『闇の闘士の二人が「S.H.Figuarts(真骨彫製法)神田 颯乃」で遊んでみた。』 「やはりそういう事なのね…」 開口一番、橘樹 文華がよくわからない事を口走った。 「橘樹さん……えぇ、そういう事です」 などと千年桜 織姫もよくわからない受け答えをしたところで場面が切り替わる。 __________ 「はい、というわけで皆様こんにちは…千年桜 織姫です。」 「橘樹 文華よ」 挨拶を済ませたところで前回に引き続き文華が疑問に思った事を口にする。 「このやり取り、前もやらなかった?前回のやつを使い回せば良いのに、なんでわざわざ撮り直したの?」 「急に服装が変わったりしていると変ですからね。重箱の隅をつつく者というのはどこにでも居るものです。」 「前回の織姫さんみたいに?」 「……では今回も早速フィギュアの方を見て参りましょう…」 織姫は文華の指摘をスルーして卓上のフィギュア一式に視線を向けた。 「前回の動画で紹介させていただいたイモゲンチャーアーツですが、この度なんと第二弾の発売が決定しました。」 「今回商品化されるのは神田 颯乃さん。 日野くんの相方である鬼塚 夏美さんではなくこの子がチョイスされる辺り、シリーズを長期的に続けて行こうという気概が感じられるわ。その意気や良し」 文華の発言と同時に『※鬼塚 光です』というテロップが画面に表示される。 「前回の日野さんの売り上げが好調だったという事でしょう… ムービーモンスターシリーズ プリンセスネオの発売も決定しましたし、明るい話題ばかりなのは大変宜しい事だと思います。」 「ムービーモンスターシリーズ………ダイナモーションはお亡くなりになってしまったのね…」 「やめて下さい橘樹さん」 __________ 場面が変わり、フィギュアのレビューへと移る二人。 「まずは全体的な印象から…… どこがとは言いませんが何か太くないですか? 確かに神田さんがアシフトイモンなどという不名誉な渾名で呼ばれている事は存じていますが、少しばかり誇張され過ぎと言いますか……本人の足もここまで太くはなかったと思いますが…」 「そう?私は好きよ。むしろもっと太くしても良かったんじゃないかしら?」 「一応真骨彫ブランドですので…。それにこれ以上太くしたらギュラゴジみたいになってしまいますよ…」 などという会話を挟みつつ、二人は他の箇所のレビューも進めていった。 「次に胸周りですが………何か色々と物凄い拘りが感じられますね。服の皺の作りとかやばいです。原型師の方は変態ですか?勿論褒め言葉ですよ」 「これは良い乳テントだわ。ただ、おっぱいが硬いのだけは残念ね…」 そう言いながら文華はフィギュアの胸を指でつんつんしている。 「軟質パーツは劣化が怖いので多用すべきではないかと……久々に遊ぼうと思ったらベタベタになっていたなどという事も珍しい話ではありません。」 「ベタベタおっぱい……そういうのもあるのね。 新しいネタの提供感謝するわ、織姫さん」 「喜んで貰えて何よりです。 話が逸れる前に次に参りますよ、橘樹さん。」 続いて織姫と文華は顔周りのレビューに移った 「……神田さんのかっこ可愛さがよく再現されているのではないかと思います…。商品ページの写真も文句無しのかっこ可愛さでしたし、何より注目すべきは表情パーツの豊富さ……今回は通常顔に加えて笑顔に怒り顔、デフォルメ調の驚き顔にくっころ顔と計5種類も付属します。 前回日野さんの表情パーツのバリエーションの少なさにダメ出しした事が功を奏したのでしょうか? 特にこのくっころ顔は私の一推しです。遊びの幅が広がって大変宜しいと思います。」 「そうね。薄い本が厚くなってへんたい宜しいと思うわ」 何やら二人が妙に意気投合したところでレビューは次へと進む。 __________ 「では皆様お待ちかね……スカートの中身を確認しましょう……と言いたいところですが、こちらについては実際に商品をお手に取ってからのお楽しみという事で……… ですが私達は一足先に拝見させていただきます…!」 力強く宣言した織姫はフィギュアの角度を変え、文華と共に中を覗き込んだ。 「…やはりと言うべきか、太股が誇張されていた分お尻も中々にボリューミーに仕上がっていますね…」 「そう?お尻のボリュームなら織姫さんも負けていないと思うけれど…」 「おい文華てめえ今なんつった」 「!?」 突如豹変する織姫の口調に驚きを隠せない文華。どうやら素の織姫を見るのはこれが初めてらしい。 「…………失礼致しました。気を取り直して続きに参りましょう…。」 「…そうね」 互いに冷静さを取り戻す事で一触即発の事態は何とか収まった様だ。 スカートの中身のレビューが再開される。 「胸周りもそうでしたが、原型師の拘りが凄まじいです…特にパンツの左側が右と比べて若干深く食い込んでいる様な造形になっているのが途轍もなくえっちです…。」 「S.H.Figuartsは対象年齢15歳以上…やはりそう事なのね」 「そこに気付かれるとは…やはり橘樹さんは一流ですね」 「当然よ」 例の如くクールな雰囲気を装ってはいる文華だが、内心ドヤっている事は誰の目から見ても明らかであった。 __________ 「すっかり造形の話だけで時間を取られてしまいましたが、次は可動について見て行きたいと思います。」 そう言って織姫がフィギュアをグリグリといじってみせる。 「日野さんとは異なり特に可動の妨げになる様なものも無いのでストレスなく遊べますね…。 足も太いながら結構動かせます。若干スカートが干渉してしまいますが、こちらについてはあるギミックがございます。 後ほど付属品と併せて詳しくご説明致しましょう。」 「それは楽しみね」 __________ フィギュア本体のレビューの次は文華による付属品の解説だ。 「……デジヴァイスよ、日野くんのものとは形状が違うわね」 前回の様に淡々とデジヴァイスの説明を終えると卓上に置き、次に竹刀を手に取る。 「見ての通り、竹刀ね。」 そして次に文華が手に取ったのは颯乃のパートナーである緑色の肌をした鬼人型デジモンだ。 「ゴブリモン、神田さんのパートナーね。 置物同然だったヴォーボモンとは違って手足が動くし、ゴブリンバットも脱着可能よ」 説明を聞いた織姫が露骨に残念そうな顔をしている。 「お生憎様。私は同じ過ちは繰り返さないの。」 「ボーボモン」 「ヴォーボモンよ」 「ボーボモン」 「ヴォーボモン」 「ボーボモン」 「ヴォーボモン」 「ヴォーボモン」 「ボーボモン」 次の瞬間、文華はしまった!?という顔をした。 してやったりという視線を文華に向ける織姫。 文華は顔を真っ赤にして涙目になりながらポコポコと織姫を叩く。 クールで頼れる先輩キャラの面影などもはやどこにも無い。 __________ 「失礼。少し取り乱してしまったけれど続きをやるわよ、織姫さん」 「そうですね、では参りましょう。」 ちょっと煽てただけでけろっと機嫌が直りやがった。マジでチョロいなこいつ…などと内心思いながら織姫は付属品のパーツを手に持つ。 「先ほど述べたスカートですが、交換用のパーツが付属します。 それがこちら…。風で靡いた様な表情が付いたものとなっています。これと取り替える事で可動範囲が広まり動きのあるポージングも可能になるというわけですね…」 織姫は少しだけ溜めを入れ、また話し始める。 「そして、なんと本商品……スカートを付けずに胴体と脚部を装着する事でスカートを履いてない状態が再現できてしまいます。 偶然の産物か、はたまた意図して設計されていたものなのかは定かではありませんがこれは嬉しいポイントですね。 残念ながら、こちらも皆様にお見せする事はできません。実際に商品を手に取り皆様ご自身の目でお確かめいただきます様、よろしくお願い致します。」 「…え?」 しかし文華は既にキャストオフ状態を再現してしまっていた。意図せずして晒されてしまった颯乃アーツのパンツ。これでは買ってからのお楽しみという売り文句が台無しだ。 「橘樹ァ!!!」 織姫の怒声が撮影スペース内に響き渡った。 __________ 「商品レビューは以上になりますが橘樹さん、如何でしたか?」 「制作陣の拘りが随所に感じられるとても良い商品だったと思うわ。前回の日野くんはスルーしたけど、これは買いね。」 「橘樹さん、買わなかったのですか?何よりまずそんな事を堂々と言わないで下さい。」 「逆に織姫さんは買ったの?前回あんなに文句を言ってたのに…」 「私は上限の6つまで買いましたよ? 前回も申しました様に日野さんの売り上げ次第ではシリーズ打ち切りなんて事も十分にあり得る話ですからね。流石に6つも要らないので2つほど逆井さんに送りつけましたが…」 「逆井くん可哀想…」 「さて……このS.H.Figuarts(真骨彫製法)神田 颯乃ですが、プレ◯ンにて既に受注が始まっています。私や橘樹さんも太鼓判を押す大変素晴らしい商品となっておりますので、皆様どうかお手に取っていただきたく存じます。」 「それでは皆さん、ばいばい」 最後に二人で画面に向けて手を振りレビュー動画は終了。今回は幾分かまともな動画になった……そう思いたい二人であった。 __________ 「などという具合にまた動画を撮影して参りました。」 古本屋『室楽』にて店主のサツキに事の顛末を話す織姫。 「動画なら私も見たぞ。お前らパンツではしゃぎ過ぎだろ…」 「実はサンプルをいただいておりまして…サツキさんも見ますか?パンツ…」 「いいよ、私は別に」 織姫が鞄から取り出したフィギュアからそそくさと視線を逸らすサツキ。 「随分と初心な反応をなされるのですね。それはあなたが本当は男の方だからですか?」 「お前…一体それを何処で!?」 唐突に核心を突いた様な事を言われ、サツキは思わず声を荒げてしまう。 「今ここで…あなたの口から、ですよ」 「…鎌を掛けたってのか」 「あなたの力になりたい…」 「……………」 「そう思って下さるであろう方を私は知っています。」 「……………いや、あんたは力になってくれないんかい!?」 「後日ここへ連れて参ります。 ただ……少しばかり気の弱い方ですので決していじめたりする事のない様、お願い申し上げます…」 織姫はそう言い残し店を後にした。 古本屋から出るや否や織姫はスマホを取り出して何処かへと電話をかける。 「もしもし、逆井さん?少しお願いしたい事があるのですが…………違いますよ、新たにフィギュアを引き取れという話ではありません。 少し込み入った話になるのですが、よく聞いて下さい………」