二次元裏@ふたば

画像ファイル名:1759662267315.png-(76040 B)
76040 B25/10/05(日)20:04:27No.1360007901そうだねx9 21:13頃消えます
ガラガラ──
手で押している台車の音がやたらと大きく聞こえる。
埋まっていた小石に車輪が乗り上げて、載っていた荷物が音を立てて揺れた。
「……」
「……」
隣を歩く、台車に乗り切らなかった荷物を抱えた立希ちゃんをちらりと見る。
仏頂面とまではいかないけど真っ直ぐ前を向いたままで、私は何も話しかけることが出来ずにいた。
先生に授業の片付けを頼まれて、立希ちゃんと倉庫へ行く道すがら。
私も立希ちゃんも一言も喋らず、ただ黙って歩いていた。
そのせいなのか、大した距離でもないのにとても長く思えてきて、私が押す台車まで重く感じる。
そうして気まずさも一緒に運んだまま倉庫に着く。
使った道具は扉を開けたすぐ近くのものばかりで、片付けは呆気なく終わってしまった。
けど、知らない仲でもないしまた無言で教室へ戻るのは居心地が悪い。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
125/10/05(日)20:04:38No.1360008001+
「片付け、すぐ終わったね」
「まあ…」
努めて明るい声の私に、うんともそうだねとも答えず立希ちゃんは小さく頷いて返した。
どうしよう、もしかしたら機嫌が悪いのかもしれない。
そうとは知らず話しかけてしまった。
取り繕おうと慌てて、頭が真っ白なままとっさに浮かんだ言葉を口にする。
「え、えーと…その、教室に戻る前にジュース買おうかな…」
「…じゃあ私は先に戻ってるから」
「あ…」
私は口を閉じてただ俯いた。話しかけちゃいけなかったんだ。
立希ちゃんからの視線を感じて、余計顔を上げられなくなる。
もうこのまますぐにでも教室へ戻りたかった。戻ろう。
振り返って倉庫の入口を見たとき、誰かが立っていて私は驚いて声を上げそうになった。
私をまっすぐに見つめてくる、左右の色が違うまん丸の瞳が爛々と輝いているようにすら見えて。
「楽奈!?」
225/10/05(日)20:04:51No.1360008121+
薄暗い倉庫に目が慣れていた私には、日が差し込む入口に立っていた彼女が一瞬分からなかった。
なんてことはない、立希ちゃんのバンドのメンバーだった。
「お前なんでここに…」
立希ちゃんの驚いた声。
突然現れたことよりも、なぜ今この場に居るのかを問いただすような。
名前を呼ばれた人影──楽奈ちゃんはきょとんとした顔を私達に向けている。
「寝るのにあきたから。散歩してた」
「いや、授業あるでしょ」
「?」
「ああもう…」
授業の終わり際に片付けを頼まれた私達と違い、中等部の制服を着ている彼女が今この場にいるということはつまり…
私は立希ちゃんの呆れ顔の意味が分かった。
肝心の楽奈ちゃんは何処吹く風で、倉庫の中を見回している。
「りっきーは?」
325/10/05(日)20:05:28No.1360008492+
「私は頼まれて片付けしてただけだから」
だから遊んでいるわけじゃない、という立希ちゃんの言葉に、楽奈ちゃんはただ「ふーん」とだけ返した。
そうして倉庫の中をキョロキョロと見回していた楽奈ちゃんの視線は、あるものを見つけて止まった。
何も言わずその上に乗る。
「押して」
まん丸の瞳が、私をじっと見つめてきた。
私がハンドルを握る台車の上、そこにちょこんと座っている楽奈ちゃんの意図が分かって、けど分からなくて私は声も出せずに戸惑うしかなかった。
動けない私を余所に、立希ちゃんが楽奈ちゃんの腕を掴んだ。
「…野良猫! 台車から降りて!」
「んーん。押す」
「三角さん、聞かなくていいから」
「え、ええと…」
三角さんも野良猫を降ろすの手伝って。
そう訴えかけるような立希ちゃんの目線に促されて、私は楽奈ちゃんと再び向き合う。
私をじっと見つめて、おねだりする目。
425/10/05(日)20:06:11No.1360008833+
その目はよく知っていた。
多分私は、困ったような顔して笑ってるんだろう。
「…じゃあ一回だけだよ?」
「はぁ!!?」
おねだりが通って、こちらを見つめる楽奈ちゃんの瞳がきらりと輝く。
「やったあ!」と無邪気に喜ぶ声が聞こえた気がした。
思い出すことなんて、私にそんな資格はないのに。
「楽奈ちゃん、しっかり捕まっててね」
だからもうこれ以上は考えないようにして、笑顔を作ってみせた。
楽奈ちゃんがこくりと頷くのを見てから、台車のハンドルをぐっと握り直す。
「行くよ…それ!」
小柄とは言え1人分の重さが乗った台車は重い。けど押し始めたら案外するすると前に進んでいく。
下手に動かしたら楽奈ちゃんを落としてしまいそうだから、真っ直ぐ進むだけ。
そうして進んだ先でゆっくりUターンして、また立希ちゃんの前まで戻ってくる。
「…はい、おしまいだよ」
525/10/05(日)20:06:26No.1360008933+
ふう、と息を吐いて台車を止めた。
すぐに楽奈ちゃんが振り返って、こちらをじっと見てくる。
「もう一回」
「一回だけって、約束したよ?」
「んー」
楽奈ちゃんは名残惜しそうに、けど素直に台車から降りてくれた。
立ち上がって私をちらりと見て、そのままスタスタと歩き去っていく。
「ありがとう」も「またね」もない。
やりたいことだけやって、用が済んだらあっさりとまた違う何かを探しに行く。
私はその無邪気さに呆気にとられて、けどどこか懐かしさも覚えていた。
「自由だなあ…」
「あいつはああいう奴だから」
零すようなつぶやきに、呆れた様子の立希ちゃんが話しかけてくれた。
はぁ、と肩を落とすように息を吐く立希ちゃん。
625/10/05(日)20:06:38No.1360009051+
「えと、大変だね…?」
「…まあ、かなり」
本当に大変なんだなあって、諦めた顔を見てなんとなく察する。
沢山の苦労がその声からにじみ出ていた。
立ち去っていく楽奈ちゃんを見ていた立希ちゃんが、私の方へ少しだけ顔を向けてくれた。
さっきまであった緊張感というか険というか、そういうものが取れたように感じる。
「三角さん、ああいうの慣れてるんだ」
「え?」
「年下の扱いに慣れてる感じ」
一瞬だけ呼吸を忘れて、けれどすぐに私は笑顔を浮かべた。
この仮面の下は、祥ちゃん以外に知られてはいけないから。
「そうかな…」
「見た感じ。私よりは全然上手いし」
思い出しちゃいけないのに。
名前も夢も奪って、酷い裏切りをした私を。
725/10/05(日)20:06:55No.1360009149+
「そっか…そうだったら嬉しいな」
なのに、嬉しいと思う自分がいる。
妹に、初華に、私は姉として上手に接していたとは思えない。
けどそれを知らない誰かから、私の中にお姉ちゃんらしい部分を見つけてもらえたこと。
そのことを喜んじゃいけないって気持ちと同時に、嬉しいと思えた。
「…まあいいや、私達も教室行こう」
「あ、うん」
楽奈ちゃんとは別方向へ歩き出した立希ちゃんに私も続く。
また会話が無いまま教室に戻るんだろうな、と思った時だった。
「…さっき、ジュース買うって言ってなかった?」
ぽつりと、立希ちゃんが呟いた。気不味さから咄嗟に出した口実を、覚えていてくれた。
「え…?」
「別に、買いたいなら付き合うけど」
ぶっきらぼうな言い方。でも、その横顔はさっきまでの仏頂面とは全然違って見えた。
私は今度こそ素直に嬉しくなって、小さく笑った。
825/10/05(日)20:08:58No.1360010124そうだねx2
✨️ し感
🐼💦ま涙
✨️ し
  た
  !
925/10/05(日)20:11:03No.1360011114+
久しぶりに気合い入った怪文書来たな…
1025/10/05(日)20:12:15No.1360011668そうだねx4
感涙したんだもん🌈
1125/10/05(日)20:12:46No.1360011900+
…わたくしも乗りますわ
1225/10/05(日)20:14:29No.1360012520+
私からお姉ちゃん取らないで!!!
1325/10/05(日)20:25:32No.1360016643そうだねx2
浮気ですか?
1425/10/05(日)20:40:56No.1360023459+
いいよねたきはつ…
1525/10/05(日)20:43:51No.1360024754+
いいね…ガルパでも続編アニメでもいいからもっとこの2人の絡み増えてほしい
1625/10/05(日)20:52:17No.1360028461そうだねx1
花女組はどう絡んでもいい味出すよなって
1725/10/05(日)20:55:47No.1360030058そうだねx2
>花女組はどう絡んでもいい味出すよなって
三人ともコミュ能力にちょっと難ありだけどこいつら同士で組むとなんか上手く回りそうなんだよな…
1825/10/05(日)20:59:43No.1360031772そうだねx1
>✨️ し感
>🐼💦ま涙
>✨️ し
>   た
>   !
そうなんだ
1925/10/05(日)20:59:52No.1360031840+
>感涙したんだもん🌈
初音はもんなんて言いませんわ…あなたは誰ですの…
2025/10/05(日)21:00:17No.1360032066+
浮気ですか?
2125/10/05(日)21:01:08No.1360032452+
初音🩵わたくしもゴロゴロしてくださる🩵
2225/10/05(日)21:04:09No.1360033706+
りっきーはポエマー兼ボーカルに弱い
2325/10/05(日)21:07:47No.1360035350+
初華にはそれなりに態度が丸いイメージだけど
これくらい突き放した事言う日もありそう
2425/10/05(日)21:08:27No.1360035674+
台車に人を乗せるのはカーブの時などに危険があるのでやめておいた方がいいですよ三角さん
2525/10/05(日)21:08:57No.1360035909+
>りっきーはポエマー兼ボーカルに弱い
初華をか弱いやつ認識したらすごい保護に回りそうで
2625/10/05(日)21:09:59No.1360036348+
初立楽の珍しい組み合わせですごくいい話だった…
なんというか花女組ってクラスメイト二人に接点強い海鈴が起点のイメージだったから海鈴いない味付けが新鮮だった


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