[main] : ここはUGNの◯市支部───の系列が運営している喫茶店。
[main] : 一般の何も知らないお客さんのほか、UGNの職員も活用しているお店です。
[main] : ビルの片隅に入っているこじんまりとした喫茶店の特徴はその店員。
[main] : UGNでもちょっと困ったことをする子が入っています。要するに懲罰労働なのでした。
[main]
:
今日は晴れ───脳味噌が茹で上がるほど暑いですね。
カウンターには小柄な店員が居座り、閑古鳥に餌をやっていました。
[main] 犬塚 瞳 : 「おじゃまするぞー」ちりんちりん……と音を立てて扉が開かれ、とてとてとちみっこいのが入ってくる
[main] 鮎川 瑞 : 扉が開いた途端地獄の業火もかくやという熱波が吹き付けてきて店員はパチパチ瞬きした。暑すぎるだろ外。
[main]
鮎川 瑞 :
「いらっしゃいませ」
しかし店員はクールな表情を崩さず、というかこれ以外に表情の持ち合わせがなく、小さなお客様にも丁寧に会釈するのだった。
[main] 犬塚 瞳 : 「ここはすずしいなー……いきかえるきもちだ」舌でも出してそうな溶けた声音で。
[main]
鮎川 瑞 :
「お水はいかがでしょうか」
仏頂面で言う。気遣いができないわけじゃない。ただ愛想がないだけだ。
[main] 犬塚 瞳 : 「もらうぞ!みずはおやつ代にいれなくていいってごすからいわれてるからな……」しおれていたイマジナリーしっぽが元気になった気がする
[main]
鮎川 瑞 :
「はい。当店ではお水は無料となっております」
馬鹿正直に説明し、グラスに水をどんがどんが注ぐ。カウンターから手渡した………。
[main] 鮎川 瑞 : 背が低い(149cm)と背が低い(145cm)同士では頑張って手を伸ばしあわないとならない。
[main] 鮎川 瑞 : 水はきんきんに冷えている。ありがてぇ。
[main] 犬塚 瞳 : 「いいみせだな……!」感動。椅子に座って手を伸ばし、ちょっと足りず身を乗り出して
[main] 犬塚 瞳 : 「このいっぱいのためにあたしはこのみせに来たのかもしれない……」ごっきゅごっきゅ
[main]
鮎川 瑞 :
「ありがとうございます」
褒められたのでマニュアルにしたがってお礼を言った。いい店だったろうか。自分をこうして懲罰労働に縛り付けるこの店はいい店だったろうか。謎。
[main]
鮎川 瑞 :
「…………」
いい飲みっぷりだった。
[main]
鮎川 瑞 :
「もういっぱいいかがですか」
ついそう聞いてしまうほど。
[main] 犬塚 瞳 : 「!もらうぞ!」空になったグラスをちょっと寂しげに見ていたところに声を掛けられ、効果音がしそうなくらい喜色をあらわに
[main]
鮎川 瑞 :
「………」
ぱちぱちと目を瞬かせる。
「ではどうぞ」
空になったグラスを受け取り、新しいグラスを差し出す。
[main]
鮎川 瑞 :
失礼ながら犬を連想していた。
真夏の中でぐったりとし、水を差し出されて物凄い勢いで飲み干す温められた犬。
[main] 犬塚 瞳 : 「すばらしきサービス……」目を細めてふたたびごっごっと両手でグラスを持って
[main]
鮎川 瑞 :
「………」
………注文するのかなこの客。水だけ飲んで出ていくの、流行ってるからなこの店。
[main] 犬塚 瞳 : 「……はっ。あんまりみずだけでいすわるのはよくないと聞いたぞ!なにかたのんだ方がいいのか!?」視線に気づいた
[main]
鮎川 瑞 :
「あ、いえ」
無表情をキープしたまま答える。そんなに物言いたげだったろうか、視線が。狙撃手としてあるまじきことである。
[main] 鮎川 瑞 : 「はい。こちらメニューとなっております」
[main] 犬塚 瞳 : 「おやつ代はまだあるからな……」ポッケをごそごそと漁り、がま口財布を取り出す。……かろうじて紙幣が1枚入っていた
[main]
鮎川 瑞 :
「………」
仕草をじっと見ていた。なかなか古風な財布だ。趣味なのだろうか。
[main]
犬塚 瞳 :
「なやましいところだ……てんいんさんのおすすめはなにか……」と、視線を上げて気付く
「……これか?ごすからもらったやつでなー、あけやすくてお気に入りだ」誇らしげ
[main]
鮎川 瑞 :
「左様でしたか」
受け答えつつ眼差しはがま口の中身を撫でるように観察していた。硬貨が何枚か。お札が1枚。それと………身分証。なるべく秘密の方の。
[main]
鮎川 瑞 :
「ああ。同僚でしたか」
店員はそう言って自分の身分証を懐から出した。UGNの職員を示すカードである。
[main] 犬塚 瞳 : 「おー?てんいんさんもUGNのひとなんだな?」そういうことなら、と身分証をぺちりとテーブルの上へ置き、自己紹介の構え
[main] 犬塚 瞳 : 「あたしは"忠犬(ハウンド)"!犬塚瞳だぞ!お願いがあればなんでもいってくれるとうれしいぞ!」えへん、とない胸をそらして
[main]
鮎川 瑞 :
「“鷹の目(ホークアイ)”です。現場が一緒になった時はよろしくお願いします」
と表情を変えずに言ったあと、ちらりと視線をそらした。
「まあ、しばらくは現場務めではないのですが。ご注文は何になさいますか、お客様」
[main]
犬塚 瞳 :
「ほーくあい!カッコいいなまえだな……!よろしくなー!」
「もんだいはそれなんだ……」
[main] 犬塚 瞳 : 今の時間帯は15時。おやつ時である。
[main] 犬塚 瞳 : 「ここでたくさんたべるとばんごはんが入らない……しかしたべはじめると止まらない……」
[main]
鮎川 瑞 :
「そうですね。私もこのコードネームは気に入っています」
……というつぶやきには彼女なりの万感の思いがあったが、それが表情に出ることはない。
[main]
鮎川 瑞 :
「………。そうですね」
デザートの陳列棚を見る。お腹に溜まらないもの。
[main] 鮎川 瑞 : 「コーヒーゼリーなどいかがですか」
[main] 犬塚 瞳 : 「こーひー……」渋面。苦いのかぁ……という思いが前面に出ている。
[main] 犬塚 瞳 : (しかしてんがは言っていたな……苦いのもへーぜんとのめるのが大人……)
[main] 犬塚 瞳 : 「……もらうぞ!」悲壮な覚悟を湛えた表情で、決意を込めて注文する
[main]
鮎川 瑞 :
「はぁ。かしこまりました」
なんか今物凄い葛藤があった。いいけど。
もともと作ってあるコーヒーゼリーに生クリーム添えて出すだけなので提供自体は楽勝である。
[main] 鮎川 瑞 : 「お飲み物はいかがなさいますか」
[main]
犬塚 瞳 :
「のみもの……」コーヒーゼリーに合うやつって何だろう……コーヒーの方とよく合わせられてるのは……
「ぎゅうにゅうで!ひえたやつ!」メニューのドリンクのところをぱらぱらめくり……これだ!と
[main]
鮎川 瑞 :
「かしこまりました。ご注文は以上ですね」
牛乳。別におかしなことじゃない。出せますとも。
[main] 鮎川 瑞 : 注いで出すだけと皿に盛って生クリーム添えるだけなので待たせた時間は一瞬だった。
[main] 犬塚 瞳 : 「いじょうだ!」おこづかいには余裕はあるが全部をここで使い切るのは得策ではない。今月はまだ半分も残っている。
[main]
鮎川 瑞 :
「お待たせいたしました」
3分かかったろうか。いやかかってないな。
そうしてカウンターに座る瞳の前に孤独のデザートが差し出されたのであった。
[main] 鮎川 瑞 : グラスの上に盛られたつややかなコーヒーゼリーの上には真っ白な生クリーム。添えられたミントの葉が清涼感を醸し出します。
[main] 鮎川 瑞 : あとこのコーヒーゼリーは砂糖も一緒に溶かしてあるから普通に仄かに甘いですね。
[main]
犬塚 瞳 :
「はやいな!さすがだ!」素直な驚きが口から出る
「いただきます!」コーヒーと聞いて怖気づいていたが甘くて美味しそうだな?とスプーンを意気揚々と手に取り
[main]
犬塚 瞳 :
「……ちょっとにがい……が、うまい!」ちょっと苦いけど美味かった。
「こっちといっしょに食べるともっとうまいぞ!」二口目は生クリームも一緒に。
[main]
鮎川 瑞 :
「………」
盛って出しただけとはいえ自分の提供したものの美味い美味いと食べてもらえれば悪い気はしない。
[main]
鮎川 瑞 :
いつもこういう客ばかりだといいのだけれど。
ここUGNの傘下だから変な客多いんだよな。
[main] 犬塚 瞳 : 「あのたんじかんでこのおあじ……さすがはぷろだな……」もちゅもちゅとコーヒーゼリーが口へと運ばれていく
[main] 鮎川 瑞 : 「プロ。」
[main] 犬塚 瞳 : 「ぷろ!」
[main] 鮎川 瑞 : 「そうですか…」
[main]
鮎川 瑞 :
複雑だ。
プロだったろうか。もうプロになってしまったのだろうか。本業こっちじゃないのに。
[main]
鮎川 瑞 :
弾丸をジャームにブチ込むのが主な仕事ではなかったのか。
「………気に入っていただけたなら幸いです」
[main]
犬塚 瞳 :
「ごちそうさまでした!うまかった……!」完食。
「やっぱり食わずぎらいはよくないな……ありがとなー、ほーくあい」新たに好物ができたことへの感謝
[main]
鮎川 瑞 :
「いえ。店員として務めを果たしたまでですので、恐縮です」
とまれ、幸いだというのは本心だ。こんなに美味しそうに食べてくれたなら言うことはない。
[main]
鮎川 瑞 :
……いくつくらいなんだろう、この同僚。中学生…もしや小学生?
と思って身分証を見て16歳と書いてあって(同い年かよ)と戦慄する。
[main] 犬塚 瞳 : 「ふだんはごすのかぶきあげとか、1こずつつつまれたやつが主なおやつだからなー。こういうおみせでおやつ食べるのはざんしん……しんせん?だったぞ」餌付けされ過ぎておやつ代に制限を受けたという過去がある
[main] 鮎川 瑞 : いや自分も人のこと言えた身じゃないか。身長150cm切ってるし。
[main]
鮎川 瑞 :
「歌舞伎揚げに、包装されたお菓子、ですか」
ごす。うちの支部長だろうか。
「ご満足いただけたなら何よりです。いつでもお立ち寄りください……その頃には私は店員でなくなっているといいのですが」
[main] 犬塚 瞳 : 「おう!また来るぞー!……こんどはごすとかてんがとかもつれてきたいな」カウンターの下で楽しそうに足をぱたぱたと
[main] 犬塚 瞳 : 「……よしっ!おかいけいお願いするぞ!」牛乳の残りを飲み干して、席をぴょいと立ちレジの方へ
[main]
鮎川 瑞 :
「はい。かしこまりました。牛乳とコーヒーゼリーで、お会計は───」
もとより単価の安いものと安いものだ。たかが知れている。
[main] 鮎川 瑞 : 「今度はお知り合いとご一緒にどうぞ。お待ちしております」
[main] 犬塚 瞳 : 「よし!……あ、れしーともらっていいか!」
[main]
鮎川 瑞 :
「レシートですね。かしこまりました」
経費か。経費で落ちるのか。なるほど。
[main] 鮎川 瑞 : 「どうぞ」
[main] 犬塚 瞳 : 「ありがとなー!おやつ代のつかいみちはちゃんとほーこくしないとおこられるからな……」財布の中のレシートの束の一番上に
[main]
鮎川 瑞 :
「………」
なんだか良くわからないが手綱を握られているらしい。犬っぽい。
[main] 犬塚 瞳 : 「じゃあなー!……おやつもうまかったし、おしゃべりもたのしかった!ありがとなー!」手をぶんぶん振りながら店の出口へ
[main]
鮎川 瑞 :
「またのお越しを───」
瞳が扉を開けた瞬間再び熱波がエアコンの効いた店内に吹き付け、店員は一瞬沈黙した。
「……お待ちしております」
[main] 鮎川 瑞 : 暑すぎるだろ。
[main]
鮎川 瑞 :
「………。“忠犬(ハウンド)”か」
UGNでチルドレンとして飼われていればいろいろな同僚と仕事を一緒にするが、その人数故に同じ顔と一緒に仕事をする機会というのはそれほど多くない。
[main]
鮎川 瑞 :
「彼女、なんのシンドロームなんだろう」
すばしこそうなイメージだけど。なんとなく。
いつか一緒に仕事をすることもあるのだろうか。
[main]
辻無唯 :
ちりん、と扉が開いてすぐ閉まる
「……溶けるかと思ったよ……すまないね、少し涼ませていってもらってもいいかな」
[main]
鮎川 瑞 :
「………」
控えめな扉の開閉により熱波の侵入は一瞬であった。エアコンくんが必死で温度を下げる必要はなくなった。
「いらっしゃいませ」
[main] 鮎川 瑞 : あっ支部長だ。
[main] 辻無唯 : 「あぁ、別に畏まる必要はないよ。私もほぼほぼお飾りである故に……最近だと日本にいる期間の方が短いくらいだからねぇ」ぱたぱたと手で仰ぎながら、カウンター席に座って突っ伏す
[main]
鮎川 瑞 :
「はぁ、そうですか……」
自分がなんでこんなところで働かされているのか知ってる側の人物だ。やりにくい。
[main] 鮎川 瑞 : 畏まらなくていい、というので特に断りなくとりあえず水を注いだコップを差し出した。
[main] 辻無唯 : 「あぁ、とても助かるね……何分水分自体は自分で作れはするのだけれど、温度の変更まではどうしてもねぇ。そこに関してはサラマンダーの領分ということで諦める他ないのだろうけれども」掌の上で《無上厨師》で水の塊を作り出し、解いて消しながら
[main] 辻無唯 : 「冷えた水気が染み渡る……」ちびちびとコップを傾け
[main]
鮎川 瑞 :
「何も無いところから水を生み出せるだけでも十分と思いますが……」
希少なトライブリゲードの持ち主となればいろいろと潰しが効くのではとも思うが、そう簡単ではないらしい。
[main] 鮎川 瑞 : 特に自分なんて一芸特化だし。
[main] 鮎川 瑞 : 「もう一杯いかがですか」
[main]
辻無唯 :
「極限状態では便利ではあるのだけれどね。やっぱり文明の利器には勝てんよ……エアコン最高!と喝采を挙げたくなるね、こういう日などは」
「頂こう。ああ、あとメニューも貰ってもいいかな。流石に水だけという訳にもいかないのでね」
[main]
鮎川 瑞 :
「そうですね。エフェクトを発現させるのもタダというわけではありませんし」
そう言いながらメニューを渡す。
[main] 鮎川 瑞 : 何を注文するんだろう。なんでもいいけれど。いや何でもは言いすぎた。今から炒飯作れと言われると困る。
[main]
辻無唯 :
「こういう時ばかりはブラックドッグやサラマンダーが羨ましくなるが、まあないものねだりもよろしくはない。あるもので何とかするしかなかろうねえ」ぱらぱらとメニューを流し見
「ふぅむ。何がいいかな……フレンチトーストなどは今からできるかな」
[main] 鮎川 瑞 : 確かに今の時期体温を調節できるサラマンダーはいいかもしれない。レネゲイドの力に肯定的な店員はその力に伴うリスクについては考慮しなかった。
[main]
鮎川 瑞 :
「フレンチトーストですね。かしこまりました」
漬け置きしてあるトーストを焼くだけ。準備に時間がかかるだけで楽な調理だ。
[main] 鮎川 瑞 : 「お飲み物は何にしましょう」
[main] 辻無唯 : 「飲み物か。何がいいかな……」少し考え込み
[main] 辻無唯 : 「うん、メロンソーダをお願いしよう。合成甘味料マシマシの甘ったるいやつを」
[main]
鮎川 瑞 :
「かしこまりました」
透き通った真緑のやつな。人間はときに身体に悪いものを摂取したくなる。
[main] 鮎川 瑞 : 店員がフレンチトーストを焼き出すとすぐにバターの焦げる良い香りが漂い出した。
[main] 鮎川 瑞 : 小柄な人影がカウンターの中をちょこちょこと動き回って提供するものの用意をする。
[main] 辻無唯 : 「完成品は私にも出せるが、やはり途中経過を楽しむのは実際の調理でないとね」楽し気に
[main]
鮎川 瑞 :
「そこまで特別なものではないと思いますが…」
焼くだけだし。注ぐだけだし。
まあ、マニュアル通りやるだけだからこそこんな店員に店員が務まっているともいう。
[main] 鮎川 瑞 : 作業の手は止めていない。カウンターに座る支部長の視線を背中に感じながらフライパンを揺すった。
[main] 鮎川 瑞 : 畏まるな、という命令なんだから店員としてのマニュアルからやや逸脱したって構いやしないだろう。
[main] 辻無唯 : 「自分のために人が何かをしてくれる、ということ自体が嬉しいものだよ。その難易に関わらずね」
[main]
鮎川 瑞 :
「……そういうものでしょうか」
どうも人の機微を読み取るのは苦手だ。人間と接するよりレネゲイドの方が親近感が湧く。
[main] 鮎川 瑞 : 「おまたせしました。フレンチトーストとメロンソーダです」
[main] 鮎川 瑞 : 皿の上にはバターの香りを纏いよく味の染みたトースト。それときんきんに冷えてグラスに汗を書いているメロンソーダ。
[main] 辻無唯 : 「ありがとう。いい匂いだね」トッピングのハチミツとメープルシロップを自前で作り、ドバドバとかけている
[main] 辻無唯 : 「自前で持っているエフェクトが中々に糖分を消費するものでね。時折こうして後先(体重)を考えない甘味が欲しくなるのさ」
[main]
鮎川 瑞 :
「糖分を消費するエフェクト……」
聞いたこともない。辻無支部長はノイマンだったろうか。いや違ったはずだ。どうでもいいがこの支部長とも同い年だな自分。
[main] 鮎川 瑞 : 「そうですか。私はいくら食べても太らないし背も伸びない身体なので共感はできませんが」
[main]
辻無唯 :
「ふ……」笑みが凍り付いて
「……聞かなかったことにしておくけれどね。女性に対しては前半部分は言わない方がいいとだけ助言しておくよ。最悪血を見る事態になりかねない」
[main] 辻無唯 : 「優しいシナモンの風味と暴力的な糖分……HPが回復していく感覚があるね……」満タンではあるが、気分的に
[main]
鮎川 瑞 :
「事実の羅列です。私の華奢な身体を見れば納得いただけるでしょう」
支部長は気分を害したようだが憤慨したいのはこちらの方だ。見ろ、この150cmにも満たない身体。
[main] 鮎川 瑞 : UGNチルドレンとして戦うために存在するのにこんな身体だ。ピュアブリードとしての一芸がなければ使い物にならなかったろう。
[main]
鮎川 瑞 :
「ご満足いただけたなら何よりです」
HP?……まあいいか。美味しいと思われるのは悪い気持ちではない。
[main]
辻無唯 :
「華奢とは言うがね。小柄な体も捨てたものではないよ」
「無論、体格差による白兵での有利不利は存在するが。我々のような射撃を主とする者にとっては、隠れ潜むことのできる場所が増えるというのは間違いなく利点に数えられることだろうさ」
[main] 辻無唯 : 「……まあ、私の得物で”同じ”などと言われるのは不本意かもしれないがね」掌から今度は水晶の手裏剣が生成される。棒手裏剣……どちらかというとクナイと呼んだ方がいい形状ではあるが
[main] 鮎川 瑞 : 「……否定はしません。ただ、私の場合は……」
[main] 鮎川 瑞 : 「“こう”ですので」
[main] 鮎川 瑞 : どすん、と床をひたすら重いものが打つ音が響いた。
[main] 鮎川 瑞 : とんでもなく長大なライフルが光を帯びながら出現する。
[main] 鮎川 瑞 : 「やはり、多少体格があったほうがよかったと今でも思います」
[main] 辻無唯 : 「ああ、得物が大き過ぎる故に隠れ潜むには向かないと。それはたしかに難渋しそうだ」納得したように
[main] 鮎川 瑞 : 「というより、反動を抑え込むことにさえ少し難儀します。もう慣れましたが」
[main] 鮎川 瑞 : ぱっとライフルから手を離すと光の粒となって消えていく。慣れ親しんだ、自分の半身だ。
[main] 鮎川 瑞 : 自分の本体とさえ思っている。こうして喋ったりして人付き合いをしている人格のほうが付属品なのだ。
[main] 辻無唯 : 「……中々に難しい子だねぇ」スッと目を細め、フォークを置いて店員さんを見据える。
[main]
鮎川 瑞 :
「そうでしょうか」
表情は相変わらず。何か癪に障るようなことを言ってしまったろうか、と自分の発言や行動を反芻した。
[main] 辻無唯 : 「まあ……そうだね。先に隠れ潜む、などと例を挙げた私が言うのも何ではあるが。戦場以外にも自分の価値を置くのも悪くはないと、そう思うけれどね」
[main] 鮎川 瑞 : 「バランスが悪いとはよく指摘されます。極端なのだと」
[main]
辻無唯 :
「そうだねぇ。守るべき日常の重さが理解できていてこそ、引く引き金に力も入ろうというものだよ」
「今の君に、日常はあるかい?」
[main]
鮎川 瑞 :
「……意図の読みかねる質問です。私にとってはどちらかといえば、こうしてここで懲罰労働を課されている状況の方が非日常といえます」
[main]
鮎川 瑞 :
───要するに。
物心ついた時から人間よりもレネゲイドへ関心を示し、チルドレンとして訓練に明け暮れ、時折仲間が暴走したり戦死したりする状況は、この店員にとっては日常なのだと。
[main]
辻無唯 :
「日常と戦場をイコールで結んではいけないよ。……日常は続かせるべきもので、闘争は終わらせるべきものだ」
「戦場が日常になった者が、それを長く失った時何をするか。……なんて、歴史を振り返るまでもなく、火を見るよりも明らかなのだから」
[main]
鮎川 瑞 :
「しかし、お言葉ですが支部長」
表情こそ変えなかったが、カウンターの奥で店員は不思議そうな眼差しだった。
「戦いに終わる気配はないではありませんか」
[main]
辻無唯 :
「……それを、言われると」力なく目を伏せ
「弱いところでは、あるのだけれどね」すっかり炭酸の抜けた、毒々しい緑の砂糖水を啜る。話の間にテーブルには円形の水たまりができている
[main] 辻無唯 : 「……我々が。あるいは、君達が。戦う目的というのは、何なのかな」ひとつ息を吐いて
[main]
鮎川 瑞 :
「私たちUGNのチルドレンにとっては与えられた任務を遂行することです。少なくとも私にとってはそうです」
店員は当たり前のことを口にするよう、すらすらと言う。
[main] 鮎川 瑞 : 「個人的な見解を述べることを許していただけるのであれば、UGNが掲げるオーヴァードと社会の融和という方針は肯定します」
[main] 辻無唯 : 「勿論、構わない。それを肯うてもらえるのは私としても嬉しい限りだよ」
[main] 鮎川 瑞 : 「そのために戦うことに異論はありません。……レネゲイドの力を有するオーヴァード側が、譲歩しすぎというような気はしますが」
[main] 鮎川 瑞 : 最後に、店員はまるでFHのようなことを言った。
[main]
辻無唯 :
「……私としても、ね。オーヴァードだけが」
「望んでそう成った訳でもない私達だけが、非オーヴァードのために戦わなければならないなんて。そんなの、不条理じゃないか……と」
「思わないと言えば、嘘にはなるさ」
[main] 辻無唯 : 「それでいて、こそこそと隠れ潜まなければならず、助けた相手から感謝される事すら許されず、あまつさえ助けた相手から記憶すら奪って、次会う時にはすべて忘れてのうのうと初めましてを言わなければならない。……貧乏くじだろうとも」
[main] 辻無唯 : 「それでも、私は今のこの世界が好きなのさ」
[main]
辻無唯 :
「知られてしまえば、恐れも混じるだろう。それでも今は、無邪気に笑い合うことができる」
「それだけで、私にとってはすべての不条理を呑み込むに足るのさ」
[main]
辻無唯 :
「……君はもう少し」
「世界の事を、好きになってあげるといい」
[main]
鮎川 瑞 :
「望んでそうなったわけではない…オーヴァードが…」
店員が小首を傾げる。不思議そうだった。
「それが普通の感覚らしいですね」
[main] 鮎川 瑞 : 「私にはよく分かりません。この力は生まれた時から備わっていて、幼い頃は全世界の誰しもが同じような力を持っていると思っていました」
[main] 鮎川 瑞 : 「私にとっての当たり前を無視し続けるこの世界を愛するという感覚は私には難しいものです」
[main]
辻無唯 :
「……」
「そうかい。では、私の言ったことはすべて、的外れなことだったかもしれないね」
[main] 鮎川 瑞 : 「いえ、そうでもありません」
[main] 真田 兼定 : カランコロンと和装の子が入ってくる
[main] 辻無唯 : 「ああ……新しいお客さんが来たようだね」
[main]
鮎川 瑞 :
「愛するものあればこそ、不条理を飲み込むというのは理解できます。私にはかつて、好きだった人が───」
と、そこで店のドアが開く音がした。
[main]
鮎川 瑞 :
「いらっしゃいませ」
店員は即座にUGNのチルドレンとしての表情から店員としての表情に変わり、客を出迎えた。
[main] 鮎川 瑞 : 「………」
[main] 鮎川 瑞 : ガッチガチの和装だった。すごい。
[main]
真田 兼定 :
「注文いいのです?」風もないのにポニテが揺れる
どうも制御が成ってないエグザイルらしい
[main] 辻無唯 : 「……重苦しい話はこの辺りにしておこうか。お勘定をお願いしようかな」最後の一切れをひょいとつまんで口に放り入れながら
[main]
鮎川 瑞 :
「メニューをどうぞ」
店員は席に座った客へメニュー表を渡し、自分はいそいそと会計のレジへと急ぐ。
[main] 真田 兼定 : よみよみ
[main] 鮎川 瑞 : 「メロンソーダとフレンチトースト。お会計は───」
[main] 辻無唯 : サテライトウォッチでUGNの経費からの引き落とし申請……
[main] 辻無唯 : (12+3+0+0)dx(7+0)+4+1+0 判定/100%未満/購入判定代用 (15DX7+5) > 10[1,2,3,4,5,5,5,5,6,6,8,9,10,10,10]+10[2,3,5,10,10]+6[4,6]+5 > 31
[main] system : [ 辻無唯 ] 侵蝕 : 36 → 41
[main] 鮎川 瑞 : 「……確かに頂戴いたしました。ありがとうございました」
[main]
鮎川 瑞 :
一礼してから。
「支部長」
[main] 辻無唯 : 「どうかしたかな、店員さん」うっすらと浮かべた笑みから、表情を変えぬまま
[main] 鮎川 瑞 : 「私の“鷹の目(ホークアイ)”のコードネームには先代がいます」
[main] 鮎川 瑞 : 「あなたが言うように戦う理由に好きなものが必要なのだとしたら、私にとって相当するのはそれです」
[main] 鮎川 瑞 : 「もう、会って話すことはできませんが」
[main]
辻無唯 :
「……そうかい。……会って話すことはできずとも」
「何をすればその人が喜ぶか。それを考えて、行動に移すことくらいなら、遺された側にも許されるのではないかな」
[main]
鮎川 瑞 :
「かもしれません」
その時。一瞬だけ店員の頬が硬直した。よくよく注視しないとそれが微笑みと分からない。
「彼に恥じない自分でありたいと思い研鑽しています」
[main] 辻無唯 : 「そうか。……なら、励むといい。あまり根を詰め過ぎないようにね」最後にはごく普通の上司らしい言葉を残して、店を出ようとして
[main] 辻無唯 : 1D10 さっきのHP消費 (1D10) > 5
[main] system : [ 辻無唯 ] HP : 23 → 18
[main] 辻無唯 : 「あだ」……店の扉に顔をぶつけて、さすりながら出ていった。
[main] 鮎川 瑞 : このHP減少はきっと扉を開けた時に浴びた熱波によるものだろうなと店員は思った。違った。
[main]
鮎川 瑞 :
「………」
支部長の去っていったあとを僅かな間見つめたあと。
[main]
鮎川 瑞 :
「おまたせしました」
と店員はカウンターの奥へと戻ってきた。
[main] 真田 兼定 : 「えーと…」
[main] 真田 兼定 : 「アイスクリームとクリームソーダお願いなのです」
[main] 鮎川 瑞 : 「かしこまりました。アイスクリームはフレーバーがございますがどちらに致しましょうか」
[main] 鮎川 瑞 : メロンソーダ人気だな。まあ、外暑いものね。
[main] 真田 兼定 : 「バニラなのです」
[main] 鮎川 瑞 : 「………クリームソーダの上にもバニラアイスをフロートしますが………バニラでよろしいですか」
[main] 真田 兼定 : 「バニラ大好きなのです」
[main]
鮎川 瑞 :
「承知しました」
店員は頷き、作業に取り掛かる。クリームソーダはメロンソーダの上にバニラアイスをフロートさせてさくらんぼをトッピング。
[main] 鮎川 瑞 : バニラアイスはモナカを添えるだけ。かんたんかんたん。
[main] 鮎川 瑞 : 「お飲み物は何になさいますか」
[main] 真田 兼定 : 「んーリンゴジュースなのです」
[main] 鮎川 瑞 : 「かしこまりました」
[main] 鮎川 瑞 : ………聞いておいてぎくりとした。
[main] 鮎川 瑞 : クリームソーダ、飲み物じゃん。
[main] 鮎川 瑞 : 「………」
[main] 鮎川 瑞 : 「任務失敗………」
[main] 鮎川 瑞 : 「死………」
[main] 真田 兼定 : 「なのです?」首を傾げてポニーテールも?マークを作り…
[main] 真田 兼定 : 「いきなり何を言い出すのです?????」
[main] 鮎川 瑞 : 「………。……失礼しました」
[main] 鮎川 瑞 : なんか気にしてないっぽい。出しちゃうか。そのまま出しちゃえ。
[main] 鮎川 瑞 : 店員は注文された通りにクリームソーダを用意し、アイスを皿に盛り、そしてアップルジュースをコップへ注いだ。
[main] 真田 兼定 : 「そういえばクリームソーダとアイスクリームとリンゴジュース」
[main] 真田 兼定 : 「どう見てもダブってるのです!」
[main] 鮎川 瑞 : どれも手間がかかる作業じゃない。すぐ終わる。……と用意していた時……。その指摘は背中へ突き刺さった。
[main]
鮎川 瑞 :
「…………。そうですね」
きっと先程の支部長との会話で自分もどこか感情的になる部分があったらしい。耄碌していた。
[main]
鮎川 瑞 :
「………死………」
任務の失敗とは即ち死である───
[main] 真田 兼定 : 「なんか疲れてるのです?」と顔を覗き込む
[main] 真田 兼定 : 「物騒なことを言う店員さんなのです!」
[main] 真田 兼定 : 「別に気にしてはいないのです」
[main] 鮎川 瑞 : 「失礼しました。こちらメロンソーダとアイスクリームバニラ味、そして……アップルジュースです」
[main] 鮎川 瑞 : 顔を覗き込まれても仏頂面を崩さず、客の目の前に注文された品々を粛々と置いた。
[main] 真田 兼定 : 「料金払わないぞコラーーッ!とか店長呼んでこい!とか言わないのです」割とうまい声真似をしつつメロンソーダを満足気に飲んでる
[main]
鮎川 瑞 :
「恐縮です」
一礼しながらそれとなく客の様子を観察する。
[main] 鮎川 瑞 : 中学生くらいかな。この歳でこんなきっちりかっちりした和服着てるのはなかなかの違和感。
[main] 真田 兼定 : 動くポニテとガチ和装は普段着っぽい気こなれ感があった
[main]
鮎川 瑞 :
「………」
普段から着慣れているんだろう。所作に淀みはなく、長い袖などに手間取る様子もない。
[main]
鮎川 瑞 :
ただ………。
(男か女かわからないな、この客………)
[main] 真田 兼定 : しゃくしゃくとアイス食べてクリームソーダのアイスも転がしながら食べる
[main] 鮎川 瑞 : 客が食べている間に前の客の食器を片付けていく。綺麗に洗って水滴を拭き取り、ラックへ納めていく。
[main] 鮎川 瑞 : この時間帯に客がひとりしかいないからできる悠長だ。まあ仕方ない。外は信じられないほど暑い。
[main] 鮎川 瑞 : ………こんなしっかり和服着込んで暑くないのかな、この客。
[main] 真田 兼定 : 「しかし今日も暑いのです。夏休みじゃなかったらやってられないのです」
[main]
鮎川 瑞 :
「夏季休暇ですか」
生憎とUGNチルドレンにそんなものはない。遠い世界の遠い文化であるかのようだ。
「学生でいらっしゃるのですね」
[main] 真田 兼定 : 「中学生なのです」
[main] 鮎川 瑞 : 「中学生。」
[main] 鮎川 瑞 : 年下だった。
[main] 真田 兼定 : 「店員さんもアルバイトなのです?」
[main]
鮎川 瑞 :
「はい。似たようなものかと」
間違ってはいない。一応賃金は発生している。微々たる額だが。だって懲罰労働だし。
[main] 鮎川 瑞 : 少なくとも自分から志望した業務ではないのは確かである。そうするとアルバイトではないのかも知れない。
[main] 真田 兼定 : 「お金稼いで遊びに行ったりするのです?」
[main]
鮎川 瑞 :
「遊び………」
あまり思いつかない選択肢であった。少なくとも自発的には出てこない。
自分の余暇というと訓練……また訓練……シューティングレンジに籠もって射撃……また射撃……。
[main]
鮎川 瑞 :
「そうですね。射的に没頭しています」
本当のことを言った。間違ってない。それにシューティングレンジで撃っているのも遊びなのかもしれない。曲解である。
[main] 鮎川 瑞 : 「お客様は夏季休暇を利用して遊びにゆかれるのですか」
[main] 真田 兼定 : 「射的?んー」じーっと鮎川さんの顔を見る
[main]
鮎川 瑞 :
「はい」
表情はほぼ変わらない。仏頂面である。
[main] 真田 兼定 : 「エアライフルとかビームライフルなのです?」
[main] 真田 兼定 : 「研修なのです!」長期休暇を利用した研修に来てるらしい
[main]
鮎川 瑞 :
「ライフルの方です。少ない取り柄です」
これも嘘は半分言っていない。実弾───この店員の場合レネゲイドの能力で生み出した光の弾丸だが、それを試射目標へ何発も撃ち込むので“エア”ではないというだけ。
[main]
鮎川 瑞 :
「研修ですか。お疲れ様です」
中学生で研修。そうか、今どきの学生は早いうちから大変なのだな。
[main] 真田 兼定 : 「剣道やめたから暇だし詰め込み教育必要って言われたから受けたけどつめつめすぎて疲れちゃったのです」アイスクリームをウサを晴らすようにパクパク
[main]
鮎川 瑞 :
「剣道ですか」
なるほどそれでその格好。……いや関係あるのか?
[main] 真田 兼定 : 「なのです!けっこういいとこまでいったのです」
[main]
鮎川 瑞 :
「それはお見事なことかと」
社会における中学生の剣道というもののレベルがどのくらいのものかは知らないが、なんであれ高みで競い合えるというのは優れている証左だろう。
[main]
鮎川 瑞 :
「それにしても、中学生というのは大変なのですね」
しみじみと呟いた。UGNのチルドレンも暴走してジャームにならないよう様々な訓練や精神コントロールを学ばされるが、現実の中学生も似たような過密教育を研修で受けるとは……。
[main] 真田 兼定 : 「なのです?」
[main] 鮎川 瑞 : 「詰め込み教育を受けるのでしょう?」
[main] 真田 兼定 : 「なのです!精神修練に始まってばかみたいな基礎トレとか実戦さながらの模擬戦とか…もうくたくたなのれす…」おもいだしてポニテがしょんもりする
[main]
鮎川 瑞 :
「そうでしたか。やはり大変なのですね」
セリフこそ平坦な口調だったが店員は戦慄していた。
まるで覚醒したばかりのオーヴァードがUGNで受ける工程とそっくりではないか。
[main] 鮎川 瑞 : 今の社会の中学生とはこれほどまでに過酷だというのか……。
[main] 鮎川 瑞 : つい目の前の客にサービス品を出しかけたが自制する。マニュアルにも《特定の客をえこひいきしたサービスは慎むこと》とあった。
[main] 真田 兼定 : 「なにか誤解されてる気がするのです…」
[main] 鮎川 瑞 : 「ご安心ください。私は正確にお客様のおっしゃることを把握しています」
[main] 真田 兼定 : 「本当なのです???」
[main] 鮎川 瑞 : 「もちろんです」
[main] 真田 兼定 : 「なーんか怪しいのです」アイスクリームを食べ終える
[main] 真田 兼定 : 「そういえばライフルってどれくらいするのです?」趣味にどれくらいかかるか聞いてるようだ
[main]
鮎川 瑞 :
「そうですね……」
エンジェルハィロゥの自分の場合、レネゲイドの力で生み出せるためコスト自体はタダだ。だが周囲にも銃を用いるオーヴァードは存在し、彼らとも訓練をともにしているためおおよその価格は分かる。
[main] 鮎川 瑞 : 「ピンからキリまでありますが、私の知る限りには……日本円で30万くらいからでしょうか」
[main] 真田 兼定 : 「????????????」
[main] 鮎川 瑞 : 「それより安いものもありますが、あまり信用が置けるものではなくなりますので」
[main] 真田 兼定 : 「そ、その年で実銃使ってるのです????」
[main] 真田 兼定 : 「て、天才なのです」戦慄してる
[main]
鮎川 瑞 :
「腕前を磨き優れた射手となるためには必要なことです」
堂々と頷いた。これまでに煙へ変えてきた何万発もの弾丸が店員の自信を後押しする───
[main] 鮎川 瑞 : 「それにお客様の修める剣道からして、優れた刀剣に比べれば安いものです。私の目から見ると美術品にすら見える」
[main] 鮎川 瑞 : 安くてもいきなり100万とかする。真剣ってすごい。
[main] 真田 兼定 : 「さすがにここの店のアルバイトじゃとても稼げそうにないのです…どうやって稼いでるのです?」
[main]
鮎川 瑞 :
「スポンサーがついておりますので」
堂々と言い切った。
[main] 鮎川 瑞 : 実際訓練にかかる費用とか全部UGN持ちだし。嘘は言ってない。
[main] 真田 兼定 : 「ス、スポンサー…」
[main] 真田 兼定 : 「夢はオリンピックなのです???」
[main]
鮎川 瑞 :
「いえ、特にそういうことは…」
などと言った時、壁掛けの時計が時刻を知らせるベルを鳴らす。
[main] 鮎川 瑞 : 「いけない。そろそろ夜の部の引き継ぎ準備をしなければ」
[main] 真田 兼定 : リンゴジュースをくぴりと飲み干す
[main] 真田 兼定 : 「閉店なのです?」
[main] 鮎川 瑞 : 「はい。昼の部はそろそろ終了となります」
[main] 鮎川 瑞 : 「引き継ぎ後に夜の部が始まります。そちらは私ではない店員が担当いたします」
[main] 真田 兼定 : 「わかったのです」クリームソーダも飲み終えて
[main] 真田 兼定 : 「お会計お願いなのです」
[main]
鮎川 瑞 :
「かしこまりました」
店員はレジへ向かい、伝票を打ち込んでいく。
「クリームソーダ、アップルジュース、それとバニラアイス。お会計は───」
[main]
鮎川 瑞 :
レジがレシートを吐き出していく。
だいたい千円札が一枚程度の値段だ。
[main] 真田 兼定 : わりとお高そうな長財布をポケットから出して支払う
[main]
鮎川 瑞 :
「………」
財布に注目する。今となってはそれほど意外さはない。だって着物がお高そうだもの。
[main] 真田 兼定 : 「またくるのですー。明日も4時から訓練なのです…」てぽてぽ
[main] 鮎川 瑞 : 「お客様」
[main]
鮎川 瑞 :
「またのご来店をお待ちしております」
そう言って店員は一礼した。
[main] 鮎川 瑞 : そして彼…?彼女…?ゆったりとした和装は体の線を隠し、最後まで性別は分からなかったが……中学生であるお客様の過酷な研修に思いを馳せ、心のなかでエールを送ったのだった。
[main] 鮎川 瑞 : 「………。さてと」
[main] 鮎川 瑞 : 軽く掃除をして店を夜の部へ受け渡す必要がある。そのための工程を頭に思い浮かべ、実行にとりかかる。
[main] 鮎川 瑞 : 作業をしながら鮎川瑞はひとりごちた。
[main] 鮎川 瑞 : 「早く現場に戻りたいな………」
[main] 鮎川 瑞 : つぶやきはひとりきりの店内で誰も聞き届けることはなく、小さな人影がちょこちょこと動き回るのだった。
[main] 鮎川 瑞 : Fin.