二次元裏@ふたば

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298838 B25/08/24(日)21:59:28No.1346581529そうだねx10 23:17頃消えます
「ウイちゃん」
太陽がどこかに沈もうとしてるこの時間。
昼と夜が入れ替わろうとしてる黄昏時の、島の山中の墓所。

「見つけた」
残り火のような、淡い夕光に照らされてる彼女を見つけた。
こがね色の髪がお日さまの最後の光を吸ってキラキラして、すごくキレイ。
でも自分を責めて、責めて、責めて、責め続けちゃってる、悲しい紫の瞳。

「まな、ちゃん……?ほんとにまなちゃん……?えっ……な、なんで……?」
お墓の前で震えてちっちゃくなってたウイちゃんがまなを見上げてる。

「ウイちゃん大丈夫?………は〜〜〜〜やっぱり迎えに来てよかった〜〜」
「ライブはどうしたの!?sumimiのお仕事だったんじゃないの!?ま、まさか私のせいでドタキャン……!?また解散説が出ちゃうよ!?」
「sumimiは絶対に解散しませんっ!えへへっ、ちゃんと演りきって終わってから来てま〜〜す!飛行機使って超特急で来たんだよ〜〜?東京からここまで4時間くらいで来れちゃうんだね!」
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
125/08/24(日)21:59:58No.1346581770そうだねx1
「そ、そうなんだ……それにしても島もそこそこ広いのに、私がいる場所なんてよくわかったね?ここほぼ山の中だよ?………………まなちゃんなんかやってない?」
「それはね!まなにはウイちゃん達への愛の力があるからっ!………ほ、ほんとだよ〜〜〜?信用してないみたいな目やめて!」

ウイちゃんはまなの傍に一生いてほしいからどこかに逃げちゃっても絶対に捕まえられるようにスマホはもちろんまながプレゼントしていつも身につけてくれてるチョーカーとかその他諸々にいろいろゴニョニョなの何重にも仕込んでるけど…………

今はそれはいいの!!


「ウイちゃん!!!」
「ひゃ……ひゃい!」


「連れてきたよ」
「………えっ?」
225/08/24(日)22:00:23No.1346581929+
鳩が豆鉄砲を食ったような、呆然とした、でも期待が湧き出たような顔で、あたりを見回すウイちゃん。
「あ、ごめんごめん。こっちこっち」


まなが手に持ったものを見せる。


「これ、あっちのういちゃん………ううん、初音ちゃんから」


──────
───
325/08/24(日)22:00:44No.1346582071+
「スタッフさんからOKもらえた〜〜後でバラしちゃうから好きに持ってっていいって!」
「ま、まなちゃん……?いったいどうしたの……?」

まなちゃんがパタパタとこちらに駆け寄ってくる。
sumimiのライブが終わった後、まなちゃんに言われた通り楽屋前で待ってたけど……なんなんだろう?


「ういちゃん!!!」
「ひゃ……ひゃい!」


あ、あわわ、いきなり大声で呼ばれてびっくりして変な声出ちゃった。や、やっぱり怒られるのかな?
さっきのライブ、いっぱいフォローしてもらったし……気持ちがあまり入ってなくて細かいミスして……でも思い出しちゃったから……育ててくれたあの家族に対して、恩知らずで、裏切り者で、最低な私を。

(心が重くなって……また、息が詰まりそう……)
425/08/24(日)22:01:04No.1346582214+
「あの、やっぱりさっきのライブ……」「ういちゃんっお花選んで!」「ごめ………………ん?」

へ?何で?
まなちゃんが指し示すのはsumimi宛てに送られて、楽屋前に置かれたフラワースタンド。
いろんな生花がアレンジされ、華やかに彩られてるお祝いの贈り物。


【祝「World Idol Festival」ご出演 純田まな様×三角初華様】
【sumimi強火モブレズ協会日本支部より ういまな絶対婚姻成就】


ってパネルに宛名と応援文が書かれてるけど、ファンの人には悪いけど私なんかじゃまなちゃんとは釣り合わないし……まなちゃんも私と結婚は絶対やだよ……それに私はさきちゃんと……ゆくゆくは……ゆくゆくは……えへ……えへへ、さきちゃんは私のこと貰ってくれるかな?もらってくれるよね?だってあんな結婚の誓いみたいな言葉かけてくれたんだもん貰ってくれるはず……でも、さきちゃんはまだ燈ちゃんのこと……

「ういちゃん?」
「はっ……ご、ごめん。急になんでそんな話になるの?花なんていきなり……」
525/08/24(日)22:01:23No.1346582325+
「まなは午後は珍しく時間が空いてて暇なので!お墓参りにいきます!」
「そ、そうなんだ。まなちゃんの家族の?」

「んーん……まなの大事なあの子のお父さんのだよ」
「あぁ……まなちゃんと一緒に住んでるっていう年下の女の子……」

まなちゃんはなにかにつけてその子のことを話してくれる。
その子が笑ってくれたとか、喜んでくれたとか、かわいかったとか、悩んでるかとか。

田舎から出てきて、アイドルが好きで、元気で明るくって、
綺麗なこがね色の髪で、事情があって離れ離れになってるお姉さんのことが大好きで───それはまるで。
………ううん、脳裏に浮かんでる女の子は、絶対に自分に対してひどいことしてる姉のことなんか大っ嫌いで、恨んでるはずだから別の子だよね……。


「あの子、今ひとりで遠くまでお参りに行ってて……ぜーったい寂しい思いしてるし迎えに行くついでにね。それでね、まなが持っていくお供えのお花、ういちゃんもフラスタから一緒に選んでくれる?」
625/08/24(日)22:01:44No.1346582461+
「………いいけど……私、その子のお父さんのことも知らないし……どんな花選んだらいいかわかんないよ?」
「ん〜〜、じゃあっ!ういちゃんの身近だった人に、いま一番供えてあげたいなってお花でいいんじゃない?」

身近、だった人……。

「お盆は実家にも帰らないんでしょ?だったらういちゃんの気持ちも、そのお父さんに一緒に持って行ってもらおうよ!まながおつかいして届けてあげる!」
「まなちゃん……」

取り繕うのばかりが得意な私でも、絶対できない。眩しい笑顔で。
まなちゃんは、きっとこの天性の明るさでいっぱい人の心を救ってきたんだろうな

普段の私にとっては眩しすぎるし、目を逸らし続けてるけど……。
でも、今はこの眩しさに甘えるのが私の心を、罪悪感を、軽くしてくれる気がして。

「じゃあ………この花」
725/08/24(日)22:02:01No.1346582561+
裏切って、全部を捨てちゃったけど……ちゃんと感謝も愛情もあったから。


「………やっぱり姉妹だよ……」


小さな声で、まなちゃんがなにか言った気がする……よく聞こえなかった。

「まなちゃん?」「ううん、なんでもないよ〜!じゃあ、まなはこっちのお花にしようかな〜〜!」

「うん、いいと思う。まなちゃんらしくて……それと」「ん?」


「───ありがとね」「ぜーんぜん!どーいたしましてっ!」
825/08/24(日)22:02:14No.1346582645+
──────
───
「お花?これ……初音から?」
「うんっ!ういちゃん達のお父さんにお供えしてあげよ?」

まなの手に持った黄色いバラの花をウイちゃんはまじまじと見てる。

「…………」
「き、黄色い薔薇はキリスト教的にはアレだけど、仏教ならおっけーじゃない?あっ、でも棘ある花はあんまりよくないかな?でもでもでもでも、こういうのは形式より気持ちだよね〜〜!」

………だ、だいじょうぶかな?
『こんな不吉なもの!!!初音のノンデリあんぽんたん!!!』ってお花ビリビリにしたりしないかな?
お花を抱えてしばらく固唾を呑んで見守ってると、目の前のウイちゃんは小さくため息をついた後───

「………はぁ……もうっ初音ったら……まなちゃん貸して。棘、ぜんぶ取っちゃうね」
925/08/24(日)22:02:26No.1346582730+
お線香の煙がくゆるお墓の前で、ふたり並んで手を合わさせてもらう。
花立てには紫のすみれの花と黄色の薔薇、それとまなが持ってきた白いアイリスをお供えさせてもらった。

(お義父さん……娘さん達のことはまなが絶対に幸せにしますよって約束します。見守っててくださいね)

「………」「………ねえ、まなちゃん?」
「なあに?ウイちゃん?」「初音、なんか言ってた?パパのこととか……ママのことはどうでもいいけど」

なぜか同性親に対しての当たりがめちゃ強のウイちゃん……反抗期なのかな?そんなところもかわいいね!

「あっちのういちゃんは特になにも。でも多分だけど、口には出さなかったけどすっごく気にしてたよ。お義父さんに会いに来れないこと。きっとウイちゃんと同じ気持ちだよ……」
「なにそれ……」

「さっきのウイちゃんと同じ目してたもん……自分を責め続けちゃってる子の目。お義父さんのことだって……ウイちゃんのことだって心配だと思うよ?」
「初音は全然そんなこと思ってないよ……きっとパパや私のことなんてもう……」
1025/08/24(日)22:02:42No.1346582835+
「ううん、そんなことない。まなはsumimiで長いことやってますし!ふたりでひとつの相方のことならなんでもわかりますよ〜〜って叫びたくなっちゃう!」

まあこれは強がり。大嘘ついてるかもね。
あっちのういちゃんの、初音ちゃんのことだって知らないことの方が多いから。

でもね───まなはアイドルなんだから。
愛嬌でも嘘でもなんでも使って、目の前の人を笑顔にさせるのがお仕事だもん。

「だから信じて、ね?」
しょげてる子がいたら励まさないと。ウイちゃんの手を、ぎゅって握っちゃう。

「ずるいよ、まなちゃん」「信じてくれた?」「うん、力技すぎるけど……ふふっ、もう無茶苦茶!」
よかった〜〜〜!!!あっ!!ウイちゃん笑った!!やった〜〜〜元気になってくれた!!

「お姉ちゃんのお花に免じて信じるよ……もう、いつまで私の手握ってるの?」「えへへ、ず〜〜っと!!」
1125/08/24(日)22:02:55No.1346582913そうだねx1
─────
──
「さて帰ろっか、まなちゃん!私、お寺に借りた道具返してくるね!入口のところで待ってて!」

今いるお義父さんのお墓から、元気よく駆けていく彼女の後ろ姿に「気をつけてね〜」って声をかける。
すっかりいつものウイちゃんに戻っちゃった!ウイちゃんはしおらしさよりさかんな活発さの方が似合うね!

「……気にする余裕なかったけど、ういちゃん達が育った島なんだねここ……自然豊かでいい所」
山の下の船が停まってる湊の方、瀬戸内の海を見下ろすと、まだ少し夕陽が反射してキラキラしてる。
そろそろ夜になるから鈴虫が「りんりん」と鳴いていてすっごく風情があって……また来てみたいな。

帰り際に、お義父さんのお墓に視線を向ける。
供えた薔薇と、まなのお花も気に入ってくれるといいなあ。最後にまた手を合わせとこ。

「お義父さん………ウイちゃんは名前も、あこがれてたアイドルの夢も使われちゃって落ち込んでたけど、今はまなのお家ですっかり元気にラブラブで同棲してます。初音ちゃんの方も元気にsumimiとムジカやってて。それで姉妹ぜったいに仲直りしてもらいたいから……まな、いっぱいがんばりますね!」
1225/08/24(日)22:03:05No.1346582991+
「まなちゃーん!早くーー!町まで出ないと!夜になったらここの山、徒歩だと簡単に遭難するくらい暗くなるんだから!」
「ウイちゃ〜ん!ちょっと待ってて〜〜!!」

わわわっ!愛するウイちゃんが呼んでるから行かなくちゃ!また来ますね〜〜お義父さん!次こそは初音ちゃんも一緒に!
すると、急に強い海風が吹いて思わず目を瞑っちゃっ───


『娘達のこと、よろしくお願いします』


後ろから、誰かの声が聞こえた気がした。振り返ると誰もいなかったけど………えへへ、任されちゃったね。

「はい!はんぶんこになっちゃったふたりのこと、絶対に幸せにしちゃいます!」

「もー!!まなちゃん早く早くー!!」「は〜い!!今行くよ〜〜!!」
1325/08/24(日)22:04:07No.1346583356そうだねx5
次で最後!
いつまでお盆やってるのって叫んじゃう

おやsumimi〜〜
1425/08/24(日)22:05:55No.1346584020+
お疲れ様です…
1525/08/24(日)22:11:35No.1346586266+
まなちゃん…かっこいいぜ…
1625/08/24(日)22:15:04No.1346587633+
綺麗に終わりそうでよかった…
1725/08/24(日)22:16:11No.1346588049そうだねx4
>すっかりいつものウイちゃんに戻っちゃった!ウイちゃんはしおらしさよりさ
>山の下の船が停まってる湊の方
>そろそろ夜になるから鈴虫が「りんりん」
>「お義父さん………ウイちゃんは名前も、あこがれ
Roselia!
1825/08/24(日)22:29:54No.1346593292+
めっちゃエモいのに…あの頭おかしいモブレズのノリ書いてたんだよね…
1925/08/24(日)22:30:47No.1346593632+
初華ちゃんも幸せになってほしいな
2025/08/24(日)22:34:34No.1346595143そうだねx3
>「ウイちゃん!!!」
>「ひゃ……ひゃい!」
>「ういちゃん!!!」
>「ひゃ……ひゃい!」

>「………やっぱり姉妹だよ……」
2125/08/24(日)22:36:35No.1346595960+
妄想爆発しても燈の存在を思い出してしまう初音に泣いた
なんていうか自分に向けられる好意に確信を持てないところも姉妹だ…
2225/08/24(日)22:47:00No.1346600171+
初音を迎えに来た祥ちゃんに初華を迎えに来たまなちゃん
2325/08/24(日)22:47:31No.1346600344+
>白いアイリスの花言葉は「あなたを大切にします」「純粋」「思いやり」です。これらは、ギリシャ神話の虹の女神イリスにちなんで名付けられ、その清らかなイメージと、神々から地上へメッセージを届ける使者としての役割に由来しています。
エモいね…
2425/08/24(日)22:48:30No.1346600757+
>「んーん……まなの大事なあの子のお父さんのだよ」
>「あぁ……まなちゃんと一緒に住んでるっていう年下の女の子……」
まなちゃん強すぎる…
2525/08/24(日)22:55:05No.1346603567そうだねx2
まなちゃんの光の強さはどれだけ盛ってもいいのです
2625/08/24(日)22:58:08No.1346604726+
>ウイちゃんはまなの傍に一生いてほしいからどこかに逃げちゃっても絶対に捕まえられるようにスマホはもちろんまながプレゼントしていつも身につけてくれてるチョーカーとかその他諸々にいろいろゴニョニョなの何重にも仕込んでるけど…………
こわいよ…


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