二次元裏@ふたば

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171079 B25/09/27(土)22:06:38No.1357433314そうだねx2 23:29頃消えます
「アルヴ……!スティルが……!」
「わかってます。ただ、あのひとが何処にいるかは知りません。」
「もしかしたら……もうここには……。」
「いるわよ。……います。あのひとは、絶対に何処かにいる。そして…貴方を待っている。」
「…あのひとに伝えてください。早くしないと、もう私に追いつけないわよって。」


私の言葉を聞くや否や、彼は″あのひと″を求めて走り去っていった。
まったく世話が焼ける。でも彼ならきっと大丈夫。″あのひと″を見つけて帰ってきてくれる。
──────そう、思っていた。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
125/09/27(土)22:08:04No.1357433836+
1日。帰ってこなかった。まぁいくら彼でも1日で見つけられるのなら他の人がすでに見つけている。気にしなかった。
一週間。帰ってこなかった。手こずっている?彼は″あのひと″を見つけるのは得意なはずだけれど。気にしなかった。
一ヶ月。帰ってこなかった。私もレースに向けたトレーニングで一瞬忘れかけていた。いけない、私が覚えてないと。
二ヶ月。帰ってこなかった。…あれ?私は誰を待っているんだっけ…?忘れかけている自分が嫌だった。忘れないように手帳に記す事にした。机にも″あのひと″がトリプルティアラをとった時の記事を張りつけた。
225/09/27(土)22:08:16No.1357433902+
三ヶ月、四ヶ月、五ヶ月。…帰ってこなかった。夏合宿中にふらりと帰ってきていてほしかった。けれど結局″あのひと″のことも彼のことも誰も話題にしない。流石におかしい。行動に移さないと−ーーそう思った時、不思議な事に一瞬私はあの2人の事を忘れてしまう。そして翌日同じ事を繰り返している。″あのひと″の同室だったネオユニヴァースさんに聞いてみた。会話の要領は得なかったけれど、彼女は″あのひと″の事を覚えていた。
「スティルインラブもトレーナーも″LOS″…もう、いないよ。」
「″ASEM″ アドマイヤグルーヴが行動したからもしかしたら…。アドマイヤグルーヴが…″INTI″…特異点…?」
半年。彼はまだ帰ってきていない。
…″あのひと″…スティルインラブが行方を眩ましてからは、もうすぐ一年になる。
325/09/27(土)22:08:58No.1357434163+
「トレーナーさん、覚えていますか?あれは…」
「あぁ…そうだな…」
「…っ」

トレーナーさんの限界が近づいている。それは既にわかりきっていた。早く、元の世界に還してさしあげなければ…そう、わかりきっていることなのに。

「スティル…」
「はい、私はここにおりますよ」

彼の呼び声に応える。もうトレーナーさんの目は殆ど見えていない。その瞳は虚ろで、私の姿しか映すことはない。そもそも私の姿も映っていないかもしれません。だって私を呼ぶ彼の声はとても寂しくて…不安げなのですから。

「君のことは…俺が守るから」
「…っ。はい…今でも、今までも、これからも…スティルは貴方に守っていただいております…」
425/09/27(土)22:09:08No.1357434226+
嗚呼、私はなんて罪深いのでしょうか。
限界を迎えつつある彼を一刻も早く、還してさしあげなければならないのに…
私は、彼が隣にいてくださるだけで、幸せで…還したくない、と思ってしまうのです。

けれど、もう終わりにしなくては。
私は貴方から身に余る程の幸せを頂きました。
それなのに貴方は更に私に幸せを注いで下さるのです。
あまりにも甘美で、愛おしい時間でした。
貴方が注ぐ幸せは、もう私以外に注いで頂かないと…いけないのです…。

「トレーナーさん。……覚えていますか?いつか、福引で……『温泉旅行券』を当てたこと。あのときのお返事……今、聞いても……いいですか?」

これが私の、貴方にできる最後のお礼であり…私から貴方へのわがまま、なのです────
525/09/27(土)22:10:02No.1357434546+
「よし、今日のトレーニングはここまで!各自クールダウンはしっかりしておけよ」
「今日もありがとうございました。エアグルーヴさん」
「何、気にするな。お前もそろそろ本番が近いからな。むしろドゥラの面倒まで見させてすまない。」
「いえ、別に…。では失礼します。」

軽く一礼して、グラウンドを後にする。
そしてそのまま校門へと向かう。
もしかしたら、あの2人が帰ってくるかもしれないから。それがここ最近の私のルーティンになっている。

「アル姉はいつも此処で誰を待っているのですか?」

今日はドゥラも着いてきた。昨日はエアグルーヴさん。昔の私なら放っておいて、などと突き放していただろうけれど。″あのひと″と競い合った今の私は自然と彼女たちを受け入れていた。
625/09/27(土)22:10:54No.1357434852+
「私の…ライバル。勝ち逃げされてるから、文句を言ってやりたいの。」
「アル姉のライバル……クラシックのこと、でしょうか。失礼ですが、どなたでしょうか。」

…ドゥラも、覚えていなかった。これはわかりきっていたこと。エアグルーヴさんでさえ、

「お前のライバルか…。ん…?なぜだ…何故思い出せないんだ…?」
などと言っていたのだから。

「スティルインラブ。史上2人目のトリプルティアラ達成者。私の目の前で全てのティアラを奪っていったひと。エリザベス女王杯で私に2回土を付けたひと。」
「…?そんな偉業を達成したウマ娘がいたのですか…?それにエリザベス女王杯はアル姉が勝利したとばかり…。」
「いいのよ、私と一部以外、忘れちゃうみたいだから。」
「そうなのですか……。私も、此処で待たせて頂いてもよろしいでしょうか。」
「好きにしたら。」
それきり、言葉もなく私たちは待ち続けた。
結局、日が落ち、冬の近づきを感じる冷たい風が吹く門限近くになっても、あの2人は帰ってこなかった。
725/09/27(土)22:11:10No.1357434960+
翌朝、朝の自主トレの為にグラウンドに行くと、たづなさんとネオユニヴァースさんが駆け寄ってきた。

「あぁ!アドマイヤグルーヴさん!大変です!私も……理事長も!朧げではあるんですが、スティルさんの事を思い出してきたんです!」
「"DIGG"スティルインラブに変化があった。引き戻せるかもしれない。それにはアドマイヤグルーヴ、あなたの力が必要」

二人の言葉に愕然とする。"あのひとたち"を皆が思い出し始めた?引き戻せる?本当に?
私に何ができるかはわからないけれど。ネオユニヴァースさんの目は決して嘘や冗談でものをいう目ではなかった。ならば、私の答えは一つ。

「...わかった。私は、何をすればいいの?」
825/09/27(土)22:11:31No.1357435118+
「あ、トレーナーさん……。お加減は、いかがですか?」
「すこし……つかれた……」
「……長旅でしたものね。今、窓を開けます。今夜は星が綺麗ですよ……──」
「ほら……いかがですか?」

私と貴方の最期の時間。その時間を過ごす場所で少しでも壊れかけの貴方が癒されるようにと、場所を温泉に移した。
あの温泉旅行券に記載されていた旅館はおそらくこのようなロケーションだったはず…。当てた直後に『やりたいことリスト』に記載して、実際に行くまでに待ちきれなくて。ちょっと調べてしまった時の記憶しかないけれど。それでも気休めでもいい、貴方にできることをしてさしあげたい。
貴方は星を見るのが好きだとおっしゃっていたから。好きなものに囲まれていれば────

「かすんで……よく見えない……」
「……っ。」

嗚呼、私はなんと愚かなのだろう。どうしてこんなことをしてしまったのだろう。
もうほとんど見えないなんてわかっていたのに、自分がしたいことだけを押し付けて────
そうか、私、貴方が好きなもの、こうして奪ってしまっていたのですね。
925/09/27(土)22:11:54No.1357435270+
「……綺麗ですよ、すごく。」
「走る私(ワタシ)を見ているときの、貴方の眼差しみたいに……。」

見えないこの方にできるだけ伝わるように言葉を尽くす。
それで出てきたのが貴方の眼差しだなんて。でも私にとっては、それがこの世で最も綺麗なものだったのです。
私(わたし)ではなく、私(ワタシ)を見る目だったけれど、それでも私たちにとっては何よりも美しく、尊い────

「なぁスティル……」
「はい?」
「次は……どんな、レースに出ようか?」
「……っ!」

言葉に、ならなかった。
嗚呼、嗚呼。貴方の最も好きなもの。それが何かなんてとっくにわかりきっていたのに────
私が奪った、そしてもう二度と返す事のできない、貴方の最も好きなもの。走る、私────
1025/09/27(土)22:12:32No.1357435497+
「スティルインラブは……もっと愛される……。」
「君とどこまでも……駆け抜けたい……。」
「…………。」
貴方はどうしてそこまでお優しいのでしょう。どこまでも私の事だけを考えてくださって────
もう……限界、でしょうね。これ以上はきっと貴方が耐えられなくなってしまう。
「……ねえ、トレーナーさん。先ほどの問いかけの続きを、お聞きしたいです。」
「私が……なぁに?」
意図的に話をそらす。貴方がこれ以上、壊れてしまわないように。
最後に私への問いかけをしていただいて、心残りが、ないように。
「……君は、“こっち”を選んで……。」
「……はい。」
「幸せ、だった?」
「……っ。」
「俺はずっと……ずっと、幸せだったよ。」
「……。」
1125/09/27(土)22:13:41No.1357435905+
絶句してしまった。わたしが幸せだったか?そんなのもちろん決まっています。
貴方の御傍にいられること。貴方のお喜びになる顔を見られること。それこそが私の至上の喜びだったのです。
でも、それでも、貴方をこんな目に合わせてしまったというのに、貴方は、それを、幸せだった、とおっしゃるのですか?
それは──なんて優しくて、なんて残酷なお言葉なのでしょう。
「トレーナーさん。……お髪、乾かしますね。どうぞ、こちらへ……。」
言葉が詰まってしまう。それにもう、還してさしあげなければ。
さぁ、目を閉じて、貴方がいるべき世界へ────
「スティル……君は……」
混濁とした意識下であるはずなのに、貴方は私の答えを待ってくださっている。
きっと、この問いに答えなければ貴方は──還れない。
還れたとしても、また、戻ってきてしまう────
答えを贈りましょう。私の、心からの────
その時、私の目から涙が零れて────
1225/09/27(土)22:14:26No.1357436136+
「スティル……?」

いけない、還れなくなってしまう。誤魔化さなければ。

「……っ、……すみません。髪が、ちゃんと……乾いていなくて。」

嗚咽が混じってしまいそうになる。下手な言い訳で誤魔化して、一音一音はっきりと。
貴方の心に────残りますように。

「はい。とても……とても、幸せでした。」
「そして──これからも。」
「どのような形であれ、必ず……貴方のお傍にいます。」

「幸せです。本当に……──幸せ……。」
1325/09/27(土)22:14:45No.1357436235+
私に幸せをありがとうございました。
あの時お伝えした言葉、今でも違えることはありません。
今でも──愛してる。
さぁ……お還りになって……。
その時、でした。


「ふざけないで!!!!」
「アルヴ……さん……!?」

聞こえてくるはずのない、声。
競い合い、凌ぎあい、互いに高めあった──ライバルの声が。
確かに、響いたのです。
1425/09/27(土)22:17:36No.1357437347+
「貴方、その人が大切なんでしょう。その人も貴方のことがとても大切なんでしょう。なのにどうして、そうやって終わらせようとしてしまうのよ!」
「それは…仕方のない事で…。そもそも、どうやってここへ!?」
「アドマイヤグルーヴだけじゃない。ネオユニヴァースもここにいるよ。」
「ユニヴァースさん!?なぜ!?」
私はわけがわかりませんでした。閉じられたはずの世界であるはずなのに、彼女たちが現れるなんて。
これは幻?私に残る未練が二人の姿をとって現れてしまった?いいえ、いいえ。私は覚悟したのです。それを今更になって悔いることなどあってはならないのです。もし私の未練が形を成して現れたのであれば
1525/09/27(土)22:18:15No.1357437579+
「私の覚悟を、決めたことを、止めないで!!」
「トレーナーさんはこのままここに居たら取り返しがつかなくなってしまうの!もう私とここにはいられないの!私の中の未練だというのなら、一刻も早く消えてしまいなさい!」
「消えないわよ。そもそも、私たちはあなたの見ている幻なんかじゃないんだから。」
「アファーマティブ。ネオユニヴァースも、アドマイヤグルーヴも。ここにいるのはみんな幻じゃない。スティルインラブたちを探してた。」

どうやら、本当に幻などではなく、本物の彼女たちのようでした。
トレーナーさんの時と同じく私自身が無意識下で求めてしまっていたのでしょうか。
いえ、でもそんなはずは。ここには未来を捨てた私と、それに恭順してしまったトレーナーさんしか──
1625/09/27(土)22:18:40No.1357437738+
「スティルインラブが場所を移したから、空間に綻びが生まれた。それでネオユニヴァースたちが来ることができた。」
「あなたのクラスにいたマーベラスサンデーさんがここに繋げてくれたの。……言ってて、意味わからないけど。」
「え……?えっ?ごめんなさい、私、ついていけなくて……。」
「一番最初にこの閉じた世界なんてものを作った張本人が何言ってるのよ……。」

アルヴさんが呆れ顔で肩をすくめます。アルヴさん、こんな反応するようになったんですね。
なんだか、ちょっぴり嬉しいです。クラシックの頃よりずいぶんと柔らかくなったんですね。
……なんて、呆けてる場合ではありません。一刻も早くトレーナーさんを還してさしあげなければ。
そうだ、トレーナーさんの事をこの二人にお願いしましょう。お二人なら……私の、お友達なら。安心してトレーナーさんをお願いでき──
1725/09/27(土)22:19:59No.1357438235+
「…あなた、自分は残るつもりでしょう。さっきみたいに、そのトレーナーだけ返そうとしているんでしょう。私はそれに怒ってるの。」
「…お見通しでしたか。でも、仕方ないんです。私といると彼は…もう、耐えられないんです。」
「駄目。あなたにも必ず戻ってもらう。私に愛を教えた責任を、必ずとってもらうから。」
「そんなこと…っ!私は、この方を愛しているから!これ以上酷い目にあってほしくないから!」
「それはこの人も一緒でしょう!私、今ならわかるの!あなたたちが…羨ましかった!お互いを大切に想いあっていて、支えあっていた!あの頃の私はそれが嫌で嫌でしかたなかった!私からすべてがなくなってしまうから!私が空っぽになってしまうから!」
1825/09/27(土)22:20:24No.1357438393+
「でも…わかったの。あなた達に完敗して、エアグルーヴさんに支えてもらって…。そもそも、私が間違ってたんだって。愛が甘えだなんてことは絶対にないんだって。愛は…力を、くれるのよね。」
「…そうです。愛は、何かを成そうという時に、力を与えてくれるんです。だから私は、今からトレーナーさんのために…」
「戻ったこの人はどうすると思う?必ずあなたをまた探して、探して探して探し続けて、結局ここに戻ってくるはず。あなたのことを愛しているから。」

アルヴさんの言葉に私は返す言葉がありませんでした。
そう、トレーナーさんはそういう方なのですから。結局、私のために自分自身を投げ出してしまう。そしてまたヒトとしての形を保てなくなってしまう。それでは、それでは────
1925/09/27(土)22:20:41No.1357438504+
「じゃあ、ネオユニヴァースたちと一緒に帰ればいい。それなら二人ともいっしょにいられる。」
「それでも、駄目なのです。ご存じでしょう?私とあちらで過ごしていたトレーナーさんが、どうなったかを。」
「そうね、おかしかったわ。明らかに。でもそれをなんとかすることがもしかしたらできるかもしれない」
「……!本当ですか!?」

もし、もしそれが本当なら。そんなことが許されるのだとしたら。私はそれにすがりたい。あの日の覚悟を否定してしまうのだとしても。

「アファーマティブ。……ネオユニヴァースにも、確証はないけど。これを預かってきた。」
2025/09/27(土)22:20:59No.1357438625+
ユニヴァースさんがどこからか物を取り出しました。
それは円筒形で、長さがユニヴァースさん程あり、側面にハートマークがあしらわれた……

「その……これは……?バズーカ……ですか?」
「……えぇ、そうよ。後輩の一人──ラヴズオンリーユーさんから預かってきたの。」
「ラヴズさんが……?」
「ラヴズオンリー砲。"DROC"では存在しなかったこれを使う。じゃあ、やるね。」
「えっ!?ちょっと待ってください!?ユニヴァースさん!?」
「悪いけどこっちはあなたたちを散々待たされてるの。文句なら後で聞くわ。先に私の文句も聞いてもらうけど。」

言うや否や、アルヴさんが私とトレーナーさんにバズーカの砲口を向けました。私はともかく、この状態のトレーナーさんにそんな物理攻撃は────
止める間もなく、アルヴさんは引き金を引いたのでした。
2125/09/27(土)22:21:19No.1357438751+
「……う……ここは……?」

酷い体の痛みで目が醒める。俺は先ほどまで何をしていたっけ。確か、スティルと温泉に行って──
そうだ、スティル。スティルはどこだ。そもそもここはあの宿じゃないぞ。白い天井、少し硬いベッド、機器に繋がれたケーブルは自分の腕に伸びていて──

「えっここ……病院?」

まさか、まさか。あの日々は夢だったのか。俺は入院中にスティルと過ごす日々を夢想していただけだというのか。それならまずい。早くスティルを迎えに行かないと。まずはこのケーブルを剝がさないといけない。
そう体を起こした時、病室の扉が開いた。そこに立っていたのは──

「あぁ!あぁ……!目が醒めたのですね!トレーナーさん!よかった……!本当に……っ!よかった……!」
「スティル……!スティルなのか!?本当に!?」
「はい……!はい……!貴方の、スティルインラブです……!!」

見紛うはずもない。俺の顔を見るなり駆けよってきた、真紅の眼を持つウマ娘。俺が最も愛するウマ娘(ひと)。スティルインラブだ。
2225/09/27(土)22:21:34No.1357438861+
「俺たち……どうしてここへ?」
「……!……!!」

ダメだ、話にならない。スティルは俺の腕をとり、しきりに泣くばかりだ。くそっかわいいな。抱きしめたい。

「……目が醒めたのね。おかえりなさい。全く……すぐに連れ戻してくれると思ったのに、一年も待たせたんだから。」
「アルヴ……!?ってことは本当に俺たち戻ってきたのか……!?」
「えぇ。詳しいことはそこで泣いている人に後で聞きなさい。じゃあ、私はこれで。」
「よくわからないけど……。ありがとう。」
「……なんで、お礼を言うのよ。」
「え……?だってお見舞い、来てくれたんだろ?それなら感謝しないと。」
「あぁそういうこと……。気にしなくていいわ。その人の付き添いだし。それにあなたが復調してくれないと、私があなたたちにいつまでも勝てないじゃない。」
2325/09/27(土)22:21:51No.1357438987+
じゃあ、これでと踵を返して帰っていったアルヴは、以前と比べて雰囲気が丸くなっていた。
よくわからないけど、彼女にもいい出会いや成長があったのだろう。一トレーナーとしてはウマ娘の成長に感慨深いものがある。
ていうか、彼女はまだ俺たちに挑戦するつもりなのか。ハングリー精神は相変わらずみたいでちょっと安心するな。

「……トレーナーさん……今、私ではなくアルヴさんのことを考えていますね?」

さっきまで泣いてばかりいたスティルが少し膨れて俺を見つめていた。この子はこうしてコロコロ表情が変わるところも可愛いな。

「あぁごめん。今気が付いたばかりで全然状況が掴めなくてさ。でも、こうして君と二人きりでいられるのは『あそこ』と変わらなくて落ち着く。」
「……っ。ずるいです、トレーナーさん。いつもそうやって私を喜ばせることばかり……。」
「スティルの専属トレーナーだからね俺は。で、どうしてこんなことに?」
「実は──」
2425/09/27(土)22:22:09No.1357439098+
こうしてことのあらましをスティルから聞いたけれど、正直全然意味が分からない。ラヴズオンリー砲ってなんだよ。なんか解決したみたいだからなんでもいいけど。
ただ、アルヴとネオユニヴァースが色々してくれたのには間違いないようだ。体が動くようになったら菓子折りでももっていかないといけないな。

「私のせいで……本当に申し訳ございませんでした、トレーナーさん……。」

説明を終えると、スティルは俯いてばつの悪そうに俺に謝ってきた。相当責任を感じているようだが、俺は俺のやりたいことをやっただけだからなぁ。

「何を言ってるんだ。俺はあの選択をしたことに後悔はないし、スティルだってどうしようもないことだったんだろ。それよりもこれからのことを考えよう。」
「これから……。これからも、私をお傍に置いてくださるのですか……?」
「えっむしろこれだけしてもらってまたどっか行くつもりだったの君。俺、そんなに薄情に見えるかなぁ……」
「えっ!?全然!全然そんなことはありません!ただ、嬉しくて……っ。」
2525/09/27(土)22:22:26No.1357439209+
慌てるスティルを見て自然と笑みが溢れる。『あそこ』で穏やかに過ごしていた時間もよかったけれど、俺自身がまともな状態でスティルの百面相を見られるのが何よりも嬉しい。
ニヤニヤしている俺を見てスティルもからかわれたことに気付いたらしい。もう、トレーナーさんったら……なんて言ってるけれど、やっぱりスティルもこういうやり取りが嬉しいみたいだ。
そうしているうちに俺も落ち着いてきて、ふと一つの疑問が浮かんできた。

「そういえばスティル。本能のほうは……今、どうなんだ?」
「あの子は……いえ、私(ワタシ)は、今貴方の前にちゃぁんといるわよ?」
「……!」

刹那、スティルが変貌する。妖しく、狂気を孕んだ瞳。俺を虜にした──魔物へと。
しかし、走っていない時に出てくるのは俺が対面する中では初めてだ。これは一体──
2625/09/27(土)22:22:39No.1357439302+
「……っ!すみません、出てきてしまったようで……。金鯱賞のあとのこと、覚えていますか。」
「えっ……。あぁ、今はいつものスティルか……。もちろん、覚えているよ。君が走るのをやめるのやめたことだろう?」
「あの時、私はあの子を初めて自分から求めました。そうしたことで、私とあの子の境界がある意味ハッキリしたというか……。お互い、どちらが外に出るかをある程度決められるようになったんです。」
「そうなのか……。君の中で踏ん切りがついた、っていうことなのかな。」
「そういうことです。もっとも、先ほどのように勝手に出てきてしまうこともあるのですが……。私は、以前よりあの子を疎ましく思いません。あの子も貴方が愛してくださった、私なのですから。」

そう言ってほほ笑むスティルを見て、また感慨深くなる。彼女もアルヴも、時を経てしっかりと成長しているんだな。指導者冥利に尽きる、といった心持ちだろうか。
自分自身に折り合いをつけたスティルと、いい出会いがあったアルヴ。この二人がまた競う姿を見たい。そのためには早く身体を治さないと、な。
……そもそも、スティル自身にまだ走る気があるかは、わからないけれど。
2725/09/27(土)22:24:12No.1357439894+
「ふふっ…トレーナーさんのお考えはお見通し、ですよ。私がまだ走るのか、ですよね。」
「…スティルにはかなわないな。あぁ、その通りだ。あの時と同じ選択肢が君にはある。でもだからといって、同じ選択をする必要は──」
「ご心配いただかなくとも大乗ですよ。私は──走ります。アルヴさんの挑戦を受けないわけにはいきませんから。それに──」
「私(ワタシ)にわざわざ御馳走の方からお皿を用意してくれるだなんて!喰らい尽くさない方が失礼ではなくて?アハハハハ!!!」
おぉ、シームレスに変わるのか。なんか面白いなこれ。ともあれ、彼女の意思は確認できた。ならば──
「わかった。じゃあ俺も復帰次第トレーニングを見るよ。アルヴと違ってスティルはブランクがあるから、そこをまずどうにかしないとな。」
「はい。またご指導のほど、よろしくお願いいたします。トレーナーさん。」
こうして、俺たち二人の未来はまたアルヴや他の皆がいる世界へと重なった。
これからも、彼女たちは競い合い、互いに高めあっていくことだろう。
その一助となるべく、俺自身も気持ちを改めて精進していかなければ。
───その前に、体、治さないとだけれど。
2825/09/27(土)22:25:41No.1357440492そうだねx5
安直にハッピーっぽくしろと紅さんに言われたので書きました。
書いたら紅さんががんばってくれてチャンミ勝てましたありがとう紅さん
2925/09/27(土)22:27:35No.1357441259+
ラヴズオンリー砲で片付けるならこんな無駄に長くする必要ねえだろ…
3025/09/27(土)22:29:14No.1357441860そうだねx2
ラヴズオンリー砲って何なの…
3125/09/27(土)22:30:36No.1357442448+
あちらってマーベラス空間に近いのか…
3225/09/27(土)22:35:49No.1357444540そうだねx3
>ラヴズオンリー砲で片付けるならこんな無駄に長くする必要ねえだろ…
一言一句返す言葉もございません
3325/09/27(土)22:44:21No.1357447682そうだねx1
そこに至るまでの過程を盛るからこそラヴズオンリー砲が際立つんだよ
3425/09/27(土)22:45:14No.1357448019+
スティル視点の温泉旅行の解釈で泣きそうになった
あのまま別れるのは許せないからラヴズオンリー砲も許すよ…
3525/09/27(土)22:46:02No.1357448310+
こういうのでいいんだよこういうので
3625/09/27(土)22:46:07No.1357448342+
正直面白くはないというかパクリネタだけどハッピーエンドなのは良かったよ
3725/09/27(土)22:47:45No.1357448929+
まあ実際トレーナーだけ戻してもまたスティル探しに行くだけだしどうにかして二人一緒に戻す必要はある
あったよ!ラヴズオンリー砲!
3825/09/27(土)22:48:52No.1357449297+
砲を持ち出すならラヴちゃん視点のお考えも語ってほしいな
3925/09/27(土)23:13:23No.1357457928+
ラヴズオンリーユーいないからその珍妙なバズーカの性能がどういうものなのかよくわからないが
まぁいいか…HPEDなら
4025/09/27(土)23:16:44No.1357459072+
長い方が面白いんだって勘違いする時期あるよね
4125/09/27(土)23:18:46No.1357459711+
>ラヴズオンリーユーいないからその珍妙なバズーカの性能がどういうものなのかよくわからないが
>まぁいいか…HPEDなら
ラヴズ持っててもわかんねえよ…


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