情報さえ掴んでいれば、簒奪の魔術は魔人であろうと獲物を逃さない。 人の域の魔法使いであれば、情報を引き出す程粘れるだろう。 ただ、正体不明、情報の無い魔人による速攻には、私はずっと無力だった。 表向きは埠頭の空き倉庫。我が商会の末端の末端たるこの場に、何を聞きつけたか魔人が 幸いにも名も知らぬ魔人は私の正体を知らない様子、非戦闘員の魔法使いが無謀にも抵抗してきたとしか思っていないらしい。 なんとか顧客は逃がすことは出来たが、シビアな世界だ。これでは二度と取引はしてもらえないだろう。一般人は金払いが良いというのに… 襲撃犯は吞気に金目の物を漁っているが、生憎お前の襲撃で金目の物はとっくにお釈迦だ。 屈辱ですらある僥倖を噛みしめながら、私の懇意の取引相手に呼びかける。 損に大損を重ね、挙句に無駄な取引をすることになった。 せめて、あの男の情報くらいは… 突然、人口の灯りが魔人を照らす。 光の出どころは私とそう変わらないように見える少女。所属を示す腕章は、私に面倒事を思い起こさせる物だった 「451機関です!無駄な抵抗はやめてください!」 気が着くと、泣きそうな顔で彼女が私に呼びかけていた。どうやら気を失っていたらしい。 451の彼女は犯人を取り逃したことを謝罪していたが、あの男の仕業だろう。 途中から私を徹底的に狙ってきたので、タネは丸わかりだ。 それよりも問題なのは451の方。今は彼女一人だが、本隊に捕まったら話が面倒になる。 「いいんだよお嬢さん。助かった、今度会ったらお礼をさせてくれ」 無事な商品は一旦後だ。もう二度と会わない事を願いながら、そそくさとその場を後にする。 数日後、街角で彼女に気付かれ、流行りの店でお礼をしたのはまた別の話。