ええ、大丈夫ですよ。いえいえ、お気になさらず。冒険者パーティの仲間たちと受けた仕事が少し前に済んで、今はちょうど暇していたのところなので。刑事さんの方こそお疲れ様です。それでええと、地取りと言うと要するに聞き込みですよね。何かあったんですか?  なるほど、このあたりで最近不審な人物を見かけなかったかと。不審な人物ねえ、うーん、そうだなあ…思い当たる節はないですねぇ。僕は生まれも育ちもここなもので、怪しいやつがいたらおそらく気付いていたと思うんですよ。それが心当たりが無いので…ええ。たださっき言った仕事の関係で幾日か家を留守にしていた時のことは分からないのですが…ええ、はい。いえ、こちらこそ。お力になれず申し訳ない。  ああ、でも妹に聞けば何か違うかもしれませんね。妹は優秀な魔法使いですから。ほら、同じ冒険者でも戦士と魔法使いでは見えている世界が違うと言うじゃないですか。妹だったら僕とはまた異なるものが見えていたかもしれないと思って。そうだな…よし、少しだけ待ってもらっていてもいいですか?今は買い物に出かけていますが、もうすぐ帰って来るので。  ん?僕に妹がいたのかって?もう、嫌ですね、刑事さん。そんなの当たり前じゃないですか。僕はお兄ちゃんなんですから。あれ、それとも刑事さんには妹の話をしたことはありませんでしたっけ?あー…しまったな。このあたりの人たちはみんなもう知っているものだから、刑事さんもそうだと勘違いしていたみたいだ。  僕の両親は僕が生まれてすぐに亡くなったから兄妹はいないはず?あはは、ええ、僕もずっとそう思っていましたよ。でもそっちが間違いだったんです。思い出したんですよ、妹がいたと。こんなに大事なことを忘れていたなんて、僕はどうかしていたんでしょうね。うん、そうだ、今までがおかしかったんだ。妹にはお兄ちゃんが、お兄ちゃんには妹がいないと。  はい?だから思い出したんですってば。義妹じゃありませんよ、正真正銘の妹です、変なことを聞きますね。妹は妹ですよ。他に何がありますか。僕は子供の頃からずっと一人でしたが、今は子供の頃からずっと一緒だった妹がいるんです。やはり持つべきものは妹ですよ。恋人や夫婦は恋人や夫婦でなくなることがありますが、兄妹は何があろうとも兄妹なんですから。  おや、どこに行くんですか、刑事さん。そう急かないでくださいよ。本当にもうすぐ帰って来ますから。ああ、ほら、帰って来た。ね?  おかえり、ニウト。そう、こちらはこの前話した刑事さん。事件というほどではないけど、ちょっと気になることがあったらしくてね。このあたりで不審な人物を見かけなかったか聞いて回ってるんだそうだ。  ああ、そうだ。ちょうどいい。クランクさんとジャンマリーも刑事さんに協力してあげてくれないか?