私は蟲惑魔…と人間をはじめ、様々なモンスターからそう言われている者である 私達、蟲惑魔は少女の姿を模した疑似餌と呼ばれる存在と私達のように本体と呼ばれる物を合わせて蟲惑魔という一つの生命体として存在している 疑似餌は皆、美少女と呼んでも差し支えない姿をしており、皆思い思いの外見や手段で獲物を罠へと誘う ある者は疑似餌を使い、手招きをして獲物を誘い、またある者は弱者を装い、獲物に助けを求めるフリをし獲物を捕らえ、またある者は自身の能力を使い獲物を呼び寄せる 私の場合は疑似餌を弱者として装い、獲物を捕らえるタイプだ 勿論、それに使う疑似餌は私が丹精込めて作り上げた物だ、控えめに言ってかなり可愛いと言っても良いだろう 見よ、この庇護欲を刺激する外見を! 目には涙を浮かべ、寂しく涙を流す私の疑似餌を! ウサギを模した可愛らしい衣装を身に纏い、森の中で涙を流し佇む少女…! これに声を掛けない者はいない! もし無視するのならそいつには温かい血など通っていないであろう 我が疑似餌ながらも、かなり気に入っている外見である と、このように皆、疑似餌にはかなりの自信を持っているが本体も忘れてはいけない 大蜘蛛の化け物や巨大植物、巨大カマキリ等もいるし、疑似餌と一緒に動く者とこちらも多種多様だ 私はというと… 見よ!この可愛いらしい外見を! 害の無い愛くるしいマスコットの姿を! 触り心地も良く、疑似餌が私を手に乗せたり、抱っこしていたり、たまに私を枕代わりにして寝たりと、我らの姿を見て油断しない者などいない位だ しかし、ある日の事 疑似餌も私も肉は食べ飽きた… もっとも最近は人間やモンスターも学んだのか肉を差し出したり、精液や愛液等、私達モンスターには魔力補充の為、重要となる物を差し出してくる事が多い 一度で食べきり、次の餌を待つより定期的な食事を得る方向に変わって来ているようだ 何か良いアイディアは無いかと思い獲物を待っていると1人の女性が疑似餌に近付いて来た 私の疑似餌の可愛さのお陰であろう、疑似餌はその女性と話を始める どうやら疑似餌を迷子だと思い保護する気のようだ 顔付きからしてちょっとおっとりしていて、外見から分かる通り母性の強い女性のようだ ここでは危ないし、彼女と一緒に街に行かないかとの事、そこには美味しい食べ物や甘いお菓子等もあるそうだ 甘いお菓子…蟲惑の森では中々手に入らない代物であり、時折研究者達が落としていく事でしか手に入らない物だ その提案に疑似餌は乗り気のようだ、仕方ない、私も疑似餌と一緒に彼女についていくとしよう …あれから疑似餌と私と女性は旅をしている 女性の目的は行方不明になった「マスター」なる人物を探す事のようだ 疑似餌も今では、すっかり彼女に懐き今ではお姉さんと呼び慕っている そして今日も… 「クラリアちゃ〜ん、おやつ出来ましたよ〜♪」 「やった…!お姉さん…!今日のおやつは何…?」 「今日は私もクラリアちゃんも大好きなパンケーキですよ♪」 「…!パンケーキ…!バターとシロップもいっぱいかけて…!」 と、このようにすっかり懐いてしまっている 「はい♪うさぎさんにもパンケーキですよ♪」 本体は私の方なのだが…どうやら彼女は私の事を疑似餌のペットかなんかだと思っているようだ 彼女は私が食べやすいように切れ目を入れたパンケーキをお皿の上に載せてくれた 私は口を開けてパンケーキを頬張る、当初は私の食べ方に驚いていた女性だが、私の事を「そういう種類のうさぎさん」だと思っているようだ 疑いもせずに、なぜそういった方向になるのか少し心配にはなる まぁ…疑似餌も彼女に懐いているようだし、彼女と疑似餌だけの旅では心配だから私も、もうしばらくはついて行ってやろうとは思う 私は強いのだからな!