二次元裏@ふたば

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193687 B25/03/15(土)19:57:58No.1292578766そうだねx2 21:11頃消えます
「トレーナー、今日は何の日だか知ってます?」
「え? 今日? ……3月15日?」
「そうです!」
「……えーっと」

何やら不敵な顔で聞いてくるマチカネタンホイザに対し、彼女の担当トレーナーは困惑した顔で悩みこんだ。

「……うーん……ごめん、わからない。何かの記念日とか?」
「いえ、そういうのじゃないです。ふふ……今日はなんと! ホワイトデー2日目です!」
「ホワイトデー……2日目?」

より困惑した顔で聞き返すトレーナーに、タンホイザはしたり顔で頷きながら続ける。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
125/03/15(土)19:58:39No.1292579049+
「言いたいことはわかります。ホワイトデーは終わったんじゃ……? 2日目とかあるの……?って思ってますよね?」
「うん……え、何か不満だった?」
「あ、いえいえ! そういうわけじゃないですよ! 昨日のディナーは美味しかったですし、貰ったお菓子もすっごく素敵でした!」
「……じゃあ2日目とは……?」

タンホイザはにやりと笑うと、懐から三枚の小さな紙を取り出した。

「ふっふっふ……! これに見覚えはありませんか……?」
「え? 何? ……あっ!」
「思い出したようですね! ……そう、これはトレーナーが作った『引換券』です!!」

それは虹色に輝く加工が施された手作りのチケットで、裏面にはトレーナーの署名と捺印がされている。
225/03/15(土)19:59:11No.1292579253+
「うわぁ懐かしい……まだ持ってたんだそれ……」
「もちろんですとも! 学生の頃、毎年ホワイトデーにくれていた『何とでも交換できる引換券』! 計3枚、しっかり保存してますよ!」
「そっか、3枚も作ってたのか……」
「途中から貰えなくなっちゃったんですよね。代わりにお食事とか、プレゼントとか貰えるようになりましたけど」
「あー……お菓子だけじゃ物足りないかなと思って付けてたんだけど。1回も使ってこないし、流石に子供っぽ過ぎたかなと思って……」

少し恥ずかしそうに言うトレーナーに対して、タンホイザも照れ笑いを返す。

「いえ、そういう理由で使わなかったわけじゃないんです。貰ったときは普通にすごく嬉しかったですよ」
「じゃあなんで取っておいてたんだ? 遠慮してたとか?」
「いやぁ……ほら、私ってゲームですごい効果のアイテムを使わずに持ったままクリアしちゃうのが悩みじゃないですか」
「……ラストエリクサー症候群ってやつか?」
「それです。ここぞという時に使おう!と思って大事に取っておいたら、なかなか使えずに今の今まで……」
325/03/15(土)20:00:13No.1292579648+
なんともタンホイザらしい普通な悩みだ……とトレーナーは思ったものの、口には出さなかった。

「……でもこのままじゃもったいない、自分を変えなきゃ! と思い立ち、昨日引っ張り出して来たってわけです!」
「な、なるほど……」
「ふふふ……今日は休みだし、この3枚をぱーっと使ってぇ! ホワイトデーの延長戦をしてやろうと思いまして……!」

引換券をひらひらさせながら不敵に笑うタンホイザを見て、トレーナーは思わずごくりとつばを飲み込む。

「ホワイトデー2日目っていうのはそういうことか……! ……それで、それを使って俺に何をさせようっていうんだ?」
「ふふふ! そうですねぇ……まずは今日1日、おデートに付き合ってもらいましょうか!」
「……えっ?」

ドヤ顔のタンホイザと対照的に、トレーナーは拍子抜けしたような顔になる。
425/03/15(土)20:01:12No.1292580034+
「デートって……そんなことで良いのか? 別にそれくらい引換券がなくてもやるけど……」
「……へ?」
「というか、今二人で出かけてるこの状況がもうデートじゃないか……?」
「……た、確かに……」

休日に喫茶店で待ち合わせ、朝食をとった後という現状を改めて確認し、タンホイザは腕を組んで考え込み始める。

「うーん……じゃあ、何か買ってもらうとか……ご飯ご馳走になるとか……?」
「……それも、別に引換券使わなくたっていつでもやるけど? というか昨日やったし」
「あ、そっか。……じゃあ、ちゅーしてもらうとか……」
「……それも別に引換券使わなくたって」
「もーーっ!! トレーナーは一体何ならやってくれないんですか!?」
「ええ……」
525/03/15(土)20:01:59No.1292580338+
頭を抱えてしまったタンホイザに、トレーナーは再び困惑する。

「そうだな……君がして欲しいことなら、大抵のことはやっちゃうかも……」
「そんなぁ! じゃあこの引換券はどう使えば良いんですか……?」
「いや俺に聞かれても……」
「……はっ。もしかして、これって付き合う前に使うべきだったやつです?」
「そうかも……まさしくラストエリクサー症候群だ……!」
「私……もうクリアしちゃってたんですか? トレーナーというゲームを……」
「その言い方はなんか嫌だな!?」

タンホイザはしばらくわなわなと震えていたが、やがて落ち着きを取り戻すとトレーナーをまっすぐに見つめた。
625/03/15(土)20:03:09No.1292580768+
「……よし。こうなったら強くてニューゲームするしかありません」
「相変わらず切り替えが速いな……って、何? ニューゲーム……?」
「はい……まずこの1枚目を使って、トレーナーには私と出会ったばかりの頃に戻って貰います!」
「ええ……? 良いのかそれで……?」
「はい! トレーナーをリセットして、その上で残りの2枚を使って好き放題するしかありません!」
「それ本末転倒なんじゃ……」
「良いから! ほら、中等部の頃の私だと思ってください!」
「う、うん……タンホイザは中等部……まだジュニア級……」

タンホイザの勢いに押され、トレーナーは目を閉じてぶつぶつと自己暗示を始めた。それが済むと、やがてゆっくりと目を開ける。
725/03/15(土)20:04:23No.1292581290+
「……戻りましたか?」
「……うん」
「じゃあここですかさず2枚目! トレーナーには今日1日、私の恋人になってもらいます!」
「……えっ? あー……」

トレーナーは一瞬怪訝そうな顔をした後、少し困ったように微笑んだ。

「いや、確かに何でもするとは言ったけどさ。そういうのは流石にね……」
「へ?」
「君まだ中等部だろ? 恋愛に憧れる気持ちもわかるけど、あんまり軽々しくそういうこと言ったら駄目だよ。もっと自分を大事にしないと……」
「……ふ、普通の反応だ……! 確かにトレーナーならこうなりそうだけど……!」
「なんかごめんね……俺も勘違いさせるような態度取ってたかも……」
825/03/15(土)20:05:03No.1292581580+
完全に役に入り込んでいるのか、トレーナーは気まずそうな表情で視線を逸らしている。タンホイザは観念したように最後の引換券を差し出した。

「うぅ……3枚目のお願いです。元のトレーナーに戻ってください……」
「……なんかこういう話あったよな。猿の手だっけ」
「おかえりトレーナー……戻ってよかったぁ」

いつも通りに戻ったトレーナーの表情を見て、タンホイザは深くため息を付いた。

「はぁ……でも結局引換券は無駄になっちゃいました……」
「ごめんごめん、ちょっと悪ノリし過ぎたよ。お詫びに何でも言うこと聞くからさ」
925/03/15(土)20:05:44No.1292581855+
「……じゃあ、前から気になってたお店があるんですけど……」
「もちろん付き合うよ」
「その後ケーキバイキング行っても……?」
「良いよ、今日くらい羽目を外しても」
「……今日はトレーナーのお部屋に泊まっても良いんです?」
「う、うん……良いよ」
「えへへ……やった!」

タンホイザが機嫌を直すと、トレーナーもつられて笑う。
どうやら明日以降も、ホワイトデーが続きそうだ。
1025/03/15(土)20:06:37No.1292582211そうだねx1
「……ところでトレーナー、やっぱり会ったばかりの頃に引換券使っても、ああいう反応になってたんですか?」
「そりゃ会ったばかりの頃はなぁ」
「……じゃあ、何年目くらいから引換券が通用するようになったんです?」
「……それはノーコメントで」
「むーん! 引換券残しておけばここで使えたのにぃ!」
「後の祭りだな……」


終わり
1125/03/15(土)20:07:58No.1292582783そうだねx2
かわいいな…
1225/03/15(土)20:54:49No.1292601912+
タンホイザはかわいいなあ!


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