泣き虫狼2話    世の中には変わった好みを持っだ人がいるものだ。お化けにUFO。ほだな不思議なものに興味を持つ人は世さ尽ぎね。そすて、ほだな人たちを狙うイタズラものもいる。  今回おれが遭遇すたのは、変わり者のオカルト大好ぎカップルど、イタズラさ心血を注ぐ二人のデジモンだった。  友達は出来ねぇげんど、変な知り合いばり増えでいぐ。なんでぇ……?  ***    とぼとぼと夕暮れのキャンパスさ歩ぐ。今日おれが話すた言葉はたったの3づ。講義の回答で2づ、購買の袋いりませんで一づだ。これじゃ会話でねぐて単語だ。花の大学生がこだなにに口数少ねえことなんてある?    どさが方言を簡単さ矯正でぎるような方法はねものか。歩ぎながらも考えるごとは一づだ。このまま友達ができないと困ったごとになる。  なにしぇ世間ではGWも過ぎで夏さ近づきづづあるのだ。そうすたらすぐに夏休みだ。帰省があるのだ。もすこのまま村さ帰ったらみんなになんというのが。  友達の一人でも話しぇなげりゃ、心配されてしまう。ただでさえ村におれの他に子供がいないのをみんな気にすてっから。友達の一人でも写真で見しぇでけれれば安心さしぇられるげんど。    だがどうすれば友達ができるというのか。自然にできるというならそもそもすでにでぎているはずで、足りでいねのだ。  やっぱす度胸か? でもこの方言まみれの田舎者の言葉受げ入れでける人なんて都会にいるんだべが? こないだも話しかけてくれた女の子――千年桜こそいたが、どうも騙されでだ気もするし……。きれいな子だったのにおもぢゃ一づに血眼でちょっとおっかねえっけ。    顎さ手当でで考えながら歩いでるど、突然腕つかまれですまった。それも両腕。一体何事!? 「あなた! あなたは幽霊っていると思うわよね?! いるに決まってるわよね??」 「はあぁ?! 待てよ! むしろUFOの方がいると思うよな??幽霊なんて今時いるわけないって思うだろ??」  知らねへなごと男子さ話すかげられでる! これは夢が? 友達チャンス?!  しかし何やら言葉が不穏である。UFOに幽霊? どっちもいるかは知らないけど、いでほすくはねぇ。困惑するおれを気にすることもなく、おれを挟んで左右で口論が続く。  これって話すかげでるでいうより、喧嘩さ巻ぎ込まれでいるのが正すいのではながんべが。   「ほら、答えないってことはUFOなんていないってことじゃない!」 「幽霊がいるとも言ってないじゃん!」  おれが口はさむ暇もなぐ、話進んでいぐ。よぐ分がらね地名になんとがが出ただの、それはデマだの、激すい口調で言い合ってる。これおれがいる必要ある? 「ああもう! やってらんねぇよ! なんで信じられないんだよ!」 「それは私のセリフ! こんなに話が通じないとは思わなかった!」 「もう終わりだな。」 「そうね。もう一緒にはいられないわ。」  そしておれの目の前で一つの交友関係が断絶していった。鼻息荒ぐ正反対の方向さ去っていぐ二人。残るのは巻ぎ込まれるだげ巻ぎ込まれで、何一づ動がねがったおれが一人。  もすうまぐ答えられていたらあの二人も喧嘩をやめていただべか。仲直り出来たんべか。ほだなこどが頭をぐるぐると巡り、がっくりど肩さ落とすはめになる。もう、なんなんだよぅ……。  ***  一晩経って、気持ぢの整理もなんとがづいだ。あれは事故みだいなものなのだ。初対面の人間の仲直りなんてさしぇられるわげがねぇす、そうでなぐでもあだな風に友達がでぎるわげんねぇのだ。  きっとあのままではよぐわがらねままに怪奇現象どがに嬉々どすて連れ出されるごどになったに違いね。つまりおれは期しぇずすて適切な選択したのだ!  ほんとは動ぐごどのでぎねがった自分のふがいなさに、お風呂でちょっと泣いたけんども。    ともあれ自分から何とか動くことだ。毎日の挨拶だって少すずつ声さ出るようになっている気がしないでもない。継続は力だ!  今日取っている授業は遅めの時間だから、学内を散歩でもしていようか。ほだなことさ考えていると、突如前から大ぎな声。 「あんた! 昨日の人だよな?! ちょうどよかった、ちょっと話を聞いてくれよ!」  昨日の喧嘩してた男の人だ。喧嘩別れっていうおれの理想の対極をいぐインパクトと、話の内容がアレだったもんで、あまり話を聞きだぐはない。でもあわあわすてるうちになぜか近くのベンチに座らされ、話さ始まってしまった。 「昨日さ、俺幽霊なんていないって言ったじゃん? でもさ、もしかしたら幽霊いるかもしれなくてさ。」  これは早ぐも雲行きが怪すいのではながんげべか。幽霊の話なんて聞ぎだぐね! どうせ聞くならどうかして仲直りしたいとか、ほだな相談がよいっけ……。  しかしこの男子学生の口は滑らかでとどまることを知らん。 「なんか家に帰って休んでたんだけど、突然後ろからめっちゃ気配がするのね。俺一人暮らしでペットもいないし、角部屋だから壁ドンもないんだよ。なのに、だれかいる感じがするわけ。昨日言ってた通り幽霊なんていないと思ってたから、バッと後ろ振り向いたんだけど、やっぱり何もいなかったわけ。でもよく見るとさ、床になんか残ってるのが見えてさ。なにがあったと思う?」  実際のホラー体験なんて一番聞ぎだぐねぇやづぅ! おれだって一人暮らしなのに、ほだなおっかねごど言われだらおれどうすたらいいの……。話さ止めようにもどう止めればいいのか分がらないし、何があったのか知らないままなのも想像が膨らみすぎておっがねぇ。 「──足跡が、残ってたんだよ。こう、手のひらくらいのサイズでさ、はっきり黒い足跡が残ってた……。結構俺きれい好きだから、あんな汚れが残ってるなんてありえないんだよ。帰った時にも間違いなくあんな足跡はなかった。突然現れたんだ。初めは宇宙人が入り込んだ可能性も考えたんだけど、探知機には一切反応してなかった。締め切った部屋に入れるわけもないし、これって、やっぱ幽霊ってことだよな?」  帰ったら部屋さ絨毯敷ぐべ。もす突然足跡がなんてほだなこどがおれの部屋で起ぎだらもう住めね。ていうが幽霊だら昨日の女学生さ聞ぐべぎなのんねだべが。信ずてると言ってだはずだ。  首を傾げたせいか、目の前の彼はばつが悪そうにつぶやく。 「さすがにあんな風に喧嘩別れしたのに意見ひっくり返すのってあれだろ?」  確かに気まずいかもしれない。でもそれをおれに話されても何にも出来ねよ?  ほだなホラーな家になど絶対さ近づきだぐねっからだ。そそくさと離れようとするおれの右腕さ掴まれる。 「なあ、幽霊の正体確かめようぜ。そんであいつに幽霊の証拠見せてやりたいんだ。頼むよ。」  言葉の裏さ、なんとなぐ感ずるものがある。不安そうな目。絶対嫌だけんど、嫌だんだげんど、それじゃ断れない。ずるいよなぁ。  言うべき言葉を頭の中で変換する。 「……分かった、よ。でもこれから、授業だから後で。」 「おう! 助かる! じゃ、あとでな!」  なんとがうまぐ会話でぎだんでねが!? これは、確実な一歩、確がな手ごだえ感ずる……! すかも理由にさえまなぐ瞑れば、人のうずに招がれだでいう事実残る。これはすこだま友達関係さ近えど言えねぐもね、はずだ。    ***  なんとなくそわそわしながら講義を受ける。終わるのが待ち遠しいって初めでがもすれね。  先に講義が終わっていたのか、大学の正門で待っていた彼ど合流する。 「そういや、おれは第3オカルト研究部の部長やってんだけど、君もオカルトに興味あるなら入部しないか?」  薄々勘づいではいだんだげんと、この人──とりあえず部長どよぶげんども、この部長、すこぶる押しが強い。おめも、なんて言われでもおれは一言も興味があるなんて言ってね! そもそも第3ってなんなの!?  しかしセールストークは続く。オカ研に入るなら楽にとれる単位教えるよ、などと魅力的な提案がグイグイ出てくる。非常に魅力的だけど、ほだなこどではおれは釣られね! 「結構学外のオカ研とも繋がりあるから、友達も増えるぜ。」  ……それ、詳すく聞がしぇでもらえっかっす? 前のめりに話を聞く姿勢をとった瞬間、部長がその場に停止する。突然止まられたせいで部長にぶつかって変な声が出てしまう。うう、恥ずかしい……。  なぜかその場で震えながら指を刺す部長。一体何事だべ? 部長の肩越しに、何を見ているかをおれも見てみる。    そこには、宙さ浮がぶ人間ど、宇宙船があった。    なんなの?! ていうが宇宙人さ攫われるどごろなの?? じゃあ助げんなでねぇか!  慌でで駆げ寄り、浮がんでる人の足さ飛びづいで地面へど引ぎ戻す。 「待って! もう少し、もう少しアブダクション楽しませて! お願い!!」  とんでもないことをいう人がいたもんだ。と見れば、昨日の女の人! 駆けつけてきた部長が一緒にこの人を引っ張ってくれる。 「副部長! なんて羨まし、いや、UFOに連れ込まれたら内臓を取られることになるぞ! 楽しみはそこまでにするんだ!」 「え、なんでここにいるの!?」  内臓取られるってほだなやばいことされるの?! 何目的なの?! おっかなすぎる! というかほだな驚きとかいいから早く降りてきて!  グイグイ引っ張って副部長?さ助けたどごろで、宇宙船は急に上昇してどこかに行ったっけ。なんか妙に安っぽい外観だったような気もするが……。 「実は、昨日家で怪奇現象が起きてさ……。もしかしたら幽霊なのかもしれないって思って、彼と一緒に幽霊を捕まえようとしてたところなんだ。……もし捕まえたら、お前に見せてやろうって。」 「……私も、あの宇宙船を捕まえれば、あなたが喜ぶかと思って……。」  なんか急に仲直りが始まった。ええと、なんだ、理由はともがぐとして、よかったな。  でも幽霊を捕まえたくはないのでこごで失礼すんべ。そろりそろりと離れようとした時、ガッと腕さ掴まれる。これ何度目?! 「今から、今からさ、俺のうちで一緒に幽霊捕まえないか?」 「素敵! もちろん行くわ! 三人いれば怖いものなんてないわ!」  おれのごど自然さ頭数さ入れでるのがおっかねぇよ。二人ともおれの名前すらまだ知らないでしょ!  都会の人ってみんなこうなの??  ***  どうにも逃げるごどがでぎず、部長のアパートさ着いてしまった。鍵を使うことなくドアを開けてさっさと中に入ってぐ。副部長さ後ろがらせっつかれておれも入ることになってしまった。本当に、幽霊ってのがなければ理想の状況なのに。  よくあるワンルームの部屋で、角部屋だからか窓が多い。部屋の四隅に立っている謎のアンテナについては見ねがったことにする。  にしても昼間だったらたくさん日光さ差し込んで過ごしやすいべな。今は真っ暗な墓地が見えてる。……墓地?! そりゃあいくらでも幽霊さいそうな環境すぎる……。   「ここでさ、パソコンに向かって座ってたんだけど、そしたら突然後ろに気配がしたんだ。再現するから二人はなにが起きるか見ておいてくれ。」  ほだなと部長がパソコンさ向がう。インターネットをすてるんだべか、時々滑らがにキーボードを打っている。それにしてもこだな監視されている状態で幽霊なんて出るものなのだべか。おれとしては出でこねぇで欲しいんだけど、出ねければ出ねいでいつまでも付き合わされそうだ。  ふわあとあくびさ一づ。  副部長はとっぐに飽きたのか、部長と一緒さパソコンをのぞいている。さっき攫われそうになった経験を書き残しているみだい。おっかなぐはねがったのかな。  ふと、何かに見られている感覚を覚える。ヴォルフモンの時どは比べ物にならんのだけど、それなりに鋭い方だ。どごから見ている? その大元を確かめる前に、突然部屋の電気全てが消える。真っ暗になった部屋さ部長と副部長の歓声が響く。これこれぇ!ってはしゃぐのはおかしいと思う……。    でもおれの目は何かが動くのを確かに捉えだ。ブレーカーを何かがいじっていたのを確かに見だ!  嬉しげに笑いながら部長がブレーカーを入れ直す。すると問題なぐ電気がついて明るぐなる。そして床には大量の足跡。思わずひぇぇと腰が抜けてへたり込む。 「これはすごい! こんなに俺の家にきてくれるなんて! 嬉しすぎる!!」 「幽霊も宇宙人もいるのね! 一日で二度もこんな体験できるなんて、盆と正月がいっぺんに来たみたい!」  やっぱりこの二人おがしいよ……。本当に怪奇現象が好きでなきゃこだな部屋さ住まないんだろうけども。  有頂天な二人に断ってがら部屋を出る。そして懐から御神体を取り出す。  副部長を攫おうとしたUFOも、今の怪奇現象を引き起ごした謎の影も、おれの感覚に引っかかるものがあった。人ば面白がろうとイタズラを仕掛ける人のそれだ。伊達に怖がりのまま育ってない。村にも人を驚かすのが好きなじさまもいた。なんとなくその人の雰囲気を感じるのだ。安っぽいUFOとブレーカーを落とす物理的なイタズラ。つまり、実態のある何かだ。そしてほだな存在に心当たりがある。  御神体を顔の横まで掲げ、願いをかける。  "おれに力さ、貸すてげれ"  一気に胸に御神体を突き当てる。ご神体が光を放ち、辺り一帯を照らす。長ぐ伸びる光の帯がおれの体さ包んでいぎ、光の力が顕現する。  狼を彷彿とさせる兜が頭を覆い、縞のマフラーが風に靡ぐ。白い体を鈍色の鎧がまどうその姿、それがヴォルフモンだ。    ヴォルフモンとしての鋭敏な感覚が、デジモンが出す特有の感覚をとらえる。上だ。通路から身を乗り出し、フェンスさ手かげて一気に屋上へと飛び込む。光の剣――リヒト・シュベーアトを振るい、一気に屋上を制圧する。  剣さ抑えつけているのは、いかにも宇宙人といった風貌のデジモンと、影に目がついたようなデジモンの二人だ。  飛び込んでぎたおれに呆気さ取られた顔をすてる。剣さ突きつげられていることにも気がついでいねようすだ。 「な、何者?! 」  傍には先ほど見だUFOもある。間違いなぐこの二人が元凶だべ。 「おれはヴォルフモン。おめだづ、何が目的で人間さ悪さする?」  現場を抑えられて観念したのか、2人のデジモン――ベーダモンとアイズモンは大した抵抗もなくいたずらの理由を話し始めた。 「昨日、あの二人がすごい大騒ぎしていたろ?  幽霊とかUFOとか、俺達からすれば大して変わらないのに、全力で存在するんだってさ。」 「そうそう。でも俺達気になっちゃってさぁ。信じてないのに、そういう体験したらどうなるのかってねぇ。」  まさに興味本位のイタズラだ。悪ふざけに反応する姿さみたいなどとは。しかも反省の色がまるでね。何か悪いことしたのかってきょとん顔だ。   「はぁ……。理由はわがった。でもこれ以上ほだなことを続げっこんだらおれも黙ってねえぞ。」  おっかねぇ思いささせられたのもあって軽めに脅しておぐ。だってあだな風にいたずらさ続けられたらたまったものではない。ああそうだ、これも言っておがねど。 「部長の部屋の足跡も消すてぐれよ。あの量さいっぺんに出せるなら綺麗にもできんべ?」 「えっと、狼の旦那……俺達それは知りませんぜ。ほれ、この通り、そもそも足はないし、ブレーカーいじるのでいっぱいいっぱいでさ。」  アイズモンの言葉に、一筋の冷や汗が流れる。  確かにアイズモンには足さねぇ。隣のベーダモンも人の足ではないし、あの一瞬で気取られずに足跡をつけるのは無理だ。だが、だとすたら!   「じゃあ、俺たちは、これで。ちょっとはいたずらも控えるんで勘弁してくださいね。」 「ちょっ、ちょっと待ってぇ! じゃああの足跡ってなんなの!!」  トラブルを解決したと思ったら、とんでもない爆弾さ控えていた。おれ、あの部屋さ戻らんななんねえの? すぐ帰れるように鞄も持ってくりゃあよかった……。  恐る恐る部屋さ戻ってみれば、興奮冷めやらぬオカルトカップルがいる。そっと鞄だけ取って失礼すんべとしたはいいが、見事に捕捉され2人のオカルト談義を聞かされるのだった。  おればもう帰してくれぇ……!!