貴女のせいだ。 「シーザリオさん、って言うんですね? はじめまして! スペシャルウィークです!」  どうしてあの人にこんなに心焦がれるのか、自分でもわからない。初めて会った時から、前世で運命的な出会いをしていたとしか思えない程の、胸の高鳴り。 「わからないことはなんでも私に聞いてください! 私、先輩ですからね! ……え、問1の解き方? それは……えへへぇ」  明るくて、優しくて、直向きで。ちょっと天然みたいな可愛いところも見せたかと思えば、レースの時には誰よりも格好いい顔を見せる。全員に愛されて、全員を愛する、ウマ娘。 「わぁ! 今度初めてレースに出るんですか!? 絶対応援しに行きますね!」  そんな貴女を、いつも見ていた。貴女のことをずっと、目で追っていた。最初は憧れだと思っていた。ただ単純に、純粋に、素晴らしい先輩だと。そう思っていた。 「シーザリオさーん! けっぱれー!」  でも、そうじゃなかった。私が貴女に抱いていたのは、そんな綺麗な物じゃなかった。 「凄い! 流石シーザリオさん! おめでとうだべー!」  だって、レースが終わった直後、感極まった水着の貴女に抱き締められた時。  ーーー慾しい。心から、この人が慾しい。そう思った。  たとえどんな手を使っても。貴女の夢を手折ることになっても。全世界の人々から、非難され石を投げられたとしても。貴女が慾しい。貴女の全てを蹂躙し、その可愛らしい顔を快楽に歪ませ、形の良い胸とその頂点を独占し、熱く湿った蜜壺に私のハロン棒を挿入れて孕ませる。前だけじゃない、後ろの穴だって私の物だ。貴女の肉体で、私の指先が触れてないところなんて一つも無い状態にしてやる。そして、思う存分貪ったら、今度は貴女の番。嫌がる貴女の上に無理矢理跨がって、顔に愛液を擦り付けて、貴女を雌から雄に変えてやる。理性の欠片も残らない程に興奮した貴女に組み伏せられ、身体中に噛み跡を残され、貴女の因子を一滴も零さぬよう飲み干して、貴女の子種を授かる。どれだけ拒否しても、どれだけ拒絶しても、絶対に許さない。どれもこれも貴女のせいだ。貴女が悪い。貴女がいけないんですよ、お父さんーーー 「……違う」  そうじゃない。私だ。私が悪い。大切な人を巻き込んで。大好きな人を壊して。歪な家族関係を作り上げた。全部私だ。私がやったんだ。私のせいなんだ。許して。許してください。ごめんなさい。こんなつもりじゃなかったんです。ただ私は、お父さんが慾しくて。それだけだったんです。なのに。どうして。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。 「……ザリオ?」  その時。悪夢に魘される私の頭を、裸の胸に抱き寄せ、優しくゆっくりと撫でる手。言うまでもなくそれは、隣で眠るお父さんの腕だった。 「どうしたんですかザリオ……? 怖い夢でも、見ちゃいましたか……? 大丈夫ですよ……お父ちゃんが、いつだって傍にいてあげますからね……」  夢うつつな瞳で、それでも私を見て微笑みながら、いい子いい子と頭を撫で続ける。そのまま、寝惚けた声で私の耳に囁いた。 「ザリオも、ブエナも、とっても良い子……。私の、自慢……。私は家族3人水入らずで過ごせて、今とっても、幸せなんですぅ……」 「お父、さん……」  私の目から、知らず知らずのうちに涙が溢れ出していた。そのまま、お父さんの胸に顔を埋める。大好きなお父さんの匂い。大好きなお父さんの温もり。心から安心する、お父さんの身体。  あぁ、本当にーーー 「貴女のせい、なんですからね……お父さん……」  人を愛することが罪だとしても。幸せになることが罪だとしても。  今はまだ、この夢に微睡んでいたい。  願わくば、永遠に。