9/1頃のスレでやかましかった兄上オーコメをお借りしています。

-1-

(見張りを兼ねて適当な鬼に預けておこう、まず堕姫はダメだアレは頭が悪い、玉壺と半天狗はどうなのだ……？)
1.黒死牟……でいいのか？
2.童磨は人間を飼っているしそれでいいだろう
3.猗窩座は女を食わないから問題ないだろう
dice1d3=1(1)

血を分けたのは黒死牟、ならばこのまま黒死牟に任せておくのが道理ではある……が……？
1.まあいいか……
2.でもコイツ前回やらかしてるしな……
dice1d2=2(2)

妙な予感がする。無惨は眉間を押さえながら、かつての忌々しい記憶を払拭するように思案を続けた。
「あー、童磨なら人間の扱いには慣れているだろう──」
「──無惨様……はい……はい……無惨様……発言の許可を……私に……」
するといつの間にか視界の内で座していた黒死牟が食い気味に挙手をしてくる。正直、今はあまりこの男を意識の端にも置いておきたくはないのだが。
「……何だ黒死牟、珍しく饒舌ではないか」
「はい……無惨様……。私が……責任を持って……その隊士を……預かります……。そのお役目は……上弦の壱たる私が……適任かと……」
「あえて言わせてもらうぞ。お前は過去に連れてきたあれを取り逃しているだろう、忘れたとは言わせんぞ」
「は……二度と……斯様な失態は……」
「確か、あれはお前の継子だったか。叛心が無いのは分かっている、だがあれと関わるとどうにもお前の思考は著しく鈍るらしい」
「……あれは、……あのような者、ただの犬に過ぎず……。私情など……挟まる余地すら御座いませぬ……」
「ふん……それで、任せろとは言うが、お前にはその犬の管理が満足に出来ると言うのか？」
その実力や働きこそ信頼に価するが、とはいえ上弦の壱にわざわざ牢番のような些事を任せるのは考えものではないか。
最終的に取り込むことが出来ればそれでいいのだから、別に賓客として饗すだとか傷付かぬよう厳重に保管しておく必要などはない。
あの人とも鬼ともつかぬ女が逃げ出さぬよう監視下に置くことのみが肝要だが、その一点に於いて過去に失敗した黒死牟に同じ任を与えることにはどうしても懐疑的だった。
「無論……過ちを文る真似など致しませぬ……。悲願達成までの間……万事お任せを……」
「その意気は良い。しかし」
「犬の面倒は……きちんと見ます……。餌も……定刻に与え……湯浴みの世話も……毎日行い……城の清掃も……欠かさずします……」
「おい、捨て犬を飼う飼わないの交渉になってないか」
「絶対……散歩も忘れず……連れて行くので……」
「その言い振りではいずれ私が散歩させることになるではないか！！　そもそも外に連れ出すなと言っているのだ！！」

-2-

恥も外聞もかなぐり捨てたスローテンポな直談判に痺れを切らした無惨からどうにか赦しを得て、見苦しくも「」の世話役を勝ち取った黒死牟であったが、その面持ちは平時と変わらず読み取り難い。
未だ目を覚ます様子もない「」を持ち上げると、でたらめな構造で続く廊下をひたすら進み、炊事場など人間が最低限暮らせるだけの設備が整った居室まで向かう。
城内にそのような部屋を設ける意味はあるのかと疑問に思わなくもないが、現に今それを必要としている立場としては、深く考えずその恩恵にあやかるのみ。

歩みは止めないまま眼下に抱えた死体を見遣る。
先刻預かって以降ぴくりとも動かないそれは血色の失せた青白い瞼を閉ざしたまま、黒死牟の足運びによってその前髪だけを静かに揺らしていた。
似たような状況に覚えがある。

稽古を終え、疲労困憊で寝入った少女の姿。
踏み分けられて辺りに散った野草の香、汗ばんだ額に張り付いた前髪、上気した桃色の頬、抱えた背中から衣越しに伝わる熱、穏やかな寝息と連動して上下する肩。

しかし、そんな記憶とは決定的に、何もかもが異なっている。
背恰好が変わったから、というだけではない。
己が今触れているそれは、ただ手酷く嬲られて事切れたであろう一介の女の物言わぬ亡骸でしかなかった。

-3-

やがて目的の一室まで辿り着くと、黒死牟は「」を片腕で担ぎ直し、もう片方の手でそろりと襖の引き手を開けた。
室内は予め灯された照明で薄ぼんやりと赤らんでおり、冷え冷えと白んだ死体の肌も僅かながらに色付いているように思えた。
「」を寝所の中央に敷かれた薄い布団へ静かに横たわらせると、黒死牟は辺りを見渡す。
四方の襖の先は調理場や風呂に続いているらしい。
鬼となってからも娯楽として碁を嗜みはすれど、こうも明確な人の営みのための設備に囲まれるのは黒死牟にとって随分と久しい事態だった。
これらを享受すべき者は未だ起き上がる兆しすら見せず、乾ききった血泥に塗れて擦り切れた隊服の黒色が寝具の白に映えるばかりだ。

──さて……自分から立候補したものの、何の世話から始めるべきなのか。
1.食事にするか……
2.風呂に入れるか……
3.それとも……
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