雪国でジャムとぬくまる話 ――よいしょ、よいしょ……これでよし。〇〇さん、〇〇さーん! 雪薬草集め、ノルマ達成しましたー! 雪国ギルドの方に持っていけば、朝のお仕事は終わりですよー! ……はい! だいぶあったかくなってきましたね。行きましょう!  ギルドの場所も、もう私が案内しなくてもバッチリみたいですね! 懐かしいなー。〇〇さん、初めてここに来た頃は、息が白くなるー、ってびっくりしてましたもんね。ふふふっ! 届け終わったら、お待ちかねのダンジョン攻略ですよ! 案内はこのジャムにお任せください! ******  わわわ……ちょっと、急に話しかけないでくださいよ!? この雪山洞窟、足場がとーっても滑りやすくて、壊れやすいんですよ! しかも一度滑ったら止まれないので、また入口から登り直しになっちゃいますからね!? ……いや、話しかけられたのが嫌なわけではなくってですね。 凍ったダンジョンの滑りやすさを甘く見て、ケガする人は多いので。 滑って転ぶと、だいたい後からすごい痛くなってくるんですよ。  私ですか? 平気ですとも! 私は雪国出身ですよ? 雪の上や氷の上を歩く時の歩き方ってものを、ちいさーいころから覚えてるので! 誰かが転んだ時でもすぐに起こしてあげることだってできちゃいます! ……それとも、私の手を握りながらじゃないと歩けなかったりしちゃいます?  ……はぇ? ”かわいい”? えっ、え!? 急になんっ……あっ。  ウワーッ!! ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――  うう、まだひりひりする……〇〇さーん、こっちにも雪しっぷ貼ってください…… “恰好が無防備すぎないか”? あっ……だ、だだ誰のせいでケガしたと思ってんですか!! 怒りました! 今日の薬草の分の報酬は渡してあげません! ※山分け済み とにかく、着替えたらご飯にしますから!  ……そういえば最近、ふとももが大変なことに…… ご飯の量、ちょっと減らしたほうがいいのかな…… ******  いただきまーす! ……”おいしい”? そうでしょう! 雪国と言えば、あったかい汁物です! お肉の油が熱を閉じ込めてくれるから、芯からあったまるんですよねえ……野菜も多ければ多いほどいいです! 特に『それは本当ですか!?』すみません、魔ヘラジカの処理が甘かったみたいです…  ねえ、〇〇さん。私って、あんまり強くないじゃないですか。 ……わかってます。強くなりたいって気持ちも、それなりにはあるんですけどね。 でも、勇者になって魔王を倒すぞー、とかはちょっと荷が重いかなーって。  〇〇さんは、これからもいろんなところを旅するんですよね。 きっと、私じゃ想像できないくらい厳しい環境で、強い敵と戦うんだろうなあって思います。 ……でも、私なら……寒い場所なら、ふつうくらいに活躍できますよ。 だから、これからも思い出した時に、私と……なーんて、思っただけです。 お気になさらないで――  ”一緒に邪神を討伐したいから、これからもよろしく”……? ……ぷっ。あはは! 邪神って、おとぎ話でも聞いたことありませんよ! ――っ、約束、ですからね? ******  ……おはよう、ございます……すみません、朝弱いので…… 朝食は、トーストですか……って、ジャム全然使ってないじゃないですか。 このくらい使っていいんですよ……なんですかその目は。  さて、雪かき用のスコップを……待ってください〇〇さん。 まさかその魔プラスチックのスコップで挑むつもりですか? はー……まだまだですねえ、ほんと……ふふっ! 雪国でジャムとぬくまる話 おわり