【内なる次元観測:下水道の一幕】 コツーン、コツーン、酷い悪臭の漂う下水道に靴音が響く。その音の主は長い金髪と紅い瞳、外が黒色で内側が橙色の綺麗なマントが目立つ何とも不潔なこの場には似合わない存在だった。 コツーン、コツーン、コツン……女はふと立ち止まる。前方の横道から何者かの気配を感じ取ったのだ。「へへっ、よう嬢ちゃん。こんな薄汚い所に何か用事かい?」予想は的中し女の前にボロ布を纏った男が出てきた。 「人探しよ」 「ほぅ、人探しかい。ここら辺はオレの庭同然だからな良かったら案内してやろうかヒヒッ」台詞とは裏腹に、その視線は女の全身を舐める様に観察していた。 「別に必要ないわ」 「おいおいオレサマは親切心で言ってやってんだぜ?ありがたく受け取れよな」男は高い背を折り曲げ、女を威圧する様に見つめる。 「ハァー……余計なお世話だって伝わらなかったかしら?バカ?」 「なっ、テメェバカにしてんのか!?」 「その通り。バカでもそれぐらいは理解できるのね」女は呆れた様な視線を男に返しながら口を開いた。 「人が助けてやろうって声をかけてやったのに!こ、このオレをコケにしやがって!」 「沸点低いわねー、私もあなたみたいな瞬間湯沸かし器が欲しいわ。オムラにあるかしら?」まるで気にしないかのように女は平然と答えた。 「一度のみならず二度までも……」男の身体が怒りで大きく震え拳を握り締める。 「もうドゲザしても許さんぞ!イヤーッ!」顔を真っ赤にした男の拳が女目掛けて振るわれた! 「イヤーッ!」 「グワーッ!?」だが女は素早く片腕で拳を逸らす!そしてもう片方の腕を使ったエルボーで顎を強かに打ちつけた! 衝撃で浮き上がった男はウケミもとれずに、背中から地面へと叩きつけられ悶絶! 「な、なんだテメェは!?」男は痛みで咄嗟に起き上がれず首だけを上げて女へ問いかけた。 「相手を知りたいならまずは自分からって誰かに習わなかった?まっ良いけどさ」女は大袈裟に首を横に振りながら懐から笑顔にも見える橙色のイナヅマ柄が施されたメンポを取り出す。「ドーモ、デッドリーブレイカーです」そして流れる様に口元へ装着しアイサツした。 「ドーモ、デッドリーブレイカー=サン。ドレッドサイリウムです!テメェ、ニンジャだったのか!?」 「まずこんな所、普通の人が来るわけないじゃない。やっぱりバカねバカ」 「クソが!偶々オレサマが油断してた所のラッキーヒットで良い気になりやがって!」ドレッドサイリウムは何とか起き上がり怒声をぶつける。 「ここら辺はオレの庭って言うのは嘘じゃねえぞ!時期に仲間達が増援に……」 「増援ってのは」背後から声が聞こえる。仲間達の誰のものでもない知らぬ声はドレッドサイリウムに恐怖を植え付けた。 最悪の可能性が脳裏に過ぎるドレッドサイリウムは恐る恐る背後を振り返ると、そこには! 「アイエエエエ!?」全長9フィートほどのオニめいた異形がピクリとも動かない自身の仲間を片手でそれぞれ掴んでぶら下げていたのだ!コワイ! 「コイツらのことか?ドーモ、ブラッドアサシンです」 「何なんだよコイツら!?」咄嗟の状況判断で脇目も降らずに逃走を開始しようとしたドレッドサイリウム、だがその時!BLAMN! 「ヒッ!」突如飛来した銃弾が頬に一筋の赤色を作った。 「ドーモ、レッドヘッドです。アンブッシュごめんなさいね」背中に2つ、両手に1つ合計3つのショットガンを待つ、瞳に極彩色のアブナイ輝きを宿した女が更にエントリーした。 「アッ……アアッ……」ドレッドサイリウムは腰を抜かし再び背中から倒れ込む。そこにデッドリーブレイカーが近づき目の前でしゃがみ込んだ。 「気が変わったわ。やっぱり案内よろしくね?答えはアンタの身体に聞くけど」 「アイエエエエエ!」ドレッドサイリウムは失禁した。 【そのうち続く】