「恐竜型への進化?できると思うよ。」アタシの設計に参加した男に相談するとあっさりとそう言った。マジで!? 「パラサウモンとかがいい例だけど植物型から他の動物型の要素が混じったり完全に移行したりはよくあるからね。」 「でもアタシってば建造物型が混じってるじゃん。その辺どうなのさ?」そう訊くと蔵之助は顎に手を当てて少し考え込んだ。 「なるべく大型の恐竜系や植物系のデータを集めて……デジメンタルやスピリットのようなデータ構造体を構築して……。」 「ちょっと、クラノスケ?」 「そうだね、取置君やミサキちゃんに連絡して協力してもらう必要があるね。一華にも手伝ってもらって……」 マジでやる気かこの男。ちょっと大事になってない? 「誰かのパートナーになってるのは協力依頼を出して……いないのはデジタルワールドで探すか。」 そう言うとクラノスケは手持ちのスマホを操作しだした。何かメモを書いているようだ。 「後で何が必要かリストアップして送るよ。あと、ひまわりちゃんに何か希望があるか聞いておいてくれ。」 あーあーあー、マジでやるんかいこの男は。 それから暫くの間、クラノスケは豊洲に来るたびにサンワさんやミサキちゃんやイチカちゃんを連れて来てはヒマちゃんと面談を繰り返してた。 当然アタシも同席だ。 「データ集めは主に僕達で進めるけど君達の訓練も兼ねてデジタルワールドに行くのもいいかもね。」 その提案はアタシにとって好都合だった。デジタルワールドに行くちゃんとした理由があればデジ対から許可が出る。 「あとは進化する本人の意識やイメージが課題だな……暇な時に二人でこのゲームをやってみてくれないか?」 そう言ってクラノスケから渡されたのはゲームだった。 オープンワールド形式で恐竜がたくさん出てくる歴史あるサバイバルアクションゲーム、とだけ聞いた。 これのためにかなり高性能なゲーミングPCとデバイスも2人分用意された。 クラノスケの使ってた配信機材のお下がりという話だが性能的には現行ハイエンド機には劣るという程度だ。 アタシとヒマちゃんは二人同時にこのゲームを始め――廃人と化した。 とにかく理不尽な死と理不尽なバグが多い!ちょっと気分を変えようとうっかりPVPサーバーに行くと他PCから理不尽に襲われる! 心が折れたアタシは早々にマルチプレイを諦めてソロプレイモードで暫くの間続けて、ボス全撃破したところでプレイするのをやめた。 一方でヒマちゃんのほうはと言うと――ドハマリした。 大好きな恐竜を次々とテイムしてはPVPサーバーの外道な争いに嬉々として身を投じ。 ボイスチャットで女子小学生だとバレると男女問わない何人ものプレイヤーにストーキングされ。 (キャラクターが)誘拐されたり監禁されたり恐竜殺されたりし続け。 それでもめげずにプレイを続け、自分に危害を加えたプレイヤーにはしっかりと(ゲーム上で)お礼参りをしてわからせて。 気がつけば一ヶ月のプレイ時間が200時間を超えていたそうだ。 さすがにこれはまずいと思ったので一日のプレイ時間に制限がかかった。 こっちは廃人は廃人でも立派なゲーム廃人になったのである。 ……ホントにこんなことで恐竜型に進化できるのぉ? 設計者からの解説 じゃあ必要なデータを説明するね。まずは大型の恐竜系や四脚ドラモン系、ブラキモンやキャノンドラモンのデータだね。 それから植物型でかつ大型なデジモン……エントモン・トロピアモン・ペタルドラモンなんかのデータも欲しい。 あとは防御力を補完するために電気系の能力があって防御に秀でたデジモンのデータも欲しい。ボルグモンやライジルドモンとかだね。 平和島にある僕の事務所か、デジシコに移設したデジメンタル製造プラントに付属してるスキャナーを使えば一時間弱で必要なデータをスキャンできる。 テイマーの協力を得てそれらのデジモンのデータを頂けるととても楽だけど……まぁ全部は無理だろうね。 その場合はデジタルワールドに赴いて対象のデジモンを捕縛、スキャンして解放という流れになるだろう。