二次元裏@ふたば

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174240 B25/09/17(水)21:45:05No.1354223023そうだねx3 23:01頃消えます
―私はもう…ワタシじゃない
.
あの日の花畑からスティルインラブとトレーナーは帰ってきた。
トレーナーの容態は悪化したため再び入院することとなった。
運命は変えられない、この部屋に来るのもこれで最後だろう。
そう思いながらトレーナー室を掃除していると思わぬ来客があった。
「久しぶりだな、スティルインラブ!君がいるとは思わなかったよ」
タッカーブラインは初めて会ったときと変わらず快活に話しかけてきた。
他愛のない会話の後で彼女は本題を切り出した。
「トレーナーさんの原因不明の不調の原因を突き止めたい。
 そのために君とトレーナーさんの間のこれまでの事を聞きたいんだ」
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
125/09/17(水)21:45:18No.1354223111+
この通りといい深々と頭を下げる。
「今更―」「そう!今更何を言うんだと思うだろう!」
タッカーブラインは頭を下げたまま言う。
「自分の夢にかまけて君たちの異変に対処をしてこなかった。これは私の責任だと思っている。
 だがトレセン島プロジェクトはトレーナーさんなしで成功はし得なかった!
 今度は私が恩を返したい!できることは何でもしたいんだ!」
タッカーブライン、自分の中にある本能を呼び覚まそうとなりたい自分を演じている人。
スティルとは違うようでどこか似ていて、余り好ましい感情は持っていなかった。
「……コーヒーを入れます。話は長くなりますので」
ぱぁっと明るい顔になるのもおかしかった。
私たちの何がわかるのか、わかるはずなどないのに。
それを思い知らせたかったのだろうか?
後に思い返しても気まぐれだろうとしか言えない判断だった。
スティルインラブはこれまでの経緯を包み隠さず話すことにした。
225/09/17(水)21:45:59No.1354223387+
トレセン島の夜は深い闇に覆われる。
見慣れたトレーニング器具も視界が奪われれば未知の脅威となる。
さらには闇に生きる者たちが息を潜めて獲物を狙っている。
月明かりの下で解放感と危機感に感覚が鋭敏になっていくのを感じた。
本能、内なる紅、ワタシ…そう呼ぶ存在をもう呼び出すことはできなくなっていた。
だから顔や仕草の真似をしてできる限りあの状態に近づけようとしていた。
本能のままに走っているときは脳のリミッターが外れて身体能力が100%発揮できているらしい。
325/09/17(水)21:46:35No.1354223628+
ただフォームが荒いためロスや足を守るための力のセーブがあるのだという。
本能の力を私自身のまま引き出してフォームを変えずに走ることができれば本能以上の走りができる。
そして本能の走りに魅入られたトレーナーさんを正気に戻せるかもしれない。
目の下にクマを作ったタッカーブラインの言う解決法であった。
曰くトレーナーさんは強力な暗示がかけられた状態に近いと考えられるという。
暗示、私とトレーナーさんの絆を指して言われるのは心穏やかではなかった。
だがトレーナーさんに元気になってほしいのは間違いない。
それでもあの人が手を尽くす中で私が何もしないのは我慢できなかった。
不純で強欲で…それでも久しくなかった走る意思が燃えるのを感じていた。
425/09/17(水)21:47:32No.1354224028+
その夜は満月だった。
病院から連れ出したトレーナーを乗せた車いすを押していく。
この数か月で容態は芳しくなく、今も意識が混濁していた。
向かうのは二人の出会った場所、勝負服を纏ったスティルを月明かりが照らす。
「トレーナーさんどうか見ていてください」
高揚を抱いて走り出す、あの日を思い返す。
体の熱さのままに走っていく。
「凄い…凄いぞスティル」
ひとしきり走り終えるとトレーナーさんが言う。
「これならGIレースでも勝てるぞ!どのレースがいいか―」
「トレーナーさん!?」
話の途中でトレーナーはがっくりと項垂れる。
その腕は細く、顔には生気が感じられなかった。
思わず手を取り、虚ろな瞳を見て涙が零れた。
「……いつまでも…ご一緒します」
525/09/17(水)21:48:05No.1354224247+
ダメだったか。タッカーブラインは物陰から見守りながらそう結論づけた。
「(しかしトレーナーさんを連れていかれるわけにはいかない。これは大人の責任でもあるんだ)」
スティルと目が合う、紅く輝いてみえた。
「(気のせいだ。彼女の力は暗示や催眠術の一種。気をしっかり持てば―足元が!?ここに階段はないはず落ち―」
…………
気づけば部屋の中にいた。
浴衣のスティルインラブが佇んでいる……。
「……俺はずっと……ずっと、幸せだったよ」
トレーナーの言葉にスティルは涙ぐむ。
だがトレーナーの目は空を向いていた…星空は霞んで見えなかった。
「トレーナーさん…お髪、乾かしますね」
「スティル…君は……スティル?」
トレーナーは頬に冷たいものを感じた。
「……すみません。髪が、ちゃんと……乾いていなくて……
 はい。とても……とても、幸せでした…そしてこれからも」
625/09/17(水)21:48:30No.1354224408+
「……違う……違う!」
スティルは浴衣を脱ぎ捨て勝負服を身に着ける。
窓際にトレーナーがいることを確認して外へ飛び出した。
一度でダメなら何度でも走って見せる。
部屋の窓から見えた先の道を全力で駆けだす。
何度も何度も往復していく。
全速力のスパートを何度もかけ続けて息があがる。
それでも走り続ける。
気づけば月明かりが…周囲の景色が白く消えていく。
隣を走るのは全てを喰らおうとする飢えた獣。
全ての走者の生き血を啜りつくさんと疾駆する怪物。
……本当はわかっていた、気づかないふりをしていた。
あの人が一番愛しているのは……私じゃない。
725/09/17(水)21:48:44No.1354224489+
私じゃなくてワタシ。
そうだ私は…本当は憎かった。
あの人の一番の笑顔を向けられているあなたが。
ワタシであっても許せなかった。
私は…
.
ワタシ
あなたを超える!あの人の笑顔は渡さない!!!
.
私はワタシと競り合う。
ワタシは力強く底なしに速度を上げ続ける。
だが私も足に力を籠める。
体の底の底から力を絞り出し、フォームを寸分狂わさず速度を上げていく。
色がなく、痛みも感じず、心臓の音だけが大きく響く世界。
私は光を見た。
825/09/17(水)21:49:08No.1354224671+
星空は霞んでよく見えない。
スティルの声も隣のスティルか過去のスティルか判別がつかない。
意識も時間も曖昧な中で鮮烈な記憶の中を旅していく。
ふと光が見えた。流れ星のようなそれは少しするとまた光が走る。
目を凝らして光を追う。
スティル―
目の前の景色が突然開けた。
鳴り響く歓声、熱狂の渦、その渦中にいるのは……。
スティルインラブ抜けた!伸びる!スティルインラブ!スティルインラブ!スティルインラブ今一着でゴールイン!!
夢のような景色……いやこれはかならず成せる確信があった。
走っていたスティルが膝をついたのを見て我に返る。
スティル!そう叫んだつもりが思ったように声が出なかった。
外へ出ようと振り向いて車いすに足をひっかける。
ここはどこだ?だがそれどころではなかった。
力の入らない体を無理やり動かして外へ向かった。
925/09/17(水)21:50:03No.1354225073+
気づくと真っ白な空間に立ち尽くしていた。
見渡すと目の前に私…いやワタシがいる、彼女が語りかけるなら……。
「本当に欲張り」
自分の口から同じ言葉が出た、驚いて口元に手をやるとワタシも同じ動きをした。
理解する、ワタシはもう私でしかないのだ。
ワタシは消えていく、かける言葉は自然と浮かんだ。
―ありがとう―
―アリガトウ―
「……スティル!スティル」
その声で自分が膝立ちで抱きしめられているのに気づいた。
抱き返すことでトレーナーさんがそこにいるのだとわかった。
「幸せだった……幸せだったのは嘘じゃない……でも見たいんだ
 今の君が走るレースを見たい!だから一緒に走ってくれスティルインラブ!」
答えようと思っても声が出ず、変わりに目から涙がとめどなく零れ落ちていた。
潰れた喉から声にならない嗚咽が響く…それは獣の鳴き声のように響いていた。
1025/09/17(水)21:50:20No.1354225177+
その後二人は泥のように眠り、朝食を数人前平らげ、窓の外から穴だらけの道を見て悲鳴を上げていた。
まずはスティルが第一だとトレーナーが言って聞かないため二人は学園に戻っていた。
昨日の走りで足に違和感があったスティルを保健室で見てもらったが、軽い炎症で大事はないとのことだった。
逆に今すぐ病院に戻れとトレーナーが怒られる羽目になってしまった。
その後、理事長室で経緯を説明したが、温泉旅館であったことは曖昧な説明しかできなかった。
退学届けは正式に破棄し、トレーナーの容態が問題なければ復帰できるだろうこととなった。
トレーナーが病院に行くのにスティルは一緒についていくという彼はやんわり断った。
「もう大丈夫。これからはずっと一緒だよ」
1125/09/17(水)21:50:33No.1354225274+
「スティルさん」
トレーナーの背を見送っているとアドマイヤグルーヴに声をかけられた。
「アルヴさん…」
「どうやら二人で戻ってこれたようね」
相変わらずの仏頂面だがスティルにはわかった。
彼女は喜んでくれていると。
「あなた…しばらく見なかったのに随分仕上げてきたのね。
 けれど今の私には追い付けない。ターフの上でそれを思い知らせてあげる」
ギラりと睨むアドマイヤグルーヴには強者の持つオーラのようなものがビリビリと放たれる。
「いいわ…今のあなた」
口の端が吊り上がる。
「とっても美味しそう…全部喰らいつくしたくなっちゃう……」
「怪物を飼いならしたようね」
「飼いならした…まぁそういうことにしておきましょう」
パドックの上にいるかのように二人は闘志をぶつけあっていた。
1225/09/17(水)21:52:34No.1354226046+
「ところで」
アドマイヤグルーヴはそう言って黙る。
口をもごもごとしたりわざとらしい咳払いをしてから続ける。
「悪いと思ったけれど聞こえてしまったの」
 温泉旅館に行って…そこで一晩休んだら元気になったと言っていたけれど
 あなたたちはとてもそれだけで回復するような状況じゃなかったわよね」
スティルは困惑しながら相槌を打つ。
「出来れば聞かせて欲しい。温泉旅館で何があったのか」
すっかり“素”に戻ったスティルは余計に困惑を深める。
1325/09/17(水)21:52:58No.1354226213そうだねx2
「あなたたちならその…愛を確かめ合うとか何かあったんでしょう!?」
「えっ!?」
質問のニュアンスに思い当りスティルの顔が赤くなっていく。
「質問を変える。あなたたちその…め……」
「め……?」
「トレーナーとめにしゅきしたの!?」
「めにしゅきしたの!?!?!?」
「ごめんなさい!答えにくいとは思うけど教えて!はいかいいえでもいいから!おねがい!!」
逃げようとするも両腕をがっしり掴んでくる。
「ち…」「ち!?」
「ちがうんです〜〜〜〜〜!!」
なんとも情けない悲鳴が辺りに響き渡っていた。
1425/09/17(水)21:53:41No.1354226534そうだねx1
どうにか自分の納得できるハッピーエンドが書けました
ラヴズオンリー砲には勝てそうにない……
愛を知って耳年増になるアルヴさんはいると思います。
書きそびれたけどタッカーさんは寝不足で転んで気絶してしまったらしいです。なんでやろな?
書いてる途中の休憩がてら本育成しようとしたら初回で切れ者ついたので失礼させてもらう
1525/09/17(水)21:54:45No.1354226970+
教え子とめにしゅきは駄目だろ…うまぴょいならともかく…
1625/09/17(水)22:03:54No.1354230782そうだねx1
スレッドを立てた人によって削除されました
1725/09/17(水)22:10:18No.1354233618そうだねx1
月並みだけど届けたい思いしたんか!
1825/09/17(水)22:14:50No.1354235566そうだねx1
トレーナーのがシンデレラフィットやったんか!
1925/09/17(水)22:33:33No.1354243325そうだねx1
ずーっとよろしくね( ˘ ³˘)♡したんやろ!?
2025/09/17(水)22:34:37No.1354243756そうだねx3
タマ。
2125/09/17(水)22:46:16No.1354248037+
全力受け止めたんか!?
2225/09/17(水)22:47:55No.1354248645+
トレーナーのこんなに大きくなりました♡見たんやな!?


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