[main] プロローグ : ここはUGNの◯市支部───の系列が運営している喫茶店。

[main] プロローグ : 一般の何も知らないお客さんのほか、UGNの職員も活用しているお店です。

[main] プロローグ : ビルの片隅に入っているこじんまりとした喫茶店の特徴はその店員。

[main] プロローグ : UGNでもちょっと困ったことをする子が入っています。要するに懲罰労働なのでした。

[main] プロローグ : 今日は土砂降りの大雨ですね。カウンターには小柄な店員が居座り、閑古鳥に餌をやっていました。

[main] 熾 一七 : カランカランとドアに付けられたベルが来客を告げる

[main] 熾 一七 : 長靴にレインコートを着た小さな人影が雨音をBGMに姿を表す

[main] 熾 一七 : ぴょんぴょんとその場で跳ねるとぼたぼた水がマットの上に落ち、フードを外すと病的な白い髪の下に、人懐こそうな顔が覗く

[main] 熾 一七 : レインコートのボタンを外し、ポケットからスマホを取り出してレンズを店内に向け、

[main] 熾 一七 : 「あ、ここは配信していい場所ですか?」明るく尋ねる

[main] 鮎川 瑞 : こんな大雨で客なんか来るかよ、と屋内射撃戦闘術に関する教本を呼んでいた店員はドアベルの音に気づいて顔を上げた。

[main] 鮎川 瑞 : 「いらっしゃいませ」
丁寧を告げる。油断はない。こちらはプロの店員である。いやアマチュアだった。

[main] 鮎川 瑞 : 「配信。」

[main] 鮎川 瑞 : さてそんな規則はあったかどうか。思い返すが特になにか言われた覚えはない。

[main] 鮎川 瑞 : 「どうぞ、ご自由に」
ややあってそう返事をした。駄目だったら任務の失敗による死が待っているだけである。

[main] 熾 一七 : 「ありがとう!」元気に返事し、濡れたレインコートを脱ぐと、その下には中学校の制服

[main] 熾 一七 : キョロキョロあたりを見回し「これ、どこにかけたらいいですか?」

[main] 鮎川 瑞 : (中学生………)

[main] 鮎川 瑞 : 「お預かりいたします」
カウンターの奥から出てくると店員は外套を預けるよう手を差し出す。だいぶ濡れてるな。

[main] 鮎川 瑞 : なお、ここまで愛想笑いはゼロ。物腰自体は丁寧なものであるが。

[main] 熾 一七 : 「ありがとう!」大雨でぐっしょり濡れたレインコートを特にためらうことなく店員に渡す

[main] 鮎川 瑞 : 預かってから軽くタオルで拭いた。このくらいなら咎められるということもないだろう。このままハンガーにかけていては床が水浸しだ。

[main] 鮎川 瑞 : 店の隅にある上着かけに吊っておく。この雨だしきっと忘れるということはあるまい。

[main] 鮎川 瑞 : 「お好きな席へどうぞ、お客様」

[main] 熾 一七 : スマホをぐるっと店内に向けて一周、声をかけられて元気に返事をするとちょこんとカウンターに座る

[main] 熾 一七 : 足をブラブラさせながら、メニューを眺める

[main] 熾 一七 : どんな物があるのだろうこのお店

[main] 鮎川 瑞 : 「ご注文はお決まりでしょうか」
カウンターの奥へと再び戻った店員がカウンターに座った小さなお客様に尋ねた。いや小さいという点ではこちらも負けていない。16歳にして150cm切っている。

[main] 鮎川 瑞 : これといって奇をてらった店ではないのでメニューに特別珍しいものはない。コーヒーが何種類か、お茶やココアなどの他の飲み物、あとは軽食、デザートがいくつか。

[main] 鮎川 瑞 : 基本的にワンオペであるこの喫茶店が店員ひとりきりでも回しきれる程度のメニュー量だった。

[main] 熾 一七 : 「おすすめはなんですか?」

[main] 鮎川 瑞 : ……いやそんなことないな。カレーはバージョン3つくらいあるしサンドイッチも種類多いぞ。やっぱり懲罰用に厳しい内容なんじゃないか。

[main] 鮎川 瑞 : 「おすすめですか」

[main] 鮎川 瑞 : 「お食事とお飲み物、どちらになさいますか」

[main] 熾 一七 : 割とカレー推しなんだ

[main] 熾 一七 : 「えっ…二択?」

[main] 熾 一七 : 「じゃあ…ごはん」

[main] 鮎川 瑞 : 「でしたら本日は卵サンドはいかがでしょう」
散々練習で焼かされたもの。こんなのUGNの任務の何に役立つんだと思いつつ。

[main] 熾 一七 : 「じゃあ、たまごサンドください!」

[main] 鮎川 瑞 : 「かしこまりました。お飲み物はいかがなさいますか」

[main] 熾 一七 : 「えっ、飲み物もいいんですか?じゃあ……」少し迷って「オレンジジュース」

[main] 鮎川 瑞 : 「かしこまりました。少々お待ちください」
軽く一礼して作業に取り掛かる。カウンターの調理台で卵液を撹拌してフライパンに流し込んだ。一部始終がカウンター席からは見える、ということになる。

[main] 熾 一七 : しばらくメニューや店内を撮っていたが、調理している様子が面白そう!とおもい、フライパンにカメラを向ける

[main] 鮎川 瑞 : 手際だけはそこそこいい。与えられたルーチンワークを果たすのは苦手ではない。ほどなくして注文が一揃い整った。

[main] 鮎川 瑞 : 「おまたせしました。たまごサンドとオレンジジュースです。ごゆっくりどうぞ」

[main] 鮎川 瑞 : カウンターから小さなお客様へトレイを直接差し出した。

[main] 熾 一七 : 「ありがとう、いただきます」でてきた料理を撮影してからスマホをテーブルの上に立てて、手を合わせる

[main] 鮎川 瑞 : 「………」
他に客もいないので自然とカウンター奥へそのまま陣取ることになる。視線は固定されたスマホに向いた。

[main] 鮎川 瑞 : 全部撮られてるのか、これ。

[main] 熾 一七 : 配信中!

[main] 熾 一七 : これは、世界中の友達とボクがつながる四角い窓

[main] 熾 一七 : 病院から外の世界に出ても、それは変わってなかった

[main] 熾 一七 : 『美味しい?』「美味しい!」と画面の向こうと友人同士でするような会話をしながらたまごサンドを食べる

[main] 鮎川 瑞 : 「…………」
ふうん。この画面の向こう、何処か遠い場所に相手がいるらしい。

[main] 熾 一七 : 小動物のように少しづつ、ちゃんと消化できるようによく噛んで食べる

[main] 鮎川 瑞 : 誰かと連続的に接続していたい、というのはこの店員にはよくわからない感覚だった。人間同士ですらコミュニケーションを取るのに四苦八苦しているのに、まして顔も合わせず繋がるなど。

[main] 鮎川 瑞 : とはいえちゃんと味わって食べてくれているぶんこの客は優良客だ。UGNの職員の中にはファストフードもかくやとい勢いで平らげてろくに味わいもせずに慌ただしく店を出ていく輩もいる。

[main] 鮎川 瑞 : ただ、なんとも几帳面に食べるのだな、と薄らぼんやりと思った。まるで教科書に載ってるみたいな食べ方だ。

[main] 鮎川 瑞 : ……今のところ彼女の配信を制止する理由もない。店員は小さな彫像のようにカウンターの奥でじっと彼女が食べるのを観察している。

[main] 熾 一七 : 病院から出られなかった一七にとって、長く外の世界とつながっているものはこの小さな四角い窓だけだったので、彼女にとってはこれが普通のコミュニケーションになっている

[main] 熾 一七 : 半分ほど食べると少しペースが落ちてきて、会話の量も増え始める

[main] 熾 一七 : 結構長い時間をかけて、たまごサンドを食べ終えると、手を合わせて「ごちそうさまでした」

[main] 鮎川 瑞 : 「お皿をおさげしましょうか」
タイミングを見計らって声をかけた。完食。どうあれ、自分が作ったものをちゃんと食べてもらえるのは悪い気分ではない。

[main] 熾 一七 : 「おねがいします」スッと空になったお皿を店員の前に動かす

[main] 鮎川 瑞 : 「ありがとうございます」
流しに皿を放り込む。洗うのは後でいいだろう。
「……大変丁寧にお食べになりますね。感服いたしました」

[main] 熾 一七 : 「ちゃんと噛んで食べないとお腹壊すって先生に言われたから」

[main] 鮎川 瑞 : 「先生に。」

[main] 鮎川 瑞 : ……身体の細さ。病的な白さ。何より大病を患った人間特有の儚い雰囲気。素っ頓狂なことをしては周囲に呆れられる店員でも察しはついた。

[main] 熾 一七 : 「先生に」

[main] 鮎川 瑞 : 教師じゃない。医者のほうだ、この先生は。

[main] 鮎川 瑞 : 「それは、健康的で結構なことと思います」

[main] 熾 一七 : 「今は何でも食べていいって言われてるんだけど、なれなくて食べるの遅いって学校でも言われる」

[main] 鮎川 瑞 : 「周囲と自分を擦り合わせるのは困難なものです」

[main] 鮎川 瑞 : 「私自身苦労しております」

[main] 熾 一七 : 「お姉さんも?」

[main] 鮎川 瑞 : 「ですがお客様に限って言えば、よく咀嚼して嚥下することは間違ったことではない」

[main] 鮎川 瑞 : 「正しいことならそのままでよろしいのでは」

[main] 鮎川 瑞 : 問いかけには小さく頷いた。
一般社会はもちろんUGN内部ですら浮いた存在である自覚は疾うの昔に持ち合わせている。

[main] 鮎川 瑞 : 人間よりレネゲイドの方を身近で親しみやすく感じる変わり者。それがこの店員の半生だ。

[main] 鮎川 瑞 : だがだからどうだというのだ。周囲と自分の摺り合わせに苦労するなんて皆当たり前のことだろう。

[main] 熾 一七 : 「お姉さんはどういうところで困ってるの?」

[main] 鮎川 瑞 : 「そうですね」

[main] 鮎川 瑞 : 「私が日頃どのように過ごしているか(潜伏先の学校で)尋ねられると激しく困惑されます」

[main] 鮎川 瑞 : 「私は虚偽を口にしてごまかすメリットとデメリットを勘案した結果、正直に答えているだけなのですが」

[main] 熾 一七 : 少女の世界にはあまりない、ふかいところの話題に、好奇心が鎌首をもたげる

[main] 熾 一七 : 「嘘かー………」

[main] 熾 一七 : 「嘘をついて怒られてるってことかな?」

[main] 鮎川 瑞 : 「いえ、逆です」

[main] 鮎川 瑞 : 「尋ねられたことに対し適当に誤魔化すよりも偽りなく答えたのです」

[main] 鮎川 瑞 : 「しかし、私の中の常識と周囲の常識はどうやら大きく異なっているようです」

[main] 熾 一七 : 「世界中には色んな人がいるよね」

[main] 熾 一七 : 「宇宙から来た人なんてぜんぜんわかんない」

[main] 鮎川 瑞 : 「宇宙。」

[main] 熾 一七 : 「宇宙」ピンと天井を指差す

[main] 熾 一七 : 「まだ、月までしか行けないけど、その先の知らない星まで、きっと人間だけの力で行ける日がそのうちくるはず!」

[main] 鮎川 瑞 : 「はぁ」
遠大な話になってきた。まともに想像したことさえない。

[main] 鮎川 瑞 : 「私もまだ宇宙からいらっしゃったお客様には会ったことがありませんね」

[main] 熾 一七 : 「そっかー…」広くなったテーブルの真中にオレンジジュースを置き、両手で抱えるように持ってストローをすする

[main] 熾 一七 : 酸味に顔をしかめる

[main] 鮎川 瑞 : 「お客様の世界は広いのですね」

[main] 鮎川 瑞 : 「私の世界は私の目の届く範囲にしかありません」

[main] 鮎川 瑞 : 正確には、スコープを覗いて弾丸が当たる距離まで。

[main] 鮎川 瑞 : 「世界が広いのはきっとよいことなのだと思います。おそらくですが」

[main] 熾 一七 : 学校でも時々マイペースを咎められる

[main] 熾 一七 : それを思い出して少しだけしょんぼりした様子

[main] 熾 一七 : 外の世界での経験があまりない少女はついてこない人間、違う常識を持つ人間とのコミュニケーションの経験に乏しい

[main] 鮎川 瑞 : 「……ご気分を害されたでしょうか」

[main] 鮎川 瑞 : 「……失敗……死……」

[main] 熾 一七 : 「えっ?ちょっと戸惑っただけでキブンヲガイスほどでも」

[main] 鮎川 瑞 : 「左様ですか」

[main] 不語仙 : ではそんなちょっと気まずい雰囲気の所に入店させてもらう感じで…

[main] 熾 一七 : 直の相手の反応に不慣れで、相手がどう思っているのか感じ取るのはちょっと苦手だ

[main] 不語仙 : カランカラン、とドアに付けられたベルが来客を告げる

[main] 不語仙 : ─────なんというか。

[main] 不語仙 : 物凄い派手なのが其処に居た。

[main] 不語仙 : 派手な染色の長髪。派手な色と柄の服。

[main] 不語仙 : 何より、雑に着崩したことで見える、仰々しい彫り物。

[main] 不語仙 : 「やはー、御邪魔するで御座りまするー」

[main] 不語仙 : おまけに口調も変だった。もうどこから何をどう見ても、欠片もカタギに見えない。

[main] 不語仙 : 「お、空いてるで御座りまするな。まぁこの雨では仕方なしですかなー」

[main] 鮎川 瑞 : 大抵のことには表情を動かさない店員もさすがに目を丸くした。
───この客、この格好で表を歩いてきたのか。

[main] 熾 一七 : 音に反応して入口を見る

[main] 鮎川 瑞 : 「いらっしゃいませ」

[main] 鮎川 瑞 : しかし反応は素早い。丁寧に挨拶をする。
プロである。プロではなかった。ただのバイトだった。

[main] 不語仙 : 性別も正直判別しづらい所があるが、露な胸板からして男らしい。

[main] 熾 一七 : あんまり町中では見ない格好だなぁと思いつつ、世界中の色んな国のいろんな格好を見慣れているので特に驚いたりはせず、目が合うとペコリとお辞儀

[main] 不語仙 : 彼はやっぱり派手な赤い油紙傘を丁寧にたたむと、へらへらと笑いながらカウンターへ。

[main] 鮎川 瑞 : どこの時代劇だか武侠モノだかから抜け出してきたのだろうか。いや見たこと無いけど。
「ご注文をお伺いします」
でも客だった。店員としての仕事を遂行せねば。

[main] 熾 一七 : 「中国の人ですか?」

[main] 不語仙 : 「いやぁ、旅先で降られる雨は風情がありまするなぁ。火酒ありまする?」

[main] 熾 一七 : 中国の人だ!

[main] 不語仙 : 「んー?」薄く化粧の乗った顔に、愛嬌のある表情をしている。

[main] 鮎川 瑞 : 「申し訳ありませんが、夜の部の開始はまだですので」
規則である。店員側で多少ファジーに決めていいと伝えられているがまだ数時間猶予があるのを目こぼしはできない。

[main] 不語仙 : 「左様で御座りまする。もう離れて随分立ちまするがなー」よく聞けばちゃんと日本語だが、独特のイントネーションである。中国なまりなのかもしれない。

[main] 不語仙 : 「あ、左様で。ではあー」「…………烏龍茶で」

[main] 鮎川 瑞 : 「かしこまりました」
今日はコーヒーがハケない日だ。喫茶店なのに。

[main] 不語仙 : ちゅうごくじんはうーんちゃをのむというイメージに配慮しています

[main] 熾 一七 : イメージをだいじにする人だ

[main] 鮎川 瑞 : 一方で、用意をしつつもそれとなくこのカウンターに座った男へ気を回していた。

[main] 鮎川 瑞 : まあ、一般人から見てすら分かるように、まともじゃない。

[main] 鮎川 瑞 : 微かに香る暴力の気配。UGNに属しているのだ、嗅ぎ慣れた匂いではある。
どちらかといえば配慮しなければならないのはカウンターに座るもうひとりの客の方だ。臆して……はいなさそう。案外図太いな。

[main] 熾 一七 : そこまで変だとは思わないが、生で見ると好奇心をくすぐられる

[main] 鮎川 瑞 : 逆に興味を持ってすり寄ろうとい気色さえある。すごいな、今どきの中学生。いやまともに通ったことないけど、中学校。

[main] 不語仙 : そんな隣の少女ににへっとした顔を向けている。

[main] 熾 一七 : スマホのカメラを向けつつ「あ、配信してるけど大丈夫な人ですか?」

[main] 不語仙 : 店員の探るような気配には─────気づいているのだろうが。

[main] 鮎川 瑞 : 「おまたせしました。烏龍茶です」

[main] 鮎川 瑞 : 丁寧に差し出した。相変わらずの無表情だったが。

[main] 不語仙 : 「はいしんー……?」首を傾げつつ、受け取る。

[main] 不語仙 : 「あれで御座りまするかな。ゆーちゅーばー的な」

[main] 不語仙 : 「某画面映えしまするかなぁ」

[main] 鮎川 瑞 : 「……………」
するだろう。奇人としてだが。

[main] 鮎川 瑞 : もちろん口にはしない。お客様にそんな無礼なことはできない。

[main] 不語仙 : 「ま、構いませぬ」ちゃろーっぴーすぴーす

[main] 不語仙 : カメラに向かってちぇきちぇきしつつ、茶を飲む。

[main] 鮎川 瑞 : 「………」
視界に入れたまま、焦点を合わさずに様子を見る。

[main] 鮎川 瑞 : こんなのがUGNの施設を出入りしていたらさすがに話題になっているだろうからたぶん関係者ではない。よって(こんなナリでも)一般の客ということになる。

[main] 鮎川 瑞 : もっとも、それはUGNの関係者でないというだけでオーヴァードたちの世界に関係しないということとはイコールではなかったが。

[main] 鮎川 瑞 : いやに人を安心させる愛嬌ある顔、あまりにも派手派手しい出で立ち、ふざけた口調。
───すごい。全身がスズメバチみたいな警戒色で塗りたくられているかのようだ。

[main] 鮎川 瑞 : どちらかといえば出生から今に至るまで暴力の側に身を置いて育ったぶん、余計にそういうものが臭った。

[main] 熾 一七 : 構わずスマホで配信、画面の向こうの友人たちに、新たな出会いを伝える

[main] 鮎川 瑞 : なもので、この配信者が物怖じしないことに若干ハラハラするのである。

[main] 不語仙 : 「おーこれが生配信で御座りまするか。なんか喋った方がいいで御座りまするかなぁ」

[main] 熾 一七 : 「大丈夫、えっと…そういうのとは違うから」

[main] 不語仙 : そういう視線に、気づいているのかどうか。少なくとも何のリアクションもない。

[main] 熾 一七 : 「これは、世界中のボクの友達にボクを伝えるためにやってるだけだから普通でいいよ」

[main] 不語仙 : 「ははー、御友人が多いようで御座りまするな」

[main] 不語仙 : 「佳いことで御座りまするなー。某は一人旅故羨ましい限り」

[main] 鮎川 瑞 : 何やら会話が弾みだしたぞ。今のうちに皿洗っとくか。

[main] 熾 一七 : 「おじさんもスマホ持とう!ボクも友達作れたから寂しくなかった」

[main] 不語仙 : 何気ない二人称が26歳を傷つけた

[main] 鮎川 瑞 : 私はお姉さんと呼んでもらったので我が方の勝利である。(大本営発表)

[main] 鮎川 瑞 : お姉さん(身長150cm割ってる)(胸はない)(愛想もない)(社会常識もない)(何も無い)

[main] 不語仙 : 「いやー、某の身分だとプリペイドしか買えんで御座りますからなぁ。お小遣い代わりに買って貰ったことはあるで御座りまするが」

[main] 不語仙 : あいぽんは借金のカタになりまする。覚えておくと佳いですぞ

[main] 熾 一七 : そうなんだ……

[main] 熾 一七 : 「プリペイドじゃダメなんだ……」

[main] 鮎川 瑞 : このお客様どうやら定職はない様子。まったく意外ではない。
と、皿の水分を拭き取りながら内心ぼやいた。

[main] 熾 一七 : 使ってはいるが仕組みや制度は良くわかっていない

[main] 鮎川 瑞 : むしろこれで固い定職に就いていたらそっちのほうが驚きだ。

[main] 熾 一七 : 「おじさんみたいな(スマホ使えない)人って結構いますか?」

[main] 熾 一七 : 「学校では持ってない子も結構いるけど」

[main] 不語仙 : 「まぁ結構いまするなぁ。日本だとその辺の路上で寝てる人でも偶に持ってるくらいで御座りまするが……」

[main] 熾 一七 : 「そっか……みんな持ってるんだと思ってた」

[main] 熾 一七 : 世界中みんなと話せると思っていたけど、どうやらそうでもないらしい

[main] 不語仙 : 「パスポートないからスマホ買えないとか、スマホ持ってるけど戸籍ないとか、色々ありまするな」

[main] 鮎川 瑞 : 疑問はもっともかもしれないが、これに関しては派手なお客様に一票、と拭き終わった皿を仕舞いながら思う。

[main] 不語仙 : 「ま、世の中豊かになっているのは確かで御座りまする。いずれ世界中とというのは出来るかもしれませぬぞ」フォローフォロー

[main] 熾 一七 : ふむふむとうなづきながら聞いている

[main] 鮎川 瑞 : 常に世界とつながっている、という端末を与えられたのは訓練を追えて各地へ派遣されるようになってからだった。あるのが当たり前という価値観とそうではない者の間には大きな差がある。

[main] 熾 一七 : 遠くまでつながるが、全てとつながるわけではないというのは新しい知見だった

[main] 鮎川 瑞 : 仕事がなくなってしまった。お客様同士の会話へ店員が口を挟んで割って入るのは失礼である。とりあえず成り行きを見守ることにする。

[main] 七原 黒心 : 「邪魔するぜ、やってるかい」カランカラン

[main] 不語仙 : 「ぅーん?」玄関口に目を向ける

[main] 不語仙 : おやおや、派手なのが来ましたなぁという顔だ。

[main] 鮎川 瑞 : 「いらっしゃいませ」

[main] 不語仙 : しかも男で御座りまする。なんかいい感じに若い女子に含蓄垂れてられる感じだったのに……

[main] 七原 黒心 : 「かはは、飯の匂いに釣られてやって来てみればなかなかいい感じじゃねぇの」

[main] 熾 一七 : 入口にスマホを向ける

[main] 鮎川 瑞 : 「ありがとうございます」
ぺこりとカウンターの奥から頭を下げる。仏頂面だったが。

[main] 鮎川 瑞 : 「お客様。了承をいただく前からカメラを向けるのはご遠慮ください」

[main] 熾 一七 : 「あっ…と、とっても大丈夫ですか?おじ…お兄さん」学ランとジャージと見た

[main] 七原 黒心 : 「おじ…これでも17なんだけどな…」

[main] 七原 黒心 : 「まあいいぜ、別に撮られて減るもんじゃ無し」

[main] 熾 一七 : 「ありがとう」

[main] 熾 一七 : すごい長いから、一瞬コート着たサラリーマンかと思ったんだ

[main] 鮎川 瑞 : 「ご注文をお伺いします」
メニュー表を渡しながらカウンターで応対する。

[main] 鮎川 瑞 : 1歳違いだって。身長が30cm差なのにね。

[main] 鮎川 瑞 : 大人と子供かな?

[main] 七原 黒心 : 「あー…カレーとオムライス、あとホットドックとカツサンド。あとはコーラひとつ頼む」

[main] 不語仙 : タッパで負けている26歳

[main] 鮎川 瑞 : 「かしこまりました」

[main] 鮎川 瑞 : 注文を受けて慌ただしく動き始めた。小柄なのでカウンターでばたばた動き回る姿には愛嬌が宿っている……かもしれない。

[main] 熾 一七 : 「全部食べるの?」

[main] 七原 黒心 : 「もちろん、腹減ってるしな」

[main] 不語仙 : 「ははぁ。育ち盛りで御座りまするなぁ」

[main] 七原 黒心 : 「まぁね」

[main] 熾 一七 : どのくらいいっぱい出てくるのか、興味深そうにカメラを向けながら調理の様子を見ている

[main] 鮎川 瑞 : やがて店内にフライパンを揺する音が響きだした。カレーは皿に盛ればすぐだがオムライスはそうはいかない。ホットドッグはパンとソーセージを焼いて、カツサンドのパンも一緒に焼いて…。

[main] 七原 黒心 : 「ところで兄ちゃん、見た感じ…けっこう戦れるタイプかい?」

[main] 不語仙 : 「…………………………ぅんー?」

[main] 鮎川 瑞 : 「…………」

[main] 不語仙 : 厨房の様子を眺めたまま、のんびりとした返事をする。

[main] 鮎川 瑞 : 作業の手は止めず注意を払う。

[main] 熾 一七 : はじまるのか、バトルが

[main] 不語仙 : 「出会い頭にヤるだのヤらないだの品がないで御座りまするなぁ……若い御婦人も居られるというのに」

[main] 七原 黒心 : 「かはは!悪ぃが性分でね」

[main] 不語仙 : 頬杖をついて、顔を向ける。

[main] 鮎川 瑞 : この喫茶店、UGNが管理している。自然と荒事を生業にする者たちがUGNエージェント含めて集まりやすい。
『もしも』の時の対処もマニュアルにあった。最初から最後まで目を通して要約すると『その時の店員に丸投げ』という内容だったが。

[main] 不語仙 : 化粧の乗った整った顔に、愛嬌のある表情を浮かべている。

[main] 不語仙 : 「男児はそれくらいの性分の方がいいのかもしれませぬが、さてはて。何処の小僧っ子で御座りまするかなぁ」

[main] 七原 黒心 : 「”マスターブロウラー”、七原黒心。よろしく頼むぜ、かははは!」

[main] 七原 黒心 : 「ま、今日は腹ごしらえに来ただけだ。興味本位で聞いてみただけさ、かはは」

[main] 七原 黒心 : 「アンタが戦りてぇってなら…話は別だがな」

[main] 鮎川 瑞 : 「…………」
少し考えた。どうするべきか。
あいつ堂々と名乗りやがった。FHのエージェントが曲がりなりにもUGNの施設へこうして入ってくるとは。

[main] 熾 一七 : 「ボクは全能逆説(バイトオフ)、熾一七、よろしくね」

[main] 鮎川 瑞 : 一方で、現在彼は『ただの客』でもある。
そして自分も今はUGNチルドレンのひとりではなく、この喫茶店で(懲罰労働させられている)店員だ。

[main] 鮎川 瑞 : よって。

[main] 鮎川 瑞 : 「おまたせしました」

[main] 鮎川 瑞 : 素知らぬ顔でカレーとオムライスの皿を同時に差し出した。

[main] 七原 黒心 : 「おっ、来た来た」カウンターへスタスタ

[main] 不語仙 : 「一七で御座りまするかぁ。某は…………あー。スイレンで通っておりまするな」

[main] 七原 黒心 : 「んで、嬢ちゃんもオーヴァードなんだな」モシャモシャ

[main] 不語仙 : 蓮の彫り物を軽く示す。

[main] 熾 一七 : 「キレイだね」かんそう

[main] 不語仙 : 「ありがとう」にへ

[main] 七原 黒心 : 「へえ、洒落た通り名じゃん」モシャモシャ

[main] 鮎川 瑞 : 今の自分の任務はこの店をやり繰りすることであって戦うことではない。
店員はホットドッグを作り始めた。ソーセージを破裂させず肉汁を閉じ込めたまま焼く───高難易度ミッションだ。失敗は死。

[main] 不語仙 : テメェには言ってねぇよ
 「我不是在对你说」

[main] 不語仙 : にへにへ

[main] 熾 一七 : すごいなかわるい!

[main] 七原 黒心 : 「あ?チャイニーズか?」モシャモシャ

[main] 熾 一七 : 氷をカラカラさせながらオレンジジュースを飲む

[main] 鮎川 瑞 : 「おかわりいかがでしょう」

[main] 熾 一七 : 「言ってないって」

[main] 熾 一七 : 「あ、ください!」

[main] 鮎川 瑞 : 「かしこまりました」

[main] 熾 一七 : 「あ、うーんメロンソーダで」

[main] 熾 一七 : 「上にアイスが乗ってるの」

[main] 不語仙 : 「洒落乙なモノで御座りまするなぁ」

[main] 鮎川 瑞 : 「クリームソーダですね。ただいま」

[main] 不語仙 : 「某も何か……………あー」「烏龍茶で」

[main] 不語仙 : ちゅうごくじんはうーろんちゃをのむというイメージに配慮しています

[main] 熾 一七 : いめーじだいじ

[main] 不語仙 : (夜の部とやらははよう始まりませぬかなぁ…)

[main] 七原 黒心 : 「こっちもコーラお代わりで」

[main] 鮎川 瑞 : 「かしこまりました」
てきぱきと動いてコーラを運び、メロンソーダの上にアイスクリームを乗せる。

[main] 鮎川 瑞 : ついでにホットドッグとカツサンドも。

[main] 鮎川 瑞 : 「おまたせしました。ご注文は以上ですね」
注文を受ける間も、作っている途中も、品を出す時も、愛想笑いのひとつもない。物腰は丁寧なのだが。

[main] 七原 黒心 : 「さんきゅー」モグモグ

[main] 熾 一七 : 「ありがとう!」

[main] 鮎川 瑞 : 「…………。おまたせしました」
それより問題はこっちだ。虎視眈々とあの派手な男から狙われている気がする。たぶんお酒。

[main] 不語仙 : にへっとして受け取る

[main] 鮎川 瑞 : 烏龍茶を差し出しつつ内心安堵する。よかった、夜の部からは別の職員と交代だ。

[main] 熾 一七 : アイスをすくって一口、冷たさと甘さにきゅ~とした笑顔

[main] 鮎川 瑞 : こんなに模範的に頑張って働いているのだからそろそろ実戦へ戻して欲しい。まだお呼びはかからない。

[main] 不語仙 : うん、うん。毒気のないジャリはいいもので御座りまする。

[main] 不語仙 : 頬杖ついて、一七を眺めている。

[main] 熾 一七 : 見られてるのに気づいて

[main] 熾 一七 : 「はい」スプーンですくったアイスを不語仙の口元に

[main] 不語仙 : 「─────おや」ちょっと虚をつかれた顔をしつつ「あーん」

[main] 不語仙 : 「これは忝いで御座りまするなぁ」あまー

[main] 熾 一七 : 「烏龍茶にアイスもあればいいのにね」

[main] 七原 黒心 : 「ふぅ、食った食った。まだ足らんがとりあえず満足だ」

[main] 七原 黒心 : 「会計頼む」

[main] 鮎川 瑞 : 「かしこまりました。カレーとオムライス、ホットドッグとカツサンド、それとコーラで合計───」

[main] 鮎川 瑞 : 手早くレジを打つ。計算機は打ったぶんだけ正直に応えてくれる。人間関係もこのくらい簡単ならいいのに。

[main] 七原 黒心 : 「現金で。ひい、ふう、みい…ホイ丁度」

[main] 鮎川 瑞 : 「……はい、ちょうどですね。ありがとうございました」
釣り銭なし。レジにお金を放り込んで一礼した。

[main] 熾 一七 : 「ごちそうさまでした」

[main] 不語仙 : 頬杖付いたまま眺めている

[main] 鮎川 瑞 : 食べ終えて退店する男を少し見つめる。
……この男をいつかレティクルに捉える日が来るのだろうか。

[main] 七原 黒心 : 「そいじゃごちそーさん、また縁があれば来るかもな。かはは!」

[main] 鮎川 瑞 : 「ん………お帰りですか。お会計ですね」

[main] 不語仙 : 暫くそうやって席を立った二人を眺めていたが………………

[main] 熾 一七 : 窓の外を眺めると、薄暗かったそらが真っ暗になっている

[main] 鮎川 瑞 : 「たまごサンドとオレンジジュース。それとクリームソーダ。以上で───」

[main] 不語仙 : 「んー………………っ」

[main] 熾 一七 : 少し険しい表情を浮かべ

[main] 不語仙 : 伸びをしながら、ゆっくりと立ち上がる。

[main] 鮎川 瑞 : 「………?どうなさいましたか、お客様」

[main] 鮎川 瑞 : レジ打ち中、急に表情を暗くしたのに気づいて声をかけた。

[main] 熾 一七 : 「面白い店だって」と、スマホの向こうの友人の言葉とともに代金を支払い

[main] 不語仙 : 「いやぁ、何。酒の前にちょいと野暮用を済ませてこようかと」

[main] 熾 一七 : 「"大丈夫"だよ、いってきます」

[main] 鮎川 瑞 : 「………。………左様ですか」

[main] 熾 一七 : 扉を開けて夜の街に消える

[main] 不語仙 : 懐から硬貨を伝票と共にぱちりと置き。

[main] 熾 一七 : 手を使って開けていないように見えたガキのせいだろう

[main] 不語仙 : 先に出て行った彼の行く先を、視線で追う。

[main] 不語仙 : 「なぁに、"すぐに済む"故。後で戻って御座りまするー」

[main] 不語仙 : へら、と笑って。傘を置いたまま、ふらっと外へ出ていく。

[main] 鮎川 瑞 : 「………」
まず夜の街に消えていった彼がくぐった扉がひとりでに開いたような気がしたことに訝しみ───この店自動ドアじゃないはずだが───

[main] 鮎川 瑞 : 「………。そうですか。ご利用ありがとうございました」

[main] 不語仙 : うん、うん。無害なジャリはいいものでござりまする。

[main] 鮎川 瑞 : あの剣呑な男が出ていくのを見送る。
さすがにこちらの意図は漠然と察した。
結構。店の外でやってくれるぶんには私の管轄じゃない。

[main] 不語仙 : 店員殿はその辺り奥ゆかしい。礼節とは互いに守ってなんぼで御座りまするからなぁ─────その観点に於いて。

[main] 不語仙 :  ナメてやがんな。ブチ殺すぞ
「你在看不起我啊……我要杀了你」

[main] 不語仙 : 「ぁは。盛ったオスガキ躾けるのも年長の務めで御座りまするかなぁ─────」

[main] 鮎川 瑞 : ……他国語の授業で中国語は少し触った。
おかげで何となくだが内容は読み取れた。閉口する。

[main] 鮎川 瑞 : 私は猟犬であって、街の番犬じゃない。
それが任務であるならば遂行するが、自分から秩序のために活動はしない。
…………ここから離れたところでワーディングの気配がしたのは暫しあとのことだった。

[main] 鮎川 瑞 : 「………」
いいな、と少し思った。
レネゲイドの力を集積してこっそり手の中に銃を作り出す。

[main] 鮎川 瑞 : 何万発も撃って得た、グリップの馴染んだ感触。

[main] 鮎川 瑞 : 次に使えるようになるのはいつになることだろう。

[main] 鮎川 瑞 : 「………早く現場に戻りたい」

[main] 鮎川 瑞 : ───そろそろ夜の部だ。
光で編んだ銃を光へと還し、引き継ぎの用意を鮎川翠は始めた。

[main] : Fin