宿敵アッシュルバニーモンからおかしな手紙を貰ってから数日、遂にやつの居所を掴んだ結城友弥。 いざ征かんとしたその時、ディースキャナにある人物…デジモンからの連絡が届く。 「やあ、友弥くん。久しぶりだね」 「クラヴィスエンジェモン様!?お、お久しぶりです」 そのデジモンとはクラヴィスエンジェモンであった。 彼は結城友弥に『勇』のスピリットを授けた者であり、『勇』のスピリットの大元であるエンシェントヒーローモンに仕える者でもあるのだという。 「これから大事な話があるんだけど…今の時間、少し良いかな?」 「は、はい、構いませんが…どのようなお話を?」 いつもよりも物々しい雰囲気に押されながら友弥は衣住まいを正す。 それを見守ってからクラヴィスエンジェモンは改めて話を切り出した。 「それじゃあ、続けるよ。……友弥君、君は姿を消した『識』の獣アッシュルバニーモンの居場所を見つけ出した。そして、これからそこに襲撃に行くという事で間違いないかな?」 「はい、その通りですが……なぜお分かりなのです?」 「ふふ、私は君の後援者だからね。それくらいお見通しさ」 「は、はぁ…」 友弥の疑問にも当たり前の様に答えるクラヴィスエンジェモン。 少し不思議に思う友弥であったが彼ほどのデジモンならそれくらい出来るかと思い直す。 「まあ、それよりも大事な事はこれから襲撃しにいく場所だ。……おそらくそこは『識』の力の源であるスプシ図書館と予想がつく」 「スプシ…図書館…ですか?」 はじめて聞く場所だが図書館というならば本が収められている場所であろう事は想像がつく。 それにスプシ…最近どこかで聞いた様な、そう思っているとクラヴィスエンジェモンが更に続ける。 「ああ、スプシ図書館だ。そこに君の宿敵の親玉であり、我々の宿敵ともいえる裏十闘士の一人が居るはずだ」 「裏十闘士ですか?以前、伝説の十闘士や影十闘士について聞きましたが裏…」 ルーチェモンの反逆戦争を終結させ古代デジタルワールドを平和に導いた伝説の十闘士とその協力者であった影十闘士は知っている。 この『勇』のスピリットの元となったエンシェントヒーローモンも影十闘士と以前クラヴィスエンジェモンも言っていた。 しかし、今度は裏十闘士とは。伝説と影ときて裏…宿敵とまで言うその十闘士とは何なのだろうか? 「裏十闘士、彼らの多くも我々影十闘士と同じ様にルーチェモンが引き起こした反逆戦争において伝説の十闘士と共に戦った戦友と呼ばれる存在でした」 クラヴィスエンジェモンは何か懐かしむ様に語らう。 「ええ、ですが裏十闘士は影とは違い最近までその存在は封印されてきました」 「最近まで…ですか?なぜその様な事が…?」 「…それは、影十闘士の幾ばくかが反逆戦争の渦中において裏切りに走ったり、戦争終結後にルーチェモンに代わる新たな脅威として暴威を振るったからです」 クラヴィスエンジェモンは裏切りや新たな脅威といったその言葉に何か無念と敵意を滲ませる。 「故にこそ、我々……エンシェントヒーローモンは彼らを封じその禁が解かれぬ様に見守ってきたのです」 「…話はわかりましたがなぜ今になってその話を?……あ、いえ、スプシ図書館には裏十闘士の一人がいると言ってましたね!?」 なぜその解かれぬ様に守っていた封印が解かれたのかなど気になる部分はあるがそれよりも今この説明をした意味である。 友弥は話の中でスプシ図書館には宿敵の親玉である裏十闘士の一人がいるとクラヴィスエンジェモンが言っていたのを思い出す。 「ええ、そうです。『識』の力を生みし者であり、世界に散らばるスプシモン共の母なる存在」 「…そいつの名は“エンシェントモニタモン”」 「エンシェントモニタモン…」 それがこれから向かうスプシ図書館に住まう王の名前かと友弥は心に刻む。 確かに宿敵アッシュルバニーモンの手紙にもお母様なる存在の示唆があったが間違いないだろう。 そしてスプシモン……スプシ図書館にも冠する名を持つデジモン、こちらも手紙の中にあった。アッシュルバニーモンの進化前のデジモンである。 「……それがこれからボクが向かうスプシ図書館にいるというのですね」 いつもの様にアッシュルバニーモンを見つけ出し戦うだけかと思っていたが今回はより厳しいモノになるだろうと友弥は思わず冷や汗を垂らす。 「…ああ。……そして、これはあくまで我々から…いや、エンシェントヒーローモンからのお願いである。心して聞いて欲しい」 「…はい!」 その緊張した中でも変わらない元気な返事に満足したのかクラヴィスエンジェモンは少しだけ微笑み、改めて真剣な眼差しとなる。 「君はアッシュルバニーモンを優先して構わない。……ただ、可能であれば裏十闘士を…このエンシェントモニタモンの再封印を行って貰いたい」 「…封印…ですか?でも、どうすれば…」 再封印しなければいけない存在だという事は今までの話でわかった。 しかし、その封印の方法などあるのだろうかと疑問に思う。 「それについては君に授けた『勇』の力があれば問題ない。メディーバルリンクモンが持つ退魔剣マスターソードにはエンシェントヒーローモンのあらゆる扉を封ずるキーブレードと同じ力が宿っている」 「あのマスターソードにそんな機能が…!」 驚きである。ウィルス種特攻以外にもそんな力が宿っていたなんて! 「ああ、だが奴もそうそうと再封印される珠でもないだろう。…この大業を為すにはどれだけ君が人と獣、その2つのスピリットを使いこなせるかに掛かっている。……どうか、武運を祈るよ」 「はい!ありがとうございます!…行ってまいります!」 不安も恐怖もある。だが、それ以上に結城友弥は使命感に満たされている。 自身のデータを取り返す為のちょっとした戦いがもの凄く大きくなり、まるで魔王を倒す為に魔王城に向かう勇者の面持ちとなりながら改めて準備を整える。 そして結城友弥はスプシ図書館に襲撃をかける事となる。 -その頃のアッシュールバニーモン- 「んふ〜…やっぱ生のデータはお母様の所で見るのが一番ですわね!品揃え最強…!」 スプシ業は行わず人兎モードになってシアタールームでポテチとコーラを飲み食いしながら実家を満喫していた。