ヒナエンド後のワカモ妄想

ブルアカにおける一種のタブーというかサザエさん時空に真っ向からぶつかる要素あり


「明日の予定は…あぁそろそろ乗り物はともかく銃以外の武器も教えたほうがいいかもしれませんね」
スケジュールの確認と修正をするワカモ
その中には少し前に失恋した相手のものも含まれておりむしろかつてより関わる機会は増えていた
ちゃんと諦めてもいる…はずだし悔しかった気持ちもあった
ただその敗北感は迎えてしまえば彼女にとってはここ最近の悩みや迷いを解消してくれる答えでもあり抱え込んでいた混ざりかけていた2つの愛をそれぞれ炎として燃え盛る物とぬくもりのように暖かいものに絶ち分けてくれた
我ながら切り替えの速さに少々自分勝手いや薄情なのではと思うが今冷静になって考えてしまえば元から選ばれるわけはなかったのだ
彼に魅入る前に先生への好意を彼に見せていたとか七囚人であるとかを抜きにしても結局のところ自分は「助けてくれる」「かっこいい」「お姉さん」であり彼の前の立つ存在ではあっても隣にいる存在ではなかった
と実際はどうかはともかく彼女は思っていたしよりそうあろうとも思っていた
あの事件で出現したもう一人の彼
今回こそ乗り越えたものの彼がああなるもしくは似たような未来を迎える可能性がないとは言い切ることが出来ない
向こうの世界の詳細こそ知らないものの二人の彼が似たような嗜好を持ち同じ相手を選んだのなら…きっと自分も向こうにいて…でも彼も先生も守ることは出来ずに…
この先何があるかはわからないがそれも…いいやあれは特に避けなければならないことだ
そういう思いが彼女を動かし以前より将来の生徒会長に関わるようにしていた
「候補は色々ありますが…本人のやる気が一番ですから聞いたほうがいいでしょう」
そう思いモモトークを起動するとちょうど先生からの連絡が来ていた
彼女は辞めるまで知らなかった先生が主導の一人だった弟の女装をやめるきっかけに自分がなっていたことに関しては少し残念がられたものの弟の本音を聞けたことに関して予期せぬ感謝と信頼を得ていて服などについての真っ当な相談も受けていた
今回の連絡もその手の相談ではあった
あったのだが…今回は彼だけではなく…
その相手に彼女は小さく溜め息をつく
割り切ったつもりだがやはりまだ小さく胸に燻るものはある
だがあの勝利者も恐らくこのままいけば自分にとっては大切な相手の一人になるのだろう
ならば乗り越えるべき時が早まっただけだし彼に改めてあった時よりは楽なはずだ
そう思いながら頬をぴしゃりと叩きモモトークの返信を打ち始めた


数日後

「やっぱり私にはこういうのは…百鬼夜行にもいる角はともかく羽根とかあるし」
「はいはいゲヘナの方も来てるお店なんで羽根とか大丈夫ですよ…それともあの子の願いを無下にするおつもりで?」
「それは…」
葛藤するヒナをぐいぐいと背中を押して和服店に押し込む着物姿のワカモ
その中には既にミニサイズとはいえ男性用の紺色の着物と白い帯にあのとき買ったお面をワカモと同じようにつけたユウが既に待っていた
同じ仮面に気づいたヒナから嫉妬の波動を感じるものの空回りでする必要のない心配とはいえ貴女も恋でもう少し悩んでみたらいいと内心笑いながら受け流しつつワカモは手をひらひらと彼に手を振る
「もーダメだよヒナはワカモさんに迷惑かけちゃ」
恋人を名前呼びする彼とちょっとシュンとするヒナの姿に驚きつつもこれなら接しやすいと思いながらワカモは店員を呼び事前に伝えていたヒナの身長に合うサイズに揃えた色んな柄の着物を持ってきてもらう
「とりあえず紫、黒、白系をメインにしつつ他にも色々用意していただきました」
「いや…流石に多すぎないかしら?」
「そんなことないよ"卒業式"で着るものだもんちゃんと選ばなきゃ」
バレンタインを終えて訪れたあの騒動を終えるころにはもう近づいていた終わりと始まりの春
結局事件の事後処理やらで少々先延ばしにされたが準備も一段落しこうしてユウの願いで卒業式に着物を着てほしいという願いを叶えるために三人は集まっていたのだった
その後あぁでもないこうでもないと贅沢な時間を過ごしていたのだが
「あっリンさんからの連絡だ…ごめんちょっと外行くね」
そうして彼はでていきワカモとヒナだけが残される
「…そういえばまだお礼を言ってなかったわね」
「?…まだ終わってませんし他ならぬ先生とあの子の頼みですから」
要領を得ないと疑問を浮かべつつ応えるワカモ
「そうじゃなくて…あの時あの子を助けてくれてありがとう」
それはエデン条約の時のことで正直どちらかといえば嫌な思い出ではあるがそれを表に出さないようワカモは答える
「あぁそちらでしたか…例など必要ありませんわ…"将来の家族"を守ろうというのは"お互い”当然でしょう?…あとあの子呼びはやめたほうがいいかと…名前呼びしてくれてるのに失礼では?」
そんな遠回しなワカモからの感謝に不意をつかれヒナは驚く
「…!…えぇそうね、そういうことにしておくわ…それは…貴女だってあの子呼びじゃない」
「私はお姉さんだからいいのです…さて戻って来る前にあなたもお揃いの飾りでも探します?」
恐らくこいつを義姉にすることになるのか…とでも思っているのか複雑な表情をするヒナ
そんな彼女にワカモはふふと意地悪な笑顔を向けてからお揃いの仮面をサラリとなでながら店員に声をかけるのだった

FIN