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ティナ :
「……うーん、困ったな、完全にはぐれちゃった…」
夜を歩く少女…困ったように周囲を歩き回り、明かりを探して
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GM :
灯りがある。焚き火が爆ぜる音も。
商隊が馬を休めている。
深夜なのに警戒しているのか、何人かまだ起きているようだ。
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ティナ :
「あ…いや、みんなじゃないか、でもいいかな…すいませーん」
と、明かりの方に歩み寄りながら声を上げて
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バザーク :
ドラゴネットの女性が立ち上がる。
「なんだい、こんなところで迷子かい?」
「こっちに来て火に当たりな」
上背のある竜人は肩を竦めて。
「略奪団の一味じゃなければね」
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ティナ :
「…レパータルの人?」
と、見えてきたシルエットで思わず呟いて
アルディオン出身のため存在は知っているが、こちらで見るのは珍しいなと
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バザーク :
「そう、レパータルの人」
クスリと笑って。
「私はこの隊商の護衛だよ」
「バザークだ、あんたは?」
座って焚き火に薪を放り込む。
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ティナ :
「あ、ごめんなさい、えっと…ティナって言います、カナンで冒険者してて、近くに来てたんですけど仲間と離れちゃって…」
不躾だったと少し申し訳無さそうに名乗り
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バザーク :
冒険者。相手の言葉にウソはない。
資質さえあれば問題ない職業だが。
冒険者。
口に出してみるのもいいかも知れない。
「冒険者」
焚き火がパチ、と音を立てた。
「商人たちが起きたら何か知らないか聞いてみるよ、ティナ」
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ティナ :
「あ、ありがとうございます…」
ぺこりと頭を下げ、焚き火の安心感に小さく息を吐いて
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バザーク :
「あんたは運が“比較的”良い」
「この辺は略奪団が出る」
「あいつらに気づかれる前に夜明かしの場を見つけたんだ」
そこまで喋ってから一息に酒を呷って。
「私が保証するよ」
「"すべて持つ竜の王"ファーヴニルの角にかけて」
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ティナ :
「略奪団…」
他の皆は大丈夫だろうかと少し不安に思いつつ
「…えっと、バザークさんって、アルディオンから来た人ですか?」
やはり種族が気になるのか、そっと聞いて
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バザーク :
「心配するもんじゃあないよ」
「複数の慣れた冒険者を相手取れるようなタフな悪党じゃない」
串を取り出して肉を刺す。
小洒落た瓢箪みたいな容器から、調味料をかける。
「ああ」
「アルディオンから渡ってきた」
「名前は向こうの言葉で……bazは炎の、rkで斧という意味だよ」
「水は持っているのかい? 酒の隠語じゃあないよ、水だ」
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ティナ :
「そういう…」
ほ、と安心した顔になり、それなら仲間なら大丈夫だろうと結論付けて
「奇遇ですね、ぼ…私、”エランド”が降りてきて、アルディオンからエリンディルにやってきたんです」
同じ大陸からの人間ということで、少しうれしくなったのか、少し表情が柔らかくなって
「あ、はい、水は携帯してます」
ベルトポーチに付けた水筒に軽く目をやり
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バザーク :
「ケチな連中がケチな生業をしている」
「それから護衛するだけの気長で簡単な仕事さ…」
エランド。
神竜王セフィロス様から下る使命。
「なんだい同郷かい、早く言いなよ」
火のそばに串を置いて肉を焼く。
小洒落た調味料から皮肉にも作られる野卑な料理だ。
「こっちの気候には慣れたの?」
「水があるならいいさ」
「こっから人里へはまだ距離があるからね」
仲間と合流するにしても。人里へ行くにしても。
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ティナ :
「護衛…それでも夜警は大変ですよね」
基本的にダンジョンに潜る冒険ばかりのため、人をそういった仕事の経験はなく、自分たちの野営のイメージで話して
「あはは…まさかこっちでアルディオンの人と会うとは思わなくて」
「ベルリール地方から出てきて結構経つから、大分慣れてきました」
いい匂いだな、と思いつつ、あまり良い思い出のない故郷を思い起こし
「やっぱりそうですよね…ダンジョンで探索してたんですけど、トラップで孤立しちゃって…たまたま露出してた穴から外に出られたんですけど、すっかり暗くなってて…」
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バザーク :
「不規則な睡眠と不規則な食事の時間だけが不満点だね」
「鱗並びが自慢なのに荒れちまうよ」
「ベルリール…プリーチャーの」
「私はこっちには風土病があるだの」
「黒い雪が降るだのデマカセ吹き込んできた連中に見送られてね」
「拍子抜けと安心と……ああ、一本要るかい?」
夜鳥が空を征く。それをほんの少し見上げて。
「災難だったね、じゃあダンジョン近辺にいたほうが合流できる可能性が高いか」
「夜鳥(ナイトバード=盗賊の隠語)どもには気をつけるんだよ」
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ティナ :
「やっぱりその辺りはどうしても大変ですね」
確かに綺麗な鱗だなあ、と見つめ
「あはは…遠い大陸ですからね、私も凄く不安でした」
「妖魔との戦いはあるけど、人同士で争ってるあっちよりはよっぽど…あ、いいんですか?」
空腹でもあったのか、少し申し訳無さそうだがそれを見て
つられて上を見るも、またバザークを見る
「そうですね…明るくなったら戻ってみようと思います」
「…はい、ありがとうございます」
夜鳥、モンスターだろうか…と少しずれた事を考えながら頷き
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バザーク :
「オマケに積荷がカサカサカサカサ蠢いて気味が悪いったらないよ」
視線に気づいて。
「地元じゃ結構、男どもに言い寄られていたんだ」
「こっちにゃドラゴネット自体が見ないんだけどね」
「食べな、食える時に食っておかないとね」
「私は妖魔でも魔獣でも人間でも構いやしないね」
瓶から酒を呷って。
「金になる」
「いいんだよ、私たちは夜が明けたら馬を起こして餌を食わせる」
「それまで時間を潰すだけさ」
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ティナ :
「人気だったんですね…確かに、エクスマキナの人も全然居なくてびっくりしました」
「セフィロス様もこっちだと全然知られてないみたいだし…」
「いただきます…」
はぐはぐと串を頂いて
「確かに、倒すべき相手を倒して、お金になるのは変わらないかも」
小さく笑って
「あ、美味しい」
「じゃあ、出発する前にそれだけでも手伝わせてください、これでも、セフィロス様の加護からか、力はあるので」
むん、と小さく構えて…装備から魔法使いなのは察せるが、確かに結構力はありそうで(筋力8
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バザーク :
「あの頃は良かったなんて言う気はないけどね」
「今はこっちで肚に蜜をたっぷり蓄えたアリどもを交易品として運んでる」
「あんたと話すと望郷の念を覚えるねぇ……セフィロス様の神殿が恋しいよ」
肉を食べる。まぁまぁだ。
次は少し調味料を変えたらマシになるか。
「酒場で出るような料理に比べたらナンだね」
「まぁ……美味いでいいか、今は」
串焼きが嫌いなのではない。少し飽きている。
「そりゃ助かるね、略奪団の連中にもあんたの愛嬌を見習って欲しいよ」
「じゃあみんなを起こそう」
空を見上げて。
もうすぐ夜が明ける。
なんてことのない一日が。
同じ太陽は登らないとか吟遊詩人が歌う一日が。
始まる。