目を開くとそこは見慣れた学園だった。スマートフォンで日付を確認すれば2月14日。まさにバレンタイン当日だ
「ふむ、よく出来た映像だな。まさか学園のVR装置の横流しじゃないだろうな……」
そんなことを考えながら廊下を曲がると、目の前にひとりの人影が見える
ひょろりと背が高くどこか頼りないシルエットは、自分が一番よく見慣れた姿だ
「ちょうどいいところにいたな。おい──」
「おっ！ やっほー」
こちらが声を掛ける寸前、影から別の声がその人影──トレーナーを呼び止める
スーツ姿の若い女性、襟にはトレーナーバッジ、確か以前トレーナーから同期だと紹介された記憶がある
その女性は馴れ馴れしい様子でトレーナーの方を小突き、彼もまた慌てるでも照れるでもなく手慣れた様子であしらう
「どう？ 戦果の方は」
「戦果……？ ああ、そういうこと。いつも通りだよ、事務員さんが配ってくれたやつ」
「あれっ、あの子からは？」
その言葉に思わず身体が震える。あの子──というのは言うまでもない。自分のことだろう

「まだ貰ってないな。こういうことには生真面目な子だからな、多分あとでくれるんじゃないか」
「そっかそっか～。じゃあお先にあげちゃおっかねぇ」
そう言うと同期の女性はトレーナーに簡素な包装の小包を渡す
「悪いね。今度空けとくから」
「期待してるよー。じゃね」
手をひらひらと振って去って行く女性を見送ると、彼は踵を返してこちらに向かってきた
思わず物陰に隠れようとするが間に合わず、彼と真正面から目が合ってしまう
「あれ、エアグルーヴ。珍しいねこんな時間に」
「え、ああ……いや……」
彼は自分の姿を認めても平然と、そう、まるで何事もなかったかのように話しかけてくる
仮にいまの一部始終を自分に見られていても、それをまったく気にしていないかのように
そうだ、あの女性と話しているときのトレーナーの顔は、自分と話すときのそれとは違っていた
あれは大人同士の会話で、ならば彼が自分に向ける表情は──

「──っ！……はぁ……はぁ……」
気が付けば自分は蓋の開いたトロフィーの中で息を荒げていた
額の汗を手で拭い、ふらつく足を支えながらトロフィーから出ると、静かに呼吸を繰り返して気の昂ぶりを鎮めていく
「……馬鹿馬鹿しい」
最後に恨めしげにトロフィーを睨みつけて階段を上り、トレーナー室に向かう
いつものように仕事をしているトレーナーに挨拶をしてソファに腰を下ろす間も、心拍数はなかなか下がらない
なんてことはない、下らない映像を見せられただけだ。それだけのはずだ
「おい、貴様。14日は予定はあるか」
「14日？ ああ、その日は同期のトレーナーたちで勉強会を……」
「っ！？ だっ、だめだ！」
「えっ？」
「……あっ」

咄嗟に出た声は、まるで子供の駄々のようだった
その声を発した自分がどんな顔をしているか、それはこちらを見る彼の表情を見ればわかる
「ええと、何か用事があるなら空けておくよ。そこまで大事な会でもないから」
「いや……ああ、そうしてくれ。詳細は追って伝える」
対等だと思っていた。確かに、トレーナーと担当ウマ娘。その関係においてはそうだろう
しかしそれ以前に私はまだ子供で、彼は大人だったのだ
だらしないと、情けないと思っていたあの”たわけ”の様子だって、年下の学生相手に戸惑っていただけかもしれないのだ
そんな彼を見て自分は何を思った？ 何を浮かれていた？
「……たわけはどっちだ」
運命の日まで残された時間はわずかだ。ならばせめて子供らしく、精一杯の駄々をこねるしかないのだ

元来トロフィーはウマ娘の幸福を祈るための物であり

>元来トロフィーはウマ娘の幸福を折るための物であり

たわけずにストレートでいくのが大吉

また出たのか特級呪物

最近特級呪物が復活してきてるな…

>>元来トロフィーはウマ娘の幸福を折るための物であり
ガチで悪霊の奴だ！

破壊を目的にすると消失する
いざ破壊しても並行世界から無事な事象をシフトして再生する
こいつを早く封印しろ！

一応トロフィー使ったことで覚悟決まって好転しそうなのはいるから…

荒療治すぎない？

ネイトレは責任持って始末しろ！！

改造したダスカのせいじゃなかったっけ…

素直になれ…

誰も悪者にせずに有り得る未来を見せるだけだから邪悪は一切無い

>誰も悪者にせずに有り得る未来を見せるだけだから邪悪は一切無い
そうかな…そうかも…

悪意はないんだよ悪意は
トロフィーに悪意ってなんだよって話なんだが

処分しようとしたら姿をくらますのヤバすぎない？