいっていうのは、理由にならないかな」
耳元で恥じらうように囁かれたその言葉が、心の中をゆっくりと満たしていくまでは。
525/10/19(日)01:22:48No.1364181189+
隣に誰かがいなくて寂しいと、最後に思ったのはいつだろう。子供のころに一緒に寝てくれたお母さんがいなくなっていると、何か大事なものをなくしたような気がした。
目を覚まして隣に手を伸ばしてもきみに触れられなくて、アタシは迷わずベッドを抜け出していた。
自分でも可笑しくなってしまった。アタシはいつから、こんなに甘えん坊になってしまったんだろう。
「ずっと誰かと一緒にいるって、ちょっと息苦しいかなって思ってたんだけどさ。
きみの隣がこんなにぴったりはまるって、知らなかったんだ」
でも仕方ない。好きになってしまったんだから。
アタシの心が満足するまで、とことん付き合ってもらおう。
「だから、勝手にいなくならないでよ。
ここはアタシの場所だから」
625/10/19(日)01:23:11No.1364181280+
アタシがわがままを言うと、彼はいつも困ったように笑う。わがままを言われることが楽しいと思えてしまうことに、自分でも呆れてしまっているみたいに。
「ずるいなぁ。シービーはいつも勝手にどこかに行っちゃうのにさ」
そんな彼のくしゃっと笑う仕草が、どうしようもなく好きだ。アタシがどうしようもないくらい自由に取り憑かれてるとわかった上で、それでも好きだと言ってくれている気がする。
自分でも不思議だ。こんなに誰かが恋しいのも、その誰かのそばにいれば、退屈なこともあんまり嫌じゃないのも。
「…じゃあ、ひとつだけ頼んでもいいか。
肩に頭を乗せていてほしいんだ。寄りかかってくれていい」
きみが笑ってくれるなら、なんでもいいかなって思えるのも。
725/10/19(日)01:23:37No.1364181381+
「ふふ。
アタシが言うのもなんだけどさ、重たいだけじゃない?」
「いいよ。
シービーがここにいてくれるって、感じていたいんだ」
アタシがそばにいるだけで幸せって思ってくれるのが、こんなにもうれしいのも、本当に不思議だ。
825/10/19(日)01:23:59No.1364181458+
無機質なはずのキーボードの音が、今はひどく心地いい。たまに手を止めて頭を撫でてくれると、もっともっとくっついていたくなる。
今度、お母さんに訊いてみようかな。
お父さんを好きになったときも、こんな気持ちだったのかな、って。
925/10/19(日)01:24:21No.1364181528+
いつの間にか、彼の肩で眠ってしまったらしい。ぱたりとノートパソコンを閉じる音で目を覚ますと、結局最後まで彼を手伝うでもなく、ただ甘えていただけだったなと思わず苦笑してしまった。
「ありがとう、シービー」
アタシがまだ眠っていると思っているのか、彼は小さな声でそっと呟いた。
今すぐ抱きしめたいくらいだったけれど、その余韻に浸る間もなく、いきなり身体が浮き上がった。意外にも彼は力持ちで、アタシを横抱きにしてもふらつく様子は少しもなかった。
うれしいけれど、徹夜明けの身体には堪えるだろうとも思ったから、一応起きているということは彼に伝えることにした。
「歩けるよ」
彼は少し驚いたようだった。けれどその足はほんの少し立ち止まっただけで、アタシを抱く腕に籠る力は少しも弱まらなかった。
「いいんだよ。俺がこうしたいんだ」
少しむきになったように口にしたその言葉が、ひどくうれしかった。意地を張ってでもアタシを大切にしてくれるきみが、たまらなく愛おしかった。
「ふふっ。じゃあ、お願いしようかな。
きみの腕、気持ちいいから」
1025/10/19(日)01:24:39No.1364181588+
アタシが抱きついたのか、彼が抱きしめたのか、わからなかった。多分同時にそうしたのだと思う。
おかげで、二人して飛び込むようにベッドに転がることになった。二人分の体重でスプリングが深く沈んで、海の底に沈んでいくみたいだなんて思ってしまった。
「くすぐったい」
彼の腕の中で鼻先を動かしていると、頭上から優しい抗議が飛んできた。どうやら息が当たってこそばゆかったらしい。
「しっくりくる場所を探してるんだ。
でも、やっぱりここが一番いいな」
こうやって何回も抱き合って、ぴったり収まる場所も大体分かっている。思いも寄らない場所がフィットしたら面白いのにとも思うが、今よりいいところはそうそう見つけられない。
あったかくて、たくましくて、きみの匂いがする。

「きみをいちばん感じられるところだから」
きみの胸元が、アタシはいちばん好き。
1125/10/19(日)01:24:56No.1364181644+
「朝の散歩に行くときもさ。ここから出たくないなってたまに思っちゃうくらい居心地がいいんだ。
今度からきみも起きてよ。一緒に散歩行こ」
少し朝が弱い彼に半分寝ぼけたまま可愛らしく抱きつかれると、いくらいい朝でも少し決心が揺らぎそうになる。そういう日は散歩から帰ってきた後にそのことを思い出してしまって、いつもよりきみとくっついていたくなるんだ。
きみもそんなにさみしいなら、アタシと一緒に起きればいいのに。
「ほどほどの時間で頼むよ」
1225/10/19(日)01:25:09No.1364181690+
暖かくて気持ちよくて、瞼がどんどん重くなる。きみともっと話していたいけど、このままきみと一緒に眠りに落ちるのも捨てがたい。
「…明日はどこに行きたい?」
一緒にいればいるほど、もっとほしいと思ってしまう。微睡みをさまようきみの声に、寝ながらでも答えられたらいいのにな。
「北がいいな。できるだけ寒いところ」
だから、夢を見ることにしよう。きみと過ごす時間を、どんなふうに彩るかを考えながら。

「いっぱい歩くからさ。あっためてほしいな」
起きたらまた、きみがほしくなってしまうかもしれないけど。
1325/10/19(日)01:25:50No.1364181848そうだねx2
おわり
CBは本質的に猫なので仕事してると邪魔しにくる
1425/10/19(日)01:27:38No.1364182300そうだねx1
いっぱい振り回してくる代わりにいっぱい愛してくれる女
1525/10/19(日)01:32:41No.1364183379+
キーボードの上に寝っ転がるタイプの猫いいよね
1625/10/19(日)01:34:25No.1364183734+
一緒に寝たくなってハンモックからシビトレの布団に移ったら寝ながらベストポジションで抱きしめてくれて嬉しくなったことがありそう
1725/10/19(日)01:43:29No.1364185528+
CBと温泉行きたいねぇ
新シナリオでいっぱい浸かれるかな
1825/10/19(日)01:50:53No.1364186854+
普段は爽やかなのの甘えるときはしっとりなのいいよね
1925/10/19(日)01:53:24No.1364187328+
すんすん匂い嗅いでくる
2025/10/19(日)01:56:56No.1364188001+
2125/10/19(日)02:00:48No.1364188657+
朝ごはん作っててもたまにくっつきに来ててほしい
2225/10/19(日)02:11:10No.1364190280+
一緒にいるだけでにこにこ嬉しそうに笑ってるときがある
2325/10/19(日)02:20:45No.1364191625+
猫なので後頭部の髪を手で梳かれるのが好き
2425/10/19(日)02:32:10No.1364193036+
朝起こして一緒に散歩に行くかもうちょっと寝顔を堪能するか迷うCB
2525/10/19(日)02:35:08No.1364193371+
かわいい
それしか言えない
2625/10/19(日)02:37:02No.1364193593+
猫だけど吸ってくる


1760804366369.png