マミーマミーとクリスマスケーキ  あまいクリームと美味しいフルーツをふわふわのスポンジに乗せると幸せがつくられる。私たちは甘いものがだいすき。おいしいのはもちろんの事、食べるだけでなんだかほわほわとした気持ちになれるのはきっとわたしもぼくもおれもあの子もその子も甘いものが大好きだったから。  クリスマスにノルチアに誘われてマミーマミーはお城の広いキッチンにやって来た。様々な香りが漂っていてその場にいるだけで何だかうきうきとした気持ちになる。ふんふんと香りを嗅ぎながらノルチアに着いていくとテーブルの上にはふんわり焼けたスポンジに真っ白なクリーム、赤いイチゴが並んでいた。 「ノルチア、これは…?」 「折角だからクリスマスのケーキを一緒に作ろうと思ってね?最後の仕上げが残っているの」 「ケーキ!私たち、にも出来る、かな?」 「ふふ大丈夫よあとはクリームを塗ってイチゴを乗せるだけだからきっと貴女たちにもできるわ」 「なら、頑張ろ、うかな?ノルチアも、いるからだいじょーぶ、だね!」  マミーマミーはノルチアにエプロンを着けてもらい、絞り袋を手に取った。 「む、むむ…!」 「マミーマミー難しいなら変わりましょうか?」 「ん、もうちょっと、だけ頑張る」  片腕だけではうまく絞れず苦戦していると何処からか(窓が割れていたのだろうか)ばさりとマミーマミーの肩にトリトリックが止まった。片手にはクリスマスツリーの飾りが引っ掛かっており、ピカピカと光っていたから気に入って何処かで取り替えて来たのだろう。 「うわ、わ!トリちゃんか、びっく、りした」 「あら見慣れない怪鳥ね」 「え、と私たちの、森のお友だち、なの」 「そうなのね。なら大丈夫かしら」 「だいじょーぶ、だよ!えへへトリちゃんも、手伝って、くれるみたい」  トリトリックは絞り袋を器用に持ち上げる。どうやら上手くもてないマミーマミーの代わりをしてくれる様だ。ぴったり息の合った連携でノルチアが支えるスポンジの上にクリームが塗られて行く。 「よい、しょ、よいしょ」 「上手よマミーマミー」 「出来、た!」  スポンジは少しだけ形が不恰好だが真っ白に染まりマミーマミーにとっては会心の出来だった。 「あと、はイチゴを、乗せるだけ、だね」 「えぇ最後まで頑張りましょうね」 「うん!」  イチゴを摘んでそーっとクリームの上に乗せてんバランス良く崩れない様にゆっくりと手を離す。ひとつ、ふたつ、みっつとどんどんとケーキに彩りを灯していく。 「……出来た!ノルチア出来た、よ!」 「えぇ、良く出来てるわマミーマミーとっても美味しそうね」 「えへへ、誘って、くれて、ありがとねノルチア」  マミーマミーにクリスマスの用事は無かった。明るく煌びやかになる街に行くにはマミーマミーは不気味すぎたし、街でサンタさんやお父さんお母さんからプレゼントを貰える子達を見るのも何だか悲しくなって嫌だった。  だから本当はクリスマスが終わるまで何処かの森でトリトリックと遊ぼうかと思ってたのだ。  だからノルチアに誘って貰ってケーキを作り楽しい時間を過ごす事が出来たのはとっても嬉しかった。にこにこと包帯の上からでもわかるくらいほっぺたが動く。 「えへ、えへへありがとーノルチア、私たちとって、も楽しい」 「そう、楽しんでくれたのなら良かったわ。じゃあいつもの場所で食べましょうか。今日の為に取り寄せた美味しいお茶もあるのよ」 「やった!あのお花畑きれいで、好き!ノルチアのお茶も、美味しくて好き!」 「ありがとう、じゃあ着いて来て」  ノルチアは出来上がったケーキを持ってキッチンを出る。庭園に行くには少し道が複雑で迷子になってしまうから逸れないようにトリトリックと一緒に着いていく。 「ケーキ、ケーキ!」 「はしゃぐと転んでしまうわマミーマミー」 「ん、気を、つける」  クリスマスはいつも寂しくていやだったけどこんなに楽しい時間なら来年のクリスマスだって楽しみになって来た。マミーマミーは微かに覚えているいつかの誰かに歌って貰った歌を歌いながら魔王城の廊下を軽やかに跳んだ。