ブレイクザワールドから始まった戦争も終わり、一応の平和が訪れた。 しかし世界はまだ混乱の中にあり、ロゴスが力を失い、彼らの抱えていた私兵達が、デュランダル議長が倒されたことによりかつてのザラ派残党のように脱走兵がテロリストとなっていた。 「我らはデュランダル議長のデスティニープランを否定した世界に報復する!」 赤道連合領域の孤島、座礁した揚陸艦の中で、デュランダル派のザフト軍人たちが集結していた。 彼等の後ろにはジンワスプや、ディンが並んでいたが、一機だけ異質な機体がいた。 「DIアガダ、これが手に入るとはな」 リーダーを務める男の視線の先には、ザフトが先の大戦で投入したインパルス、その派生機がいた。 この機体はデスティニーシルエット計画を民間に移管した後に作られた、デスティニーインパルスR用に作られたインパルス、その随伴機であるDIアダガであった。 残念ながらデスティニーシルエットRは手に入らなかったので、IWSPが装着されていた。 「貨物船にディンを乗せろ、プランを否定したオーブへ襲撃し、先導する!」 「おぅ!」 彼等は自らの正義だけを頼りに、復讐を始めようとした、その時であった。 『イワン司令、ミラージュコロイドデクスターに反応!』 「なんだと!」 敵襲の知らせ、直後に揚陸艦の近くで待機していた貨物船から火の手が上がる。 「ちぃ!どこの連中だ!」 リーダーはアダガに乗り込む、部下たちもそれぞれMSに乗り込んでいく。 「ワスプ隊は後方要員と共にガダルカナルの同士達と合流せよ!ディン隊は私と襲撃者を」 『了解』 『ご武運を!』 水中を行くジンワスプは整備士をはじめとした支援要員を別の場所にいる仲間の元へ、ディンはリーダーのアダガと共に迎撃に出る。 「NダガーNか?だがそれなら空から探せばいい」 ミラージュコロイドを使う量産機として彼が思い浮かべたのは連合のNダガーN、ロゴス壊滅により多数流失していたはずである。 燃える貨物船の上空で、使えるセンサーを総動員し、違和感を探している時であった。 『隊長!』 「デミトリー!」 左にいたディンが輪切りにされ、貨物船に落ちていく。 間違いなく、ミラージュコロイド機による仕業である。 「どこだ、どこにいる!」 腰の実体剣を引き抜き、身構える。 一瞬の煙の乱れを、リーダーは見逃さなかった。 「来る!」 実体剣をX字に構えると、それが何かと激突する。 金属がぶつかり合う音が響く、それを見て2機のディンが見えない敵に迫るが、コクピットがひしゃげ爆発し、撃墜される。 「あっという間に、スティレットか!」 胸部CIWSを放って見えない敵と対峙する、相手は貨物船の舳先に降り、ミラージュコロイドを解くと、そこにいたのは会いたくない相手であった。 「マガノイクタチのブルーフレーム…サハクの懐刀か!」 タクティカルアームズを持ち、マガノイクタチを背負うアストレイブルーフレーム、オペレーションフューリー、メサイア攻防戦で多数の仲間を殺した、ロンド・ミナ・サハクの懐刀。 リーダーの男は、インパルスは実体剣を握りなおす。 「襲撃叶わずとも、ここで貴様を殺せれば、同士達も動きやすくなる!」 リニアガンの叩き込むも、ブルーフレームは後ろへとバク転し、船から電力を吸い取ったのか、再び空へ上がる。 「その装備では、電力は心もとなかろう!」 タクティカルアームズを右手の実体剣で受け止め、左手の実体剣を振り下ろす。 だがブルーフレームもマガノイクタチでそれを受け止める、さらにタクティカルアームズのブースターを吹かして受けていた実体剣をもぎ取っていく。 「一本奪ったところで!」 インパルスは残った実体剣を両手で握り切りかかる、ブルーフレームは避けるが、アダガは右手に持ち替えるとフォアハンドでコクピットに掠る。 「甘いか、だが、次は!」 インパルスが再度切りかかろうとしたその時、後方から衝撃を受け、ついでIWSPが使用不能だとモニターが叫ぶ。 何事かと思えば、タクティカルアームズがIWSPに突き刺さっていた。 「まさか、遠隔操作で」 海の中に落ちたタクティカルアームズ、だが重力の制約が圧程度緩和される水中で方向を変え、アダガの隙を見て飛んできたのである。 ギリギリ浮かんでいたアダガだったが、ブルーフレームのタックルにより体勢を崩し、IWSPも分離され揚陸艦へと墜落する。 艦橋後部にめり込み、動きを止めた機体を、彼は見逃さなかった。 タクティカルアームズをガトリングモードにし、狙いを定める。 「せめて、せめて貴様だけは!」 実体剣を支えに再び立ち上がろうとするアダガを、実弾が、その中に紛れたビームが貫く。 胴体はビームで穴が開き、引き金から指を話した時、照準の先にあったのは穴だらけの艦橋と、コクピットに数個穴の開いた、灰色の人形だけだった。 「ふぅ、ギリギリで制圧できてよかった」 ブルーフレームのパイロットは、ヘルメットを脱ぎ汗をぬぐう。 オーブ襲撃計画を察知できたが間に合うか微妙なラインであったが、なんとか出撃前に殲滅できた。 『よぅ、お疲れ』 「お疲れじゃないよ、なんで僕だけに」 『しかたないだろ、お前の機体だけは言い訳が効くんだ』 彼と会話する仲のいいオーブ氏族のボンボンは、近くに潜む潜水艦で待機していた。 ブルーフレームはアメノミハシラのロンド・ミナ・サハクが用意した機体、そしてパイロットは彼女の懐刀、だから国外で行動しても戻っただけでオーブは無関係と苦しいが言い訳できる。 『それより、その機体は回収してくれってモルゲンレーテが』 「はいはい、人使いが荒いな全く」 ブルーフレームはアダガを抱きかかえると、海へと飛び込んだ。