モノガタリブレーキとモックスブルワリーが去った後のゴールドシップ120億円事件 『ゴールドシップの三連覇かそれとも他バが待ったをかける「あぁっ!?」のか ゴールドシップが立ち上がった!? おおっと立ち上がったゴールドシップ「あーっ!?」!! 出ない出ない! 6万大観衆からどよめき~! ゴールドシップが、ゲートを出ませんでした!!』 ぴすぴーす!ゴルシちゃんだぞ! 遠い昔、遥か彼方のゴルゴル星で… 阪神春天と連戦連勝のゴールドシップは前代未聞の宝塚3連覇を目指し1日564回感謝の聖剣突きや 2200mを豆腐を持って崩さず峠を攻めたりとウエハースくらいハードなトレーニングをキメていたがそれを快く思わない者がいた。 ゴルシちゃんと同じく失われしエデソを求めさすらうスペースダイオウイカの配下のイワシの小骨星人である。 ヤツらの妨害によりパドックでの1人組体操サングラス掛けの種目を断念したゴールドシップは 継承されし伝説のマグロ切り包丁と爆発性甘酒銃を心の下に隠し今宝塚制覇へ向けてゲートの中で立ち上がったのだった……。 で、そんなゴルシちゃんは今宝塚記念を走ってるゾ♡ 「ふふっ、やはりゴルシさんは想像の斜め上をロケットでかっとんでいきますわね」 ハッ!彼方から聞こえてくるこの声は! 「追込のわたくしモノガタリブレーキが先頭の景色からごきげんよう! 後方お気をつけあそばせメイドというのは長いスカートの裾から凶器銃火器鳴子を出すのが嗜みというもの! あの影を振り切って餡バタートーストにしたわたくしに死角はございませんわ! ちなみにわたくしはバター入りマーガリン派ですのでご容赦くださいませ」 おうメイド!相変わらず先頭かっ飛ばしてんな!ゴルシちゃんそれはどう考えても追い込みじゃないと思うぜ!ミルクと砂糖ありありでココアを出してくださいまし! 「これはあれですな対抗策としてチェイン召喚にて小生は生クリーム入り抹茶ラテを信楽焼のお茶碗に注いでオーバーレイ! ウマ娘仙人をいけにえに捧げお嬢とたぬちゃんをシンクロ召喚して甘酒因子継承!全適性をアップさせたデラックスブルワリーが今ここに爆誕いたしますれば!! ここでゴルシを止めなくてなんとする!さもなくば滅びますぞー!120億円が滅びますぞーー!!」 おうおうブルワリー!お前もハナ取ってにいるのか! オメーの脳内日ブル電子辞書には先行の類義語に大逃げって書いてあるみてーだな! 「こら我が友シップ、あまりトンチキをするのはおやめなさい。トンチキをやめないとトンチキしますよ!おっと客席に芦毛発見伝。あしげ……。 あっなんだ白毛かぁ残念でしたグレてテロリストになりますね……シップもゴルゴル星から電波を受け取る仕事が業績不振なら爆弾工場にバイトに来てもいいですよ」 「あらあらゴールドシップさん、あまり前ばかり見すぎているとわたくしにゲートごとギュッと捻り潰されてしまいましてよ? とはいえ元からわたくし、貴女もどなたも叩き落とすつもりでここに立っていますもの」 「もうまた物騒な事ばかり言って……ゴルシさんは複雑で煙に撒くような事を言っておきながら本心は案外明快ですもの 私たちと走れるからバカやってはしゃいでいる、そうでしょう?」 ジャスタ!ジェンティル!ヴィルシーナも! なんだいなんだい!みんな居るんじゃねーか!! くぅーこれこれ!こう木魚のように打てばどっかんどっかん響くところがコイツらのいいところなんだよな! 「小生モックスブルワリー化の危機を乗り越えて無事めでたく元のモックスブルワリーを保ちました小生はもはや真・モックスブルワリーと言わしめても過言ではなきになきになきにしもあらず! さぁ核の灯火にライターで着火いたしますぞ!!」 「Brava (ブラーヴァ)!!それでこそですわ!では、ご堪能くださいまし! わたくしたちディープブリランテ世代!兼!モノガタリブレーキ世代こと12世代の時代の寵児たちの奇天烈冒険譚はまだまだこれからですわ〜!」 「いくら著作権をクリアしてようがもう銀の魂だの言わせませんよ!そのままシップ達より先にゴール板までジャスタウェイがファーラウェーイしますからね!」 「ゴールドシップさん。かつて宝塚記念前にわたくしに言ったこと、未だに覚えてましてよ? こちらこそくるくる回して捻って潰して"おもしれえダンス"させて差し上げますわ。わたくしが手ずから…ね!」 「私だって……諦めるという選択肢は選ばない!いつだって……最初から!!」 心の芯から熱いモンが込み上げてきて神経をゾクゾクさせながら肌の表面を泡立たせる。 こいつはおもしれーことになってきた!やっぱりコイツら最高だよな!!エデンはここにあったんだ!! 同期のヤツらにレンタル中の借り大放出バーゲンセールだ!待ってろよ!…なあ! だがな!どれだけオマエらが束になってかかってこようがなぁ!阪神2200m宝塚記念…わりぃがここはゴルシちゃん劇場だ… 12世代の主役はアタシだーーー!!! 「ぶべらっ!!」 突然、顔に前のやつの脚元から飛んできた緑色と茶色いのが入り混じったなんかがしたたかにゴルシちゃんの鼻っ面にぶつかった。視界が遮られる。 「プッ……ペッペッ土飛んできたじゃんか……」 前の方を走るの足元からふっ飛んできた芝と土の塊がゴルシちゃんフェイスにナイッシューされたんだな。 追込やってるとそーいうのはたまにある。 走りながら顔を拭う。ふぅーこれで564アイズが視界クッキリになったぜ! 目にゴミも入らなくて異常なし、視界が良好に開けて、さあ加速かけっかって時に、前のウマ娘達の姿が目に入った。 「…………あーん?」 あれれー?おっかしいぞー? さっきまで前走ってたメイドとブルワリーとジャスタとジェンティルとヴィルシーナどこいった? 君のような勘のいいゴルシは嫌いだよ。12世代は我々ゴルゴル星人がUFOでキャトルミューテーションしたのさ!な、なんだってー!? 「…………。」 ……分かってんだよ。 ホントはこの宝塚記念にはアタシ以外の12世代は、誰1人として出走してないって。 1個上の世代が1人いる以外はここにいるのはみーんな下の世代で。 アタシ1人だけがハジけても、誰も笑って一緒になってバカやってくれないんだ。 気づけばモノガタリブレーキも、モックスブルワリーも、ジャスタウェイも、ジェンティルドンナも、ヴィルシーナも もう誰もトゥインクルシリーズのターフに残っていない。 もう同期の仲間は、誰もいない。 アタシ1人だけが、走り続けていた。 「っかしーなー……今日ってこんな曇ってたっけか?ゴルシちゃんミス・クラウディの称号は特に狙ってねーんだけどなー……」 そう呟いた頃にアタシよりずっと前の方でわっと歓声が沸いた。 いつの間にか誰かが先頭でゴール板を通過したらしい。 『ラブリーデイ宝塚記念制覇!かつての連覇者ゴールドシップに立ちはだかり初めてのG1勝利です!』 『その……どっちかというとゴールドシップに立ちはだかったのはゴールドシップじゃないですかね……』 走り終わった後、出迎えに来たトレーナーがこっち見てきたんで目ぇ逸らした。 そっから先はとにかくターフを後にして、フカの鉄干しくらいのピチピチさを保ったままゴルシちゃんが女子おトイレに入ると、 なんと手洗い場のところにまるでブラックホールにディス地球が目の前で飲み込まれたみてーなこの世の終わりみてーなクッソ暗い顔をしたウマ娘がいんのよ! ビービービー…レーダー受信…レーダー受信…コードネームゴルピッピ派遣員これは彼女を放っておいてはいけません…今すぐ彼女に話しかけるのです……。 言われるまでもねぇぜゴルゴル星の通信衛星班!てなわけでゴルシちゃんこれはほっておけなくて話しかけたぜ! 「よお!なんだかシリアスな顔してんな 似合わねえぜ っし!今からゴルシちゃんと一緒に1億光年先のソーラン節で宇宙を支配するスペース酒造メーカーでライト鳴子セイバーで押し潰された鉄球フォークボールをホームラン大爆発しに行こうぜ! 急な話で遠慮してんなー?気にすんなってゴルシちゃんの懐はマリアナ海溝より深いんだぜ! てかオマエよく見たら芦毛じゃねーか気をつけろよゴルシちゃんの同期には芦毛と見たらあしげ…って感じでガン見してくる奴がいるんだ本人はイエス芦毛ノータッチと言ってるけどいつ『正直いつかやると思ってました…(裏声)』ってワイドショーにインタビューされるかゴルシちゃん気が気じゃないんだよなぁ…… しかも左耳飾りじゃーん!こっちもまた同期なんだけど左耳飾り族と見たら見境なくナンパしてくる奴がいるから不審なメイドが連絡先交換を要求してきたら断っていいぞ。なんせあいつ左耳飾りならゴリラ・ゴリラ・ゴリラでもナンパするくらいなんだからな! オイオイどーしたどーした!まーだ深刻な顔して泣いてんのか!しゃーねーなー!前に貰ったねのハンカチくれてやるからこれ使って」 そうアタシは目の前のウマ娘に手を伸ばして 「いてっ」 伸ばした手が硬いものにぶつかった。 「…………あー……」 やっと気づいた。 初めっから女子トイレには他に人は誰もいなかったんだ。 クッソシリアスな顔で思いつめたように泣いてたウマ娘。 それは、鏡に映ったアタシ自身だった。 その日の晩、アタシはメイドから誕プレで貰った小物入れ(きにくわねー物ぶっ隠しゾーンつき)にしまいっぱなしになっていた、URAから前に来た『ドリームトロフィーシリーズへのお誘い』の封筒を取り出した。 きっとこのままの状態じゃ多分アタシはあんまよくないと思う。 だからそれを打ち破ってぶっ壊してよりおもしれー事をするために、コイツと向き合う日が来たんだと思う。 一歩前に進む事、何よりアイツらはそれをヨシとするだろうから。 アタシは封筒を開いた。 おわり