[main]
GM :
“All grown-ups were once children… but only few of them remember it.”
「おとなは、だれも、はじめは子どもだった。しかし、そのことを忘れずにいるおとなは、いくらもいない」
アントワーヌ・マリー・ジャン=バティスト・ロジェ・ド・サン=テグジュペリ(1926-1944)
Le Petit Prince(星の王子さま) より
[main] GM :
[main] GM : ──6年前。
[main] GM : 茶髪黒目のショートカットヘアの少女が塀の方に向かって走っていた。
[main] GM : 雷雨の中を、独りで、駆けていた。
[main] GM : 少女は、ある時に、特別な力に目覚めていた。
[main]
GM :
しかし、彼女は──“バケモノ”として拒絶された。
教育者であることを誇りとしていた両親のその態度は、少女を深く失望させ、絶望させた。
[main] GM : 捨てられた少女は、とある機関の教育施設に引き取られることとなり、名前を喪った。
[main]
GM :
そこで与えられたコードネームは“リニアキャノン”。
それが、サーチライトに追われている少女の新しい名前だった。
[main] GM : 少女はどうにか塀の目の前までやってきたのだが、そこには誰かがいる。
[main] 羽場見 来兎 : 「……。」
[main] GM : 彼は“エレクトリック・グルーヴ”という名の、この施設の子供たちの中で筆頭格的な存在の少年だった。
[main]
葛西 呉香 :
「はぁはぁ……どいて、どいてよ……ねぇ!!」
嚙み付くような顔で、雨が顔に当たるのすら気にする様子はなく吠えるように叫ぶ。
[main]
羽場見 来兎 :
「ここから逃げて、何処へいくつもりなんだ」
少年は雨風を受けながらも、堂々と立っている。
[main]
葛西 呉香 :
「っっ!! 知らない……アンタの、アンタの、知ったこっちゃないでしょっ!!??」
たった一言で自分の根本の部分を突かれ、激高する。
叫びと同時に身体に、パシリっという雷が走り、雷雨の中で風景に混ざり消えていく。
[main] 羽場見 来兎 : 「……ここの外に俺たちの居場所はない。そして、ここの中にも俺たちの居場所はないとしたら……“リニアキャノン”。君は、どうする?」
[main]
葛西 呉香 :
「っ………!! 私を、“リニアキャノン”なんて呼ぶなぁぁあああ!!!」
両手を、雨に逆らうように上へと向け振り下ろすと、目の前に雷が……いや。
自身の身体で作られた雷が空中に浮かび上がり、“彼”と自分の間に下りて弾ける。
[main]
羽場見 来兎 :
「……俺たちの居場所がどこにもないのなら」
臆せずに、少女の方へ1歩1歩と進む。
[main] 葛西 呉香 : 「嫌い、嫌い、嫌い嫌いっっ!! うるさい、うるさいうるさいうるさいうるさいっっ!! 知ってる、分かってる!! あいつ等が、私を捨てたなんて知ってる!!」
[main]
羽場見 来兎 :
「俺たちで、作ればいい──そうだろ、な?」
少女の異能たる雷撃を浴びながら、彼女を抱きしめた。
[main] 葛西 呉香 : 「でも、だからって……私にここで何しろってのよ! 私の“力”しか見てないような、こんな場所で、どうしろって…………ぇ?」
[main] 葛西 呉香 : 激情のまま、再び力を振るおうとした所で、彼に抱きしめられ、呆然と顔を見上げる。
[main] GM : その時、逃げ出す少女を追跡していたサーチライトは少年と、それが抱きしめる少女の2人を照らし出した。
[main]
羽場見 来兎 :
「悪いな。俺も同じなんだよ」
全身に微弱な電気を発生させ、地面に逃がしている。
[main]
葛西 呉香 :
「…………ちくしょう、アンタのせいで、見つかった」
背後に当たる明かりを感じて、悔しそうに彼のお腹の前で顔を伏せる。
[main] 羽場見 来兎 : 「俺は、ここにいる皆の『力』だけを見たりしない」
[main]
葛西 呉香 :
「……私と、同じ、能力」
肌に泡立つような慣れ親しんだ電気の感触。
それを受けて、ようやく、初めて、彼の顔を正面からちゃんと見つめて。
[main] 羽場見 来兎 : 「取り戻すんだ。人間としての存在を──」
[main]
葛西 呉香 :
「………………どうだか」
信じたい気持ちはあれど、その気持ちにはまだどうあっても怖くて、恐ろしくて……信じられなくて。
[main] GM : 少女の眼前で照らし出される彼の顔は、まるで光そのものだった。
[main] 葛西 呉香 : 「…………私は」
[main] 葛西 呉香 : 「……人間、なのかな? それとも……ねぇ、やっぱり」
[main] 葛西 呉香 : (
[main] 葛西 呉香 : (バケモノ……なのかな?)
[main] 葛西 呉香 : そう聞くのだけは、怖くて、どうしても口に出来なかった。
[main]
羽場見 来兎 :
「……。」
雨が頬を伝いながら、無言で強く彼女を抱きしめる。
[main]
葛西 呉香 :
「…………」
もはや逃げるには遅すぎる、追手はすぐに来て連れ戻されるのは分かっている。
だから、そう、だから仕方なく……抱きしめる、彼の服の裾を、ぎゅっと握って……唇を、噛んだ。
[main] GM : ──これが、少女と少年の出逢いだった。
[main] GM :
[main] GM : “エスクエラ”というUNGチルドレンの養成研究所で、少年と少女は過酷な訓練の日々を送る。
[main] GM : 仲間は、ひとり減りふたり減り、また新しく増えては、さらにその数をへらしていった。
[main]
GM :
その頃、まだコードネームで区別されていたキミたちチルドレンの間で流行っていた、互いに名前を付け合うという遊び。
能力を示すコードネームや数字ではない、本で見たような人間の名前を付け合う、たわいもない遊び。
[main] GM : ──ある夜、キミは少年の部屋に訪れていた。
[main] 羽場見 来兎 : 「くそっ……ヨギの奴、今日もバカみたいな訓練しやがって」
[main] GM : 部屋の主たる少年は上半身の着衣を脱ぎ捨てて、ベッドの上に寝そべっていた。
[main]
葛西 呉香 :
「……しんどいんだから、声出さないでよ……動くのもだるい」
服を脱ぐのも億劫といった様子で、ベッドの上で寝転んだまま、横目でジロっと彼を見る。
[main]
羽場見 来兎 :
「よ、考えてきてくれたか……俺に相応しい名前をさ。約束だっただろ、考えてくれるって」
来訪者に腕を伸ばし、隣へと近づけさせる。
[main]
葛西 呉香 :
「したっけ……そんな約束?」
勝手にベッドに寝転がりながら、軽い調子で答えを返す。
――無論、覚えている。
こうして素直じゃない返事を返すようになったのは、ひょっとしたら一種の甘えなのかもしれない。
[main]
羽場見 来兎 :
「おいおい、とぼけるなよ。みんなやってるだろ、最近になって。なのに、古株の俺たちがまだだったんだぜ」
なんとか彼女の顔をこちらに向かせようとしている。
[main]
葛西 呉香 :
「はいはい、分かってるわよ。うるさいわねぇ……!」
近づかせようと寄ってくる手を鬱陶しそうに形だけ阻んで見せながら、気持ち……ほんの気持ちだけ、自分から彼へと近づく。
[main]
羽場見 来兎 :
「……それで、どうなんだ」
両の眼をしっかりと彼女に向ける。
[main]
葛西 呉香 :
「…………私のはさ」
見つめてくる彼の眼のまえに自分の手をかざして、パリっとそこに雷を宿す。
「こう……それこそ雷って感じで可愛げないのよね」
[main]
羽場見 来兎 :
「同じブラックドッグでも違うっていうのか?」
その手を被せるように、自分の光り輝く手を重ねる。
[main]
葛西 呉香 :
「そ。でもアンタのは……もうちょっと可愛いって言うかさ。……なんか、温かみがある気がする」
かざした手から雷を消し、彼の手を取って指を重ねてみせる。
[main] 羽場見 来兎 : 「俺は好きだぜ。バリっとしたやつ」
[main] 葛西 呉香 : 「……だから、ライト。……私のより、綺麗で、暖かい感じの光。だから……ライト」
[main] 羽場見 来兎 : 「はは……こいつは、ど直球に来たな! ああ、君らしくていいじゃないか」
[main]
葛西 呉香 :
「……ふん、女の子がパリっと格好良くてどうすんのよ」
べーっと舌を出して文句を言いながら、少し黙り。
「……センスがないなら、別にいいわよ。どうせ遊びなんだし、つけなくたって」
[main]
羽場見 来兎 :
「……厭だね。君の、ちゃんと考えてあるんだ」
出された彼女の舌を、人差し指と中指で軽く摘まむ。
[main]
葛西 呉香 :
「……ちょっひょ、何すんのほ……!」
ジタバタと両手を振り回して、抵抗する。
ただ、本当に嫌ならば摘んでいる手を振りほどけばいいだけの話。
こんな抵抗の姿も、そう……じゃれあいの一つでしかなかった。
[main]
羽場見 来兎 :
「ハハ……悪いな、つい」
指を話し、そのまま近い距離で額を重ねてから
[main] 羽場見 来兎 : 「──暮れの香りと書いて、暮香(くれか)。にしようと思ったが、キミのようなじゃじゃ馬は”呉”の方が似合いそうだ。だから、呉香だな」
[main]
葛西 呉香 :
「んむ……ったく」
やっと離された手にやれやれという顔を向けながら、近づいてくる顔に疲れている顔を向けるも抵抗はせず。
こつん、と小さく音と立てて2人の影が重なった。
[main] 葛西 呉香 : 「呉香…………それが、私の名前?」
[main] 羽場見 来兎 : 「ああ。名前なんだから、漢字まで考える必要……あるだろ、”呉香”?」
[main]
葛西 呉香 :
「えー……私に難しいこと求めないでよ。んー、そう……そう、ね」
名前をつけられた実感に、明らかに……少し浮ついたような感じを見せ、小さく笑みを浮かべる。
[main]
羽場見 来兎 :
「考えてくれよ。な?」
距離の近い彼女の頬に手を添える。
[main]
葛西 呉香 :
「……私のとこに来た、光。意外と寂しがりで……強気の癖に、一人じゃいられない寂しん坊の兎。だから、光って来た兎で、来兎(らいと)……とか?」
暫く黙って悩んでから、自信なさげに上目遣いで来兎を見る。
[main]
羽場見 来兎 :
「おいおい、兎かよ。いいのか、プレイボーイの兎でもあるんだぜ?」
ニヤつきながら、抱き寄せる。
[main]
葛西 呉香 :
「うっさいわね! 可愛げないアンタに少しでも可愛げをくれてやろうって名付け親心よっ! んっ、もう! ちょっと抱きしめるんじゃないってのっ!」
腕の中でもがいて、嫌そうなフリをするが、自分からその腕の中を出る様子は見せず。
[main]
葛西 呉香 :
「……で、どうなのよ。……言っておくけど、本当に自信はないんだからね」
不貞腐れるように、彼の胸の中で顔を背ける。
[main]
羽場見 来兎 :
「……ここも、広くなっちまったな」
らしくない寂しそうな、か細い声で。
[main] GM : 隣の部屋や、そのまた隣の部屋が現在は空き部屋になっていることを彼は指している。
[main]
葛西 呉香 :
「……そうね、私が逃げようとした時ですらもっといたわね」
突然の話に、無駄な抵抗を止めて寂しげに周りをそっと見渡す。
[main]
羽場見 来兎 :
「──名前のない化け物のまま、死んでいくのだけは厭だった。でも、これでもう怖くないな」
背後からぎゅっと抱きしめ、彼女の耳元で囁く。
[main]
葛西 呉香 :
「……バカ言ってんじゃないわよ。名付け親責任ってのがこっちにもあるのよ。……死んだら、生き返らせてもう一度私が殺してやるわ」
抱きしめられた背中の感触を感じながら、顔を上に向け、彼の鼻をぎゅっと指で摘まむ。
先ほど、舌を摘まれたお返しだ。
[main] 葛西 呉香 : 「だから……死ぬんじゃないわよ、“来兎”」
[main] 羽場見 来兎 : 「……ああ、そうだな。最期は、二人で一緒にいよう……”呉香”」
[main]
葛西 呉香 :
「……ふんっ!」
死なないと受け入れてくれたと思って満足そうに頷き、ふてぶてしく笑うと頭を彼の胸に預ける。
[main] GM : そのまま、ベッドライトの照らす少年少女の影が重なりを増して、混じり合うように1つに溶けてゆく。
[main] GM :
[main] GM : その後、訓練課程を修了したキミと来兎は、お互いに付けた名前を正式に認められる。
[main] GM : 2人はそれぞれにUGNチルドレンとしての任務が与えられ、或る任務で来兎が消息を絶ち、死亡したことだけが聞かされていた。
[main]
GM :
残されたキミは、先の万紫 閃紅の覚醒を巡る事件を機に、N市へ派遣されている。
以来、時間を見つけてはN市で消息を絶った来兎の痕跡を独りで追跡していた。
[main] GM :
[main] 葛西 呉香 : 「…………死なないわよ、あのバカは。私が、殺してないんだもの。死ぬはず、ないじゃない」
[main] GM :
[main]
GM :
PC2 オープニング
PC2のみ登場をどうぞ。
[main] 葛西 呉香 : 1d10 (1D10) > 6
[main] system : [ 葛西 呉香 ] 侵蝕 : 37 → 43
[main]
GM :
そして、現在──。
キミは、UGNのN市支部に配属されている。
数週間前から、自由になる時間を利用して彼の足取りを独自に追っていた。
[main] GM : この町の少年少女たちの間で、彼のような少年を見かけたという噂がある。
[main] GM : キミは、その情報を頼りに、非行少年少女のたまり場となっているという路地裏に足を踏み入れていた。
[main]
葛西 呉香 :
「ここか……」
来兎が死んだと聞かされてから既に2年。
最初こそ手ひどく暴れたものだが、今では落ち着いている……。いや、期待し過ぎないようにしている。
死んだとは思っていない、けれど……すぐに見つかるものではない、というのはこの2年で嫌という程味わってきたのだから。
[main]
GM :
マスクを着用し、地べたに座りながら、ストローで缶入りのエナジードリンクを飲む奇抜でありながら似たような恰好をしている少女たち。
明るい髪色に染めて、黒を基調としたファッションに身を包むマスクの少年たち。
[main] GM : 彼らの合間を縫いながら、廃墟となった教会らしい建物の近くまで歩いた時だった。
[main]
葛西 呉香 :
「…………」
眉を顰めて、少年達を横目に通り過ぎる。
無論そうしながらも、まだ思い出の中にある面影に似た姿がないかを追い求めて。
[main] 羽場見 来兎 : 「──久しぶりだな、呉香」
[main] GM : 少し背丈が伸びて、ストリート系ファッションに身を包んだ彼が、そこにいた。
[main]
葛西 呉香 :
「……来兎?」
突然に、当たり前のように出て来た彼の姿に、一瞬現実が分からなくなる。
呆然と、時間すら忘れたようにただ呆然と、思い出の影に重なる彼の姿を前に固まってしまう。
[main]
羽場見 来兎 :
「待たせたな」
やや大人びた顔つきと、低くなった声色をしているが、間違いない。彼だ。
[main]
葛西 呉香 :
「………………はっ、はは…………待たせ過ぎよ、バカ。私が、殺してないのに……死んだなんて思ってなかったけど」
ようやく、といった様子で声が出始める。
少しだけ思い出とは違う彼の姿、けれど思い出と重なる彼の姿。
それが、ようやく現実だと理解出来てきて、自然と瞳に水が勝手に溢れてくる。
[main]
羽場見 来兎 :
「……UGNじゃ、俺は死んだってことになっているらしいな」
頬に手を伸ばして引き寄せ、彼女の眼もとに口づけを施す。
[main]
葛西 呉香 :
「……えぇ、2年前に。勝手にどこぞでのたれ死んだって。ってもう……ちょっと、やめてよっ!」
言葉を返しながら、当たり前のようにされる目元へのキス。
当然のように受け入れてしまってから、周りに人の目があるのに気付き、顔を赤くし慌てて胸を両手で押して距離を離す。
[main] GM : 呉香は知覚7で判定をどうぞ。
[main] 葛西 呉香 : (5)dx(10) 【感覚】判定 (5DX10) > 10[5,7,9,10,10]+10[9,10]+4[4] > 24
[main]
GM :
思わず、彼の体に触れてしまった。
キミの記憶の限り、彼の体温は高かったような気がするが、心なしか冷たく感じる。
[main] 羽場見 来兎 : 「その調子だと、まだ”呉香”って名前は使ってそうだな。嬉しいぜ」
[main]
葛西 呉香 :
「……来兎?」
ふと感じた違和感。
気のせいだと、勘違いだと思いたくて……彼の様子をマジマジと見つめてしまう。
[main] 羽場見 来兎 : 「ちょっと、その辺をぶらついて話でもしようか。な、呉香?」
[main]
GM :
慣れた手つきで君の腰に腕を回してくる彼。
2年という月日で、変わってしまったのだろうか?
[main]
葛西 呉香 :
「…………そうね」
一緒に行くと見せて、彼なら……本当に彼なら簡単にいなせる程度の、電撃を身体に走らせる。
[main] 羽場見 来兎 : 「せっかく呉香に逢えたんだ。今夜は、長くなりそうだな」
[main] GM : 彼はキミの防護の電磁をものともせず、そのまま二人は路地裏の奥に消えてゆくだろう。
[main]
葛西 呉香 :
「…………えぇ、話す事はいっぱいあるもの」
嬉しい、はずなのに……胸の中でざわめく違和感と猜疑心。
勘違いで会って欲しいという不安を押し殺しながら、来兎に招かれ、路地の奥へと足を進める。
……その目に、僅かな警戒の色を宿しながら。
[main] GM :
[main]
GM :
PC3 オープニング
PC3のみ登場をどうぞ。
[main] トーマ・ケヴィン : 1d10 (1D10) > 3
[main] system : [ トーマ・ケヴィン ] 侵蝕 : 32 → 35
[main] GM : UGN N市支部の支部長室。
[main] GM : 本来の主は、相棒の猫のレネゲイドビーイングとともに慰労の温泉旅行に行ってしまい、その空席をキミが預かることとなっていた。
[main] GM : 現在、N市支部ではチルドレンが相次いで失踪するという事態が報告されている。
[main] GM : どうも”リベレーターズ”と名乗る、謎のオーヴァード集団が活動していると報告されいる。
[main] GM : だが、この組織の調査任務にあたっているチルドレンたちが失踪しているのだった。
[main] GM : 執務室で頭を悩ませているキミと、キミの相談役になっている日本支部長の”リヴァイアサン”。
[main] GM : そこへ、来訪者があった。
[main] イザベラ・ヨギ : 「N市支部長のくみ……って、あれっ? いないの?」
[main]
トーマ・ケヴィン :
「……これは、プロフェソラ?どうしてこちらへ?」
「支部長は現在、とある遺産の回収に向かっています」
[main]
GM :
彼女はイザベラ・ヨギという名のUGN本部エージェント。
元はチルドレンの教官を務めていたという人物である。
[main]
イザベラ・ヨギ :
「遺産? はぁ、こんなときに……」
ため息をつきながら、サングラスを外す。
[main]
トーマ・ケヴィン :
「…現在、僕が支部長代理として任されています」
「こんな時、ではありますが遺産の回収も重要な仕事ですから」
[main] イザベラ・ヨギ : 「嘗ての私や、”シルクスパイダー”が訓練をしたチルドレンを派遣してるっていうのに、むざむざと失踪を増やしているようじゃない」
[main] イザベラ・ヨギ : 「この支部が一番多くの損害を出してるとか。監督責任、問うわよ?」
[main] トーマ・ケヴィン : 「その責任から逃げるつもりは、毛頭ありませんよ」
[main] トーマ・ケヴィン :
[main] イザベラ・ヨギ : 「あら、そう。私は……残されたチルドレンの精神面のケアが必要と判断したわ」
[main]
トーマ・ケヴィン :
「……それは、そうですが」
「失踪したチルドレンの足取りなども追って探さねばなりません」
[main]
イザベラ・ヨギ :
「じゃ、チルドレンの様子を見に行ってくるから。こっちは」
再びサングラスを身に着け、N市支部を足早に去る。
[main]
トーマ・ケヴィン :
「あ……プロフェソラ、貴方の教え子たちについても意見を……」
手を伸ばすが、すでにイザベラの背中は遠ざかっていた
[main]
霧谷 雄吾 :
「ヨギさんの言葉が厳しくなっているのは許してあげてください。これまでに多くのチルドレンを輩出してきた優秀な教育者の彼女にとっては、大事な子供たちが失踪していることになるのですから」
沈黙していた日本支部長が、ようやく口を開いた。
[main] トーマ・ケヴィン : 「なればこそ、探索の方にも手を貸していただきたかったのですがね……」
[main] 霧谷 雄吾 : 「……そうですね。さて、今回の件ですが、直接お話しするべきだと思いましてN市支部まで足を運びました。何分、周辺支部も含めて多くのチルドレンが失踪しています。”リベレーターズ”という組織についても、まだその実態は分かっていません」
[main] トーマ・ケヴィン : 「『解放者』ですか……僕は、チルドレンの失踪と結び付けて考えてしまいます」
[main] 霧谷 雄吾 : 「ええ。そして、現在……この地域全体が機能不全に陥りつつあります。チルドレンにしかできない任務は多いですし、彼らは極めて有用性の高い存在ですから」
[main] トーマ・ケヴィン : ――有用性、という言葉に少しノイズが入る。だが、今言うべきことではない。
[main] 霧谷 雄吾 : 「なんとしても早期の解決をお願いしたいと思います。勿論。N市支部の主導でね」
[main]
トーマ・ケヴィン :
「一刻も早い解決を、ですね」
「支部長代理を預かる立場としても、一人のエージェントとしても、見過ごせる事態ではありません」
[main] トーマ・ケヴィン : 「何としても、事態を解決してみせます」
[main] 霧谷 雄吾 : 「ありがとうございます、“蜃気楼の弾丸《ミラージュバレット》”。あとそうですね……1つ気になることがありましてね」
[main] トーマ・ケヴィン : 拝聴の構え
[main] 霧谷 雄吾 : 「先ほどの“プロフェソラ”……ヨギさんですが、復帰したチルドレン教官をやめたがっているようなのです。あれほど熱心な教官でいたのですが……」
[main] トーマ・ケヴィン : 「あれほど、チルドレンのメンタルケアを口にされた方が?」
[main] 霧谷 雄吾 : 「ええ。辞表はまだ出ていないそうですがね」
[main]
トーマ・ケヴィン :
「怪しく見ると、どんどん怪しく見えてしまいますね」
「彼女は、現在失踪しているチルドレンの探索に、何も口出しをしなかった」
[main] 霧谷 雄吾 : 「支部長代行の身とは伺っていますが、期待していますよ」
[main] トーマ・ケヴィン : 「支部長の名に泥を被せぬよう、頑張らせていただきます」
[main] 霧谷 雄吾 : 「そうそう、アメリカで元気にしていましたか?」
[main]
トーマ・ケヴィン :
――後で組長を怒らせた方が、たぶん怖いからな
そんな言葉は、情けないので飲み込んだ
[main] 霧谷 雄吾 : 「ああ、弦一……“聖なる瞑想者”のことです。本部で会いませんでしたか?」
[main]
トーマ・ケヴィン :
「……お元気そうでした、としか言えません」
「何せ、僕はまだまだ下っ端ですし、少しお声かけいただいたぐらいです」
[main]
霧谷 雄吾 :
「そう……ですか。彼も本部で忙しそうですね」
なんだか寂しそうな顔をしている。
[main] トーマ・ケヴィン : 「一般論ですが、何か大事があったらご一報が入ると思いますよ」
[main] 霧谷 雄吾 : 「そうですね。来ないことを願うばかりです」
[main] GM : ”リヴァイアサン”は、そう言って立ち上がる。
[main] 霧谷 雄吾 : 「……ところで、すみません。この暑い中を走ってきたもので、シャワーをお借りできますでしょうか?」
[main]
トーマ・ケヴィン :
「あ、はいもちろん」
「……支部長からは、『自由に使え』とは言っていただけていましたし」
[main] GM : その後、キミは、入浴後にタオルで髪をふきながら湿り気の残る前髪を手櫛で掻き上げる”リヴァイアサン”と、雑談や仕事の話に興じた。
[main]
トーマ・ケヴィン :
『胃が痛い、誰か助けて』
というトーマの内心は、誰にも聞かれることがなかった
[main] GM :
[main]
GM :
PC1 オープニング
PC1のみ登場をどうぞ
[main] 万紫 閃紅 : 1D10 (1D10) > 4
[main] system : [ 万紫 閃紅 ] 侵蝕 : 32 → 36
[main] GM : キミはバス災害の事件から、しばらくしてUGNの日本支部に特別に呼び出されていた。
[main] GM : 通された部屋で待っていると、そこに現れたのは若い女性だった。
[main] 玉野 椿 : 「あなたが、”血炎”? いきなり、FHの”ディアボロス”と闘ったという」
[main]
万紫 閃紅 :
「はい、そうです。"血炎"万紫閃紅です。よろしくお願いします」
立ち上がって丁寧に自己紹介
[main]
玉野 椿 :
「ええ、よろしく。私は、”シルクスパイダー”玉野 椿。詳しくは、上級ルールブックP89か、リプレイ・オリジンを読んで頂戴」
握手を交わしながら、自己紹介をする。
[main] 玉野 椿 : 「そうそう、あなた……先輩と一緒だったんでしょう? “プロフェソラ”、イザベラ・ヨギ先輩と」
[main]
万紫 閃紅 :
「よろしくお願いします、椿さん。イザベラさんには助けてもらいました…大量のダイス+攻撃力バフはありがたい」
手を握り返して微笑む
[main] 玉野 椿 : 「実は、私もチルドレン教官なの。彼女が2年前に日本を離れるときに引き継いだのだけれど、ここ最近に帰国してから復帰していただけてね」
[main]
万紫 閃紅 :
「ああ…組…支部長から少しお話を聞きました」
やっべ。
[main] 玉野 椿 : 「……と、挨拶の雑談はここまでにしてお仕事の話しをしましょうか」
[main]
万紫 閃紅 :
「─はい」
意識を切り替える。
[main] 玉野 椿 : 「”血炎”。あなたの次の任務は、N市および周辺区域で活動中の正体不明の組織”リベレーターズ”に潜入することよ」
[main]
万紫 閃紅 :
「…はい?潜入?」
俺、先日まで高校生だったんですけど。
[main] 玉野 椿 : 「現在、頻発しているチルドレンの失踪に、この組織がどこまで関与しているのか、それをN市支部長と……いえ、今は支部長代行のようだけれど。とにかく、彼と連携を取って調べて欲しい」
[main] 玉野 椿 : 「あなたは、UGNに協力してから、まだ日も浅く顔もしられていない。それに、優秀なオーヴァードだって報告されているの。あなた以上の適任者はいない」
[main]
万紫 閃紅 :
「代行…トーマ君か。それなら…分かりました」
一人じゃないだけ良かったと少し安心
[main] 玉野 椿 : 「それに、N市支部には内通者の存在も噂されているの。だから、日本支部から直接の依頼よ」
[main] 万紫 閃紅 : 「…内通者がいるんですか」
[main] 玉野 椿 : 「N市支部への連絡は、無線でもできるから。支部長代行の“蜃気楼の弾丸”にはこまめに連絡をして。彼の周波数は140.85よ」
[main]
万紫 閃紅 :
「…分かりました」
140.85、覚えた。
[main] 玉野 椿 : 「あ、今のは冗談だから。ちょっとしたゲームのネタだから気にしないでね」
[main] 万紫 閃紅 : 「あーなるほど、あれのネタでしたか」
[main] 玉野 椿 : 「とにかく、潜入に関しては大丈夫。私のレクチャーの通りにして。あなたなら、きっとできる」
[main]
万紫 閃紅 :
「ご指導お願いします」
組長から聞いている。凄腕のエージェントかつ教官らしい。しっかり学ばなければ。
[main] GM : ──数日後。
[main]
GM :
キミは、”シルクスパイダー”からレクチャーされた通りに行動をした。
再開発が途中で頓挫した、N市でもゴーストタウンとなっている地区に足を踏み入れ、しばらく待っている。
[main]
万紫 閃紅 :
「ここが…」
立ち絵には反映されてないが周りから浮かないようなファッションになっている
[main] “リベレーターズ” : 「新入りってのは、お前? 話し、聞こうか?」
[main] GM : すると、リベレーターズの少年たちから呼び止められた。
[main]
万紫 閃紅 :
「…ああ。あんたが"リベレーターズ"なのか?」
繕う必要がないのは少し楽だな、と考えながら昏い目を向け答えた。
[main] “リベレーターズ” : 「ついてき。案内すっから」
[main] 万紫 閃紅 : 「分かった。連れて行ってくれ」
[main]
GM :
言われるままに連れてこられたのは、廃棄されたボーリング場である。
どうやら、彼らのアジトのようだった。
[main] GM : そこでは、少年少女たちが思い思いにすごしている。
[main] GM : ──ゲーム機を持ち込んで実況している者。
[main] GM : ──どこのファッション誌で紹介されたのか、ピンクや黒の派手な……それでいて似たような服装を楽しんでいる者。
[main] GM : ──電子書籍を読んでいる者。
[main] GM : 皆ひどく無邪気に遊んでいるようだった。
[main]
万紫 閃紅 :
「みんな楽しそうでいいな…ここは」
あたりを見回しながらそう呟く。
[main]
GM :
そんなキミの元へ、少女は近寄ってくる。
潜入任務だ。バレる訳にはいかない。
[main] 漣 有恵 : 「……新しい、仲間の人?」
[main] GM : 彼女は金髪に、ピンク色のメッシュを入れて長い髪をしていて、純白のワンピース1枚だけの薄着をしていた。
[main]
万紫 閃紅 :
「ああ、今日から君たちの仲間になるんだ。よろしく頼むよ」
退廃的な雰囲気を醸し出しながら、目を合わせて笑いかける。
[main]
漣 有恵 :
「そう。私も同じ、来兎の仲間」
淡々と薄らな感情で喋る。
[main] 漣 有恵 : 「私、漣 有恵。よろしく」
[main]
万紫 閃紅 :
「よろしくね、有恵ちゃん」
感情が薄い子なのだろうか、と考えながら答える
[main] 漣 有恵 : 「……名前。あなたの」
[main] GM : 思わず咄嗟に偽名を名乗るべきか、本名でいくのかキミは悩むだろう。
[main]
万紫 閃紅 :
本名…はあまり知られてはいないだろうが"万紫"はマズイだろう。この苗字だと真っ先に政治家が浮かんでもおかしくない。少なくとも苗字は変えるべきか。
思考を巡らせる。
[main]
万紫 閃紅 :
「ああ、ごめんね。久見閃紅って言うんだ。せんくでいいよ、有恵ちゃん」
とっさに思いついたのは組長だった。サンキュー組長。
[main] 漣 有恵 : 「……閃紅。いい名前だね。かっこいい、かも」
[main]
万紫 閃紅 :
「…ありがとうね。有恵ちゃんもかわいいよ?」
なんとなく、響きがいいと思った
[main]
GM :
近くに入ると、彼女から漂う甘い香水の匂いがキミの鼻を擽る。
年とは不相応に大人っぽい香りのような気がする。
[main] 漣 有恵 : 「そう。あまり、言われたことないから……わからない」
[main]
万紫 閃紅 :
「そうかな?じゃあいっぱい言おうかな…」
香水、だろうか。大人っぽいみたいな香りもするな
[main]
漣 有恵 :
「来兎……えっと、来兎は私たちのリーダーなんだけれど、近いうちに会えると、思う」
恥ずかしそうに話題を逸らす。
[main]
万紫 閃紅 :
「ふふ…かわいいねぇ。リーダーが来兎って人なんだね。ありがとう…どんな人なのかな…」
当たり前だが知らない名前だった。
[main] 漣 有恵 : 「ここは自由の国だから、したいことをしないと損なんだって。来兎が、そう言ってた。自由って言われても、よくわからないけれど……私たち、今まで言われたとおりのことしか、しなかったから」
[main] GM : その言葉を耳にすれば、キミは彼女が恐らく失踪してしまったUGNチルドレンの1人であることは推察できるだろう。
[main]
万紫 閃紅 :
「…俺も、そうだよ。…自由って言われても何をしたらいいのか分からないよね…」
親近感と共に距離を近づけた
[main] 漣 有恵 : 「そう、なんだ。私と……同じ」
[main] GM : しかし、そうしていると黒いマスクをつけた少女たちがキミを囲んでくる。
[main]
万紫 閃紅 :
「うん、一緒だね、俺たち」
この子も失踪したチルドレンなのだろう。でも、この様子を見る限り攫われた訳ではなさそうだ…
[main]
“リベレーターズ” :
「へぇ、見たことない顔だけど新人クン?」
「アルエの、ぴ?」
「いや、そんなことしたらリーダーに何されっかわかんなくね?」
[main]
万紫 閃紅 :
「ああ、新人なんだ。よろしくね、先輩?」
にこり、と笑いかける
[main] “リベレーターズ” : 「そっかぁ……じゃ、これいこっか」
[main] GM : 少女の一人は開いたグラスに蛇口から蛍光色の液体を注いで、ストローを指して、それを手渡してくる。
[main]
万紫 閃紅 :
「?何この…何?」
首を傾げてみる。
[main] “リベレーターズ” : 「ライト、言ってたし。あーしらみたいなの、フツーは水とかお茶じゃなくて、エナドリ飲むって」
[main] “リベレーターズ” : 「だから、改造して水道から出るようにしたみたいな? ほら、飲めよ」
[main]
万紫 閃紅 :
「えっこれエナドリなの…?」
見たことねーぞこんなエナドリ。
[main] “リベレーターズ” : 「そだよ。みんな飲んでっし」
[main] 万紫 閃紅 : …いきなり不味い。飲まなければ疑われる。しかし得体の知れないものは正直飲みたくない
[main] GM : 更に、他の少年少女が注目してきたのか、ぞろぞろと集まってくる。
[main]
万紫 閃紅 :
「…みんなこれ飲んでるの?美味しい?」
渡されたエナドリ?をためつすがめつしながら周りに聞く
[main]
GM :
皆、おいしいと口を揃えている。
同調圧力に気圧されそうだ。
[main]
万紫 閃紅 :
「えぇ…ほんと?信じるからね?激辛とかだったら酷いよ?」
飲むしか、ない。一応ブラムストーカーで気休めくらいはできると信じよう。信じる。
[main] 万紫 閃紅 : 得体の知れないドリンクを、飲んだ
[main] GM : のど越しは、よくあるエナジードリンクの味がする。
[main] GM : 特に問題はないのだが……体の内側が熱くなってくる。
[main] GM : 得体のしれない全能感に浸っていき、気分がとても高揚する。
[main] GM : 新たな自分に進化できそうな、覚醒しそうな、そんな心地よさである。
[main]
万紫 閃紅 :
「何、これ…」
ヤバい、これはヤバい。明らかにレネゲイド由来のやつだ、これ。それかおくすり。
[main] GM : キミは侵蝕率が+2D10される代わりに、「タイミング:常時」以外の「制限:-」のエフェクトから1つを選択する。そのシナリオの間、あなたは選択したエフェクトを取得したものとして使用できる。このエフェクトのレベルは1とし、侵蝕率によるレベルの上昇は行われない。
[main]
漣 有恵 :
「……あっ」
遅かったか、と伸ばそうとした腕を引っ込めた。
[main]
万紫 閃紅 :
「有恵ちゃん、何こ、れ。気持ちわ…トイレ、行き、たい」
とりあえずこの場を去らなければ…
[main]
漣 有恵 :
「……うん。こっち」
その手を引っ張る
[main] GM : キミは、リベレーターズに”歓迎”され、潜入に成功する。
[main] GM : 外部への連絡は、今のところは出きる状態ではないだろう。
[main] GM : しかし、落ち着きを取り戻して、隙を伺えば日本支部と連絡を取り合うことは難しくないだろう。
[main] GM : ──トイレの中で嘔吐するキミは、そう考えた。
[main] 万紫 閃紅 : これは、ただの失踪じゃない。何らかの組織が関わっているに違いない。そう、漠然と思った。
[main] 万紫 閃紅 : 個室にいる。それならバレないはずだ。《瀉血》を使用すると、一気に気分が楽になった。
[main] GM : リベレーターズの秘密を探るには、まだまだ潜入の必要がありそうだ。
[main] GM :
[main]
GM :
ミドルシーン1
PC2のみ登場をどうぞ。
[main] 葛西 呉香 : 1d10 (1D10) > 10
[main] system : [ 葛西 呉香 ] 侵蝕 : 43 → 53
[main]
GM :
夜のN市の街外れ──。
だいぶ雰囲気が変わっているが、間違いない。それはかつての大切な人であった、羽場見 来兎だった。
[main]
葛西 呉香 :
「…………」
喜びたいのに、素直に喜べない気持ちもあり、つい無言になり一緒に歩く。
[main]
羽場見 来兎 :
「~♪」
鼻歌を歌いながら、ジュースの自販機に手を伸ばす。
バチっと、電光が発せられ、雪崩のようにドクターペッパーの缶が出てきた。
[main] GM : そのうちから、自分とキミの分を拾い上げ、1本差し出した。
[main]
羽場見 来兎 :
「……飲むか?」
腰に回していない方の手で渡してくる。
[main]
葛西 呉香 :
「ん、ありがと……」
一瞬お金、と思ったがそういえばこんな奴だったかもと思い直し……。
[main]
羽場見 来兎 :
「……ん、やっぱりこれだな」
カシュと開け、美味しそうに飲む。その無邪気そうな顔は、あの頃の面影が残っていた。
[main]
葛西 呉香 :
「……ふ、そう?」
懐かしい、思い出と重なる姿に唇を綻ばせる。
その姿を見てから、自分もカシュっと開けて一口、くぴりと缶を呷る。
[main]
羽場見 来兎 :
「にしても、随分と久しぶりだよな。呉香は相変わらずみたいだけど」
とんとんと、腰に回していた手で軽く小突く。
[main]
葛西 呉香 :
「アンタもね、馴れ馴れしく抱き着いてくれちゃって……ていっ!」
腰に抱いていた手に指を当て、軽く抓ってみせて、少し笑みを溢す。
[main]
羽場見 来兎 :
「おいおい、やめろって。フッ──やっぱり、呉香という名前を付けてよかったな」
同じく笑い返す。
[main]
葛西 呉香 :
「どういう意味よ?」
言葉の意味が分からず、眉を顰めて首を傾げる。
[main]
羽場見 来兎 :
「……俺が、死んだって思っていなかったんだろ」
落ち着きを戻した表情で言葉を続ける。
[main]
葛西 呉香 :
「……当たり前よ、私が殺すまで、来兎が死ぬはずない。……約束よ、忘れる訳ないでしょ」
立ち止まり、顔をあげて真っ直ぐに来兎の顔を見る。
[main]
羽場見 来兎 :
「……だよな。俺が死ぬようなドジを踏むはずがないさ。そう見せかけただけだ」
彼女の顔を、見下ろす。二人の身長差が出来たせいか、その距離は少し離れたように感じるかもしれない。
[main]
葛西 呉香 :
「……でも、だったら何で、そんなことしたの? ……それに、もし本当にそうだったらなんで」
――なんで、私を、誘ってくれなかったの?
言葉にしなかった言葉を瞳に込めて、ただ真っ直ぐに来兎を見つめる。
[main]
羽場見 来兎 :
「──俺は、自由になったんだ」
静かに、しかし力強く告げる。
[main] 葛西 呉香 : 「自由……?」
[main] 羽場見 来兎 : 「呉香。お前は、UGNの連中に自分の心を殺されていないか?」
[main]
葛西 呉香 :
「……どうかしら、私は相変わらずの問題児を貫いてるつもりだけどね。まぁ、処分されてないってことは許容範囲の内なんでしょうけど」
肩を竦めてみせて、どうなのかは分からないと言葉を濁す。
[main]
羽場見 来兎 :
「呉香……本当の自由ってものを教えてやる。俺とともに来いよ──お前は好きだ」
そのまま抱き寄せて、流れるように彼女の唇へと重ねようとするだろう。
[main]
葛西 呉香 :
「……自由、か」
近づいてくる唇に指を当てる。
あと一歩、いや半歩近づくだけでくっついてしまうソレを、指で止める。
[main] 羽場見 来兎 : 「おい、どうしたんだ……?」
[main] 葛西 呉香 : 「…………嬉しいのよ、嬉しい。死んでないとは思ってても、ショックを受けてた来兎が生きてて嬉しい。好きだって言って貰えて、嬉しい。アンタが今ここにいて、嬉しい」
[main] 羽場見 来兎 : 「2年も待たせたのは、済まない。けれど、やっとなんだ……やっと、呉香を迎えに来れたんだ」
[main]
葛西 呉香 :
「別に待たされた事を怒ってなんかいないわよ……。いや嘘、やっぱ割と怒ってはいるわ」
「でも、私が今一番欲しいのは自由じゃない。……日常。アンタが、ずっと傍にいてくれる。一緒に日々を生きていける……そういう世界。来兎……アンタの言う自由は、そういう世界だって、思っていいの?」
[main]
羽場見 来兎 :
「答えは今すぐでなくてもいいさ。じっくり考えてくれ。だが、お前を後悔はさせない」
両肩から彼女をハグしようと
[main]
葛西 呉香 :
「いや答えなさいよ! それにね! ……ちょっとさっきから違和感があって、すっごい言いたいことが一つあんのよ!」
肩を怒らせ、見つめる目を釣りあげ、怒らせながら歯を剥く。
[main]
羽場見 来兎 :
「ん? なんだよ」
珍しく本当の怒りなのだと気づいて、両手を彼女から離す。
[main]
葛西 呉香 :
「前々から強引な奴とは思ってたけどね……! なんだかその女慣れしてる様子が、ちょっと気に食わない訳!! アンタ、2年の間にナニやってたのよっ、えぇ、来兎!?」
怒らせた肩から、抱きしめられていた腰にいたるまで、パシリっと明確に痛みが走るであろう雷撃を流して、問い詰める。
[main]
羽場見 来兎 :
「何って、俺たちは今”デカいこと”をやろうとしているんだ。世界を変えるほどのな」
電流は軽くあしらうように払う。
[main]
葛西 呉香 :
「……俺“たち”? ……デカいこと? なにそれ、ちょっと聞いてないんだけど?」
目を座らせ、全部喋れこの野郎とばかりに睨みつける。
[main]
羽場見 来兎 :
「その計画に、呉香が協力してくれると、嬉しいんだけどな」
吸収した静電気を利用して、手櫛で前髪を掻き上げる。
[main] 葛西 呉香 : 「ならまずその計画を話せって言ってんのっ!! あぁもう! 強引だったけど、ここまで話が通じなかったっけ、アンタ!?」
[main]
羽場見 来兎 :
「……っと、そろそろ時間だ。アジトじゃ、仲間たちが待っているんでな。呉香、今度に話してやるから。また逢おう」
懲りずに彼女の頭を軽く撫でてから、踵を返す。
[main]
葛西 呉香 :
「ちょっと!? こら、話したい事だけ話して何処に消えるつもりっ!?」
話すまで逃がさないと追いかけようとして……。
[main] GM : ──去り行くその背は、キミが見知らぬ背格好だった。
[main]
葛西 呉香 :
「っっ! ……なんだってのよ、ったく!!」
追いつこうとして、追いつけなかった……。
その知ってるはずの背中が、酷く……見知らぬモノに見えるのが、悲しかった。
[main] GM : そして、いつの間にか天候が崩れたのか、雨が降り出してきた。
[main] GM : ──羽場見 来兎との思い出は、いつの日も雨だった。
[main]
葛西 呉香 :
「…………あの日みたいな雨が、降ってくるんじゃないわよ。ちくしょうめ……」
困惑とうれしさと、不安が混ざった瞳で、もう誰もいなくなった路地の先を見つめる。
[main] GM :
[main]
GM :
オーヴァードとして生まれた少年少女たち。 特別な力を持ちながらも、 名前すら与えられることなく、見ず知らずの者たちの平穏のために戦う。
彼らは、自由を望んだ。 ゲームを遊び、スポーツに興じ、エナジードリンクを飲む。 そんな、ごく普通の若者たちの自由を。
だが、気づいてしまった。 自分たちは、いつまでもバケモノだということに。 これは、世界の終焉を望む少年少女たちの物語。
ダブルクロス 3rd Edition
『World End Juvenile』
ダブルクロス――それは裏切りを意味する言葉。
[main] GM :