『闇の闘士の二人が『????』で遊んでみた。』 「やはりそういう事なのね…」 開口一番、橘樹 文華がよくわからない事を口走った。 「橘樹さん……えぇ、そういう事です」 などと千年桜 織姫もよくわからない受け答えをしたところで場面が切り替わる。 ーーーーーーーーーー 「はい、というわけで皆様こんにちは…千年桜 織姫です」 「橘樹 文華よ…ねえ、冒頭のやり取り毎回必要なの?」 「お約束と言うやつです。恨むなら自分の名字とそのポンコツっぷりを恨みなさい」 「私はポンコツじゃないわよ!……それで、今日は誰のフィギュアをレビューすればいいのよ」 「話しが早くて助かりますわ。でも今日はフィギュアじゃないですのよ。今日紹介する商品はこちらよ」 織姫が机の下から取り出したのは2体のプラモデルだった。 「フィギュアライズスタンダードイモゲンチャー『千年桜織姫』、同じく『橘樹文華』です」 「ナ、ナンダッテー」 「……橘樹さん、もう少し驚くふりをしてくれませんこと?」 「だってあんなにたくさんのカメラで全身あんなところやそんなところまで余すことなく撮られたもの…」 「言い方ぁ!……失礼。製作に際して私たちも協力し、プロポーションを忠実に再現いたしました」 「織姫さんの愛くるしさがよく再現されているわね」 「……言い方に含みを感じるのは気のせいかしら?」 「そんなことないわよ?」 「……まあいいですわ。まず私の方から見ていきましょう。私の凛々しさがよく再現されていますね。表情パーツはタンポ印刷済みのものが1つとデカールを貼るための無地の顔パーツ2つ付属しています。これを付け替えることでさまざまな場面を再現できますわ。そして何より、先日発表されたフィギュアライズスタンダードアンプリファイド『ダスクモン』の腕や足を接続するための関節パーツが付属します。これを使えば、私の部分スピリットエボリューションを再現できますわ」 「再現するためにダスクモンも買わなきゃいけないってこと?阿漕な商売ね」 「橘樹さん、一応宣伝なので言葉を選んでくださる?……こほん、もちろん、私単体でも広い稼働範囲でさまざまなアクションポーズを取らせることができますわ」 「次は私ね。これは……頭ね。髪が動くわ」 「頭ですわね。髪が動くので稼働に関しても申し分ないです。表情パーツも私のと同じくタンポ印刷済みのすまし顔とデカールで焦り顔、泣き顔が再現できますわ」 「なんで表情のチョイスがそれなのよ!?……あとは、腕ね。よく動くわ」 「腕ですわね。ハンドパーツも4種類付属しています。付属のディースキャナーを持たせて進化ポーズを取らせることもできます」 「それと……足ね。スカートが邪魔であまり動かないわ」 「それはまあプラスチックなので……スカートも2種類付属するので、付け替えれば稼働範囲も広がりますわ」 「……ねえ、これ私のほう需要あるの?織姫さんのほうがよく動くし」 「あら、あると判断されたからこうして製品化していますのよ。あなた動かなければ見てくれはいいのですし、需要はきっとありますわ」 「それ褒めてるのよね?」 「ええ。あなたの女性らしい魅力は素直に羨ましく思いますわ」 「そ、そう?それならいいのだけど……」 (ちょろい……) 「いやぁ、モデラー目線から見ても需要あると思いますよ!長髪にロングスカートとか稼働に影響が出るデザインはどこも敬遠しがちなので!改造素体として丁度いいです!それにしてもいい出来ですね。合わせ目も極力出ないようにしていますし、ゲート跡もなるべく見えないところに配置してます。これはご飯2杯は食べられるランナーになるでしょう。でもタンポ印刷の精度は〇トブキヤのほうが上ですね。そこは一日の長といったところでしょうか?」 突然割って入った琴吹彩音に文華は仰天し、織姫はそれが知り合いであったことに頭を抱えた。 不意の事態に撮影スタッフが叫ぶ。 『あいつ立川からの回しものだ!逃がすな!』 「おっと、失礼しました〜!」 ひらりと手を振って逃げる彩音を追いかける撮影スタッフ。 しばらくして肩を落としながら帰ってきた様子を見ると逃げられたようだ。 撮影が再開される。 「さて、ここからは提供されたサンプルを使って私たちで組み立ててみましょう」 「ええ?何でそんなこと……」 「説明書が読めれば橘樹さんでも……もとい、小学生でも組めるところを見せるためですわ」 『この商品は対象年齢15歳以上です』というテロップが出る。 二人は箱を開けてパーツを取り出した。 「……思ったより多いわね」 「このくらいの大きさならこんなものですよ。それよりもただ作っているだけというのも画面が持たないので少しお話ししましょうか。あれは終盤の撮影シーンでしたわね。あの時橘樹さんったら自分でスーツを着て撮影するというのに前日にサッカーで足を骨折して……」 「ちょっと、知らないエピソード捏造するのやめてもらえない!?」 「あら、こういうときは当時の裏話をするものだというのが習わしですわよ?」 「だからってあからさまに嘘みたいな話しないでもらえる!?……それにしても上手いわねあなた」 「ええ、フィギュアライズスタンダードは仮面ライダーやULTRAMANも出ていますのよ。当然作ってますわ。橘樹さん、パーツはそんなに傍で切り離さないで。抉れたり白化してますわよ。少し離れたところを切って二度切りすれば綺麗に切り離せますわ」 「面倒くさいわね……あっ」 バチンという音と共にパーツが虚空の彼方へと飛んで行った。 慌てた文華は屈んで地面を這いつくばりパーツを探す。幸いすぐに見つかった。 「……パーツが飛ぶのはメーカーの努力ではどうにもなりませんわね」 「このニッパーの切れ味が悪いのよ!手応えでこれ飛ぶって分かるもの!」 そんな文華の手元に青いグリップが特徴的なニッパーが差し出される。 「これを使えって?すごい!パーツがヌルって切れる!これなら飛んでいかないわ!……え?これを読め?『金属加工の街、新潟県は燕市に本社を構える株式会社〇ッドハンドが贈る至高にして究極のニッパー。職人が一つ一つ手作業で研いだ刃でパーツの白化ともお別れ。二度切りするだけで綺麗な断面になるのでゲート処理の時短になり作業スピードアップ』……ああ、あそこね。知ってるわよそのくらい。実家の近くだもの。じゃなくて!」 「琴吹さん……宣伝を宣伝で上書きするのはやめてもらえるかしら……」 『いたぞ!燕からの回しものだ!捕まえろ!』 隠れていた彩音がピューという擬音と共に逃げるのを呆れ顔で見送る二人。 やがて作業が進み、二人のプラモデルが完成した。 「何やかんやで完成したわ」 「やればできるものですわね。橘樹さんでも簡単に組み立てられるので、これを機にプラモデル初心者も挑戦してみてはいかがかしら?」 「プラモ初心者はそもそもこんな動画見ないと思うわよ……」 「お黙り。さて、フィギュアライズスタンダード『千年桜織姫』と『橘樹文華』は、〇レミアムバンダイの公式サイトで明日、予約開始です。合わせてフィギュアライズスタンダードアンプリファイド『ダスクモン』『レーベモン』の二次受注も開始します」 「4つも同時に予約開始なの?全部欲しい人は大変ね」 「プ〇バンにはよくあることです。そういうわけで、本日はここまでです。みなさんの予約をお待ちしています」 「ばいばーい」(棒) ーーーーーーーーーーーー 古本屋『室楽』にて。動画を見たサツキは頭痛を堪えてこめかみを押さえていた。 「今日のはいつも以上にグダグダだな……」 「仕方ないですわよ。いつもは商品紹介するだけで自分で組み立てとかしませんもの」 「問題はそこじゃないと思うぞ……」 「何で毎回私が呼ばれるのよ……」 「店主さーん!〇ビージャパンのバックナンバーありますか?」 古本屋『室楽』は今日も平和である。