二次元裏@ふたば

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207058 B25/08/17(日)23:29:10No.1344313916そうだねx3 01:05頃消えます
621戦場騎士くんが記憶を失うまでの怪文書完結です
2話Chapter7:fu5454980.txt
2話Chapter8:fu5454987.txt
3話:fu5454989.txt
総まとめ版(完結):fu5453518.txt
後書き付き設定資料集(ネタバレだらけ):fu5454993.txt
スペシャルゲスト:36秋月影太郎、D35ウォーティラノモン、D165デュアルビートモン、248赤城アカネ

使わせてもらってごめんなさぁい!!
ディエース以外スマックスタジオ用ドットしか間に合ってないこいつらはあとで立ち絵描かなきゃ……
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
125/08/17(日)23:31:03No.1344314500+
Chapter7:『龍珠の在処、魔女の正体』

7.1:『全員での謎解き』

 ベーダモンが片付けを始める食堂の喧騒を背に、生き残った者たちは吸い寄せられるように談話室へと集まっていた。
 壁の暖炉では相も変わらずデジタルの炎が音もなく揺らめいている。
 しかし、その柔らかな光も温もりも、氷のように冷え切った彼らの心を溶かすには至らない。
 ソファの配置はバラバラだった。誰もが、隣に座る者の体温すら信じられず、無意識のうちに距離を取っている。
 皆で自己紹介をし合った1日目を思い出す。
 ティンカーモンがいた席、赤城が論文を広げていた席、そして、ソク師範が豪快に笑っていた席。
 その空席が放つ静かな圧力は、生き残った者たちの胸を重く締め付け、修復不可能な亀裂の深さを物語っていた。
225/08/17(日)23:31:33No.1344314669+
 その死んだように淀んだ沈黙を破ったのはユンフェイだった。
 彼は静かに立ち上がると談話室の中央、暖炉の前へと歩み出た。
 その瞳から、絶望の色は消え失せていた。そこに宿るのは悲しみを燃やし尽くした後に残る、静かで、しかし決して消えることのない復讐の蒼い炎だった。
 彼は懐から一枚の紙片を、まるで聖別された遺物のように丁寧に取り出すと、ローテーブルの上にゆっくりと広げた。
 ティンカーモンが遺した拙いクレヨンの絵。そのカラフルで無邪気な線は、この陰鬱な空間においてあまりにも痛々しく場違いだった。

「どうか、皆の力を貸してほしい」

 ユンフェイの声は、驚くほど落ち着いていた。だが、その響きの奥には決して折れることのない鋼のような意志が貫かれている。
「この絵は、ティンカーモンが我々に遺してくれた最後の道標だ。彼女が何を想い、何を見つけたのか。
 このままでは彼女の想いは、この館の闇に葬り去られてしまう。それだけは……それだけは、絶対に避けたい」
 そう言うと、彼は、その場の全員に向かって深くそして丁寧に頭を下げた。
325/08/17(日)23:32:03No.1344314826+
 その行動に、最初に動いたのは騎士だった。
 彼は、当然のようにユンフェイの隣に立つ。それは、言葉以上の雄弁さで、彼らの間に結ばれた固い同盟をその場の全員に示していた。
「私にも……できることがあるのなら」
 か細い、しかし確かな声が続いた。
 レイラが、ワイズモンとスナリザモンに背中を押されるように、おずおずと輪に加わろうとしている。
 昨日の絶望から、彼女はまだ完全には抜け出せていない。だが、その瞳には、ここで立ち止まってはいけないという新たな決意の光が灯っていた。
 ワイズモンもいつもの軽薄さを抑え静かに頷いている。

「ふん。時間の無駄ね」
 壁際に寄りかかっていたエリスが、冷ややかに言い放った。
「子供の落書きに、どんな意味があるというの」
 だが、その言葉とは裏腹に、彼女の視線はテーブルの上の絵に釘付けになっていた。
 秘宝。その在処に近づけるかもしれないという抗いがたい誘惑。
 彼女は、あくまで渋々といった体を装いながらゆっくりとテーブルへと近づいていく。
 彼女の足元で、フローラモンがどこか悲しげに主人の横顔を見上げていた。
425/08/17(日)23:32:16No.1344314896+
「ふーん、面白そうじゃん。ティンカーモンちゃんのお絵描きクイズってわけね!」
 唯一、ディエースだけが、場の緊張感を気にも留めず、楽しげな声を上げた。
「アタクシ、こーゆーの得意かも! アタシも混ぜて!」
 彼女の能天気な明るさは、この歪な状況をさらに際立たせるスパイスのように響いた。

 最後に、これまで黙って事の推移を見守っていたゴッドドラモンが、重々しく口を開いた。
「……この館に、秘宝などありえないと、そう思っておりましたが……」
 彼は、深く、長い溜息をついた。
「もはや、常識で計れる事態ではないようですな。わかりました。この青嵐の館の主として、皆様の調査に協力しましょう。
 私も、あの健気な妖精殿が何を伝えようとしていたのか、知る権利と義務がある」
 それぞれの思惑、疑念、そしてわずかな希望が渦巻く中、ティンカーモンが遺した一枚の絵を囲み、奇妙でそして危険な共同捜査が、静かにその幕を開けたのだった。
525/08/17(日)23:32:48No.1344315070+
7.2:『騎士と剣士の密議』
「どうか、皆の力を貸してほしい」
 皆の前で深く頭を下げるユンフェイの姿を、騎士は静かに見つめていた。
 彼のその行動が、ただティンカーモンの死を悼む悲しみからだけではないことを、この中で知っているのはおそらく自分だけだろう。
 その懇願は、無力な者たちの同情を引くための演技ではない。
 これから始まる謎解きを、真犯人を炙り出すための冷徹な「罠」へと変えるための、宣戦布告なのだ。
 騎士の意識は、昼食の鐘が鳴り響く、ほんの数十分前へと遡っていた。

   ☆

 2階の男子トイレは、不気味なほどに静まり返っていた。
 残されたのは、騎士とユンフェイ、そして手洗い場の大きな鏡に映る、2人の強張った表情だけだった。
 陶器の冷たさが、張り詰めた空気をさらに冷やす。
 先に沈黙を破ったのは、ユンフェイだった。彼は蛇口から流れる水で手を洗いながらも、その視線は鏡の中の騎士から一瞬たりとも外れていなかった。
「奇妙だと思わないか」
625/08/17(日)23:33:05No.1344315156+
 その声は、水音に掻き消されそうなほど静かだったが、含まれた鋭さは騎士の鼓膜を明確に捉えた。
「なぜ、犯人はこれほど回りくどい手を使う? 我々を1人ずつ、じわじわと消していくことに、何の意味がある。
 もしこの館の機能を停止させ、我々を無力化することが目的ならば、真っ先に狙うべきはただ1人。この館の絶対的な心臓部、ゴッドドラモン殿のはずだ」
 ユンフェイは、濡れた手を拭うこともせず、騎士に向き直った。
 その瞳には、ティンカーモンを失った悲しみとは質の違う、冷徹な分析者の光が宿っている。
「それをしない理由……考えられるのは2つだ」

 彼の問いに、騎士は静かに頷いた。自分もまた同じ疑問にたどり着いていたからだ。
「第1の可能性は、単純にゴッドドラモンが強すぎること。四大竜の一角だ。
 いくらデジモンイレイザーとはいえ、単独で、しかも彼の本拠地で仕留めるのは容易じゃない」
 騎士は、赤城のファイルを思い返す。
725/08/17(日)23:33:29No.1344315298+
 イレイザーは圧倒的な力を見せつける一方で、時に慎重に行動する側面もある。
 いささか楽観的すぎるが、強大な敵との直接対決を避けている可能性は十分にあった。
「そして、第2の可能性」
 騎士は、より確信に近い声で続けた。
「犯人は俺達を生かしておく『必要』がある」
 騎士は、ユンフェイの瞳をまっすぐに見つめ返す。
「赤城さんのファイルにありました。ソク師範は、この館に隠された秘宝を執拗に探していたと。
 そして、その情報を最初にこの場に持ち込んだのは、エリスです。
 もし犯人もまた秘宝の正確な在処を知らないとしたら?
 目的を同じくする我々を、自分よりも先に秘宝を見つけさせるための都合の良い『探索の駒』として、泳がせているとしたら?」

 その推理は、この館で起きたすべての不条理な出来事を、1つの歪な線で結びつけた。
 宿泊客同士を疑心暗鬼に陥らせ、互いを潰し合わせる。その混沌の裏で、犯人は安全な場所から、我々が秘宝へとたどり着くのを待っている。
「……なるほどな」
825/08/17(日)23:33:48No.1344315404+
 ユンフェイの口元に、自嘲ともとれる笑みが浮かんだ。
「我々は、まんまと踊らされているというわけか」
 彼は、鏡に映る自分の顔を睨みつけた。絶望に沈んでいた愚かな自分。その背後で高笑いする、見えざる敵の姿が目に浮かぶようだ。
「ならば、騎士。我々が取るべき道は、もはや1つしかあるまい」
 ユンフェイの声から、迷いは完全に消え去っていた。
「我々が筋書き通りに秘宝を見つけ出す。その時、犯人は必ずその姿を現すはずだ。それが我々の手の中に転がり込んできた瞬間に……そこを、叩く」
 それは、あまりにも危険な賭けだった。自らが餌となり、猛獣を誘い出すに等しい。
 だが、この膠着した状況を打破するにはそれしか道はなかった。
「これはもうただの謎解きじゃない」
 騎士は、覚悟を決めた。
「ティンカーモンの想いを継ぐと見せかけて、犯人を追い詰めるための罠だ」
 その言葉に、ユンフェイは静かに頷いた。
「ああ。……彼女の無念は、俺が晴らす」
 鏡の前で二人の剣士は固い握手を交わした。
925/08/17(日)23:34:03No.1344315503+
   ☆

 テーブルに広げられた拙い絵と、それを囲む、疑心暗鬼に満ちた宿泊客たち。
 ユンフェイの「力を貸してほしい」という言葉が、まったく別の意味を持って、騎士の耳に響く。
 そうだ。これから始まるのは、ティンカーモンを弔うためのものではない。
 この狂った舞台の脚本家を、舞台そのものへと引きずり出すための、最後の芝居の幕開けなのだ。
 騎士は、心の中で静かに、そして強く呟いた。
(さあ、始めよう)
1025/08/17(日)23:36:47No.1344316380そうだねx3
プレビューはここまでです
いやーようやく終わったけどどうして俺はクローズドミステリーなんて文章量絶対増える題材でやろうとしたんだろうな?
この作品呼んでくれて騎士くん好きになったとか好きなキャラができたとか心に刺さったエピソードがあったらうれしいですね!
1125/08/17(日)23:41:57No.1344318081+
出た…特大怪文書…
1225/08/17(日)23:45:27No.1344319170+
完結おめでとう…!ライトノベル通り越して大盛りの対策だよこれ!
1325/08/17(日)23:48:35No.1344320225+
ウチのあの人が赤城名乗ってるのちょっと面白い…ありがとうございます
そしてとんでもない密度と顔の傷までの経緯がのしかかるしイレイザーこわいねって久しぶりに思いました
1425/08/17(日)23:53:49No.1344322017そうだねx2
改めて騎士くん使わせていただきありがとうー
騎士くんがあんな恐怖に怯える性格になるような酷い目に合わせられただろうか……
もっと悲惨な目が必要だったろうか……
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これがあの女の本性だよ
>ウチのあの人が赤城名乗ってるのちょっと面白い…ありがとうございます
>そしてとんでもない密度と顔の傷までの経緯がのしかかるしイレイザーこわいねって久しぶりに思いました
設定資料集でも謝ったけど改めて勝手に使ってごめんなさぁい!!
(夏祭りで騎士くんと絡んでるのみてやっべ❤となってたのは内緒❤)
1525/08/18(月)00:13:05No.1344328333+
エリスの回想だけの出番だけどマジラモンいいキャラだったな〜って思いますね
木竜軍団は毎度あくらつな作戦やってくる強敵なんですよ!!
今回の作戦で木竜軍団が怖い奴らだって思わせられたと自負してます
それにしても作中で解説自体はしたが設定資料集にイレイザーとか悪魔のハサミとか用語集みたいなのいれるべきだったな……
あとそういえば259VI・Fも名前出してないけどスペシャルゲストみたいなものだから書いておくべきだったかなごめんなさぁい!!
1625/08/18(月)00:41:29No.1344337248+
Fのセブンズカードがコピーされとる…!
「スピードセブンズを使ったのに相手に対抗策を取る時間を与えるとは。使い手の技量の差が出たな」とのことです
1725/08/18(月)00:51:08No.1344340076+
>Fのセブンズカードがコピーされとる…!
>「スピードセブンズを使ったのに相手に対抗策を取る時間を与えるとは。使い手の技量の差が出たな」とのことです
火力上げるのにドラモンキラーまで使ってたりが明らかに余計なんですよね
それと対象となるゴッドドラモンより行動順が早くなるだけだからアモンウモンが先に動けるんですね
1825/08/18(月)00:54:27No.1344340980そうだねx4
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15147 B
読み終わった!めちゃくちゃ面白かったですがなんか色々えらい事になってんな…!
騎士君の物語としてはすんげぇラスボス(?)が生えて来てびっくりだこれとりあえず戦える所までいけるかなぁ騎士君!?
こういう目に会いましただからデジモンが怖いですって描写が此方としても次に書く時に怯えやトラウマの基準にしやすいのでありがたいです今メイド着てるけどまだ曇らせ行けるな!
あとデュランダモンまで描きてぇ〜!ってなったので頑張ります
マジでここまでガッツリ書いてくれてありがとうございました!
1925/08/18(月)00:56:27No.1344341543+
一人のキャラのSetteiからここまでの大作書き上げてくるの本当にすげぇな…
2025/08/18(月)01:03:27No.1344343223+
>マジでここまでガッツリ書いてくれてありがとうございました!
その感想で苦労が報われます
みんなイレイザー
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になってるから倒してあげるといいよ
記憶失ってる上に姿も変わってるから殺しても気づかない展開いいよね……


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