・01 平和な日常を満喫する人々の前で突如ビルの事務所が爆発した。 「おー、ハデに決まったな」 「おっほ!ホントにやっちゃったよこのヒト!ウケる!」 幸い怪我人はなく、慌てた周囲の人達によって通報がなされるとシュウとユキアグモン…そして一つの影が共に姿を消した。 「にしてもこんなモン撮影してどうすんだ?」 シュウの前でカメラを弄りながら内容を確認する少女…身長はシュウより頭一つ以上あり、凄まじく飛び出した胸をしているが間違いなく少女である。 「え〜!?おにーさんソレ聞いちゃうの?こんなんサイトにアップしてバズバズのバズに決まってるじゃーーん?」 とても良い笑顔でいえーいとピースしてみせる彼女は四季めもりという超絶過激配信者であった。 彼女のチャンネル「めもりちゃんねる」はゲーム実況から配信者の私生活までと幅広いコンテンツを提供しているが、その売りは過激さにある。 今回はシュウがデジモンを抱えているヤクザ・西城会と敵対している所に目をつけてどこからか現れたのだった。 シュウは失踪した妹・ミヨの捜索に彼女のネームバリューや動画の拡散力に期待してみたのだが…。 「あ゙ーーーーっ゙!゙またアカウントがBANされてるじゃねーーーか!」 どうやらシュウの期待外れのような気もしてきた。 シュウはまたってなんだよ…と呟きながら彼女のキンキン声に目をしかめた。 「マジ萎えるわ。あーあ、今回はちょっと持ったンだけどー」 言葉の上での悪態に対してその表情は明るく、彼女は笑顔でアカウントの再取得をぱっと行う。 その底抜けな明るさに軽く恐怖を覚えるシュウだが、めもりはそんなシュウの心情を察することもないし笑顔も崩さない。 「コーヒーでーす」 斉藤という名札を着けた店員が心底気だるそうにゴトッと音を立ててグラスを置く。 適度に客もいない事からシュウの溜まり場にされているここはペットショップ兼どうぶつふれあいカフェ・嫉妬。 シュウは運ばれてきたコーヒーに待ってましたと手を叩くと、事前に開封しておいた卓上全てのシュガースティックを一気に投入した。 「めもりちゃん砂糖いる?」 「おにーさんが全部使ったように見えたけどなんで今聞くの?」 すると、シュウの横にドカッと店員…斉藤 綾乃が座り込み、何かのリモコンを机の上に投げてから自分の分のコーヒーを飲み出す。 「今日はいつまでいるんです?私接客とかダルいんで早く帰って貰えるとありがたいんですけど」 「おねーさんは全然接客の態度に見えないけど大丈夫?」 「貴重なお客様だせ俺は?それにココはデジモンを解放してても怒られないしな」 「デジモンねぇ…」 綾乃は横目で間抜けな顔で欠伸をしている赤いワニを見ると(あれはちがうか…)と目を離した。 「といってもここ最近、あのワニが実は珍しい種類だったらしくて客がじわじわ増えているんですよね。迷惑な話です…およよ」 店員が見せた迫真の嘘泣きに釣られためもりは目を輝かせ出す。 横にいる彼女のパートナーデジモン・スケイルモンはまたロクでもない事考えてるなと嫌そうな態度を顔に隠さない。 「じゃーさ、あのワニ動画のネタにしていい?珍しいワニの肉でステーキ作って見た〜とか!あ゙は!」 「珍しいつってたろ…彩乃ちゃん、なんか言ってやれ」 「コレ売り物じゃないんで」 「あ、そこなんだ…」 「うちってバズれば何でも良いし?再生数アゲる為なら何だってするよ?バクアゲバクアゲ!!」 一切の悪意がない笑顔からソレが本当になんでもしてきたであろう確信と後悔をシュウに持たせた。 シュウはここでようやく協力する相手を間違えたと確信した。 「シュウ〜バズるってなんだ〜」 「見てるヤツがいるってコトだな」 「なるほど…じゃあシュウもバズってるな」 え…?とシュウがスマホから顔をあげると、窓の外には恐ろしい顔をした大男が今にも窓ガラスを砕きかねない勢いで張り付いていた。 「竜崎さんどうも…へへ…」 「祭後終…昼間から女子を侍らせて良いご身分だな」 ちょっとヤバい威圧感を無差別にぶちまける彼はデジモンの関わる事件を専門に調査する警視庁電脳犯罪捜査課の刑事・竜崎大吾。 デジモン騒動でほぼ毎回顔を見せるシュウを重要参考人として確保しに来ており、二人の追いかけっこは段々と日常になってきていた。 彼等の逃走劇により破壊された建物などは保険会社を何社か倒産させる程に繰り返されていた。 厚い窓ガラス越しにも伝わってくる竜アの近所迷惑極まる大声を横にシュウは財布から自分とめもりのコーヒー代金を取り出し、彩乃に渡す。 「三人分です」 「凄いこと言うなこの子…」 シュウが五千円札を置くと彩乃はドヤっと笑い、先ほど机の上に投げたリモコンで入り口の盗難防犯用の電子ロックを起動した。 それは竜アが扉を開けようとするのを素晴らしいタイミングで防ぎ、シュウに逃走の余裕を与える。 「んじゃ俺達はズラかりますかね」 シュウは席を立つとユキアグモンの肩をポンポン叩いて裏口に駆け出す。 「おにーさん!またね゙〜!」 「さよ〜なら〜」 めもりの元気いっぱいの挨拶にユキアグモンは手を挙げて応えながら走り去ったのだった。 「ここを開けるんだ!」 竜アはすぐ追いかけようとするが入口にガッチリと電子ロックをされている為に出ることができない。 こんなモノ簡単に壊して突入する事はできる…だが彼は一般女子を巻き込む事ができるような男ではなかった。 なお、無意識で街を破壊することはその勘定に含まれていない。 突如、入り口の鍵が開くと竜アは転びかけながらペットショップに入り込んだ。 「ごめんなさ〜い。最近リモコンの調子がおかしくって〜」 「それはいい。悪いが裏口を借りるぞ!」 彩乃の嘘泣きを無視した竜アはすぐにシュウの出ていった裏口から店を出ると、そこはビルの裏と裏が複雑に入り組んだ道だった。 竜アは舌打ちすると離れたシュウを威嚇するように大声で叫んだ。 「待て!!!貴様のようなヤツを野放しにはしておけん!!!!」 シュウたちは入り組んだ路地裏で足を止めずにカーブを行っていたが、その大声に驚いたユキアグモンは曲がり切れずに壁に激突してしまう。 そこにシュウも激突するとユキアグモンはサンドイッチのように壁と挟まれて「んぴぇ」と間抜けな声を発した。 「シュウ〜追ってきてるぞ〜!」 「そんなコトはあのうるせぇ声を聞けば嫌でもわかる!」 「そりゃそうか!流石シュウだぜ…」 「おまえまじか」 どこからか竜アがズシン!ズシン!と足音を立てて走り追いかけてくる。 姿を見ている訳ではないが、その重すぎる足音は彼以外の人間からそうそう聞けるモノではない。 「おいあそこだ」 シュウがビルの外付け階段を見て指を鳴らすと、ユキアグモンは頷いて両の手を組んで屈む。 シュウは助走をつけて勢いよく飛び込むとユキアグモンの組んだ手に飛び乗る。 ユキアグモンは思いっきり腕を振り上げるとシュウを三階程の高さまで投げ飛ばし、シュウは投げ飛ばされると同時にユキアグモンをデジヴァイス01の内部に収納した。 「んんんんっ!?!?」 予想よりも高く飛んだことに変な声を出すシュウはそのまま外付け階段の踊り場に殆ど落下する形で着地する。 シュウが涙目で腰を押さえているとその下に竜アが追い付いていた。 まさか大きく飛んだとも思わない竜アは眉間の皺をより深くしながら立ち止まり、辺りを見回している。 シュウはあえて踏み留まり、音を立てないようにしているとやがて路地裏を抜けた彼を見たシュウは安堵のため息をつく。 直後、竜アの公文書を持たせておくには不適切な大声がシュウの耳にも内容は伝わってくる。 「すみれさん!ダイナモンをつかいます!!!」 『始末書は書いてくださいね』 「ひ、酷いですよ!俺が毎日何か壊してるみたいじゃないですか!!!?」 『今日はドアノブを捻じ切ったじゃないですか。アレの分もお願いしますね』 「いくぞッ!!アグモンッ!!進化!!!!」 『あっ、まだ…』 竜アが電話を切ると地面にデジタル空間の亀裂が大きく入り、内側から強く光が溢れる。 亀裂はガラスが割れるように弾け飛び、内部から赤き羅刹竜・ダイナモンが競り出した。 10mは越すであろう巨体を持つ怪獣は存在するだけで空気が張り詰め、リアライズの余波だけで周囲の電子機器が機能を停止させる。 究極体があまりにも簡単に出現した事で階段を駆け下りていたシュウが思わず転びかけると、ダイナモンの肩に乗っていた竜アはピクッと体を震わせる。 「よぉ、元気そうだな」 竜アは振り向きながら懐から取り出した手錠を投げ、ソレをシュウの顔面ギリギリの壁に激突させる。 ガッという強い音と共に手錠は深くレンガにめり込むのを見るとシュウはンヒーッ!と情けない声を出す。 「おいユキアグモン…竜アさんもデジモンだったりしないかな…」 「ソレ何回か試したけど人間だったろ」 シュウはずっこける事で奇跡的にこちらを捕まえようとダイナモンの腕を回避した。 振り抜かれたその腕は先程までシュウが降りていた外階段をぺしゃんこにする。 髪の毛の先端を焦がしながら立ち上がると周囲の悲鳴を掻き分けながらダイナモンと竜アに向かい合う。 「突っ込んでくる…何か考えているな」 ダイナモンがその場で地面を踏みつけると巻き起こされた凄まじい風圧が周囲の木々をへし折り、人々を吹き飛ばしていく。 竜崎が辺りを見回すとシュウはユキアグモンを抱えたまま地下鉄に繋がる階段を転げ落ちていた。 「奴らは地下だ─急げッ!!」 竜崎はダイナモンから飛び降りるとズンっと地面にヒビを入れながら着地する。 ダイナモンは駆け出した竜崎の上着を摘まんで進むのを阻止すると、ちょんちょんと地下への入り口を指差して自分の退化を促した。 「…そう言われればそうだな!!」 スマホを弄るとダイナモンは光になり、アグモンへと姿をダウングレードさせた。 ・02 シュウはトイレから顔を出すと辺りをチラチラ見回した。 「…撒いたか。ユキアグモンの変異種防壁(イリーガルプロテクト)でダイナモンの踏み付けを受けてわざと吹き飛ばされる作戦は大成功だったな」 「あんまりブッ飛ばされるモンだから目が回っちゃったぞ」 デジヴァイス01の中からユキアグモンが話しかけてくるのでシュウは服の破けた所を触る。 「相当転がったからな…ほれ、服も所々破けちまったぜ」 「わるいシュウ。デジヴァイスにいるから見えないねぇや」 シュウが何かを言い返そうとした時、自分達のいる地下商店街の雰囲気が異様な事に気付く。 栄えた駅前のハズが誰も人がおらず、全ての店にシャッターが下ろされている様子が重苦しい雰囲気を放っている。 「こういうナントカルームっつうオカルト話があったような気がするぜ…いやデジモンなんてモンがいるからなんでもアリか?」 独り言を呟くとデジヴァイス01からリアライズさせたユキアグモンに周囲の索敵を試みさせる。 鼻をヒクヒクと震わせたユキアグモンの目付きが少し険しくなるとシュウも嫌な予感がする。 「デジモンか」 「おう!それもオレの知ってる匂いがいっぱいだ…!」 「お前の知り合い…とにかくココから抜け出すぞ。竜崎さんから逃げたと思ったらなんだか面倒なコトになりそうだ」 一人と一匹は地下商店街を早足で歩き出した…だが、外へ通じる階段の前には大きく分厚い防火用の扉が閉じられていた。 「まぁなんとなくそういう気はしてたけどな…力業で開けたら何があるかわからねぇし…」 シュウがドアノブの施錠を確認しながらそう呟くと助走をつけてから体当たりしようとしていたユキアグモンが急ブレーキをかけて転ぶ。 「いや!なんもしてない!なんもしてないぞオレは!」 「…そういう事にしておくよ」 シュウが道を引き返すとユキアグモンも慌ててついていく。 地下商店街はついさっき見た光景と特に変化はなく、閑散とした不気味な空気のままだった。 僅かな息苦しさを感じながら角を曲がるとそこにはデジモンが数匹並んで待ち受けていた。 「─っ!」 ヘルメットと銃を装備した迷彩柄のアグモンとも取れるデジモンを見たユキアグモンは目を大きく見開くが、彼等は躊躇い無くその手に持った銃を発射した。 ユキアグモンは叫ぶと地面を抉り、コンクリートの破片を撒き散らしながら飛んでくる銃弾を回避した。 「来やがったかこの野郎…名前くらい教えろってんだ!」 【成長期:コマンドラモン】 「はい自己紹介ありがとうございます!」 シュウはデジヴァイス01に表示さたデータを確認すると辺りを見回し、盾にしていた道の角から身を乗り出しながらユキアグモンに向かって指令をアップリンクした。 赤外線を受けたユキアグモンは次々と発砲される弾丸を避けると、展示物の入ったガラスケースをコマンドラモンたちの足元に向かって投げつけた。 ソレは激しい音と共に砕けるが、たかだかガラス片に怯むような軍隊デジモンではない。 しかし、それが彼等の命取りとなった。 全身に氷の針が突き刺さり、剣山のようになったコマンドラモンたちはバタバタと倒れて気絶する。 「へっ。ナメたな」 「コイツら、オレがデジタマになる前にいたD-ブリガードだ」 ユキアグモンはわずかに震えながら言葉を振り絞る。 「…無理させたな。大丈夫か?」 「シュウがいなかったらオレやられてたかもしれねぇ、でもシュウがいるならオレは負けねぇ!」 グッとガッツポーズを取るユキアグモンを前にシュウは内心、心を痛めながら苦笑いする。 シュウはユキアグモンの頭を乱暴に撫で回すとコマンドラモンの服装を脱がしたりして何かが無いか確かめ出す。 「じゃ、コイツらの目的は裏切り者の処分ってコトか?」 「オレの事は多分わかってねーと思う。同期はもうコマンドラモンじゃないか…デリートされてる」 「ならどういう事だ…」 シュウはユキアグモンと会話しながら物色を続けていると一枚の紙が足元に落ちる。 反射的にそれを開くとシュウの目付きが変わり、コマンドラモンの首を閉めつつ刺さった針を深く刺しながら叫ぶ。 「コレはなんだ!?この女はどこにいた!?答えによっちゃ二度と明日は見れねぇぞ!!」 「んぐひっ!?し、しらない!しらないぃ…っ!」 「ちっ。だったらお前らの基地かなんかまで案内して貰おうか…痛い目は見たく無いだろ!?」 痛みに思わず目を覚ましたコマンドラモンからその答えが帰ってくるよりも早く突き飛ばした。 何かに焦るシュウを前にしたユキアグモンは唖然としていると、先程の紙が目に入る。 それは何かの資料であり、シュウと一人の少女の写真が貼り付けられていた。 「俺の妹だ」 「じゃあこの子がシュウの探してるミヨちゃんだって言うのか!?」 シュウは怯えながら道を進むコマンドラモン隊の背中を睨みながらそう告げた時、一筋の閃光がコマンドラモン隊をデジタマへと戻した。 ・03 「そこまでだ」 「ユキアグモン!」 影から白いコートに身を包んだ長身の男が現れるとシュウはイラついた声で叫ぶ。 慌ててユキアグモンが氷雪弾・リトルスノーを吐き出すと再び現れた白い閃光と共にそれは両断された。 シュウの右手首に巻かれたデジヴァイス01が電子音と共に警戒を促す。 【スカルナイトモンWB:成熟期】 閃光の正体は高速で移動する白色のスカルナイトモンであり、向けられた青い槍からは強いプレッシャーを放っていた。 白いコートの男とスカルナイトモンWBが持つその絶対零度とも言える凍てつく瞳にシュウ達は嫌な物を感じた。 「祭後終。お前は我々の邪魔をするな」 「了解しましたマスター」 スカルナイトモンWBが一歩進むたびに足元に薄い光が生まれていく。 「なぜ仲間を消した…俺達が邪魔なお前は何者だ…!」 ゆっくりと後退るシュウに対して一気に距離を詰めたスカルナイトモンWBは素早くその槍を振り下ろす。 ギリギリで割り込んだユキアグモンがソレをガードしてみせるが、その衝撃で地面に叩きつけられる。 即座にスカルナイトモンWBはユキアグモンの腹を蹴りつけ、大きく吹き飛ばすと背中からシャッターに激突させる。 マスターと呼ばれた白いコートの男は無表情のままであるが、スカルナイトモンWBは頷くと口を開く。 「君達が今朝爆破した事務所は我々と協力関係にあった。下請け会社…というヤツかな」 シュウはその一言でスカルナイトモンWBが自分達への敵意に染まっている事に気付くが、それでもなお冷静に状況を分析しようと頭を働かせる。 「ミヨはどこにいる」 「聞き出してみるかね?求めた答えが帰ってくるとは限らないがな!」 【ブレストアイ・ウインクWB】 スカルナイトモンWBはその言葉と共に胸部から青白い怪光線を放ち、ユキアグモンを撃ち抜くと爆風を引き起こした。 その爆発にスプリンクラーが反応し、煙が薄くなろうとした時─突如として光の卵が煙を突き破って現れた。 「ユキアグモン進化ッ!」 卵が破裂すると光の礫がスカルナイトモンWBへ襲いかかるが、彼はソレを次々と叩き落としていく。 その時、礫の影からストライクドラモンへ進化したユキアグモンが飛び出すと大きく蹴りを打ち込んだ。 「容易いね」 しかし、その蹴りはスカルナイトモンWBの振るった足によって相殺されていた。 二匹は僅かに距離を取ると暫くの睨み合いから格闘戦に突入する。 ストライクドラモンの気迫は強く、徐々に拳が青色の炎を帯びて行く。 だが純粋な実力差から追い込まれたストライクドラモンは槍の振り上げで天井に叩きつけられてしまう。 無慈悲に放たれたブレストアイ・ウインクWBの追撃によってストライクドラモンは力無く落下する。 スカルナイトモンWBは彼の顔面を全力で蹴りつけ、シュウの背後の柱にボゴっという音と共に叩き込んだ。 ごぼっ…と血を吐きながら柱から崩れ落ちるストライクドラモンにシュウは駆け寄る。 「お、オレはまだやれるぜ…そうだろ!?シュウ!」 「当然だ相棒!」 ストライクドラモンは焦げた胸をパンパン払うとガッツポーズを取り、シュウは得意気に笑うことで返事をした。 だが、シュウは目の前の男との実力差に内心震えていた。 右腕の古傷が痛み、自分の責任の重さを改めてさを認識する。 (コイツは俺が守るんだ) シュウのアップリンクと共にストライクドラモンはスカルナイトモンWBへ一気に駆け寄ると拳を振るうが、やはり簡単にいなされてしまう。 カウンターで突き出された槍を回転をかけながらしゃがんでなんとか避けると、その勢いのまま尻尾で反撃を行う。 スカルナイトモンWBはジャンプで攻撃を回避すると空中から槍を突き出す。 ストライクドラモンは即座に前に転がるとスカルナイトモンWBを潜るように槍から逃れる。 スカルナイトモンWBは振り向きながら槍を素早く振るうが、そこに手応えは無かった。 瞬間、突如としてスカルナイトモンWBの視界が180度反転すると頭から地面に激突させられた。 その原因はストライクドラモンによる低空式バックドロップであり、その衝撃音が周囲に響き渡った。 「ちょっとカッコいいからって生意気だゼ!」 「よっしゃーっ!ざまぁ見ろってんだこのスカルスカし野郎!」 シュウのデジヴァイス01には【背後に回りこんでからマントの動きに合わせてもう一度背後に移動】という指示が表示されており、ストライクドラモンは低空式バックドロップを命中させたのだった。 一人と一匹が何度もハイタッチをしているとスカルナイトモンWBは何事も無かったかのように立ち上がる。 「ふふ。今のは効いたよ…だが、ようやく一撃入れた程度でその喜び様は滑稽だね」 「うるせぇ!こういうのは最後に一発入れた方が勝ちなンだよ!」 「ま、こんなんでやられるワケねぇよな…」 シュウとストライクドラモンは臨戦態勢に戻ると、スカルナイトモンWBは槍を構え直す。 戦闘が再開され、ストライクドラモンの拳とスカルナイトモンWBの二対の槍は互いにぶつかると合い激しい火花を散らした。 突き出された槍をストライクドラモンは掴むとを力強く蹴り上げようとするが、スカルナイトモンWBは槍を離しながら一歩後ろに下がるとそれを回避した。 「え…?」 勢いあまって転倒したストライクドラモンの背中にスカルナイトモンWBはもう一方の槍を青白く輝かせると全力で振り下ろした。 【スピアニードル】 激しい光が爆発し、煙が晴れるとストライクドラモンはユキアグモンへと退化していた。 「この世にはどう足掻いても意味が無い事がいくらでもある。理解しろ」 男が左腕を振るうと青白い光がぽつぽつと現れ、回転しながらスカルナイトモンWBに張り付くとその姿を変化させた。 【成熟期:スカルナイトモンBW:ビッグアックスモード】 「黒いデジヴァイス01─いや、それよりも姿を変えたのにグレードの変化がない…!?」 シュウは男の手首に見えたモノを見て驚愕するが、それよりも自分のデジヴァイス01の画面を優先する。 だが、それ以前にユキアグモンは気絶しておりどうにもできない。 「気絶している間にデリートしてあげよう」 スカルナイトモンWBはその巨大な斧をユキアグモンへ向けて振り落とす。 「くそおおおっ!」 シュウは雄叫びを上げながらスカルナイトモンWBに体当たりを仕掛けるが、簡単に振り払われると壁に向かって投げ飛ばした。 壁からズリ落ちると背中を痛めながらもなんとか立ち上がり、再びスカルナイトモンWBに飛びかかる。 だが、またしても振り払われたシュウは道路に転がると体がバラバラになりそうになるほどの激痛に襲われた。 痛みに悶絶するシュウに対し、スカルナイトモンWBはユキアグモンに止めを刺そうとを斧を振り上げる。 (アイツだけは…アイツだけは!) そう思いながら右手を伸ばすが、血とアザだらけの体はその視界を狭くしていく。 ついに立ち上がることすらできなくなったシュウを前にスカルナイトモンWBは鼻で笑う。 スカルナイトモンWBはその分厚い斧を振り下ろすが、それは突如現れたマスターティラノモンに受け止められていた。 「俺達も混ぜて貰おうか」 ・04 シュウとユキアグモンを救いだしたのは以外にも竜崎大吾とその相棒・マスターティラノモンであった。 マスターティラノモンは斧を押し返すと力強い発勁を打ち付けてスカルナイトモンWBを怯ませる。 「警察か」 「一応言おう。大人しくしろ」 それと同時に竜崎はスマホを持ったまま男に迫ると素早く拳を繰り出すが、男はポーカーフェイスを崩す事もなくそれを回避していく。 男は竜崎の腕を掴むと思い切り振り回してから壁へ押し付けるとその背中に蹴りを入れる。 竜崎は二発目の蹴りを回避すると足を掴みかえしては膝に肘打ちを放ち、そのまま男を持ち上げるとそのまま地面に投げ捨てた。 空中で何度か回転しながら落下した男は受け身を取るとそのままバク転で距離を取る。 男は助走をつけて駆け寄ると防御の姿勢を取った竜崎の膝を踏みつけてそのまま飛び越し、着地と同時に足払いを放つ。 それを飛んで回避する竜崎だが、その隙に男から放たれた上段蹴りをまともに受けて大きく仰け反る。 竜崎にぶつかられた窓ガラスが砕け散り、その破片がバラバラと落下してくる。 だが竜崎はそれを防ぐ事も無く、男に向かって走り出す。 「マスター、ここは私に」 スカルナイトモンWBが竜崎と男の間に割り込むと振るわれた蹴りを自身の体で受け止めた。 竜崎と男が格闘戦に突入した頃、マスターティラノモンは得意技の一つ・精神注入によりユキアグモンとシュウを気絶から引き戻していた。 「あんた竜崎さんの…ってコトはあの人来てるのかよ。執念深すぎるぜ」 「あの時はすぐにオマエを追いかけようとしたんだギャがどこの扉もシャッターも閉まってたんたギャ。大吾は管理会社とかに連絡したんだギャどことも繋がらなくて…」 「つまりブッ壊したわけか」 「大吾は始末書を書くのは得意だギャ。さ、逃げるんだギャ」 竜崎の蹴りがスカルナイトモンWBに命中するのを後ろに見たマスターティラノモンは振り向きながら走り出すとスカルナイトモンWBに体当たりをブチ込んだ。 「ユキアグモン、さっきの言葉まだ有効だろうな」 「あたりまえだゼ!シュウとなら地獄の底でも行ってやらぁ!」 一人と一匹は互いに顔を合わせてニッと笑うと走り出し、竜崎とマスターティラノモンの元へ向かう。 (お前は地獄になんか行かせない…!) シュウはユキアグモンの背中を見つめて走りながらそう心の中で叫んだ。 スカルナイトモンWBの巨斧から放たれる重い一撃を受け止めたマスターティラノモンは地面にクレーターを作るほどの衝撃を堪えながら耐えている。 互いに一歩も譲らない中、ギューンという音と共にストライクドラモンが現れるとスカルナイトモンWBに強い蹴りが命中した。 スカルナイトモンWBは斧から手を離し、地面を転がるとストライクドラモンもそのまま地面に転がる。 「よっ、竜崎さん。俺達も手伝うぜ」 シュウは竜崎の後ろからフラつきながら現れると背中をバンっと思い切り叩いた。 竜崎はビクともしないが、スーツには血の跡が薄く付着する。 「祭後終、なぜ逃げなかった…お前の体は無理矢理動かせるようにしているだけだぞ」 「おいおい。ここは”善良な一般市民のご協力に感謝します”…だろ?」 「その善良な一般市民を守るのが俺達の仕事だ」 「お、わかってるじゃん。俺はなんにも悪いことしてないんだって」 シュウは指をくるくると回してから竜崎を指差す。 「それを確かめようとしているのにお前は逃げるからな。ようやく会えたと思ったらこの状況だ。」 「ストライクドラモン、右からだ」 ストライクドラモンは素早く横に飛ぶとマスターティラノモンの攻撃に合わせて挟み撃ちを仕掛けるが、スカルナイトモンWBその同時攻撃を巨斧で受け止める。 「お前は後だ。まずはコイツからにする」 「じゃあさっさと倒しておさらばだ!」 スカルナイトモンWBが斧を凪払うと二匹のドラゴンデジモンは飛び退いてパートナーの横に着地する。 二組のチームがここに並び立ち、手を組んだ。 ストライクドラモンは何か閃いた顔をすると二人に向き、腕をグッと握り「黄門様お新香が嫌い!」と叫んだ。 「公務執行妨害だ」 「なんでそんな間違え方するんだよぉ??」 シュウはあきれると溶けるようにその場で崩れ落ちた。 「お前達カッコつかないギャ」 「うるさいやい。さっさと行け!ストライクドラモンもだぞ!」 「おうよ!」 「なんでお前は俺の相棒に命令してるんだ…?」 ストライクドラモンとマスターティラノモンがスカルナイトモンWBの投げた斧を同時に飛び越すと素早く格闘戦に入る。 スカルナイトモンWBは両肩に移動させていた槍を腕に再度装着すると二匹のパンチを同時に受け止める。 だが、先程とは武器が違うスカルナイトモンWBは二匹の同時攻撃に押し負ける。 「そのまま…いや、後ろだ!」 竜崎の叫びに反応するよりも早く、ストライクドラモンは謎の白い影に追突されてしまう。 マスターティラノモンが気を取られた隙を逃さないスカルナイトモンWBはすぐに拳を受け流すと僅かに屈んで肘撃ちを命中させる。 胴体ごとぶつかる力強い一撃に仰け反ったマスターティラノモンは竜崎に向かって指示を求めるようとした時、ストライクドラモンに組み付いたものの正体が白いデッドリーアックスモンであることに気付く。 「あれは我が眷属。私の力の一端がデッドリーアックスモンの姿を取ったのさ」 スカルナイトモンWBは二匹の背後に巨斧を投げるとデッドリーアックスモンの姿に戻して不意打ちを行っていた。 いつの間にか元の姿に戻っていたスカルナイトモンWBはそう告げて再びマスターティラノモンに格闘戦を挑む。 マスターティラノモンは胴を引き裂くように爪を振るうが、それを掻い潜ったスカルナイトモンWBの回し蹴りが直撃した。 その一撃を受けたマスターティラノモンはニヤリと笑うと足を掴み、大きく振り回してから壁に叩きつける。 すぐさまスカルナイトモンWBの顔面を掴むとコンクリートの壁を使って削り下ろすように引きずっては遠くへ投げ飛ばした。 「くそっ!離しやがれ!」 ストライクドラモンが白いデッドリーアックスモンに数発の拳を打つけるが、どれも硬い装甲に弾かれてしまうのか痛がる様子を見せない。 腹部に思い切り足が振り下ろされると、ストライクドラモンは思わず口を開いて叫ぶ。 デッドリーアックスモンは牙だらけの口を開くとストライクドラモンの喉笛に喰らいついた。 慌てて振り解こうともがくストライクドラモンだが、その牙は深く突き刺さり、そのまま地面に押し付けられる。 「ストライクドラモン!」 シュウが叫び声をあげるとマスターティラノモンが首を狙ってマスタークローを放つ。 高熱を伴って繰り出される一撃はデッドリーアックスモンの頭を跳ね飛ばした。 デッドリーアックスモンは光の粉とはって消滅するとストライクドラモンは起き上がる。 「すまねぇ!」 「気にするなギャ」 スカルナイトモンWBは二匹に向かって槍を構えるが、今度はストライクドラモンがソバットで槍を弾くとそこにマスターティラノモンの拳が連続して命中する。 「いまだ行けぇッ!」 【フレイムフォール1】 【メガファイアリゾルブ】 シュウの叫びに答えて二匹は同時に口から火炎弾が放ち、スカルナイトモンWBはその強力な爆炎に飲み込まれた。 二人と二匹は警戒を緩めずに爆発を睨み、現に爆炎の中から結晶のような光に包まれたスカルナイトモンWBがその姿を現した。 だが、シュウとストライクドラモンは驚愕の表情をする。 「変異種防壁(イリーガルプロテクト)…!?」 「ソレは貴様だけの力では無い」 白いコートの男が鼻で笑うとスカルナイトモンWBはブレストアイ・ウインクWBで反撃に出る。 二匹は迫る光線をギリギリで回避するとスカルナイトモンWBとの距離を一気に詰める。 ストライクドラモンがしつこく格闘戦を挑むとその隙にマスターティラノモンはスカルナイトモンWBを掴み、空中へ投げ捨てた。 「ダメ押しの二発目だ!」 【ストライククロー】 【マスタークロー】 竜崎が叫ぶと三人のデジヴァイスが同時に必殺技発動の電子音を鳴らす。 落下してきたスカルナイトモンWBに対し、同時に竜の撃爪がめり込んだ。 爆発の中から三匹のデジモンが姿を現すと、スカルナイトモンWBは両腕の槍でそれすらも防いでいた。 マスターティラノモンが舌打ちするが、白いコートの男は振り向くとその場を去り始める。 「マスター、私はまだ…!」 その時、スカルナイトモンの持つ二つの槍は粉々に砕け散った。 彼は一瞬だけ悔しそうな顔をすると足元に光線を放って爆風を起こし、その煙の中へ姿を消していた。 「逃げたか…」 「んじゃ俺達も…」 そう言った矢先、シュウはその場に倒れると気絶してしまった。 ・05 「いやぁ今回は骨が折れたぜ…物理的にな」 「つまんないわよそれ」 あれから1日と少し、病院のベッドで全身を包帯まみれにしたシュウの軽口をバッサリと切り捨てたのは竜崎の同僚にしてシュウの元同級生・烏藤すみれだった。 地下商店街に昨日の戦闘の痕跡はほぼ無く、デジタマも全て回収されていた。 ユキアグモンは竜崎のアグモンと部屋の端で仲良く抹茶まんを食べている。 「竜崎さんはどう思う?」 「証拠不十分だ。憎たらしいことにな」 「そっちじゃなくて」 竜崎は机の上に放り出した監視カメラの映像を印刷した紙を横目にムスっとする。 シュウは二人の警察官に囲まれて先日の爆発や戦いについて色々と聞かれており、病室の外には生真面目そうな男・明智秀人もいた。 扉の窓越しに包帯だらけの手をシュウは振るものの、スッと顔を叛けられてしまう。 「…お前は、お前は何か重いものを背負っているように見える。警察に頼るという判断はできないのか」 「俺に大義名分なんてないよ」 そのまま黙り込む男二人にすみれは眉をひそめるとため息をつきながら「お大事に」と言って病室から立ち去ろうとする。 その時、昼間から顔を真っ赤にした女性が部屋の扉を勢いよく開けた。 「んやっほ!んやっほ〜い!」 シュウはその声を聞くと嫌そうな顔を隠さなくなる。 「ありゃあ。シュウちんついに捕まったの?あたしのせいだけどね!あっはは!」 「捕まってないが…」 「愛媛を落としたのってシュウちんなんスよ〜知ってた?」 指差すようにシュウへ缶を振っては意味不明なことを騒ぐ彼女に警官の三人は唖然とした顔で立ち尽くしている。 「ヘイポリスメンメン!ヘイポリスウーメン!あたしの新しい情報に興味アリアリ未来でしょ?」 女性は病室に入るとボスっと勢いよくベッドに座り、ポケットから新しいビールの缶を取り出して開封する。 「なんで竜崎さんが俺のいる場所を見つけたかわかったよ…よりによってコイツに頼りやがって…」 「俺は犯罪を潰すためなら手段を選ばん…選ばんがこれは少し後悔している」 シュウは竜崎をジトっと睨むが、腕を組んだまま目線を逸らされる。 その横で彼女はゴミ箱に空き缶を投げ、投げた缶は見事にフチへ当たると少し残っていた中身を床にこぼしながら転がった。 「…はいどうも〜!唐橋チドリっす!よろしくっす!シュウちんとは同じ学校にいました!フリーのジャーナリストやってまっす!」 「それは知っている」 「床拭けよお前」 彼女はソレを誤魔化すように自己紹介を始めるが、シュウと竜崎からはブーイングが飛ぶ。 「あ、これあたしの名刺…やべ!ヨダレ拭いたからちょっと濡れてるわ!うっひょほ!」 「それはもう貰っている」 「そもそも酒飲んで病室に来るなよお前は」 竜崎が名刺を受け取ろうとしないのですみれの顔へ名刺をグッと押し付けるが、嫌そうな顔で回避される。 シュウが代わりに受け取ると、彼女は「へへ…どうも…」と残りの名刺をポケットにしまう。 「で、なんでチドリはここにいるんだ」 「唐橋チドリにはあの男について調べて貰っていた」 竜崎はスマホに写ったブレブレな写真をシュウに見せる。 どうやらそれは白いコートの男と格闘戦をしていた際、こっそりと撮影されていたモノだった。 シュウもチドリの名刺をこっそりとゴミ箱に捨てた。 「その件に関しては〜ばっちしV〜!」 チドリはわざとらしく胸を張りながらピースサインをするが竜崎は無視するので、チドリは舌打ちしながら何枚かの曲がった写真を取り出すと机の上に置いた。 「それはさっきの名刺じゃないかしら…」 「おっひょ!間違えちった!ぬふっ!」 チドリは別のポケットから今度こそ写真を取り出すとメモ帳片手に自身が調べ上げた情報を読み上げ出した。 「名前は時令 狼渡(ジレイ ロウド)。年齢は32歳。たぶん独身。職業は…FIVE-Elements(ファイブエレメンツ)社の超偉い人」 「ファイブエレメンツ…世界的製薬会社か?」 「そ。コレとかコレはネットニュースの魚拓から引っ張った画像なんだけどさ、このアンちゃんは記者会見の端っこに写ってたりするワケ」 竜崎の問いにチドリは机の上に新しく写真を置くと細い指でトントンとつつく。 「んでぇ、その超偉い人がなんであんなトコでデジモンなんか連れてたんかしらねぇ〜」 「そんだけの権力もあれば地下商店街を一時封鎖するくらいは余裕ってワケか…」 シュウは親指で額を押さえながら色々と考える素振りを見せる。 ロードが西城会との協力関係にあること・今回の戦いは自分一人を狙ったモノであったこと・ミヨがデジタルワールドのどこかにいること…それらは話すべきではないと判断した。 竜崎はアグモンをスマートフォンに戻して荷物を纏めると「協力感謝する。俺達が二度と会わない事を祈る」とだけ告げて病室から去ろうとする。 「竜崎さんは報告書、今週までですからね」 竜崎はうっ!という顔をすると大きな咳払いをしながら足早に去ってしまった。 すみれはため息をついて明智と共に竜崎を追いかけて病室から去って行く。 と、思いきや顔だけを覗かせて「変なコトしないでよね」とだけ残してドアを閉じた。 「ヘイヘ〜イ!もしかしてなんか期待してるぅ〜!?」 チドリが手をワチャワチャと動かしながら既にいないすみれと会話しているのを横に、シュウはデジタルワールドへ突入することを計画しだしていた。 おわり