そこには人の数だけの笑顔がある。居並ぶ男達は皆唇を吊り上げ、笑っていた。 よく日に焼けた彼らの肌は、皮膚の下にみっちりと詰まる筋肉の凹凸を汗に輝かせ、 ちょうど訓練上がりの軍人が、互いの肉体美を見せ合っているような光景である。 彼らから頭二つ分は小さい紅一点も、おおよそ笑顔に分類できる貌ではあった。 そして全裸体であるということまでは男たちと同じなのだが――違いと言えば、 その肌は男たちの浅黒い肌に反比例して白く、筋肉量は比較にもならない。 彼女の肉体は、雌らしくむちむちと脂肪にて丸く柔らかな曲線を描いているし、 何より、子供の頭部ほどもある乳房はだるんとだらしなく重力に引かれて、 地面に正対するところを、途中の出っ張りに引っ掛けることでようやくそれを逸していた。 端的に言えば彼女の腹部は、大きく膨らまされていたのである――誰によってか? 女が長らく彼らの玩具として扱われてきたであろうことは、その表情を見ればわかる。 男たちは子供がお手玉を弄ぶかのように、掌からこぼれるほどの彼女の胸を揉み回し、 その先端に通された下品な金色の金輪をこねくり回しているのもそれを裏打ちする。 男たちが自身の乳房を玩具にしているというのに、女はわずかに眉を八の字にするだけで、 彼らに対して、明確な抵抗や叛意を示すようなこともなかった。 眼鏡の下の青い瞳は、ふと遠い目をするが――その先に映っているのも、 やはり同じく筋骨隆々の、何の情け容赦もないような下品な笑顔だ。 身重の身体を抱えて、その包囲から抜け出ることはほとんど不可能であったろう。 何より既にその肌には、勃起した複数の肉の槍が突き付けられているのだから。 赤い髪は、それぞれに短く切り揃えられた坊主頭とは対照的に、腰まで届くほど長い。 艶々として、彼女がそれをどれだけ入念に手入れしていたかを饒舌に語っていたが、 男たちはそれを性器を拭くための布か何かのように乱暴に引っ張って、汚す。 絹のような肌触りが心地よいのだろうか――やはり、下品で嗜虐的な笑顔で。 強く引かれて、生え際がぎゅっ、ぎゅっと揺れると――当然、彼女の被る白い帽子も、 鼻の上に品よく掛けられた眼鏡もぐらぐらと揺れ、今にも落ちそうになる。 それをただ、少しだけ困ったような笑顔で女は元の位置に戻すものの、 せっかく空いている両手は髪を掴む手を払うでもなく、男たちを押し退けるでもない。 ただ、彼らの無体の一切を――甘んじて受け入れているのであった。 ただ男たちの手が胴の中心、大きく膨らんだ臨月胎に近付くと話は別だ。 乳房を片手で持ち上げて――実に重たそうにおどけた素振りで――腹部を晒させると、 ばちん、ばちぃん、と筋力に物を言わせた平手打ちを食らわせてやる。 別の男は、彼女が腹部を打たれているその反対側で、もう一つの乳房を乱暴に引っ張り、 金輪ごと乳首をぎちぎちと引き伸ばす――先端からは涙のように母乳が垂れる。 然り、彼女は既に複数の赤子を彼らによって孕まされ、産まされている。 無為に垂れた母乳も、彼女の与えられた独房に転がされている赤子たちが吸うものだ。 ただ、妊娠の回数と出産の回数はぴったりとは一致しない。 彼女の無抵抗は、後者を前者に近付けようという涙ぐましい努力の一環である。 “第一子”が産声一つ上げられぬままに、単なる肉塊として彼らに処理された時に、 女の中の反骨心は、罪悪感によって永遠に封じ込められてしまったのである。 あと一月――いや、半月。腹部の張りと痛みから、耐えるべき期間を逆算する。 出産直前、酷い時には出産の最中にも、男たちは平然と彼女を凌辱するものの、 いざ生きたまま産んでしまえば、少なくとも一定期間の平穏は担保される。 それが彼らとの間の唯一の契約であったし、彼女がそうして孕み袋としての価値を保てば、 同じように無体に扱われている教え子――家庭教師として面倒を見ていた少女たちの、 生命を守ることにも繋がるのである。大人として、耐えないわけにはいかなかった。 それが無力な雌肉に堕ちた自分の、最後の砦であったから―― ありがとうございます。女は男たちに何をされてもまずそう言う。 次いで、何に感謝しているかの説明もだ。臨月胎への執拗な平手打ちは、 出産を直に迎える自分への応援、という扱いになった。侮蔑的な笑い声があちこちで。 さらなる“応援”をすべく、一人の男が彼女の背後から羽交い締めにして軽々と持ち上げた。 そしてまた別の男が、高々とそそり立つ性器を見せつけるようにして近付く。 しかしすぐに挿入をすることはない。彼は乳首同様“飾り”の付いた女の陰核を、 ほとんど潰しかねない握力で思いっきり握る。喉から哀れな悲鳴がこぼれるが、 絶叫にも近い声で、彼女は辛うじて感謝の言葉を述べた――理由は?と問われても無反応。 男はげらげら笑いながら、それでも防衛反応として濡れ始めた膣口を薬指で弄り、 むせながら、濡らしてくださってありがとうございます、と呻く女をまた嗤った。 体躯に比例して性器も長く、太い。挿入前に彼がその大きさを確かめるため、 彼女の臨月胎にぺたりと添わせると、先端は優にぷっくり膨らんだ出臍を越えた。 当然、それを挿入されては赤子に障る――のだが、彼女はただ微笑むだけ。 優しくしてください、と言っても彼らがその通りにしてくれたことは一度もないし、 三度目の妊娠の時は、まさにそれによって出産中に邪魔をされたのだから。 彼らにとっては、わざわざ安全に産ませてやる義理など何一つない。 玩具を無駄に壊せば損、という計算だけは働くが、他にも“予備”はある。 ただ、あれらをこの女ほどに“育てる”のは手間だから、というだけのことに過ぎない。 ぼちゅり、ばずり、と痛々しい音を立てながらの強引な抽挿―― 彼女が快楽どころか激しい苦痛と圧迫感を覚えていることなど彼らは気にせず、 己の性器をねじ込むための穴としてだけ見ている。そして根元までが収まりきらないと、 彼らはその“努力不足”をなじり、しっかり奥まで飲み込めるように拡げてやる、と、 彼女に恩を着せるような口ぶりで凌辱を正当化するのであった。 無論、挿入されている相手のことだけ考えていいというわけではない。 勢いよく、重たげに揺れる両乳房が不意に横から掴まれて、散々にこね回されたり、 乳首にむしゃぶりつかれて母乳を啜り上げられたりしたら、 それに合わせて、胸の張りを解消してくれてありがとうだとか――母乳を無駄にせず、 飲んでくれてありがとうだとかの言葉を、適切に吐かねばならない。 それをやり損ねれば、どれだけの追加の“教育”がなされることか。 第二子の出産予定日前夜からの“合宿”は、そんな些細な失敗を元に行われたものだ。 一通り男たちが満足し終えると、ぼろ人形のようにくたびれた彼女は、 そのうちの誰かに背負われて独房に運ばれて、ぽん、と投げ捨てられる。 そこから次の役目までの僅かな時間だけが、彼女に許された平穏だ。 だが寝ているわけにはいかない。身体を張って早く終わらせてきた以上、 母を待って淋しさに泣き喚いていた我が子らをなだめてやらなければならないのだ。 幼子たちは、弟や妹を産むためにどれだけ母親が苦痛に耐えているかも知らず、 親の役目を放棄する彼女をなじる。ようやく寝かしつけて意識が途切れそうな頃には、 男たちが檻にもたれ掛かって、煙草をふかしながら時間潰しをしている有様だ。 生徒たちをこんな目に合わせてはならぬ、と彼女はそれでも無理やり立ち上がり、笑う。 なんとか第五子の出産にまでこぎつけた彼女は、引き連れて来られた場に、生徒を見た。 数年経って背は伸びたが、その顔つきを見間違えるわけもない――表情に生気はない。 まだ十代の肉体を彼女同様に酷使され、雌としての部分を強引に開拓されて、 若い肌には取り返しの付かない妊娠線と乳首の色素沈着が見える。 それでも女は、男たちに向けて震えた声で感謝の言葉を述べざるを得ないのであった。 ――私の代わりに生徒を教育してくださって、ありがとうございます。