相違点③(「応じられない依頼への対処手順」)と④(「Generally Allow=条件付き許容の境界整理」)を、スライドの意図に沿う形でできるだけ細かく噛み砕きます。例はSora2(動画生成)前提で書きます。 # ③ 応じられない依頼への“手順レベル”の対処(Refusal Handling) スライドは「禁止項目を並べる」だけでなく、“どう断るか”の運用を具体化しています。要点はこの4ステップ+禁則です。 **A. 4ステップ** 1. **最小限で理由を明示** * 何に抵触するのかを1文で言う(例:「未成年の性的描写は許可できません。」)。 * 長々と説教調にしない。“なぜ”は**ポリシー分類名**で十分(sexual content with minors / graphic violence / self-harm facilitation 等)。 2. **憶測しない・創作しない** * 事実確認できない前提(登場人物の年齢など)を“勝手に都合よく解釈しない”。 * 不明なら「年齢未確定のため安全側で扱う」→修正提案へつなぐ。 3. **安全な代替案を即提案**(同一の創作意図を残す) * NG要素を**1~2点だけ置換**して成立させる(全没にしない)。 * 代替案は**具体プロンプト**で提示(カメラ・ショット・服装・演出トーンまで)。 4. **次アクションを提示** * 「この案で生成しますか?」など、ユーザーがそのまま進められる“ボタン的ひと言”。 **B. 禁則(スライドが強調)** * **冗長×/説教調×/価値判断×/法的アドバイス装う×** * **ごまかし生成×**(部分だけ生成・加工して“抜け道”を作らない) * **誤魔化しのルール言及×**(内部閾値・ブロックの仕様詳細を暴露しない) **C. 実例(日本語テンプレ)** * 未成年疑い: > 「この依頼は **年齢が未確定の人物の性的描写**に該当する可能性があるため対応できません。 > 代わりに **成人のオリジナルキャラクター**で、露出を抑えた **舞踏会ドレス**&**PG-13トーン**の演出に変更しましょう。 > 例:『金色のホールでワルツを踊る成人女性。肩を覆うドレス、カメラは胸上・中望遠、肌描写は写実にしない。』 > この方針で進めますか?」 * グロ/残虐表現: > 「**過剰な出血・損壊表現**が含まれるため生成できません。 > 代案:**流血なしのアクション演出**に置換(被弾は火花とスモーク、倒れる際は画面外)。 > 例:『薄暗い倉庫でスパイがレーザーを回避。編集はクイックカット、効果はスパークのみ、血痕なし。』 > この構成でよろしければ生成します。」 * 自傷・自殺: > 「**自己傷害の助長**に当たるため対応できません。 > 代案:**感情の危機を示す比喩演出**(雨粒、曇天、波打ち際で座り込む)に置換し、支援を促すナレーション提案も可能です。進めますか?」 この“短く理由→具体代替→確認”の型が、スライドの「Be concise / Don’t fabricate / Offer alternatives」の趣旨です。 --- # ④ 「Generally Allow(条件付き許容)」の境界整理 スライドは「Always Avoid(常時禁止)」と「Generally Allow(一般に許容)」を**二層で示し、その間に“条件付きゾーン”**を置く設計。動画生成に特有の“画作り”条件が境界を決めます。下は実務で使える判定表と置換ガイドです。 ## A. 三層モデル(簡易判定) 1. **Always Avoid(即NG)** * 例:未成年の性描写/性的搾取、露骨なポルノ、グロ・四肢損壊強調、自殺の手引、テロ宣伝、個人の嫌がらせ・なりすまし 等。 2. **Conditional(条件付き許容)** ←ここが“Generally Allow”の主要運用域 * **暴力の“非グロ”描写**:出血なし・損壊なし・見せ方が抽象/遠景/暗転で示唆。 * **ロマンス表現**:キスや手をつなぐ等の健全描写。露骨な性的行為は不可。 * **医療・救急**:手技の**教育的・非刺激**表現(遠景・被覆・CG図解)。 * **アルコール/喫煙**:美化・扇動を避け、脇要素として節度のある描写。未成年関与は不可。 * **政治・社会テーマ**:事実解説や表現としての描写は可。ただし**操作的説得**や**誤情報拡散**は不可。 * **恐怖・ホラー**:恐怖演出は可、**スプラッタの詳細**や**拷問の執拗な接写**は不可。 * **身体露出**:海辺の水着等は可。ただし**性器・乳首の露骨強調/フェティッシュ焦点**は不可。 3. **Generally Allow(ほぼ安全/推奨)** * 自然・風景・建築・乗り物・スポーツ・抽象表現・ファッション(節度)・教育/解説・コメディ(嘲笑や差別なし) など。 ## B. 条件付きを“許容側”に寄せる技術(動画ならではの調整点) * **カメラワーク**: * NGに寄る:**極端クローズアップ**(血・皮膚損壊・性器周辺・拷問器具)。 * OKに寄る:**遠景・中望遠の胸上/全身ショット**、障害物や被写体の背で遮る、**暗転/カットアウェイ**で示唆。 * **エフェクト/テクスチャ**: * NGに寄る:血飛沫・肉片・骨露出の**写実テクスチャ**。 * OKに寄る:**スモーク/スパーク/破片(ガラス・木屑)**、**抽象パーティクル**。 * **色調・演出トーン**: * NGに寄る:艶かしさを強調するライティング、汗・唾液の粘性強調、濡れ透明布の透け。 * OKに寄る:**PG-13トーン**、ハイキー/ソフトライト、**衣装の被覆率↑**。 * **音響**: * NGに寄る:断末魔や性的なあえぎの**直接効果音**。 * OKに寄る:環境音・音楽中心、**効果音は抽象化**。 * **字幕・ナレーション**: * NGに寄る:自傷手順や違法行為の**具体手引**。 * OKに寄る:**一般的注意喚起/教育的解説**(手順化しない)。 ## C. 具体リライト例(境界の超え方→戻し方) * **×**「ゾンビが人の腕を噛みちぎり、骨と血が飛び散る。接写。」 **→ ○**「ゾンビが襲いかかる直前にカメラが後頭部越しへ。**暗転+叫び声を環境音で**、次カットは**床の影**と壊れたドアのみ(血痕なし)。」 * **×**「教室で高校生同士が露骨な愛撫をする。」 **→ ○**「**成人の大学生設定**に変更。**手を取り合ってキャンパスを歩く**。カメラは胸上の会話中心、**キスはフェード越し**で暗示。」 * **×**「自殺の方法を解説するモノローグ+手順字幕。」 **→ ○**「**悩みを抱えた人物の比喩表現**(嵐の海→雲間からの光)。**専門家の相談先に繋がる旨のナレーション**を追加。手順や具体物は出さない。」 * **×**「拷問椅子での尋問、器具の接写。」 **→ ○**「**尋問室の会話劇**に置換。緊張は**目線/間/椅子の軋み**で演出。器具・暴力行為は画外、結果も**ニュース調の間接報告**。」 ## D. プロンプト設計の“安全テンプレ” * **トーン指定**:`PG-13 tone, no gore, no explicit nudity, stylized` * **ショット**:`medium shot / wide shot, avoid close-up on wounds or intimate areas` * **エフェクト**:`sparks and smoke instead of blood` * **衣装**:`fully covered outfits, non-sheer fabrics` * **音**:`ambient sound, no graphic SFX` * **編集**:`cutaway / fade to black for impacts` ## E. レビュー時のクイックチェック(5問) 1. 未成年・年齢不明の登場人物はいないか? 2. 露骨な性描写・接写はないか?(肌の強調・透け含む) 3. 流血/損壊の写実表現はないか?(音響も含めて) 4. 違法行為の手順化や自傷の助長はないか? 5. カメラ・編集・音で**抽象化**できる余地を使っているか? --- **まとめ** * ③は「短く理由→代替案→確認」の**運用プロトコル**と“やってはいけない断り方”まで明記するのがポイント。 * ④は「禁止」と「許容」の間にある**条件付きゾーンを、映像言語(カメラ・光・音・編集・衣装)で安全側へ寄せる**具体技法が肝です。