でも、そんな姉妹ふたりはある日からずーっと家族の親交を断っていて………お盆の今も連絡すら……。
そんなの悲しい……悲しすぎるよう………。
いろいろあって内緒でまなと暮らしてるウイちゃんの方は普段は元気いっぱいだけど、ずーっと今も、お姉ちゃんに言ったこと後悔し続けてるし。

(どうにかしてあげたいなあ……)
家族の問題だから余計なお世話で、独善的っていう自覚もあるんだけど、
それでもまなが大好きなふたりがずっとこのままっていうのはヨクナイ……とてもケンコウニヨクナイ……。

そんなことを考えて悶々としていると、メイクさんのお姉さんがういちゃんのベースメイクを整えつつ、世間話を投げかけていた。

「このお盆シーズンもやっぱりお仕事ですか？」
「え、えぇっと……はい、明日はムジカのライブで……あっでも、それが終わればさきちゃ……事務所の方が配慮してくれて、何日かまとまったお休み貰えてるんですよね」

「わあ、いいですね。やっぱりご実家に帰省されたり？」
あっ、ダメ。ういちゃんにこの話題はまずい。まずいよ〜〜〜〜〜！！

「あ、あはは…………帰れ、ません」
「あーですよね。ご多忙ですし、学業とか、仕事の準備とかだってありますものね」

帰れません───これはいろんな意味を含んだ言葉のように聞こえちゃった。

「私はこの現場で仕事納めですね〜〜この後すぐに飛行機でパートナーの実家がある田舎まで飛んで、今日はバタバタしてますよ。ほんと大変で……」
「………そう、ですか」
「でも亡くなった義父の、パートナーのお父さんなんですけど、結婚するときもその後もものすごくお世話になったし、毎年の盆には帰ってくるだろうからお墓参りは欠かさず行ってあげたくて…………」
「………」
「それで生きてる姑の義母の方には毎年のように孫はまだかーってせっつかれてですね。モブレズの女同士なのにできるわけないでしょーって返してますけど」

「ういちゃん？…………あっ」
ういちゃんに目を向けると、腕のところで………これって───

『初音は不安になったり自分を責めだすとする手癖があってね。片手をこう……もう片方の腕の肘らへんに───』

「あのっ！！！！！」
「わっ、純田さん？どうしたの？急に大声出して………も、もしかしてメイクなにかおかしかった？」
「………？まなちゃん？」

瞬間的にまなの頭の中の『ういちゃん＆ウイちゃん曇らせ絶対阻止回路』に信号が走り回り、反射神経で声をあげた。
「パ、パートナーさんのご実家ってどの辺なんですか〜？」

いけないいけない笑顔笑顔………話題を全力で逸らすよ〜。
まなが守護らなければ、この世の全てからういちゃんズを。これは誰も悪くない事故みたいなものだけど。

「？……広しｍ」「広島っっっ！！？？え、えーーっ！？まなも広島大大大大大好きなんですよ〜〜！なんかシンパシー？みたいなの感じてて特に理由はないんですけど毎日サンフレッチェとカープのニュースチェックするくらい遺伝子レベル？いや運命レベル？で好きなんです〜〜！！」
「そうなの！？え〜〜うれし〜〜〜私もサンフレッチェファミリーなんですよね〜〜〜」
「いいですよね〜〜サンフレッチェ！それとそれとまな的には広島っていえばアンデルセンのアップルパイが───」

「………」ﾎｯ

──────
───

「みんな今日はsumimiのステージに来てくれてありがとね〜楽しかったね〜ういちゃん！」
「楽しかったね。来年もこのＷＩＦにsumimiで一緒に出られたらいいよね、まなちゃん」

『『『『『キャアアアアアアアアアアアア！！！！！！！！！』』』』』

World Idol Fes.(通称ＷＩＦ)最終日のお昼の部！sumimiのパフォーマンス演りきった〜〜楽しかった〜〜！
ういちゃんと一緒に、コンサートホールのまなたちのステージに来てくれたお客さんたちに手を振っちゃう！


『やだやだお別れしたくないもっとsumimi聴きたい！』『顔面がよしゅぎ……ういかさまアア！！』『ういまな結婚して子孫繁栄して遺伝子して！』『初華の顔面の光で孕むわ孕んだ』『私政治家なるわ……国の予算はういまなに全額いくべき』『mnに対する夢欲を抑えられない私を鞭打ちにかけてください！』『明日ムジカってマジ？ドロオブで脳破壊されにいくか』『汚れてく異教徒のモブレズじゃんとりあえず生爪から』『邪教のドロオブ派はこないだ拷問かけて半殺したけど最後まで仲間を売らなかったねその辺は誇り高いよねあいつら』

「みんなありがと〜〜危ないことはういちゃんもまなも悲しいからやめてね〜〜」
「みなさんありがとうございました。この後のパスパレさんのステージも、いっぱい楽しんでくださいね」
「それじゃあ、ういちゃん……せーのっ」

ういちゃんと息を合わせる。実はこの定番の挨拶をキメるときがまなは好きだったり。
お互い目を見合わせ、最後にファンのみんなに向けて精一杯笑顔を作って───

「まなとー？」「初華で」
「「sumimiでした〜〜！！」」
『『『『『キャアアアアアアアア！！！！！』』』』』

「おやsumimi〜〜は早いかな？まだお昼だもんね〜〜」「おやsu………みんなバイバイ。またね」
『『『『『キャアアアアおやsumimiよおおおおおおお(死)！！！！！』』』』』

『絶対uimn付き合ってるって……同棲してる噂はほんとうだったんだ』『このあとパスパレあるとか心臓もつかな私』『ういまなの後にあやちさ浴びんの？人類が浴びていい放射線許容量越えてね？』『白鷺なんぞに彩ちゃんはもったいないわ笑ひなあやだって笑』『あ？』『んだ？レズこらテメー』『ポ、ポヨヨ〜！？ポヨ？ボヨヨ〜ン！』『何こいつ？』

──────
───

ふたり、楽しかったステージを後にして楽屋への通用路を歩く。

「ういちゃんおつかれ〜〜！この時期は屋内でも照明であっついよね〜〜お水飲もうね〜〜」
「まなちゃんおつかれ……………あの、ごめん」
んん？どうしたんだろ？なんか浮かない顔？

「さっきのステージで私がミスしちゃったの、フォローしてくれて………楽屋でもなんか……」
「んふふ、なんのことかな〜〜？気にしないでいいよ〜〜まなだってういちゃんに助けてもらってるしっ！」
「そんな………私の方こそいっぱい……」

でもういちゃん。義理のお父さんのことで、自分のこと責めちゃってるんだね……。
ウイちゃんとはやっぱり姉妹だよ。似たようなことで悩んじゃってるんだもん……。

ウイちゃんからは、一度もお姉ちゃんがお盆にお墓参りどころか島に帰ってきたことないって聞いてるけど。
まなの直感とかウイちゃんの話合わせると、一時、姿を消してしまった際に多分島に………。
ういちゃんの性格的に、そのときにお墓に花を供えてくれたとは思う。

(でも、お盆には亡くなった人がこっちに帰ってくるんだから……行ってあげたいよね)

目の前にいるこの子のも、島に行ってるあの子が抱えたモヤモヤも晴らして笑顔にしてあげたい。まなに関わる子はなんとかして心を軽くしてあげたい。
アイドルとはそういうお仕事だもの。えっ？違う？………まなにとってはそうなの！！う〜〜〜〜〜ん………なにか……なにかまなにできることは〜〜〜……ん〜〜〜〜……


ふわりと香った匂い。


「あっ───」「まなちゃん？」
「急げば大丈夫かな？………ういちゃんちょっとここで待っててね！スタッフさんに確認取ってくるから！」

──────
───

夢見たこと。
わたしの、ユメ、だったモノ。
華やかな東ノ都、子どもながらに抱いた、そこでアイドルとして華を咲かす夢。

それは叶えられた。それは悪趣味な形で。
私じゃないやつが、初華の名前を使って、ステージで旋律奏で、拍手喝采雨あられ。
私ごときじゃアレにはなれなかったのは、なんとなくではあるもののちゃんと理解できた。

『私、東京でアイドルになるのが夢なの！ぜーったいなるから！さきちゃんも応援してて！』
『初華ならぜったいなれますわ！こんなにかわいいんですもの！』
ある別荘、それに併設された色とりどりの花々が咲く庭園。その入り口の前に立ち尽くす。
昔、ある年の夏休みに友達になった、キレイなお人形を抱えたおてんばな女の子に語ったことを思い出していた。

───[私有地につき関係者以外立ち入り禁止]───


私が歩いて来た道とその入口は、一本の鎖と警告文によって分断されていた。
侵入を拒む線。越えてはいけない線。ママが初音に踏み越えてはいけないと諭していた線。

それはまるで初音が私との間にもずっと引いていた、見えない一線と同じものにも思えた。

それを越えると良くないことが起こる───ああ、たしかに……起こったね。

「………早くパパに会いに行かなきゃ」
忌まわしい呪われた地の前から踵を返す。

手に持った旅行カバンの重さなのか、背を丸めて。家族が眠る場所に歩いていく。

──────
───

「ただいま、パパ…………って、うわっ！？うちのとこのお墓だけ雑草すごっ……ジャングルみたい」
お寺の墓地にある三角家のお墓。そこには青々とした草達が元気に生い茂っていた。

「これ……誰も手入れしに来てないね……」
まなちゃんのとこにお世話になり出してから、いろいろあってママとも基本連絡断ってる。
でも、こないだ久々に電話したら明日以降はここにお参りに来るそう。絶対会いたくないけど。

それに初音は………ぜったい来ないよね。来るわけない。でも、お墓の花立てに備えられてかなり月日が経った残骸がある……誰か来てはいたのかな？

「まあいっか。これひとりでキレイにするのすごい時間かかりそ……でもやるしかないよね……ふふふっ、今日はパパをひとり占めだよ」
私のせいで、家族はバラバラに砕けたから。
「だから今日は私が、寂しくなんてさせないから……」

3話くらいで終わるといいつつあと2話くらい
お盆がテーマなのにいつの間にかお盆休みが終わって……書き終わるまでお盆休みは終わりませんよ〜〜〜って叫びたくなっちゃう！

おやsumimi〜〜

>3話くらいで終わるといいつつあと2話くらい
全5話！？
やったー！！

おやsumimiは流行らない

モブレズって普通名詞なの…？
あとモブレズの描写が良いので熱中症からは回復したようで何よりです…

モブレズって冷静に考えたらとんでもない俗称だわ…

モブのファンのガヤが軽快で読んでて楽しい…

>モブレズって冷静に考えたらとんでもない俗称だわ…
蔑称まである

>夢見たこと。
>わたしの、ユメ、だったモノ。
>華やかな東ノ都、子ども
>ステージで旋律奏で、拍手喝采雨あられ。
>あるもののちゃんと理解できた。
ゆめみた！

前のクンニ奴隷とは別世界の話？呪いは共通みたいだけど

いつ頃出てきた概念なんだろモブレズ…黒岩さんあたりのスレでバンドリより前に見た記憶もうっすらあるけど…

蔑称のモブレズとは別にパートナー概念もあったのか

落ち着いてていいモブレズもいます

>『汚れてく異教徒のモブレズじゃんとりあえず生爪から』『邪教のドロオブ派はこないだ拷問かけて半殺したけど最後まで仲間を売らなかったねその辺は誇り高いよねあいつら』
コワ〜…

基本的にエモいし描写が凝ってるのにモブレズでバグるのなんなの…

もしかしてだけどモブレズの中に彩ちゃん混ざってなかった？

最後の真初華すげぇ良いね…

まなちゃんがヒーローすぎるよ…これは夢女欲を抑えられなくても仕方ない

>前のクンニ奴隷とは別世界の話？
………

普通の会話の中で急にモブレズというワードが出てくると脳が異世界に迷い込んだような気分になるな…

まなちゃん煩悩塗れだけどめっちゃいい子だな…

おやsumimiで爆上げする客席

>『初音は不安になったり自分を責めだすとする手癖があってね。片手をこう……もう片方の腕の肘らへんに───』
妹だから癖とかわかっててそれがまなちゃんに共有されてるの……すごくいい……

>おやsumimiで爆上げする客席
流行ってるんだよ！初音もおやsumimiやんなよ！

おやsumimiなんてダサいよ…流行らないよ…

>………
なるほど
別のまなウイ怪文書と混ざって覚えてるのかもしれない